清春、『Covers』公演が開幕。詩情豊かに明かされる名曲カバーの数々
6月27日、ヒューリックホール東京にて、清春が<東京・大阪ホール公演『Covers』>の初日を艶やかに彩った。
◆清春 画像
デビュー25周年の第一弾リリースにして初のカバーアルバム『Covers』に伴う本公演。本来はアルバムのリリース直後にこの日を迎えるはずだったのだが、制作進行の遅延により発売延期となり、オーディエンスにとっては、奇しくも『Covers』の全貌にいち早く触れることのできる機会となったわけである。全12曲の収録予定曲のラインナップは事前に明かされているものの、久々のホール公演で清春がどんなライヴを披露するのか、観衆は胸が高鳴るばかりだった。
この夜の清春の歌唱を支えたのは、中村佳嗣(G)、大橋英之(G)、YUTARO(B)、FUYU(Dr)という名うての面々。これから各地での公演に足を運ぶ読者のためにも、ライヴの具体的なセットリストには触れずにおくが、「傘がない」(オリジナル:井上陽水)で幕を開けたライヴは、どの場面を切り取っても、清春の息吹を間近で感じることのできるようなアレンジの妙が光っていた。
たとえば、「悲しみジョニー」(オリジナル:UA)のスモーキーな妖艶さには骨抜きにされたし、「やさしいキスをして」(オリジナル:DREAMS COME TRUE)の包み込むような美しさにはいつまでも浸っていたいほどだった。
こうしたカバー曲に加えて、優しく繊細な「三日月」や「俺もやるようになったでしょ?」と観客に微笑みながら自画自賛した「ゲルニカ」など、清春の歴史を彩ってきたオリジナル曲の数々も強く記憶に刻み込まれた。なかでも、ドラムスFUYUが奏でるアコースティック・ギター1本のみで歌った「接吻」(オリジナル:ORIGINAL LOVE)は、今の清春だからこそ成しえる表現力の真髄が滲み出たハイライトの一つだった。
終わってみれば、『Covers』収録予定曲の一部に加えて、シンガー清春のこれまでの歩みを感じることのできる、詩情豊かなセットリスト。「カバーアルバムを出そうとしながらも、“いつもの感じ”ですよ」と独特の言い回しでこの『Covers』ホール公演の性質を観客に説いた清春。その名曲カバーの数々は、どこか懐かしくもあり、新しくもある。常に挑戦を恐れない清春の稀有な表現に触れて、観客は心地よい余韻に浸っていた。
いまだリリース日を発表できる段階ではないカバーアルバム『Covers』だが、約90%は完成していると清春は言う。この待望の音源を一日も早く味わいたいものだが、その音像をライヴという形でダイレクトに感じることができたのは、またとない経験だった。すべてが清春の色に染まる、劇的で幸福な空間がそこには広がっていた。
特別なホール公演『Covers』は、7月5日と6日の大阪メルパルクホール、8月13日の東京メルパルクホールの3公演を残すのみとなっている。オーディエンスは、各会場で、その場でしか体験できない物語を目撃することになるだろう。旅を重ねるにつれて強靭になる清春の歌の力。そして、溢れんばかりの叙情。二度と訪れることのないこの機会を是非お見逃しなく。
TEXT BY 志村つくね
PHOTO BY 柏田芳敬
「悲しみジョニー」配信総合リンク先
※Apple Music、iTunes、レコチョクその他サービスで聞いてください。
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