【総括レポート】<LUNATIC FEST.>、「この場から愛と狂気、そして感謝の念が失われてしまうことは、絶対にない」
LUNACYとLUNA SEAを別個にカウントすれば各日11組、2日間でのべ22組のライヴ・パフォーマンスを堪能することができた今回のフェス全体を見渡していて、もうひとつ考えさせられたのは、近年増加傾向にあるアーティスト主催型のフェスというものの可能性についてだ。誤解を恐れずに正直に白状しておくと、僕は、そもそもはこうしたフェスのあり方をあまり好ましく思っていなかった。というのも、ヘッドライナーを務めるアーティスト自身が、自らわざわざ自身の領域のようなものを設定し、その枠内での頂点といった立場を誇示するかのようなプレゼンテーションのあり方に、なんだかむしろ偏狭さというか“お山の大将”めいた匂いを感じてしまい、ある種の抵抗をおぼえていたのだ。だが、そうしたフェスも、主宰となるアーティスト自身の志の高さ次第では、そんな滑稽さというのは微塵も伴わない崇高なものになり得るのだと、改めて痛感させられた。そうしたことを初めて証明してみせたのがLUNA SEAだった、とまでは言わない。しかし、少なくとも彼らは、すでに世間一般に定着している大型フェスにはできないことをやってのけたように思う。
たとえば同じフェスに大黒摩季とBRAHMAN、YOSHIKIとLOUDNESSが名を連ねるなどというのは、ありそうでなかったというよりも、誰もが勝手にあり得ないと決めつけていたことのように思える。そうした次元のことを、LUNA SEAが間に立つことによって可能にしてしまえるのだ。もちろん同じような“ちょっとした奇跡”は他にもたくさんあった。しかも国内で行なわれる洋楽系メタル・フェスにおいて、LOUDNESSがこれほどヘッドライナーに近い終盤に登場することは、不思議なことに過去にはほとんどなかった。少々皮肉めいた発言と受け止められてしまうかもしれないが、僕はLOUDNESSの出演枠が24日の最後から3組目だと知った時、初めて国内の大型フェスで彼らにきちんと敬意を表する出演順が与えられた、と感じさせられた。もちろん本来ならば、彼らがヘッドライナーを務めるフェスがあっていいはずなのだが。
いわゆる一般的大型フェスの場合、まずは集客を確実にするために動員力のあるヘッドライナーを獲得することが優先されることになる。しかもそれだけでは足りないから、ファン層の被りの少ないさまざまな領域のアーティストをブッキングしようということになる。すると、ヴァラエティに富んだおもちゃ箱的な楽しさは生まれてくるにしても、来場者の側は“全部しっかり観てやろう”といった気分にはなりにくくなるのではないかと思う。
もちろん<LUNATIC FEST.>においても集客は重要なテーマではあるはずだが、それ以上に重視されているはずなのは、それこそRYUICHIの言うような24色の色鉛筆のごとくさまざまなジャンルのアーティスト、話題性のある誰かを呼ぶこと以上に、LUNA SEAの美学を感じさせる出演者選びをすることであるはずだ。その、ひとつひとつの選択に、LUNA SEAの誰かの“このアーティストのライヴを自分たちのファンにも観て欲しい”という想いが確実に込められている。フェイヴァリット・バンドができた時にそのルーツを探りたくなるのと同じように、大好きなバンドが推薦するバンドのライヴ・パフォーマンスにはやはり実際に触れてみたい。主宰者と支持層の多くの間にそうした疎通があることにより、結果、音楽自体がないがしろにされずに済む。これはとても健全なことであるように、僕は思う。だからこそ僕は、このフェスを毎年開催して欲しいとまでは言わないから、長く続けていって欲しいと願っている。
ここでふたたびSUGIZOの言葉を引用したいのだが、彼は去る4月、以下のようにも発言している。
「形というのは、実はあまり重要ではなくて。そこを重んじるんではなく、自分たちの真意、アティテュードのレベルでの共鳴、生き方、音楽における哲学……そういうところで合致する人たちだけが集まることになる。ある意味、真意というところでは30年前のチャレンジ精神や、やらかしちゃった感というか(笑)、そういうものを大事にしているので。かつての形をなぞることというのは、姿勢としてそれとは真逆を意味することだから、そんなものは僕にとって新鮮でも神聖でもない。結局、守ろうという気持ちが一切ないのかもしれない。守ろうと思ってやるんじゃなく、今、自分がいちばんドキドキする、スリルを感じる、興奮する、ときめくことをやっていきたい。同時に、やっぱりこの年齢になってくると、責任感とか、音楽に貢献したい、奉仕したいという気持ちが強くなってくる。何故かというと、もうただただ感謝してるからなんです。だから、感謝の念ですべてができていると言っても過言ではない。アルバムも、フェスもね」──SUGIZO
音楽への感謝。それが『LUV』と<LUNATIC FEST.>の双方に共通する動機なのだ。しかも彼の発言からうかがえるのは、彼自身がバンド結成当時から変わることなく、今もなおスリルを求める遊び心を忘れていないということだ。それは当然、他のメンバーについても同じことだろう。
出演アーティストの顔ぶれではなく、何よりも自分たちのステージでビックリさせたいし、ドキドキさせたい。そうした意思も言葉の隙間から見え隠れする。たとえば両日のオープニング・アクトをLUNACYとして彼ら自身が務めるという大胆な趣向は、さすがにこのフェス自体も二回目の開催ということで、もはやいわゆるサプライズにはなり得にくい。しかしそれでも観ていて興奮させられたのは、SUGIZOや真矢がタイムマシーンで過去に戻ったかのような出で立ちでステージに登場したからではなく、今現在の彼らが体現するLUNACYのステージに、少年期に初めてライヴハウスに迷い込んだ時のような禁断の匂いを感じさせられたからだ。5人がただ単に過去を再現しようとするのではなく、成熟を遂げたLUNA SEAとしての説得力を裏付けとしながら、LUNACYの刺々しく神秘的な混沌を描いてみせていたからだ。そこに僕は、音楽の魔法を感じ、バンドというものだけが操り得るマジックの凄まじさを見た思いがした。そして、これは2018年だからこそ味わうことができるものなのだという事実の重さを改めて思い知らされた。
もちろんLUNA SEAのステージにも同じことがいえる。そこでやはり特筆すべきなのは、『LUV』という最新アルバムの恐ろしいほどの奥深さだろう。ことにライヴで聴くたびに鳥肌が立つ「闇火」の強烈さにはいっそうの磨きがかかっていて、本当に絶句させられる。初日のオープニングが同作からの「Hold You Down」だった事実も、このアルバムと<LUNATIC FEST.>の根底に脈打つ彼らの想いが共通性の強いものであることを、ごく自然に示唆していたように思う。
LUNACYとLUNA SEA以外の出演者のステージについてほとんど記述せずにきたが、ひとことで総括的に言うならば、良くないライヴはひとつもなかったように僕は思う。もちろん僕自身にも嗜好というものがあるし、各出演者との距離感にもそれぞれ違いがある。これまで確実に100回以上ライヴに足を運んできたバンドもあれば、初めて生で観る人たちもいた。が、各出演者のライヴに共通していたのは、やはり主宰たるLUNA SEAのそれを鏡で映したかのような真摯さであり、ある種のストイックさだった。
フェスという場だからこその特別なメニューを組む人たちもいれば、SIDやlynch.のようにLUNA SEAの楽曲を、敬意を込めながらファン気質丸出しでカヴァーしてみせた出演者もいた。どんなフェスに登場する際にも、その場の色に自分たちを合わせようとはしないDIR EN GREYの唯一無二感にもさらに拍車がかかっているように思えたし、同様のことをAA=についても感じた。The BONEZの“バンド力”はさらに強力さを増していたし、いつ、どんな場所でも確実に自分たちの音を出し、誰よりも強靭なサウンドと無駄のない正確無比な演奏で圧倒するLOUDNESSのステージ運びには、海外でのフェス経験豊富さゆえの百戦錬磨ぶりを感じさせられた。また、初めて観たGLIM SPANKYについては、転換時のサウンド・チェック際にマイクを通して松尾レミの喋る声が聴こえただけで「すごい!」と声をあげてしまいそうになったし、彼らがSUGIZOをスペシャル・ゲストに招きながら披露した「愚か者たち」は、このフェス全体を通じてのベスト・パフォーマンスのひとつだったように思える。
各出演者のライヴ・パフォーマンスにについて触れていこうとすると、いつまでたっても終わりそうにないので、このあたりで本稿を閉じることにするが、少なくとも“もう二度と観なくていいや”などと思うようなライヴがひとつもなかったことは間違いない。LUNA SEAの面々は幾度も他のアーティストのステージへの飛び入りで沸かせたし、両日とも最後の最後は出演者が入り混じっての一大セッションとなったが、そうしたお祭り感を素直に楽しむことができたのは、両日とも開演からそこに至るまでの時間の流れを、退屈とも軽薄な娯楽感とも無縁な状態で過ごすことができたからこそだと言っていい。そんな素晴らしい2日間を過ごさせてくれたLUNA SEAとすべての出演者たちに、僕からもこの場を借りて感謝と敬意の意を表しておきたい。そして、<LUNATIC FEST.>の名のもとに、次にどんなことが起きるのかを楽しみにしていたい。
改めて考えてみれば、3年前にこのフェスが初めて具現化された際、その青写真を作っていく段階では往年の<エクスタシーサミット>や<L.S.B>といった前例が少なからずヒントになっていたはずだし、まるで両者が合体したかのようなニュアンスも感じられたものだ。そうした意味においては、あの時点でのLUNA SEAは完全にオリジナルなものを生み出してはいなかったのかもしれない。しかし2018年、この<LUNATIC FEST.>は、わずか二回目の開催にして、確実なアイデンティティを持つようになっていたように思う。これから先、時代が変わり続けていくなかで、この祭典自体もまた形や趣向を変えていくことになるのかもしれない。ただ、仮に時流とともに音楽というもの自体の意味や価値に変化が生じてしまうようなことがあたっとしても、この場から愛と狂気、そして感謝の念が失われてしまうことは、絶対にないはずだと断言しておきたい。
取材・文◎増田勇一
■<LUNATIC FEST. 2018>初日 / 2018年6月23日(土)@千葉・幕張メッセSETLIST
01. SHADE
02. SYMPTOM
03. NIGHTMARE
【coldrain】
01. TO BE ALIVE
02. ENVY
03. 24-7
04. GONE
05. NO ESCAPE
06. THE REVERATION
【女王蜂】
01. 金星
02. ヴィーナス
03. 売春
04. デスコ
05. HALF
06. 告げ口
【The BONEZ】
01. Until you wake up
02. Bird〜people with wrings〜
03. Rude Boy
04. Hey, You
05. SUNTOWN
06. Thread & Needle
【ACE OF SPADES】
01. WILD TRIBE
02. TIME FILES
03. Looking for
04. Louder
05. SIN
06. JUST LIKE HEAVEN
【back number】
01. 青い春
02. MOTTO
03. クリスマスソング
04. 瞬き
05. SISTER
06. 高嶺の花子さん
【GLIM SPANKY】
01. アイスタンドアローン
02. END ROLL
03. 怒りをくれよ
04. 闇に目を凝らせば
05. 愚か者たち
06. 大人になったら
【SID】
01. 青
02. V.I.P
03. I for You
04. 嘘
05. 夏恋
06. one way
07. 眩暈
【DIR EN GREY】
01. 人間を被る
02. Sustain the untruth
03. THE FINAL
04. audience KILLER LOOP
05. 新曲
06. 孤独に死す、故に孤独。
07. VINUSHKA
08. 詩踏み
【GLAY】
01. サバイバル
02. coyote,colored darkness
03. VERB
04. HOWEVER
05. BELOVED
06. シン・ゾンビ
07. COME ON!!
08. SHUTTER SPEEDSのテーマ
09. 彼女の"Modern・・・
10. 誘惑
11. XYZ
【LUNA SEA】
01. Hold You Down
02. TONIGHT
03. Dejavu
04. JESUS
05. Rouge
06. gravity
07. 闇火
08. I for You
09. DESIRE
10. TIME IS DEAD
11. ROSIER
12. WISH
encore
en1. BELIEVE(Session)
■<LUNATIC FEST. 2018>2日目 / 2018年6月24日(日)@千葉・幕張メッセSETLIST
01. CHESS
02. SUSPICIOUS
03. SEARCH FOR REASON
【THE ORAL CIGARETTES】
01. カンタンナコト
02. CATCH ME
03. トナリアウ
04. 容姿端麗な嘘
05. 狂乱 Hey Kids!!
06. BLACK MEMORY
【OLDCODEX】
01. Feed A
02. Driedup Youthful Fame
03. Deal with
04. Eyes in chase
05. HEAVEN
06. Growth Arrow
【lynch.】
01. EVOKE
02. SLAVE (LUNA SEA cover)
03. TRIGGER feat.J
04. GALLOWS
05. pulse_
06. CREATURE
【MUCC】
01. TIMER
02. G.G
03. KILLER
04. ハイデ
05. 蘭鋳
06. 生と死と君
【大黒摩季】
01. 熱くなれ
02. チョット
03. あなただけ見つめてる
04. 永遠の夢に向かって
05. Because...you
06. 夏が来る
07. いちばん近くにいてね
08. Anything Goes!!
09. ら・ら・ら
【AA=】
01. 無題
02. 2010 DIGitoTALism
03. posi-JUMPER
04. GREED . . .
05. Such a beautifl plastic world!!!
07. The Klock
08. FREEDOM
【BRAHMAN】
01. 初期衝動
02. 賽の河原
03. SEE OFF
04. BEYOND THE MOUNTAIN
05. AFTER-SENSATION
06. 雷同
07. ANSWER FOR…
08. 警醒
09. 鼎の問
10. 満月の夕
11. 真善美
【LOUDNESS】
01. SOUL ON FIRE
02. I'M STILL ALIVE
03. CRAZY NIGHT
04. BLACK WINDOW
05. IN THE MIRROR
06. CRAZY DOCTOR
07. S.D.I
【YOSHIKI】
01. MOONLIGHT SONATA
〜YOSHIKI / HIDE talk video〜
02. HURRYGO ROUND
03. SAY ANYTHING
04. MIRACLE
05. KURENAI
06. X
07. WITHOUT YOU
08. ART OF LIFE
09. ENDLESS RAIN
【LUNA SEA】
1. LOVELESS
2. ROSIER
3. Dejavu
4. 誓い文
5. Sweetest Coma Again
6. IN SILENCE
7. Providence
8. I for You
9. BLACK AND BLUE
10. PRECIOS...
11. TONIGHT
12. WISH
encore
en1. STORM(Session)
■<LUNATIC X’MAS 2018 -Introduction to the 30th Anniversary->
▼<IMAGE or REAL>
2018年12月22日(土) さいたまスーパーアリーナ
開場15:30 / 開演 17:00
▼<SEARCH FOR MY EDEN>
2018年12月23日(日) さいたまスーパーアリーナ
開場14:30 / 開演 16:00
【オフィシャルファンクラブ先行受付中】
・SLAVE VIP シート ¥50,000 (税込) ※一般発売はございません。
・SLAVEシート ¥21,600 (税込) ※一般発売はございません。
・指定席 ¥9,800 (税込)
・ファミリーシート 大人¥9,800 (税込) 高校生以下¥2,200 (税込)
※3歳以上有料
※チケット一般発売:10月27日(土) AM 10:00より
(問)キョードー東京 0570-550-799(平日11時~18時/土日祝10時〜18時)
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