【インタビュー】みそっかす、10年かけてたどり着いた“本当の原点回帰”
■インディーズ、着物、ひらがなに戻り「一人ひとりが大事なピース」
――メジャー期のミソッカスはとにかくいろんな音楽性に挑戦していましたが、作品を出すたびに“原点回帰”と言っていたなと思っていて(笑)。
はるきち:あははは! 俺は1stミニアルバム『三次元からの離脱』のことを本っ当に好きなんですよ。だからメジャーのときも「あの時に戻りたい!」という気持ちで、毎回原点回帰を目指していたんですよね。でも『三次元からの離脱』は、なんも考えずに作ってるんですよ。当時の俺たちのいろんな脳みそやセンスがはたらいて出来たであろう1stミニアルバムを、いまの頭と力でどうにか再現したい――そうやってあたふたしていたのがメジャー期でした。悩みすぎて、悩みすぎた自分たちをテーマにしたアルバム(メジャー2ndミニアルバム『深き森の迷路』)を作ったりもしましたね(苦笑)。
――メジャー期からマイケルさんが作曲に参加するようになります。2017年にリリースしたフルアルバム『ダンシングモンスター』からは、3人の作った楽曲を切り貼りして作ることも多くなりましたよね。
はるきち:今回のミニアルバム『東洋の神秘』の「ディスコエクスプロージョン」も、イントロがマイケル、Aメロがわたし、サビがノブリルなんですよ。強固なトライアングルが『ダンシングモンスター』で作れましたね。
マイケル:俺とはるきちさんで作ってるとすぐ遊んじゃうし、はるきちさんとノブリルさんで作ってると真面目すぎて視野が狭くなっちゃう。だからこの3人で作るのがいちばんバランスが良くて。
はるきち:強固なような脆弱なような……なかなかぎりぎりなバランスだけどね(笑)。だから『ダンシングモンスター』で完全に自分たちのやることが見えたんですよ。
ノブリル:うん。絶対にやるべきじゃないこと、絶対にやるべきことが見えたのは『ダンシングモンスター』だった。
はるきち:ああ、そうですよね。『追撃のフォークロア』にも『深き森の迷路』にも、「オテントサマ」は入れられない。浮いちゃうと思う。でも『ダンシングモンスター』で「オテントサマ」、浮いてないんですよね。『ダンシングモンスター』を出したあとにメジャーを離れることになるんですけど……僕らはそのとき、みんなまた音楽が好きになっていたし、いまみたいにメンバーとも仲良くなっていて。
マイケル:うん。よく話すようになった。
はるきち:メンバーと会うのが楽しくなったんです。それは『ダンシングモンスター』が作れたおかげでもあるかもしれない。
ジャンボリー:うん。『ダンシングモンスター』を作ってから、ラクになった。
はるきち:あのアルバムのツアーもすごく楽しかったんです。だからこそ、いまの俺らなら全然インディーズでやれるなというのがあって。avexさんに「お願いします!」と言っていたらメジャー続いてたかもしれないけど。メジャーでなくてもいいかなって。
ジャンボリー:『ダンシングモンスター』のツアーのファイナルで、「インディーズ、着物、ひらがなに戻る」と発表したら悲鳴みたいな歓声が起きて……あの瞬間は忘れられないなあ。すごかったっす。
はるきち:実は『ダンシングモンスター』の時に着物案が出たんですよ。でも踏ん切りがつかなくて。だけどインディーズに戻ることを決めて、ひらがなに戻すのも着物に戻るのもこのタイミングしかないだろうなと思った。いまのアー写、めっちゃ気に入ってるんですよ。これで一生いきたいくらい(笑)。
――ははは。メジャーを経てインディーズに戻ってきて、環境はいかがでしょう?
はるきち:インディーズは単純に関わる人間が少ないぶんやりやすいですね! メジャー時代は1曲を世に出すためには第3関門まで突破しないといけなかったけど、いまは第1関門を突破すればもう優勝なので。
ジャンボリー:ライブを減らしたことも、いい方向にいってるんですよ。やっぱり全員仕事をしているので、それを優先すると必然的にライブは減って、1ヶ月くらいライブが空いちゃうこともあるんですけど。
はるきち:でもその1ヶ月でたまった仕事の鬱憤を、全部ステージに出すという(笑)。
ジャンボリー:そうそう。たまったストレスを一気に吐き出して、だいぶすっきりしてます(笑)。
――仲のいいメンバーと一緒に、好きな音楽でもって、社会への鬱憤を発散させていると。音楽ともいい付き合い方ができているようで。
はるきち:だからいまサイコーなんですよ。メジャー期いろいろ試して、いろいろ失敗していたのは、着物で“みそっかす”じゃなかったからなのかな?と思うくらいしっくりきてる。“着物でみそっかす”ということを決めてから、自然と音楽もその方角に向くようになってきたんです。ミュージックビデオも昔ほど悩まずにいいものが作れているなという感じはしていて……すごくいいですね。
マイケル:これからもこの5人で続けていきたいなと思いますね。一人ひとりが大事なピースですから。
ノブリル:もうここまで来るとほかの人とバンドするのもしんどいです(笑)。ここまで続いてきたのも、このメンバーだからというのと、周りの人が支えてくれていたからだなと思います。繊細なバランスのバンドだけど、持続可能な範囲で楽しくやりたいなあ。働きながら音楽を続けるスタンスは自分にとってもしっくりくるし、肩の力を抜いて楽しくインプットしながら、ほのぼのとやっていけたらなー……と思いますね。
るきち:実は1年くらい前に新しいバンドを立ち上げようかなと思って、1回だけスタジオに入ったんですけど……なんかしっくりこなかったんですよ。そのあとすぐにみそっかすでスタジオに入ったら、「あっ、これだ!」ってすんげえしっくりくるんですよ! しっくりきすぎちゃってるから、ほかのバンドをやるとかメンバーを入れ替えるとかは考えられないですね。だれか抜けたら解散なんだろうな……というレベルです。
ブルマン: 10代の時に聴いた音楽に突き動かされて、なにがなんだかわかんないけどベース持ってひとりで弾いていた時代があって、ひとりで弾いていたらバンドがやりたくなって。大学入ってバンド始めて、みんなと出会って、音を合わせているのが楽しい時期が学生時代ずっと続いていて――もともと自分にとって音楽は楽しいものだった。でもバンドをやっていくうちに応援してくれる人が増えて、「どうしたら喜んでもらえるんだろう?」と考えるようになって……わけわかんなくなっちゃって、いっぱいメンバーともケンカしたし。メジャーで活動できるチャンスをもらって、メジャーで得たものもたくさんあって、『ダンシングモンスター』でベーシストとしてどうしていくべきか掴めた。そのあとインディーに戻ってきて、いま「やっぱ音楽は楽しい!」と思えているんです。バンドが楽しいから、続けていきたいっすね。
ブルマン:なんとか続けてこれました。
はるきち:でもこれだけ歴史を振り返ってみて思ったけど、ツアーに出始めてまだ6年しか経ってないんだなと思って……。結成10周年だけど、まだまだペーペーな若手バンドというスタイルでいいですかね?(笑)
ノブリル:遅れてきた若手ポジションで(笑)。
マイケル:遅れすぎじゃない!? でもスローライフが長すぎたので、いい加減ちゃんとやらないとなとは思っていて。若手ですごい曲を作る人はたくさん出てきていて、俺勝てねえなと愚痴ったりするんです。でもそんなこと言ってるんだったらちゃんと音楽やって勝たねえとなと思ってますね。いまは音源発表の方法や媒体もいろいろあるので、そこに追いつけるように頑張りたいですね。
――みなさん未来も見えているようでなによりです。
ジャンボリー:俺はうまくてかっこいいバンド――山下達郎さんや春畑道哉さんみたいなJフュージョン系の音楽が好きなんですよ。だからなんとかしてそっち系のバンドにしていきたいですね!
マイケル:えっ!? 押し付けてくるの!?
ブルマン:三十路の身体に鞭打つなよ~!(笑)
はるきち:でも演奏うまくはなりたいよね。この5人で長く続けていきたいけど、いつまでも若手っぽくはいたいなと思っていて。ただただ萎れた感じで続けていても意味がないから、いつまでもギラギラしたバンドでいたいですね。若いバンドにはひとつも負けたくない! 全員倒す!くらいの気持ちでみそっかすやっていきます!
取材・文◎沖 さやこ
7thミニアルバム『東洋の神秘』
品番:NBPC-0052 価格:¥1,944(税込)
レーベル:No Big Deal Records/ドリルおじさんレコーズ
1. 切り札はスペードのエース
2. ユーフォーユーフォー
3. バンパイアと十字架
4. ディスコフレイム
5. ディスコエクスプロージョン
6. 踊る政治家
7. 都会のクリスマス
<『東洋の神秘』リリースツアー みそっかすワンマンショー>
5月13日(日)【東京】池袋Adm
5月18日(金)【愛知】名古屋・池下CLUB UPSET
◆みそっかす オフィシャルサイト
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