【インタビュー】BUCK-TICK、デビュー30周年プロジェクト第一弾としてリリース「BABEL」
デビュー30周年プロジェクト第一弾としてBUCK-TICKがリリースするシングル「BABEL」。約14ヶ月ぶりの新シングルは、30年にわたりブレることなく常に新風を吹き込んできた彼ららしい手応えのある曲だ。1987年9月21日にビデオ『バクチク現象 at THE LIVE INN』でデビューして以来、誰一人メンバーが変わることなく活動を続けてきた彼らは、2017年9月20日にレコード会社レーベルの枠を超えたオールタイム・ベスト『CATALOGUE 1987-2016』をリリース、また9月23・24日には東京・お台場野外特設会場J地区で『BUCK-TICK 2017“THE PARADE”~30th anniversary~』を開催した。こうした過去を俯瞰する作業と並行して生み出された新曲「BABEL」が持つ推進力は、並ならぬものがある。櫻井敦司と今井寿に新曲誕生の経緯や今後のこと、そしてお台場でのイベントの手応えを語ってもらった。
◆BUCK-TICK~画像&映像~
■神を作り上げてその神を越えようと必死になっている
■そういうものができればいいなというのがありました
──新曲「BABEL」はバクチクらしさ満載の重厚な曲ですが、どのように生まれてきたのでしょうか。
今井寿(以下、今井):アルバム用に曲を書き始めて、最初の方の3曲目ぐらいにできた曲ですね。家で作っていて、デモの段階で「これシングルにいいかな」と思って。その後アルバムのレコーディングが始って、他にもどんどんかっこいいのが出来てきたんで、他の曲になるのかなーと思っていたら、意外とこれが最初のシングルになりました。
──シングルにいいと思ったポイントはどういうところですか。
今井:曲の流れというかノリというか。重いんだけど、どんどん進む感じ? 今までにありそうでなかった感じでもあるし。コードが変わったりする感じ、メジャーキーからマイナーになったり、その展開が、転調感が結構面白いなと思って。
──確かに、シングルというとポップな曲が多いですけど、これはちょっと違いますね。ありそうでなかった感じです。
今井:それなんですよね。こういう感じの、引っかかる曲を出したいなというのがあったんで。耳障りのいいものだけじゃなくて、そういうものでもファンの子たち、リスナーは受け入れる何かを持っていると思う。
──そういう判断基準の一つとして、この30周年プロジェクトのベスト盤でのファン投票、ファンの人たちの率直な気持ちを参考にしたりしました? シングルや代表曲ではない意外な曲も入っていました。
今井:あの投票は一日一回、一人で何回でも投票できるので・マメな人がいたらその曲が上位に来るという(笑)。だからへえ~って。まあ参考にはなりましたけど。
──でもそういうこともあって、「バベル」のような曲が生まれたのかと思いましたけど。
今井:何というか、“攻める”じゃないですけど、こういうものでもポップと思える。メロディアスなものだけじゃなくて、ちょっと難解な感じがするものでも、面白がってくれると思う。
──アレンジも重厚な印象ですが、それは曲のテーマと重なっているんでしょうか。
今井:ベーシックな音はデモで作って、打ち込みのシンセ関係は、YOW-ROWくんが。
──今井さんが藤井麻輝さんとやっているSCHAFTのヴォーカルの方ですね。
今井:はい。YOW-ROWくんは音数がすごく多くて、展開が目まぐるしいというか、面白い部分を持っていて。
──BUCK-TICKのレコーディングには横山(和俊)さんが参加されてきましたけど?
今井:横ちゃんとYOW-ROWくんは違うところがあるので。YOW-ROWくんは躊躇なしに、「こういう音入れちゃうんだ」というのがあって。
──失礼な言い方かもしれませんが、世代の違いとか、横山さんだと阿吽の呼吸でできるところもあるかと。
今井:それもありますね。横ちゃんだと互いに顔色を見たりとか(笑)
──(笑)そういうことも曲への新風となったのでしょうか。
今井:というわけではないんですけど、曲はいろいろ生まれてきましたね。
──曲を作っていって、こんな歌詞といったイメージは?
今井:その辺は、もうこの曲だから、お任せですよ。
──櫻井さんは、この曲からどんなインスピレーションを受けて歌詞になっていったんでしょう?
櫻井敦司(以下、櫻井):この曲は仮タイトルがあったんですよ。
──そうなんですか?
櫻井:いつも簡潔に仮タイトルがあって。その仮タイトルをつけるのに、結構考えていて。
今井:俺は何でこんなに考えてるんだろうって(笑)。「バベル」という言葉はポンと出てきたんですけど、仮タイトルに歌詞が左右されてしまう恐れもあるので。かといって要点を表わすとこうなるし。割と1時間ぐらい仮タイトルを考えてる時があるんですよ。
──自分の曲のイメージを歌詞に押し付けたくないとかですか?
今井:したくないけども~みたいにゴチャゴチャ考えていて、何やってんだろうなって(笑)。これは曲を作っていて「バベル」という言葉が普通に湧いてきたんで。そのあとにネットで検索したら、ちょうど「バベル展」をやっていたから、ちょうどいいかなと思って。
──「バベル」という言葉からイメージするものがあったんですか。
今井:単純に、「バベルの塔」というザックリとしたもので、反逆の塔、みたいな。
──櫻井さんは、その仮タイトルから歌詞を作っていったんですね。
櫻井:さっきの話に戻りますと、仮タイトルも割と丁寧に選んでいるというのを小耳に挟んでいたので。それがそのままの流れで、歌詞とシンクロすればその通りになりますし、全くストーリーが変わってくると違うタイトルにもなります。それは柔軟に僕もやりますけど、ただ、ヒントとしては、ウエイトが違う時もあります。今井さんも言いましたけど、「バベル展」がありまして、この曲のことは知らないはずなのに、ファンの人たちからフライング気味に「行きました」とかグッズをどんどん送っていただいたりして(笑)。僕もバベルって子供の頃に知ったぐらいだったんで、改めて自分がもし言葉にするならどうなるかなって。タイトルに沿って考えていきました。
──櫻井さんの思う「バベル」はどんなものですか?
櫻井:端的に言うと人間のエゴイズムというか。
──それを軸に歌詞を作っていったんですか?
櫻井:そうですね。その主人公といいますか、自分たちで神を作り上げて、その神を越えようと必死になっている。そういうものが、曲として、歌として、できればいいなというのはありました。
──一見すると、この歌詞の言葉数は多くないんですが、詰め込まれているものは相当大きいと思いました。
櫻井:そうですね。最初は物理的にかなりの量の言葉があって、パソコンで5、6ページ。それをどんどん排除して。
──最初に5、6ページ分を書くことから相当大変と思いますが、それを推敲してそぎ落とす作業はさらに大変なのでは?
櫻井:大変だったと自慢するのは嫌なんですけど(笑)、今回は本当に疲れましたね。毎回、疲れる度合いは、倍々という気がします。
──その身を削る思いの推敲の先にあるテーマは、先ほど櫻井さんがおっしゃったバベルの2面性だったかと思います。人間の純粋さとエゴイズム。そうしたアンビバレントな感情はBUCK-TICKではよく描かれていますね。
櫻井:それは常に題材というかモチーフになりますね。自分の人間の出来が良かったら、違ったモチーフだったんだろうと思いますけど。
──櫻井さんならではBUCK-TICKならではの掘り下げがあると思いますが、そうした壮大なテーマの中に、畏怖の念という言葉を英語と重ねる遊び心もあったりして、風通しが良い感じもします。
櫻井:そうですね。「どこまで本気なんだろうこの人たち」って聴いた人が戸惑うような、一直線じゃないような感じは、遊び心というのかもしれません。次は、コンビニに買い物に行く歌が出てくるかもしれない(笑)。今回は、こういうことでございます。
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