【対談】人間椅子・鈴木研一×BARKS編集長、ロック好きによるロック談義
▲左からBARKS編集長・烏丸哲也、人間椅子・鈴木研一
30周年を記念する人間椅子が生み出した『新青年』は、現在の人間椅子の魅力と生き様を存分に発揮させた、渾身の内容となっている。量・質ともに充実を見せた作品がいかにして生み出されたのか、どのような思いからそれぞれのサウンドが生み出されることになったのか…、そんな話を聞きたいと思うものの、鈴木研一とBARKSが話をすれば、どうにも横道にそれがちだ。
しかも取材当日は「お互いに“新青年”の時に影響を受けたアルバムでも持ち込んで話をしましょうよ」と、アナログレコードを持参しての取材となった。音が出せるようにプレイヤーまで用意してのインタビューとなれば、雑談だらけになるのはもはや避けられない。というか、いつものとおりなのである。以下は、5月某日、ロック好きがダラダラと思いの丈を述べたただのロック談義である。
◆ ◆ ◆
──アルバム『新青年』のインタビュー時に、好きなレコードを持ち寄る必要はないでしょう?
鈴木研一:いや、いいんじゃないですか?「アルバムが発売された」ということがわかればいいんだから(笑)。そこが重要じゃないですか。「中身は買って聴いてくれ」ってことで。
──確かに、初回限定盤に同梱されるDVDで、メンバー3人がアルバムに関してたくさんの話をしていますよね。あれさえ見れば、ウェブ上でのインタビューなんか不要かな?とは思いました。
鈴木研一:ちょっと見てみよう。
──ファンはもちろん、ファンじゃなくても初回限定盤は買ったほうが絶対いいですよ。
鈴木研一:これで、みんな初回限定盤買ってくれますね(笑)。
──そもそも『新青年』っていうタイトルにはどういう思いが?
鈴木研一:和嶋くんがつけたんですけど、もともと“人間椅子”って江戸川乱歩の小説名で、デビュー曲が「陰獣」で、30年という記念の年に江戸川乱歩先生が書いていた雑誌のタイトルをアルバムタイトルにした、っていうことだと思うんですけどね。
──30年前に戻るというか、若き年頃を意識したものなのでしょうか。
鈴木研一:手にとった人が自由に感じていいと思うんだけど、「一周回って初心に戻る」とか「いつまでも青年の気持ち」とか、いろんな意味を込めてると和嶋くんは他のインタビューで言ってました。僕は和嶋くんじゃないから、そういうのは言えないですけど、30周年で「これからもまだまだいくぞ」っていう意気込みで作った力作だったので、「またここから初心の気持ちでがんばるぜ」という意味だと思うんですけどもね。
──そういう意味では、今回は30年を振り返るようなレコードをたくさん持ってきましたが、なんの話でしょうかね。
鈴木研一:いいじゃないですか、音楽サイトだから音楽の話が一番。今日は、生まれて初めて買ったLPを持ってきました。KISS『地獄からの脱出』。ピーターが叩いてない頃のKISSのアルバムを挙げるのはとても心苦しいんだけど。
──いつ買ったアルバムですか?
鈴木研一:中学校1年生ですね。小林克也さんのラジオを聴いてたんですけど、ちょうどこの頃に「ラヴィン・ユー・ベイビー」がかかって「KISSすごいな」と思ってまずシングルを買ったんです。そしたらシングルB面に「ハード・タイムス」が入ってて、それがもうすごくてB面もA面もいいっていうことに衝撃を受けて「これはすごいバンドに違いない」と。そのあとすぐに出た第二弾シングル「シュア・ノウ・サムシング」がまた良くて、「こんなにいい曲がいっぱい入ってんなら、絶対アルバム買ってみよう」と思って買ったんです。予想通り全曲良くて、そこからは全部の小遣いをKISSに使うようになっちゃった。
──KISSとの出会いですね。
鈴木研一:「世の中にこんないい音楽があるんだな」と思いました。それまではディスコが好きでシングルだけ買ってたんですよね。特にザ・ドゥーリーズっていう女の人3人組で、いわゆるベルリンサウンドっていうやつなんだけど、それが大好きで、あとボニーMの「怪僧ラスプーチン」も好きで。そのうちブロンディとかイーグルスを聴くようになったんだけど、最初に聴いたのはレイフ・ギャレットなんですよね。田原俊彦さんの「哀愁でいと」がレイフ・ギャレットのカバーだって知って、「元を聴いてみるか」って買ったのがレイフ・ギャレットだった。あまり言いたくない過去だけど…(笑)。
──僕が初めて買ったロックのシングルもKISSでした。「ハードラック・ウーマン」。「ハードロック・ウーマン」と勘違いしてたけど。
鈴木研一:ラッキーの「luck」だけど「Hard Luck」で「不幸」なんですよね。ちょっとこれ聴きませんか。せっかくプレイヤーがあるのに聴かないのはもったいない。
──Aメロに入るところのハイハットがかっけえ!って思ったなぁ。
鈴木研一:かっこいいっすよね。B面の「ミスター・スピード」も聴きたくてしょうがないんだけどかけていいですか?これいい曲っすよね、KISSらしくない曲で。
──当時はしばらくKISS三昧ですか?
鈴木研一:中学3年間はKISSが世界一だと思ってたから、ほかの音楽は聴かなかった。中学ではクイーン派とKISS派がぶつかって、どっちがすごいかっていう論争が起きましたね。
──ラーメンとカレーどっちがうまいかっていうような話だよね。
鈴木研一:そうそう(笑)。クイーン派を言い負かすために「エース・フレーリーのすごいプレイを聴かせてやる」って『アライヴ2』B面の「ラージャー・ザン・ライフ」を聴かせて「これはもしかしたらブライアン・メイよりうまいかも」とか言ってたんだけど、あとあとで知ったらエースじゃなくてボブ・キューリックだったという(笑)。そういうのってKISSには多いですよね、ピーターが叩いてると思ったら違ったとか。編集長が初めて買ったアルバムは何ですか?
──友だちと貸し借りをしたかったので、“みんな興味はあるけど持っていないアルバム”を必死に考えたんです。で、ナザレスのベスト盤(笑)。
鈴木研一:いいじゃないですか。LP第一号がそのベスト盤ですか?すごい。
──ディープ・パープルやレッド・ツェッペリン、KISSあたりを買いたいと思ったけど、すでに友達が持っていたから。
鈴木研一:確か「マイ・ホワイト・バイシクル」が入ってるアルバムですよね。このアルバムにしか入ってなくて、それが売りだったやつ。KISSの次がナザレスって、自分と同じような道を歩んでないですか?
──いや、人間椅子のメンバーみたいな変態じゃないし。
鈴木研一:ちょっとナザレスかけましょう。全然話が進まないけど。で、ナザレスの次はどこいったんですか?
──僕は「KISS派 VS クイーン派」のクイーン派ですから、そちらの方へ(笑)。そもそも中学3年の時、学校の掃除の時間にラジオで「ボヘミアン・ラプソディ」を初めて聞いて衝撃が走りまして。『オペラ座の夜』が発売されたときです。
鈴木研一:リアルタイムに聴けるっていうのはうらやましいですね。『世界に捧ぐ』なんかもこうやってLPサイズで見ないとこの絵の良さは全然伝わらないですよね。CDだと「なんかロボットが手に持ってるな」ぐらいしか見えない。
◆対談(2)へ
30周年を記念する人間椅子が生み出した『新青年』は、現在の人間椅子の魅力と生き様を存分に発揮させた、渾身の内容となっている。量・質ともに充実を見せた作品がいかにして生み出されたのか、どのような思いからそれぞれのサウンドが生み出されることになったのか…、そんな話を聞きたいと思うものの、鈴木研一とBARKSが話をすれば、どうにも横道にそれがちだ。
しかも取材当日は「お互いに“新青年”の時に影響を受けたアルバムでも持ち込んで話をしましょうよ」と、アナログレコードを持参しての取材となった。音が出せるようにプレイヤーまで用意してのインタビューとなれば、雑談だらけになるのはもはや避けられない。というか、いつものとおりなのである。以下は、5月某日、ロック好きがダラダラと思いの丈を述べたただのロック談義である。
◆ ◆ ◆
──アルバム『新青年』のインタビュー時に、好きなレコードを持ち寄る必要はないでしょう?
鈴木研一:いや、いいんじゃないですか?「アルバムが発売された」ということがわかればいいんだから(笑)。そこが重要じゃないですか。「中身は買って聴いてくれ」ってことで。
──確かに、初回限定盤に同梱されるDVDで、メンバー3人がアルバムに関してたくさんの話をしていますよね。あれさえ見れば、ウェブ上でのインタビューなんか不要かな?とは思いました。
鈴木研一:ちょっと見てみよう。
──ファンはもちろん、ファンじゃなくても初回限定盤は買ったほうが絶対いいですよ。
鈴木研一:これで、みんな初回限定盤買ってくれますね(笑)。
──そもそも『新青年』っていうタイトルにはどういう思いが?
鈴木研一:和嶋くんがつけたんですけど、もともと“人間椅子”って江戸川乱歩の小説名で、デビュー曲が「陰獣」で、30年という記念の年に江戸川乱歩先生が書いていた雑誌のタイトルをアルバムタイトルにした、っていうことだと思うんですけどね。
──30年前に戻るというか、若き年頃を意識したものなのでしょうか。
鈴木研一:手にとった人が自由に感じていいと思うんだけど、「一周回って初心に戻る」とか「いつまでも青年の気持ち」とか、いろんな意味を込めてると和嶋くんは他のインタビューで言ってました。僕は和嶋くんじゃないから、そういうのは言えないですけど、30周年で「これからもまだまだいくぞ」っていう意気込みで作った力作だったので、「またここから初心の気持ちでがんばるぜ」という意味だと思うんですけどもね。
──そういう意味では、今回は30年を振り返るようなレコードをたくさん持ってきましたが、なんの話でしょうかね。
鈴木研一:いいじゃないですか、音楽サイトだから音楽の話が一番。今日は、生まれて初めて買ったLPを持ってきました。KISS『地獄からの脱出』。ピーターが叩いてない頃のKISSのアルバムを挙げるのはとても心苦しいんだけど。
──いつ買ったアルバムですか?
鈴木研一:中学校1年生ですね。小林克也さんのラジオを聴いてたんですけど、ちょうどこの頃に「ラヴィン・ユー・ベイビー」がかかって「KISSすごいな」と思ってまずシングルを買ったんです。そしたらシングルB面に「ハード・タイムス」が入ってて、それがもうすごくてB面もA面もいいっていうことに衝撃を受けて「これはすごいバンドに違いない」と。そのあとすぐに出た第二弾シングル「シュア・ノウ・サムシング」がまた良くて、「こんなにいい曲がいっぱい入ってんなら、絶対アルバム買ってみよう」と思って買ったんです。予想通り全曲良くて、そこからは全部の小遣いをKISSに使うようになっちゃった。
──KISSとの出会いですね。
鈴木研一:「世の中にこんないい音楽があるんだな」と思いました。それまではディスコが好きでシングルだけ買ってたんですよね。特にザ・ドゥーリーズっていう女の人3人組で、いわゆるベルリンサウンドっていうやつなんだけど、それが大好きで、あとボニーMの「怪僧ラスプーチン」も好きで。そのうちブロンディとかイーグルスを聴くようになったんだけど、最初に聴いたのはレイフ・ギャレットなんですよね。田原俊彦さんの「哀愁でいと」がレイフ・ギャレットのカバーだって知って、「元を聴いてみるか」って買ったのがレイフ・ギャレットだった。あまり言いたくない過去だけど…(笑)。
──僕が初めて買ったロックのシングルもKISSでした。「ハードラック・ウーマン」。「ハードロック・ウーマン」と勘違いしてたけど。
鈴木研一:ラッキーの「luck」だけど「Hard Luck」で「不幸」なんですよね。ちょっとこれ聴きませんか。せっかくプレイヤーがあるのに聴かないのはもったいない。
──Aメロに入るところのハイハットがかっけえ!って思ったなぁ。
鈴木研一:かっこいいっすよね。B面の「ミスター・スピード」も聴きたくてしょうがないんだけどかけていいですか?これいい曲っすよね、KISSらしくない曲で。
──当時はしばらくKISS三昧ですか?
鈴木研一:中学3年間はKISSが世界一だと思ってたから、ほかの音楽は聴かなかった。中学ではクイーン派とKISS派がぶつかって、どっちがすごいかっていう論争が起きましたね。
──ラーメンとカレーどっちがうまいかっていうような話だよね。
鈴木研一:そうそう(笑)。クイーン派を言い負かすために「エース・フレーリーのすごいプレイを聴かせてやる」って『アライヴ2』B面の「ラージャー・ザン・ライフ」を聴かせて「これはもしかしたらブライアン・メイよりうまいかも」とか言ってたんだけど、あとあとで知ったらエースじゃなくてボブ・キューリックだったという(笑)。そういうのってKISSには多いですよね、ピーターが叩いてると思ったら違ったとか。編集長が初めて買ったアルバムは何ですか?
──友だちと貸し借りをしたかったので、“みんな興味はあるけど持っていないアルバム”を必死に考えたんです。で、ナザレスのベスト盤(笑)。
鈴木研一:いいじゃないですか。LP第一号がそのベスト盤ですか?すごい。
──ディープ・パープルやレッド・ツェッペリン、KISSあたりを買いたいと思ったけど、すでに友達が持っていたから。
鈴木研一:確か「マイ・ホワイト・バイシクル」が入ってるアルバムですよね。このアルバムにしか入ってなくて、それが売りだったやつ。KISSの次がナザレスって、自分と同じような道を歩んでないですか?
──いや、人間椅子のメンバーみたいな変態じゃないし。
鈴木研一:ちょっとナザレスかけましょう。全然話が進まないけど。で、ナザレスの次はどこいったんですか?
──僕は「KISS派 VS クイーン派」のクイーン派ですから、そちらの方へ(笑)。そもそも中学3年の時、学校の掃除の時間にラジオで「ボヘミアン・ラプソディ」を初めて聞いて衝撃が走りまして。『オペラ座の夜』が発売されたときです。
鈴木研一:リアルタイムに聴けるっていうのはうらやましいですね。『世界に捧ぐ』なんかもこうやってLPサイズで見ないとこの絵の良さは全然伝わらないですよね。CDだと「なんかロボットが手に持ってるな」ぐらいしか見えない。
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