【インタビュー】YOU(足立祐二)、「エレキとアコギの融合」という新境地

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DEAD ENDのギタリストYOU(足立祐二)が放つ、キャリア初のアコースティックアルバムが完成した。前作『ANDROMEDIA』から1年というハイペースで完成した新作は、“エレキとアコギの融合”という新境地への挑戦だった。3月18日にリリースされる『YOUCOUSTIC』はどのようにして生まれたのか、話を聞いた。

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──『ANDROMEDIA』から1年という早いペースでのリリースが実現しましたね。

YOU:前回も3月リリースだったし、本当にちょうど1年でJESUS『LE DERNIER SLOW』と合わせて3枚。デビューした時から1年に3枚リリースする事が夢だったから「やったー達成やーん」って、凄く嬉しいです。

──忙しい1年でしたね。

YOU:うん、本番とリハーサルと移動以外は100パーセント創作に打ち込んで、曲ばかり書いていましたよ。

──今作はアコースティック作品といいながら、YOUさんはエレキしか弾いていないんですよね(笑)?

YOU:そうなんですよ(笑)、『YOUCOUSTIC』というタイトルで「アコースティックアルバムですよ」と言っておきながら、僕はフルでエレキを弾いてるんです(笑)。多分アコギを弾いていると思われてるけど、いいんです、そこは(笑)。

──アコースティックギターの嘉多山信さんとはデュオで活動されていますよね。

YOU:僕が唯一「この人だったら任せられるな」と思った人でね。ひとりだとひとつの楽器しか弾けないでしょ?だからアコースティックギターの達人が必要で。頭の中では完成しているんだけど、アコギとエレキの両方を同時には弾けないから、物凄く探したんです。アコースティックギターの人のコンサートを観に行ったり、周りの人にもいい人がいないか色々聞いたりね。それが実は身近に居たっていう。

──お付き合いは長いのですか?

YOU:14~15年になるかな。僕が河村隆一くんとやった時にリズムギターを弾いていたのが嘉多山くんで、凄くリズムギターが上手くて「良いアコースティックギターを弾かれるな」とずっと横でみてたんだよね。でも2~3年は誘わずに見てたんですよ、人間性も含めて。「嘉多山くんが良い人かどうか」を見極めるのではなくて、「僕に耐えられるかどうか」を見極める期間なんです(笑)。僕はワガママなので、音楽を全部自分で完全に作ってしまうし、アコースティックギターのアレンジも全部考えてしまうので、それを具現化してくれる人でないとダメなんです。「いや、ここはこうした方がいいよ」って言う人とはできない。必ず僕の音楽をやるという大前提で探していたので。彼とは2年間常に一緒に居て、ツアーの時もずっと一緒に話して、この人だったら僕のワガママに耐えられるはずだっていう結論に達して(笑)。それで「こういう曲を20曲くらい出来ているんだけど、ちょっと聴いてみてくれない?」「気に入ったら、一緒にグループ組まない?」って誘ったんです。それが10年くらい前かな?

──それが「ぽんぽんにゃん」(YOUと嘉多山信のデュオ)ですか?

YOU:そうそう。最初の半年間くらいは「二人のロス疑惑」って名義でやってたの(笑)。でもあのロス疑惑事件の方が亡くなられて、疑惑かどうかもわからなくなったので、その名前を使うのもおかしくなったので改名しました。

──で「ぽんぽんにゃん」ですか(笑)。

YOU:「ぽんぽんにゃん」もね、ステージで「そう言えばさ、あの方亡くなったの知ってる?」「もう疑惑じゃないよね、名前変えなきゃいけないよね」「ぽんぽんにゃんでええやん」ってその場で決まったの(笑)。なぜかパッとそれが出てきて、10年やってます(笑)。

──エレキとアコースティックの融合って珍しいですよね?

YOU:アコースティックギター2人のデュオとかはわりとあるじゃない?そこに歌があるとポピュラーなスタイルになるよね。嘉多山くんに「どんなのやりたいの?」って聞かれても、形容するグループがいないから「言葉では伝えにくいから、とりあえず音楽聴いてみてくれる?」って。そしたら「たしかに変わってるよね、曲もそうだけどスタイルもなかなかないよね」「世界レベルでもこういう組み合わせって知らないからやろうよ」と。それが10年前で、それ以来ずっとやってきて、これを形にしたかったから『YOUCOUSTIC』を作った。今回は僕の名義になっているんだけど、ぽんぽんにゃんのライブで演っている内容とほぼ同じです。

──もともとライブで演ってきた曲なんですね。

YOU:この16曲は全部ライブで演っています。もともとライブで演っていたことから、嘉多山くんも演りやすかったと思いますよ。でも僕の楽曲でスタジオに入るのは初めてだったので「緊張するよね」とは言ってました。

──とにかくシンプルですよね。ごまかしが効かないというか。

YOU:なんせふたつの音しか入っていないからね。ハーモニーもほとんど入れていない。普通はサビのハーモニーを入れたりもするんだけど、あえて全部取っ払って「ライブの感じでやろう」と。ギターも左右でダブルで入れてみたりもしたけど、それも無しにして完全に一本でライブと同じアレンジでレコーディングしました。

──前回同様、一発録りですか?

YOU:スタジオのシステム上、それぞれで。アコースティックギターを3日間で、それを聴きながら僕が2日間で、レコーディング自体は5日間で録りました。

──YOUさんのSNSが数日間止まってた日があったので「レコーディングしてるのかな?」と思っていました。

YOU:あー、あれはね、デモもできてメロも録り始めていたんですけど、ハードディスクがダメになった。慌てて今回の16曲だけはコピーできたけど、5分程度で終わるところが5時間もかかって終わったのがレコーディング初日の朝9時(笑)。『ANDROMEDIA』のデモとか『You's Alian』のデモとかは全部消失。

──うわ、それは大変。

YOU:もうね、泣きそうでしたよ(笑)。使わないけど全データが失われたのは本当に悲しい。新曲も作りかけが80曲くらいあったんで、覚えておけば良かった(笑)。

──『YOUCOUSTIC』も全曲にストーリーがあって、短編小説を読んでいる感覚になりますね。

YOU:今回は前作以上にストーリーが重要で「この物語が浮かんだからこの曲になった」というものばかりなんです。ストーリー先行なので、ここが重要なんです。

──世界観のこだわりはありますか?

YOU:それがね、全然ないんです。浮かんだものをそのまま曲にするので「この前こういう感じにしたから今度はこうしよう」は全然ない。でもね、僕の人間性もあるかもしれない、全体的に湿っぽいよね?だいたいそういう感じになっちゃう(笑)。

──音色へのこだわりは?

YOU:それも全然なくて、いつも通りにアンプ鳴らして「さぁ、録ろうか」みたいな。何も作り込みもなく、アコースティックギターの持ち替えもなし。最初に音決めしたものが良かった。

──今回も、CDと配信ではボーナストラックが違いますね。

YOU:そうです。この16曲は、そもそも45曲の中から選びました。レパートリーが50曲くらいあって、完全なデモが45曲。

──それにしてもアコースティックギターは弾かないのですか?

YOU:嘉多山くんが達人だからね、達人の前では弾けないです(笑)。

──アー写ではアコースティックギターを持ってますけど(笑)。

YOU:わざわざ撮った(笑)。「アコギ弾いてるみたいな顔してるけど弾いてないやん」って日本全国から突っ込まれると思う(笑)。それも面白いかなと思ってね。

──前回のインタビューで「『You's Alien』『Maniac Love Station』『ANDROMEDIA』の3枚は3部作」との事でしたが、今作は別のもの?

YOU:うん、これは全く別。あの3枚はアートワークも連動していたけど、今回は森っぽいでしょ?これは僕の頭の中なの。陽が差しているところもあるけど、暗くてコウモリがいたりして、まさに頭の中でいつも考えているのがこれ。本当は左側の明るい方へ寄って欲しいんだけど、どうしても滲み出てくるものが湿っぽいんだよね。でもね、湿っぽい曲を書いてる時も「音楽っていいな」といつも思うんだよね、曲調は右側でも弾いてる時の気持ちは左側なの。

──『ANDROMEDIA』の続編は、ありそうですか?

YOU:バリバリその気はありますよ。明日からスタジオ入れって言われたら入ります(笑)。そのために日々曲を書いているし、その時間が一番癒されるし、何の不安もなくなるし、その為に生きているようなもんです。というのもね、一般的にアルバムって企画されて10ヶ月後くらいに発売されるようなスケジュールで「今4曲しかないので、あと10曲くらい何とか書いて」って感じだと思うけど、僕はそのパターンが凄くイヤです。いつでも「はい」と出せるようにしておきたい。DEAD ENDでデビューした時にもの凄く苦労したんでね。1年に1枚リリースしてツアーだキャンペーンだ…もう次の制作…と3年間を過ごしたので、鬼のように忙しくて時間がなかったのに、僕だけ曲書けって言われてノイローゼになりそうでね。今は「いつでも50曲ありますよ」って言いたい。当時は本当に曲が書けなくて「才能ないんかな」って苦しんだから。

──やる気モードは続いていますか?

YOU:やる気しかないですよ。『YOUCOUSTIC』が発売したらDEAD ENDに取り掛かります。ここから3ヶ月間はみっちりバンドの曲を書きますよ。合間を縫ってライブもやるけどね。バンドはもう5~6年やっていないけど、2019年もCOOL-JOEのイベントで会って、湊もいて、懐かしい顔ぶれがたくさんいる中でも、やっぱりバンドメンバーは空気感が違うというか、バンドもいいなと思った。極端にマニアックな事をやっているので、これがアルバムとして形になるだけでも凄いんだけど、マニアックだからこそ一生懸命やりたい。DEAD ENDもソロもアコースティックも全力です。いまバンドの曲を作り始めているけど、アコースティックを演ったことで、リフを作っていても凄く刺激的でね、バンドにまた新鮮味を与えられると思う。

──期待しています。

YOU:僕は音楽しかできないし、自分にできる事を全力でやるだけ。世の中が今「ライブをやめた方がいい」という風潮だけど、僕らもやめるのは嫌なんです。ライブやイベントを止める事でみんなが笑顔になるならいいけど、果たしてそうなのかな。なので、決まっている事だけは全力でやりますよ。

取材・文:Sweeet Rock / Aki
編集:BARKS編集部


YOU(足立祐二)『YOUCOUSTIC(ユーコスティック)』

2020年3月18日(市)発売
KICS-3874 / ¥3,000(tax out)
1.Black Lemon
2.7 Storm
3.L’Olympia
4.小さな窓
5.Gypsy Red
6.指人形
7.Peter
8.My Melancolia
9.My Melancolia 2
10.Flipper
11.7(Seven)
12.Little Boy

All instrumental
Produced by YOU
All songs written by YOU

Recording members: YOU(Electric Guitar)/嘉多山 信(Acoustic Guitar)

◆YOUオフィシャルブログ
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