【インタビュー】キズ、来夢を苦しめる8つの誤解(後編)

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キズのボーカリスト、来夢より「誤解を解きたい」という要望を受けて実施されたインタビュー。

◆ミュージックビデオ

【インタビュー】キズ、来夢を苦しめる8つの誤解(前編)ではキズが世間に誤解されている理由や、来夢の「当たり前とされているすべてのことに疑問を持つ」という考えが明らかにされた。キズはいわゆる“普通のバンド”ではないことを少しわかってもらえたかと思う。後編では前編に引き続き来夢の考えを追いながら、キズが向かっていく先を明らかにしたい。だがインタビューの最後には、自分から謎を提示する場面も。リスナーに対しても思考を止めないことを求めているようだ。

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【その5】reiki、きょうのすけ、ユエは、来夢の操り人形という誤解

――前回は「疑問を持つことからはじめる」とお話いただきました。他にも疑問を持っているものはありますか?

来夢(Vo):キズを組むときに「バンドメンバーの名前はいらないのでは」と思いました。

――どういうことでしょうか?

来夢:キズのボーカルのひと、ギターのひと、ドラムのひと、ベースのひと。誰であるという必要すらないとも考えました。

――そこからですか!

来夢:“来夢”とか“reiki”とか名前をつけちゃうと、「バンドを好きになってくれないのでは」と思っちゃいました。僕はバンドを第一に好きになってほしいという思いが強かったので、バンドメンバーの名前はみんな「キズ」でもいいかなと。

――1番推したいのは、バンドそのものなんですね。まさに今日、メンバーの方のこともお聴きしたかったんです。キズの4人はどのようにして集まったのでしょうか。

来夢:「明日死にそうな人間」、をメンバーの第一条件にしました。

▲reiki(G)

――「明日死にそうな人間」、ですか!?

来夢:うちのメンバーでいうと、ギターのreikiが一番明日死にそうなギタリストなんです。すごい大好きなんです。reikiにしか言ってないんですが、僕、ギターの練習をしているんですよ。あいつにもし何かがあったとしても、いつでもライブができるように。

――そんなに刹那的なんですね。

来夢:そうなんです。あいつはメンヘラ中のメンヘラなんで。僕の中ではいついなくなってもおかしくないメンバーです。ステージを見てくれているファンには伝わっていると思うんですけど。なので、僕はすべての楽曲を歌いながらギターも弾けるように練習してますね。

――ドラムのきょうのすけさんはどんな方でしょうか。以前に何かの媒体で「一番ファンの方に近い」という発言がありましたが。

来夢:あーはいはい!彼はすごい純粋で。キズが初めて組むバンドなんです。キズの始動当時のライブ前なんかは、手が震えていました。一番最初のヴィジュアルで能面をしていたときは、キャラクターをすごく作っていたんですよ。twitterの発言とかもかっこつけて何がしたいかよくわからない感じになってたんです。だから「もう素でいけよ」って言ったんです。キャラを作るって嘘じゃないですか。俺ら嘘は良くないと思っているので。それで素でやったら親しみやすい人間性が表に出ちゃいました(笑)。僕はライブでも感じ悪くステージに出て行くんですけど、きょうのすけが「ありがと~」みたいな感じで手を振って終わらせてくれるので、プラスマイナスゼロくらいになります。彼はキズになくてはならない存在ですね。彼までツンツンしていたらすげー感じ悪いバンドになっちゃいます(笑)。

▲きょうのすけ(Dr)

――きょうのすけさんと言えば「傷痕」のミュージックビデオで立ってドラムを叩いている姿が印象的でした。

来夢:あれも指示したわけじゃなくて、自分で引き出したんですよ。彼に好き放題やらせてますね。若いので、人生的にもまだいろいろ経験不足で探り探り生きている感じが、昔の自分を見ているみたいでかわいいなと思っています。

――ベースのユエさんはいかがでしょうか。

来夢:ユエは、このメンバーの中で一番疑いを持ってました。不信感というか。顔もイケメンで身長も高くてベースもあれだけ弾けて。なんでバンドを組めてなかったかって考えたら、絶対内面に問題があると(笑)。

――確信されていたんですね。

来夢:それしかない、それでしかないと思ったんですよ(笑)!彼くらいの人間ならV系シーンの中で引っ張りだこだと思うんですけど、僕含め誰も彼の存在を知らなかったんです。でも、1年一緒にやってみて何もなかったんですよ。ただ単純に、求めるものが高すぎちゃったんです。キズの中で一番ストイックですよ。ベースに対してもそうですし、筋肉を見てもらえればわかるんですけど肉体もがっちりしています。ストイックな人間じゃないと持てないものをたくさん持っていますね。求めるものが高すぎてバンドが組めてなかっただけでした。

▲ユエ(B)

――周りがついていけなかったんですね。

来夢:そうなんです。でも、これを彼に言ったら怒るんですけど、天然なんですよ(笑)。

――そうなんですか!?

来夢:ものすごく抜けてるんですよ。例えば去年の<Cure World Visual Festival>で、本番20秒前くらいに「あれ、どうやって出るんだっけ」って言い出して。そのときは、さすがに怒りを覚えました(笑)。

――なにかにストイックになると一個抜けるんですかね?

来夢:ははははは!結構大事なこと抜けるんですけどね。スケジュールも「明日かと思ってた」って(笑)。

――それは怖いですね!

来夢:でも、彼らにはすごい感謝していますね。これ以上にひとに背中を押されたことなんてあるかなと思うくらい、メンバーには助けてもらっているところがありますね。でもみんな自分の世界を生きているので、フロントマンがあと3人いると思ったほうがいいかもしれません。


【その6】来夢は飽きたらすぐバンドを辞めるという誤解

来夢:こうしてすべてのことに疑問を持って日々生きていますね。

――来夢さん、アルバムとか作り始めたらどうなっちゃうんでしょう。

来夢:あー僕はもう「絶対やらねえ」って言ってます。死ぬどころじゃないですね。僕がプレイリストを考えるから、曲順をそれなりに並べ替えて自分でiPodで聴いてくれと(笑)。

――あ、最新の聴き方ですね!

来夢:はははは(笑)。それでもいつか、作らないといけないタイミングが来ると思いますね。「おしまい」も在庫がないみたいなんで。でも僕が出したいタイミンでしか出さないです。ビジネスとかじゃなくて。でも、いまのところアルバムを出したいとは思わないんですよね。

――それは1つシングル出したら「これで終わり」の感覚があるからですか?

来夢:そうですね。すごく影響された言葉がありまして。X JAPANのYOSHIKIさんがお話されている「10年、20年かかってもいいから100年後に残る1曲を出したい」という言葉です。

――僕も大好きな言葉です。

来夢:僕はその言葉に影響されて音楽をやっている人間です。10年、20年かけて1曲つくれるバンドになっていきたいですね。

――本当はそれがミュージシャンの方の共通の願いかもしれないですね。

来夢:そうですね。ビジネスとしてバンドはやっていないです。金がほしいんだったらバンドはやっていないです。

――考えることに疲れないですか?

来夢:疲れるどころじゃないです。結果「自分はいま何してるんだこれ」というところに行き着いちゃって、ここは自分がいまいるべき場所なのかとマイナスの方にも行ったりします。

――戻って来れなくなることありませんか?

来夢:そういったギリギリのラインでバンドをやっているのが非常に楽しいですね。バンドを辞めるかどうかは自分で決めることなので、辞める時は潔く辞めます。ファンには「飽きたら辞める」ってちゃんと言ってるんですけどね(笑)。でもそれは半分冗談だったり、半分本気だったりするんです。自分の意見がいつどう転がるかもわからないし、転がってしまったらそのままいくしかない人間なので。そこは自分の怖さとも戦っています。

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