【ライブレポート】<DECEMBER’S CHILDREN>、the peggies、Suspended 4th、chelmicoなど5組が共演「君は君でいい」

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12月7日、マイナビBLITZ赤坂にて音楽事務所ムーヴィング・オンが毎年12月に主催する恒例のイベント<DECEMBER’S CHILDREN>が開催された。2012年の開催から数えて8回目となった今回も、ありきたりな枠には収まらない、個性にあふれるアーティストが尖まくる夜となった。

◆<DECEMBER’S CHILDREN> 画像




赤いストロボが点滅するなか、トップバッターとして登場したのは秋山黄色だ。目まで隠れる金髪に“現役ニート”と自称する謎めいたキャラクターや、活動開始翌年の2018年にはSpotifyのバイラルチャート上位にランクインしたり、2019年には<VIVA LA ROCK 2019>、<ROCK IN JAPAN 2019>、<SUMMER SONIC 2019>などの大型フェスに出演し、“突如現れた感”でざわめかせている気鋭のアーティストだ。

パワーポップなバンドサウンドを鳴らすなか、その轟音を切り裂くように秋山黄色の存在感バツグンの声が響き、フロアを圧倒する。刹那、苛立ち、やさぐれ感が荒れ狂う。現代の若者のハードボイルド──そんな言葉が頭をよぎった。

一転、3曲目の「夕暮れに映して」では甘酸っぱいロマンチックな一面を見せ、ステージは高揚感を増していく。その様は、まるで幻想的であり牧歌的でもある不思議な風景を描いているようだった。この日のレパートリーは4曲と少なかったが、爆裂するアンサンブルのなか、秋山黄色は得体の知れない恐ろしさを放ちながら歌い、叫び、嵐のように去って行った。





二番手は昨年の<DECEMBER’S CHILDREN>に続き二度目の登場となった“サスフォー”ことSuspended 4th。名古屋・栄の路上ライブで刃を研いできた彼らの十八番は、往年のロック、ブルース、ファンク、ジャズ、オルタナ、ガレージがミクスチャーされた爆発的なジャムセッション。そのミクスチャーぶりはヘヴィながらスポーティーな軽やかさがあり、楽器を通じて会話すること、つまり“ジャムる”ことの楽しさにあふれている。そして、楽しいだけではない鋭さも秘めている。

この夜も圧巻のジャムセッションを挟みながら、3曲を披露。変幻自在なドラムのビートに乗せ、ツインギターが絡み合い、ときに高速チョッパーベースで驚かせてステージは進む。中盤のセッションではGLIM SPANKYの亀本寛貴がゲスト参加してフロアを沸かせた。また、今年はPIZZA OF DEATH RECORDSから『GIANTSTAMP』をリリース。そんな上り調子の真っ只中にあるコンディションのよさがビシビシと伝わってきた。

往年の様々なサウンドを今の音としてハイブリッドさせたSuspended 4thのサウンドは、ロックの新たな発見と言っていい。そして、ステージには“腕一本で勝負する”剣豪のような気概と情熱が満ちている。その真価が発揮されるパフォーマンスをこれからも楽しみたい。





続いて、ギター&ボーカルとドラムのツーピースバンド、ドミコが登場。ポストパンク、オルタナ、サイケデリック、ガレージ、ブルース、シューゲイザー、ローファイなどが渾然一体となったカテゴライズ不能のサウンドで“ヤバい”と耳ざといリスナーを騒がせているが、その評判に違わないステージを見せた。

ドミコのライブパフォーマンスの核は“2人しかいない”編成だからこそ生まれるプリミティブなダイナミックさにある。原始的な祝祭を思わせるビートが鳴り響き、そこにリアルタイムサンプリングされたギターリフが塗り重なっていく。2人しかいないことを忘れさせる圧巻の演奏の続くなか、サウンドは1曲のなかでもアバンギャルドに次々と姿を変えていく。そこには音を使って絵画を描くような、それもライブペインティングを見ているような、異種格闘技的なスリリングさがあった。これぞ現代のアートロックか。

4曲目に演奏された「ロースト・ビーチ・ベイベー」では、“ドミコ的ウォール・オブ・サウンド”と呼びたくなるほどの幾重にも積み重なった音の壁が迫り、まるでオーケストラを目の前にしているような錯覚に襲われた。そんな魔術的な艶かしさがあった。

今宵、MCはなく1曲演奏が終わるごとに、さかしたひかる(G&Vo)は「サンキュー」と不敵に一言。最後も“何かすごいものを見ている”といった顔の観客に向けて、「サンキュー」と告げて2人はステージを去った。





枠からはみ出すパワーがイベントを包むなか、4番手としてガールズヒップホップユニットのchelmicoがお揃いの赤いつなぎ姿で現れる。今年は8月にリリースされたニューアルバム『Fishing』を携えてのツアーが全公演ソールドアウトと絶好調の2人。それまでに登場した3組の激しい演奏による緊張感漂うステージの空気を、持ち前のチャーミングで明るく、ちょっと切ないフィーリングで染め変えていく。

このイベントにおける唯一のラップアーティストとあって、ややもするとアウェー感があってもおかしくはないが、心配ご無用。ポップネスにあふれたメロディ、ゆる〜い佇まいと裏腹の確かでしなやかなライム力、キュートな踊りでchelmicoはフロアに笑顔を咲かせた。

洒落たBGMに乗せてトークする、まるで2人のラジオ番組を聴いているようなMCも親近感たっぷり。ステージが進むにつれ、どんどんと観客を魅惑していく。ロック好きの観客が多かったと思われるが、彼らも最後はヒップホップマナーのコール&レスポンスでしっかりと応えた。最後までチャーミングなchelmicoはフロアを味方につけてステージを完走した。





いよいよイベントは大トリ。スリーピースのガールズバンド、the peggiesがステージへ。今宵は、全国13ヵ所をまわるワンマンツアーの最中、札幌でのファイナル公演を残すロードの只中での登場となった。

高校時代から歩みをともにしてきた彼女たちにしか鳴らせない瑞々しくて無鉄砲、ファイティングスピリットにあふれた歌を繰り出していく。ひたすらポップでアグレッシブ。1曲目からハンドクラップが起こり、フロアと一体になって弾け、転がっていく。

歌詞の端々からも伝わってくるように、the peggiesの真骨頂は“世の中の当たり前”に素直にはうなずかない若者の誇らしげなはみ出し感と、わりきれない感情にこんがらがっても、傷を負っても前に突き進む矜持。それが人生という旅における冒険心となって歌に、演奏に、ステージに現れる。それはただまぶしい。彼女たちの光を浴びて観客も踊り、歌い、体いっぱいに応えていた。

キュートでラウドなパフォーマンスが一気呵成に続き、あっと言う間にthe peggiesは6曲を演奏しきった。バンドを続けることは“生きている”ということと同義なんだろうなと、彼女たちのあり方を見ていると思う。そんな青春の生き様をイベントの締めとなるステージで見せてくれた。

簡単にはカテゴライズさせないアーティストたちがオリジナリティを存分に発揮した今年の『DECEMBER’S CHILDREN』。枠に収まらないことの自由、勇気、プライドに満ちた夜となった。「俺は俺でいい、君は君でいい」。そんな自信を出演者たちは皆、躍動するサウンドで体いっぱいに伝えていた。

取材・文◎山本貴政
撮影◎SUSIE

■<DECEMBER’S CHILDREN>2019年12月7日@マイナビBLITZ赤坂 セットリスト

【秋山黄色】
01. 猿上がりシティーポップ
02. クラッカー・シャドー
03. 夕暮れに映して
04. やさぐれカイドー
【Suspended 4th】
01. ストラトキャスター・シーサイド
02. BIGHEAD
03. INVERSION
【ドミコ】
01. わからない
02. こんなのおかしくない?
03. 裸の王様
04. ロースト・ビーチ・ベイベー
05. 深海旅行にて
06. ペーパーロールスター
【chelmico】
01. switch
02. 爽健美茶のラップ
03. Timeless
04. Balloon
05. Highlight
06. Player
07. Love is Over
【the peggies】
01. スタンドバイミー
02. LOVE TRIP
03. そうだ、僕らは
04. ずっと
05. する
06. 君のせい


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