原作を超えた感動作が際立った『第72回トニー賞授賞式』
▲ジョシュ・グローバン、サラ・バレリス (C)Getty Images
アメリカ演劇界に於ける最も権威のある『第72回トニー賞』の授賞式が6月11日(現地時間10日)に、アメリカはニューヨークのラジオシティ・ミュージックホールにて行われた。
ブロードウェイ・リーグの発表によれば、ブロードウェイ過去最多の観客動員を記録した年でもあったという2017-2018年シーズン。既発映像として著名な作品の戯曲化のノミネートが多数を占める中、各作品の有するクラシック性に、どれだけ予想外の要素をもたらし、観衆を驚かせ、斬新性をもたせての演劇/ミュージカル化となったかに関心が集まり、それらが受賞のカギを握るであろうと予測された。
各作品が擁した“現代版ならではの特異性”から窺うに、まさにどの作品が受賞しても不思議ではなかった今年の授賞式。原作で馴染みのあるキャラクターを、各作品、驚くような手法や表現で蘇らせていたところも印象深い。それらはどれもオリジナリティに溢れ、観衆を魅了。選考は困難を極めた。加え、ミュージカル部門ではノミネート作品のほとんどが、かつて映画化されたものばかり。が故に、ミュージカルに落とし込んだ際にどのような仕掛けや驚きが観衆を魅了し、映画との差別化を図っていくのか?にも興味が募った。
結果は現在の“国境を超えて仲良くしよう”との風潮を反映しているかのように、エジプト人とイスラエル人の男女の一夜に於ける心の機微を描いた『バンズ・ヴィジット』がミュージカル作品賞、主演男優賞など最多10部門(11部門ノミネート)を受賞。演劇部門では、前作から19年後の物語として、父親になったハリーが過去と向かい合う様をそれぞれ3時間近くの前編後編にて上演し、現在でもロングラン中の『ハリー・ポッターと呪いの子』が、演劇作品賞をはじめ、計6部門を受賞した。映画をモチーフとした作品の受賞もここ近年では久しぶりで、同シリーズが、原作、映画、演劇と未だ根強い人気であることも改めて印象づけた。
この授賞式は、演劇部門とミュージカル部門に分かれ、それぞれで作品賞やリバイバル作品賞、主演男優・女優賞などが授与されるもの。今年の主な部門受賞結果は以下の通り。
◆ ◆ ◆
★ミュージカル作品賞 『バンズ・ヴィジット』
★ミュージカル・リバイバル作品賞 『アイランド』
★演劇作品賞 『ハリー・ポッターと呪いの子』
★演劇リバイバル作品賞 『エンジェルス・イン・アメリカ』
★演劇主演男優賞 アンドリュー・ガーフィールド 『エンジェルス・イン・アメリカ』
★演劇主演女優賞 グレンダ・ジャクソン 『幸せの背くらべ』
★演劇助演男優賞 ネイサン・レイン 『エンジェルス・イン・アメリカ』
★演劇助演女優賞 ローリー・メトカーフ 『幸せの背くらべ』
★ミュージカル主演男優賞 トニー・シャルーブ 『バンズ・ヴィジット』
★ミュージカル主演女優賞 カトリーナ・レンク 『バンズ・ヴィジット』
★ミュージカル助演男優賞 アリエル・スタッチェル 『バンズ・ヴィジット』
★ミュージカル助演女優賞 リンジー・メンデス 『回転木馬』
▲アンドリュー・ガーフィールド(演劇主演男優賞) (C)Getty Images
▲ローリー・メトカーフ(演劇助演女優賞) (C)Getty Images
▲トニー・シャルーブ(ミュージカル主演男優賞) (C)Getty Images
▲カトリーナ・レンク(ミュージカル主演女優賞) (C)Getty Images
◆ ◆ ◆
ジョシュ・グローバンとサラ・バレリスが司会を務めた今年の授賞式。ミュージシャンながら演劇にも造詣が深く演劇経験もある両者は、ピアノ2台の連弾によるデュエットをはじめ、所々でデュエットを披露。息の合ったところを魅せる。また、発表の合間合間には、今年のエントリー作品からの一部も上演。上述の『バンズ・ヴィジット』『ハリー・ポッターと呪いの子』のワンシーンの他にも、プロジェクションマッピングを駆使した氷に覆われていく場面も話題の『アナと雪の女王』、スティーブン・タイラー、ジョー・ペリー(共にエアロスミス)や、サラ・バレリス、ザ・フレーミング・リップス、ジョン・レジェンド、シンディ・ローパー、デヴィッド・ボウイ等の楽曲をフィーチャーした『スポンジ・ボブ/スクエアパンツ』、2004年に大ヒットしてカルト的な人気を誇る青春映画をミュージカル化した『ミーン・ガールズ』、今回のリバイバルでは、従来と違え、若いロンドン子の花売り娘イライザ・ドゥーリトルの視点から描いた『マイ・フェア・レディ』、圧巻の音楽と輝くようなバレエシークエンスも魅力な『回転木馬』、ドナ・サマーの幼少期から世界的成功をつかみ取るまでの半生を描いた『Summer』、身分の違う男女の恋愛を描いたカリビアンミュージカル『アイランド』等のハイライトシーンが観衆を魅了していった。
▲『バンズ・ヴィジット』 (C)Getty Images
▲『アナと雪の女王』 (C)Getty Images
▲『スポンジ・ボブ/スクエアパンツ』 (C)Getty Images
▲『アイランド』 (C)Getty Images
また、ミュージシャン面でも、<Springsteen on Broadway>が現在も絶賛ロングラン中のブルース・スプリングスティーンが特別賞を受賞。そのプレゼンテーターは旧友でもあるビリー・ジョエルが務め、ブルースは、同公演の中でも重要な位置をしめる曲「My Hometown」をグラウンドピアノでのポエトリーリーディングに近い形で披露。贅沢な時間が流れた。
「最後にこの時代、勝てるのは癒しの力であると信じて。最後に会場を交えて歌いましょう」のジョシュ・グローバンの言葉の下、会場も交え「This One's For You」が歌われ、今年のトニー賞授賞式は幕を閉じた。
なお、この授賞式(字幕版)の模様は、6月16日(土)夜7:00にWOWOWライブにて放送され、WOWOWメンバーズオンデマンドでも見逃し配信される。
取材・文◎池田スカオ和宏
※WOWOWメンバーズオンデマンドで見逃し配信
番組オフィシャルサイト: http://www.wowow.co.jp/stage/tony/
アメリカ演劇界に於ける最も権威のある『第72回トニー賞』の授賞式が6月11日(現地時間10日)に、アメリカはニューヨークのラジオシティ・ミュージックホールにて行われた。
ブロードウェイ・リーグの発表によれば、ブロードウェイ過去最多の観客動員を記録した年でもあったという2017-2018年シーズン。既発映像として著名な作品の戯曲化のノミネートが多数を占める中、各作品の有するクラシック性に、どれだけ予想外の要素をもたらし、観衆を驚かせ、斬新性をもたせての演劇/ミュージカル化となったかに関心が集まり、それらが受賞のカギを握るであろうと予測された。
各作品が擁した“現代版ならではの特異性”から窺うに、まさにどの作品が受賞しても不思議ではなかった今年の授賞式。原作で馴染みのあるキャラクターを、各作品、驚くような手法や表現で蘇らせていたところも印象深い。それらはどれもオリジナリティに溢れ、観衆を魅了。選考は困難を極めた。加え、ミュージカル部門ではノミネート作品のほとんどが、かつて映画化されたものばかり。が故に、ミュージカルに落とし込んだ際にどのような仕掛けや驚きが観衆を魅了し、映画との差別化を図っていくのか?にも興味が募った。
結果は現在の“国境を超えて仲良くしよう”との風潮を反映しているかのように、エジプト人とイスラエル人の男女の一夜に於ける心の機微を描いた『バンズ・ヴィジット』がミュージカル作品賞、主演男優賞など最多10部門(11部門ノミネート)を受賞。演劇部門では、前作から19年後の物語として、父親になったハリーが過去と向かい合う様をそれぞれ3時間近くの前編後編にて上演し、現在でもロングラン中の『ハリー・ポッターと呪いの子』が、演劇作品賞をはじめ、計6部門を受賞した。映画をモチーフとした作品の受賞もここ近年では久しぶりで、同シリーズが、原作、映画、演劇と未だ根強い人気であることも改めて印象づけた。
この授賞式は、演劇部門とミュージカル部門に分かれ、それぞれで作品賞やリバイバル作品賞、主演男優・女優賞などが授与されるもの。今年の主な部門受賞結果は以下の通り。
◆ ◆ ◆
★ミュージカル作品賞 『バンズ・ヴィジット』
★ミュージカル・リバイバル作品賞 『アイランド』
★演劇作品賞 『ハリー・ポッターと呪いの子』
★演劇リバイバル作品賞 『エンジェルス・イン・アメリカ』
★演劇主演男優賞 アンドリュー・ガーフィールド 『エンジェルス・イン・アメリカ』
★演劇主演女優賞 グレンダ・ジャクソン 『幸せの背くらべ』
★演劇助演男優賞 ネイサン・レイン 『エンジェルス・イン・アメリカ』
★演劇助演女優賞 ローリー・メトカーフ 『幸せの背くらべ』
★ミュージカル主演男優賞 トニー・シャルーブ 『バンズ・ヴィジット』
★ミュージカル主演女優賞 カトリーナ・レンク 『バンズ・ヴィジット』
★ミュージカル助演男優賞 アリエル・スタッチェル 『バンズ・ヴィジット』
★ミュージカル助演女優賞 リンジー・メンデス 『回転木馬』
▲アンドリュー・ガーフィールド(演劇主演男優賞) (C)Getty Images
▲ローリー・メトカーフ(演劇助演女優賞) (C)Getty Images
▲トニー・シャルーブ(ミュージカル主演男優賞) (C)Getty Images
▲カトリーナ・レンク(ミュージカル主演女優賞) (C)Getty Images
◆ ◆ ◆
ジョシュ・グローバンとサラ・バレリスが司会を務めた今年の授賞式。ミュージシャンながら演劇にも造詣が深く演劇経験もある両者は、ピアノ2台の連弾によるデュエットをはじめ、所々でデュエットを披露。息の合ったところを魅せる。また、発表の合間合間には、今年のエントリー作品からの一部も上演。上述の『バンズ・ヴィジット』『ハリー・ポッターと呪いの子』のワンシーンの他にも、プロジェクションマッピングを駆使した氷に覆われていく場面も話題の『アナと雪の女王』、スティーブン・タイラー、ジョー・ペリー(共にエアロスミス)や、サラ・バレリス、ザ・フレーミング・リップス、ジョン・レジェンド、シンディ・ローパー、デヴィッド・ボウイ等の楽曲をフィーチャーした『スポンジ・ボブ/スクエアパンツ』、2004年に大ヒットしてカルト的な人気を誇る青春映画をミュージカル化した『ミーン・ガールズ』、今回のリバイバルでは、従来と違え、若いロンドン子の花売り娘イライザ・ドゥーリトルの視点から描いた『マイ・フェア・レディ』、圧巻の音楽と輝くようなバレエシークエンスも魅力な『回転木馬』、ドナ・サマーの幼少期から世界的成功をつかみ取るまでの半生を描いた『Summer』、身分の違う男女の恋愛を描いたカリビアンミュージカル『アイランド』等のハイライトシーンが観衆を魅了していった。
▲『バンズ・ヴィジット』 (C)Getty Images
▲『アナと雪の女王』 (C)Getty Images
▲『スポンジ・ボブ/スクエアパンツ』 (C)Getty Images
▲『アイランド』 (C)Getty Images
また、ミュージシャン面でも、<Springsteen on Broadway>が現在も絶賛ロングラン中のブルース・スプリングスティーンが特別賞を受賞。そのプレゼンテーターは旧友でもあるビリー・ジョエルが務め、ブルースは、同公演の中でも重要な位置をしめる曲「My Hometown」をグラウンドピアノでのポエトリーリーディングに近い形で披露。贅沢な時間が流れた。
「最後にこの時代、勝てるのは癒しの力であると信じて。最後に会場を交えて歌いましょう」のジョシュ・グローバンの言葉の下、会場も交え「This One's For You」が歌われ、今年のトニー賞授賞式は幕を閉じた。
なお、この授賞式(字幕版)の模様は、6月16日(土)夜7:00にWOWOWライブにて放送され、WOWOWメンバーズオンデマンドでも見逃し配信される。
取材・文◎池田スカオ和宏
『第72回トニー賞授賞式』(字幕版)
※WOWOWメンバーズオンデマンドで見逃し配信
番組オフィシャルサイト: http://www.wowow.co.jp/stage/tony/
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