【インタビュー】10-FEET、アルバム『Fin』完成「自分で漕がないと進まない」
■「KOUICHI、歌ってくれへん」と言ったら
■座ってスマホいじりながら即座に「OK!」と
──アルバム前半でこうしたタイトル曲やシングル曲だったりしっかりと聴かせる曲がある一方で、「十二支」や「HONE SKA feat. 東京スカパラダイスオーケストラ」だったりという、10-FEETのファニーな部分が出た曲が並びます。まず「十二支」はどんなふうにできた曲なんですか。
TAKUMA:メロディーが乗ってない状態のインストができて、歌はなんとなく♪ふんふんふんと歌っていた感じですね。こういう系統の曲になるやろうなというのは思っていたんですけど。英語でトライしてみたりとか、最初はもうちょっと洋楽っぽくなる予定ではあったと思うんです。で、ガッとやってみたら、かっこいいんやけど、60〜70点くらいの感じで。そこをいかにナッティに仕上げるかというか。ただ完成度高く作るというところを大事にしてやっても、要はあまり面白くないなというのと、カッコいいハードコアパンクやってるのに歌謡曲の力があるなみたいなエネルギーはあまり感じなかったんですよね。それで、「これ、KOUICHI歌ってみて」と。
──KOUICHさんのメインボーカルは初ですよね?
TAKUMA:はい。KOUICHIに歌ってもらうという経緯にいくなかで、歌詞はもっと遊んでいていいかなと。しかも何かを伝えようとしたら、きっとこの曲を作りはじめたコンセプトに実は沿っていないんじゃないかなと思って。こういう楽曲の演奏で行くんやったら、一つか二つのことをずっと叫んでるだけでもいいなと思いはじめたんです。
──それで干支を歌う歌詞に。
TAKUMA:ひたすら干支を言ってるだけの歌なんですけど。それも最初は僕が歌って作っていたんですけど、過去にもこの手の作品って何曲かあって、予想の範囲内で面白くないなと思ったので、横でスマホ見てたKOUICHIに声をかけて、「KOUICHI、歌ってくれへん」って言ったんですけど、その時こいつ、座ってスマホいじりながら即座に「OK!」って。
──ははは(笑)。
TAKUMA:むちゃくちゃ早いんですよ返事が(笑)。内容聞いてないくらいの。で、歌ってもらったんですけど、結局全然歌えなかったんですよね、キーも全部フラットしてるし、声裏返るし、ウォー!って吠えてるシャウトみたいなのも、めっちゃ怒ってるおかまちゃんみたいな、“もうっ!”みたいな感じで(笑)。でも、これやなと思って。作り込んでない感じがすごく良かったんです。
──見事にハマりましたね。
TAKUMA:ハマりました。でも、はじめは最初から終わりまで全部音程がフラットやったんですよ。それは面白いんやけど、不思議なもので、昔ヒトラーが演説する時って、常にバックに“コーーー”っていう人間が恐怖感を覚える周波数の音を、ずっと流しながら演説していたって言われているんですけど。なんか、恐怖じゃないですけど、どんどんとそういう……。
KOUICHI:怖いやん(笑)。
TAKUMA:気持ちが落ち込んでいくような感じになっていって(笑)。これはあまりにもやなということで、何回もトライしていたら、どんどんテンションが上がって、たまにバチっとピッチが当たるようになっていったんですよ。そのバランスがすごくよくて。でも基本的なベーシックになっているのは、最初のほうのテイクですね。そこをなるべく大事にして。
──KOUICHIさんは最初、歌うのは冗談だと思っていたんですかね。
KOUICHI:はい。とりあえず歌って、最終的にはTAKUMAの歌になるやろうなと思って歌っていたので。蓋開けたらこうなってるっていう。
──ライブでも歌うことになりますよね?
KOUICHI:頑張ります!
▲NAOKI (B&Vo)/<京都大作戦2017>2017.7.7-9@京都府立山城総合運動公園 太陽が丘特設野外ステージ |
TAKUMA:そうです。試作品としてやった曲ですね。
──まさか10-FEETのアルバムに収録されるとは思ってなかったので、驚きました。しかもスカパラとのコラボで、とてもいい曲に仕上がってます。もともと作った時から、10-FEETの曲として出そうと?
TAKUMA:最初の曲ネタができた時に、いつかこれは絶対音源にしたいと思ったんですよ。しかもそれがスカパラさんと出来たら、NHKの『みんなのうた』の曲みたいになるんちゃうかな、童謡みたいなと思って。童謡みたいなメジャースケールのポップな曲って昔はよくやっていたんですけど、最近はその比率が少なくなってきていたぶん、たまにこういう1曲めっちゃ濃いやつがあったら、良さがより伝わると思ったんですよね。
──そのイベントで披露した時も、お客さんはすぐに歌を覚えていましたもんね、キャッチーさ、親しみやすさがすごく高かった。
TAKUMA:あの時、お試しでやってみたくらいですけど、もともとの曲が持ってるメロディとテンポ感だけが、結果、めちゃめちゃ力がありましたという印象でした。そういう曲って曲調と歌詞がすごく独特やからというのも大きいと思うんですけど、そんなにないんですよね。1回聴いただけで忘れへんみたいな曲って。
──なかなかないですね。その時の対バン相手だった、ACIDMANの大木さんも即コピーして歌ってましたしね。
TAKUMA:その場であいつが乗っかってきたから、“この曲すごいかも”って。でもその時はこの曲がほんまに音源になっていくかどうかって、実際バンドのなかで確定してへんような時期やったんですよね。ただ、ネタができた時点ですぐにメンバーには言っていたんです。「こういうのができたから、スカパラさんに頼んで出来たらいいなと思ってんねん」くらいのことは言っていて。実際のところでもどうなのかなと思って、ちょこっとだけ<STAND ALONE>でやったら、“こんなすげえんか、この曲!?”みたいな。
──手応えがあったんですね。
TAKUMA:すごくありましたね。で、これはちゃんと作ったほうがいいなと思って。それですぐにスカパラ兄さんにも連絡をして、「きっとアルバムに着手出来たら音源化する曲だと思うので、その時に手伝ってくれますか」と。
──スカパラの皆さんのこの曲への反応や評価はどうでしたか?
TAKUMA:どうやったんやろうな。結構褒めてくれてましたね。
NAOKI:「いい曲だね」と言ってくれてましたよ。ただ、歌詞のことには何も触れてませんでした(笑)。「いい曲だね」と。
KOUICHI:どう思ってんやろうな?実際のところ。
TAKUMA:谷中さんとか、歌詞めっちゃ書く人やから。“これでいいの?”って思ってるかもしれない(笑)。
──歌詞もそのイベントで聴いた時から変わってないように思いますが?
TAKUMA:歌詞は、自宅のリビングで5分間で即興で作った時から、完成するまで何ひとつ変わってないです。
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