“2018年、最も印象に残ったライブ”を編集部員が振り返る【2018年 年末特集】

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この1年間にBARKSがお届けしたライブレポートは大小合わせて優に1000本を超える。ライブシーンは絶好調で、大晦日の本日も全国各地でカウントダウン公演が行われているだろう。音楽が売れない時代と言われて久しいがライブは別格。キャンプや飲食などをはじめとするフェス形態の多様化をはじめ、アニメやゲームイベントの隆盛ほか、従来の枠を超えた参加型/体験型のイベントが新たなワクワクを作り出している。

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前述したように、ライブレポートは1日3本以上公開している計算になるわけで、部員は毎晩のようにライブハウスやホールへ足を運ぶ機会を得ている。その中から個々がベストを抽出したものがBARKS編集部による“2018年、最も印象に残ったライブ”だ。それぞれの視点や趣味趣向も垣間見られるコラム性の高い内容となっているので、おひまなときにでもぜひ。それでは編集長から年功序列で。


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2018年もいろんなライブを観たけれど、印象的だったのはヤバT。ライブと言うよりも、映像作品を観ている感覚になったのは、きっと立ち振る舞いやMCも含め自らの存在自体が作品だからなんだろう。音楽を売るのではなく音楽を生み出す自分たちを売るという価値観…明らかに数年前のミュージシャン基質ではない新世代のアーティスト像が完成されていた。

稀有な体験という意味では、X JAPANの無観客ライブはゾクゾクしたなあ。お客さんはゼロなのに会場には異常な熱量が充満していた。

熱量という意味では、B'zの30周年記念ツアー<B'z LIVE-GYM Pleasure 2018 -HINOTORI->にも極上な一体感に満たされていた。詳細はレポ原稿をチェックいただくとして、あのライブが素晴らしかったのは、オーディエンスもB'zに負けないパワーを発していたから。ライブはアーティストとオーディエンスの両輪で作られるものという当たり前を見せつけてくれた。

BARKS編集長 烏丸哲也

【レポート】B’z LIVE-GYMは、「ライブ」ではなく「ドキュメンタリー」

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2018年に最も印象に残っているのは、ヴァイオリン2台とピアノのトリオTSUKEMENが、11月28日に行った和楽器との競演ライブ。尺八と和太鼓の日本を代表する使い手と、それと対峙するTSUKEMEN三人の合計五人による、豪華な異種格闘技戦は見ごたえも聴き応えもあるものだった。緊張感が張り詰めるというよりは、心に染み入る温かい演奏を楽しませてくれた。和太鼓とのコラボは、リズム楽器のいないTSUKEMENの演奏に高揚感や疾走感、そして強烈な音量的なアクセントをもたらし、またフルートともクラリネットともオーボエとも違う尺八の音色がヴァイオリンと相まって、これまで体験したことのない音世界を作り出していた。

もう一つは、11月22日にNHKホールで行われたBRADIOのライブ。ファンキービートに乗ってとにかくお客さんを楽しませる。彼らの底力を見せ付けてくれた。

森本 智

BRADIO、満員のNHKホールで「みんなのYESの声をもらってもいいですか?」

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2018年もライブシーンは衰えるところを知らず盛り上がるばかり。クリスマスシーズンひとつ取っても、L’Arc-en-Cielの東京ドーム2days、sadsのラストライブ追加公演、Hi-STANDARDのツアー横浜アリーナ公演、LUNA SEAのさいたまスーパーアリーナ2daysと、あまりにも貴重で果てしないスケール感を連夜浴び続けた贅沢三昧。嬉しい悲鳴を上げながらレポートをお届けした。

またBARKSは、PIZZA OF DEATH主催<SATANIC CARNIVAL>、<中津川THE SOLAR BUDOKAN>、モンパチ主催<WWW!! 18>など大型フェスのオフィシャル速報レポートを務めたほか、HYDE主催<HALLOWEEN PARTY>特集レポートを公開したが、これらフェスはどこも大盛況。編集部はそのバックステージを目撃可能な有難い環境で作業ができるのだが、舞台裏のアーティストに笑顔が絶えないフェスはステージ上が光り輝くこと極まりない、と断言したい。個人的には<中津川THE SOLAR BUDOKAN>舞台裏、喫煙所で目撃したチバユウスケ、クハラカズユキ、ウエノコウジが揃っての談笑シーンには心躍って手足震えるほどアガった。

サウンド&プレイの面で最も印象的だったのは10-FEETの<“Fin” TOUR 2017-2018>ZEPP TOKYO公演だ。もはや様々な大型フェスのトリを務める彼らのライブが素晴らしいのは当たり前。日々の鬱憤を晴らしてくれる壮快なメッセージ、胸に染み入る切ないメロディー、心温まる笑いの数々は10-FEETならではのものだろう。それにしてもこの日の3人が放つサウンドは数段スケールアップした感触だった。それぞれのパートの音がはっきりと聞こえてながらも一体となったうねりのある演奏で、たとえば勢いがすごいとか、個々の技量が高いということとは次元が違う。後に訊いた話では、ツアー中盤ながら、ZEPP TOKYO公演前にサウンドシステムを見直したとのこと。痛快で豪快なサウンドの裏には彼らの弛まぬ努力があることを知って、その真っ直ぐで力強いステージに深く頷いたことが印象深い。

梶原靖夫

【ライブレポート】10-FEET、「居なくなったら寂しい。そんな男にならなきゃな」

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最近増え続けている“ジャズという何か((C)原雅明)”の中でも、2018年、グッときた2公演が2018年1月27日KTOYO JAZZ SEXTET@CITANと、2018年11月6日Spiral Deluxe@SuperDeluxeだ。

前者は選曲家・沖野修也率いるセクスットが60〜70年代のBLUE NOTEばりのジャズを聴かせる。新しくもない、古くもない、正しい意味での「クラシック」な作品を聴かせてくれた。

一方で、Spiral Deluxeは、ドラムマシンやパーカッションを担当するジェフ・ミルズに加え、バッファロー・ドーターの大野由美子(Moog Sync)、日野“JINO”賢二(B)、ジェラルド・ミッチェル(Key)が集結したスーパー・グループ。ジェフ・ミルズが紡ぎ出す力強い4つ打ちは明らかにテクノのそれだが、なんだかよく分からないけど新しいジャズ?を感じたのは僕だけではあるまい。

星出智敬

【インタビュー】沖野修也「来年すべてが繋がります」

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2018年に最も印象に残ったライブは、音楽が持つ力の強さを改めて感じることができた公演であった。

<澤野弘之 LIVE [nZk] in Shanghai>。2018年12月6日、澤野にとって初めての海外単独公演となった上海東方芸術センターでのライブには、約2,000人の中国の人々が集まった。中には上海以外の都市の人々も訪れていたという。

『機動戦士ガンダムUC』『進撃の巨人』『甲鉄城のカバネリ』『終わりのセラフ』など、澤野が手がけた人気アニメのテーマソング、劇伴に上海のオーディエンスは熱狂。着席ではあったが、振り上げられた手と歓声は、会場全体を揺らすほどの力強さを持っていた。

そのオーディエンスの熱気に応えるように、澤野を中心としたバンドメンバー、ボーカリストたちも力のこもったパフォーマンスを披露。その卓越したサウンドは、多彩な情景をステージ上に描いていた。

音楽は国境を越える。もはや使い古された言葉だが、澤野自身と、澤野の音楽を愛する上海の人々の幸福感にあふれた笑顔を見ていて、この言葉が真実であることを心に刻むことができたのだ。

鈴木健也

【ライブレポート/インタビュー】澤野弘之、初の上海単独公演で描いた色鮮やかなる音世界

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結成時から6年間色々なところで取材してきたベイビーレイズJAPAN。グループ改名のきっかけになった武道館でのライブも当時、ライターの東條さん(ラストライブ記事執筆ライター)と一緒に現場で見ていました。ラストライブ直前の対談企画でもベビレを取り巻く皆さんの熱さに触れることができました。

昨今、アイドルグループがオリジナルメンバーそのままで5年以上活動し、そこから綺麗に終われることは稀です。そんな中でこのラストライブの形を5人で選び取ったベビレメンバーを讃えたいと思います。最後のインタビューでお会いした5人は、見た目も考え方も本当にたくましく強く綺麗になっていました。

山中湖でのラストライブで「涙のち晴れ」がパフォーマンスされたとき、ちょうど通り雨から晴天へと持ち直すところで、吹き抜けのメインステージの裏から秒刻みに後光が差し込んできて彼女たち(とバックバンドの皆さん)を包み照らしていく様が圧倒的に美しかった。完全野外ステージなので雨天になる可能性もあったわけですけれども、ベビレの5人は最後の賭けに勝ったんだなと思ったのを、憶えています。

宮川直子

【ライブレポート】ベビレ、山中湖で6年間の活動に終止符

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2018年、最も印象に残っているライブといえば、X JAPANが9月30日に行った“無観客ライブ”だ。

8年ぶりの10万人規模の大型ライブとして開催される予定だった<X JAPAN Live日本公演 2018 ~紅に染まった夜~Makuhari Messe 3Days>。しかし最終日に当たる9月30日の公演が台風24号の影響を受け中止に。

中止の一報が入った時は、正直かなり落ち込んだ。X JAPANが作り上げる新たな歴史を目の当たりにしたかったから。しかしその後に飛び込んできた「オーディエンスがいない状態でライブを行う」というニュースに脅かされた。こんな決断ができるのは、今日本にX JAPANしかいないのではないだろうか。

もちろんすぐにニコニコ生放送『YOSHIKI CHANNEL』にてライブを視聴。観客がまったくいない幕張メッセで、世界的アーティストであるX JAPANがライブを行うという光景は二度と見られるものではないだろう。

服部容子

X JAPAN、前代未聞の“無観客ライブ”

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7月28日(土)に<FUJI ROCK FESTIVAL>で観たケンドリック・ラマーのステージは、いま思い起こしても圧倒される。出演発表のときから音楽ファンがその吉報に沸きに沸いた。当日は台風の影響を受けたため結構な暴風雨に見舞われたが、現代のカリスマのステージに釘付けになった。

富士急ハイランド・コニファーフォレスト6daysのうちの2公演目にあたる5月26日(土)に観たSEKAI NO OWARIの野外ツアー<INSOMNIA TRAIN>は、刺激的なライブの内容もさることながら、視界いっぱいに広がる列車のセットがとにかく絶景だった。目に焼き付いて離れないとはまさにあの事で、イメージを現実にしてしていく彼らの思いの強さをあらためて思い知った。

そして、つい先日衝撃を受けたのが、12月12日(水)にさいたまスーパーアリーナにて行われたアジア最大級の音楽授賞式<Mnet Asian Music Awards (MAMA)>の日本公演にあたる<2018 MAMA FANS’ CHOICE in JAPAN>でのBTSのステージだった。披露されたのは「FAKE LOVE」「ANPANMAN」の2曲のみだったが、彼らの“ダンス”は次元が違った。それはあまりにも見事な感情表現であり、胸が苦しくなるほどにメッセージがダイレクトに届いた。

堺 涼子

【ロングレポート】未来に繋がる<FUJI ROCK '18>

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2018年も華やかな話題がいっぱいでしたが、今回はしみじみ心に残ったライブを振り返ってみました。

<2月:BUMP OF CHICKEN、10年ぶりのさいたまスーパーアリーナ公演>
「虹を待つ人」以降、サウンドや歌詞から楽曲の発表方法、ライブ演出等まであらゆる面でアップデートを重ねながら突っ走ってきたBUMP OF CHICKENが完全に“みんなのバンプ”として開花したことを感じさせる開かれまくったライブでした。《生きるのは最高だ》のフレーズがかつてなくストレートに響く22周年記念日、たいへん清々しかったです。

<5月:デュア・リパ、初の単独来日公演>
2017年夏、「New Rules」の全英1位獲得と時を同じくしての初来日でも既に“クイーン”とお呼びせずにはいられない唯一無二の存在感を放っていたデュア・リパ嬢がさらにパワーアップして東京に帰ってきてくれました。舞台を駆け回り客席を煽りまくる姿や80s風味漂うステージ演出、MC中の少女のような笑顔も然ることながら、ギター一本で聴かせた「Thinking Bout You」に新世代歌姫の真骨頂を見た思いでした。新作も楽しみです。

<8月:ジョージ・クリントン、ツアー活動引退発表を経て来日>
“George Clinton & Parliament Funkadelic”としてサマソニ&ソニマニに降臨。ソニマニ“Brainfeeder Night”で真夜中の幕張メッセに響いた「Flashlight」や「Give Up The Funk」も最高でしたが、サマソニ東京BEACH STAGEのライブ終盤、「Maggot Brain」の壮大なギターソロと呼応するかのように客席背後でブチ上がる花火(途中から皆振り返って花火の方を見てた)はこの夏いちばんの名場面でした。クリントン師も喜んでくれてるといいな……と未だに思い出します。

<11月:インターポール、13年ぶり単独来日公演>
2017年にリリース15周年を迎えた名作『Turn On The Bright Lights』の全曲再現+今夏発表されたばかりの新作『Marauder』を携えての人気曲満載セットという夢の2本立てライブ。冒頭「Untitled」のイントロが鳴り響いた瞬間の温かくも張り詰めた空気から懐かしの名曲群、骨太なサウンドが舞台に映える新曲、ラスト「Slow Hands」〜「Evil」の高揚まで、2018年型インターポールの魅力が凝縮されたステージでした。新作中心セットでの再来日実現もお祈りしております。

井上舞

デュア・リパ、初の単独来日公演が大盛況

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今年の1番の思い出は、BURNOUT SYNDROMESの夏フェス出演に密着したことです。フェス前日にリリースされた新曲「世界を回せ」の歌詞の内容と全く同じ1日を過ごす彼らに同行し、「バンドの機材車に乗せてもらって、インタビューしながらフェス会場まで行って、レポートも書く」という丸1日がかりの取材に挑戦しました。

一緒に移動はさすがに厳しいかな……と恐る恐る企画を提案したのですが、無事OKが出て一安心。記事の内容や1日の流れなど、細かい部分の打ち合わせを重ね、当日を迎えました。

メンバーと合流して取材がスタートし、そこからはあっという間。機材車に乗り、東京へ向けて出発したときには外はもう真っ暗でした。明るく照らされたフェス会場が少しずつ遠くなっていく様子を窓から眺めながら、「まだ8月4日ですけど“夏終わったー!”って感じがしませんか?」とメンバーに聞いたら「めっちゃわかります!」と返答がありました。同じ気持ちで1日を過ごせたのかなと感じられて嬉しかったです。

メンバーと別れ1人になったときに、「今日のことは一生忘れない」と強く思いました。大変だったけど、本当に貴重な経験になりました。

高橋ひとみ

【特集後編】BURNOUT SYNDROMES、<RIJF>初出演レポート

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