【インタビュー】10-FEET、アルバム『Fin』完成「自分で漕がないと進まない」
10-FEETが11月1日、約5年ぶり8作目となるフルアルバム『Fin』をリリースした。収録された全15曲は一点の曇りもない最高のロックアルバム。「ほんまにこれが最後なんや」という気持ちで臨んだという楽曲制作やレコーディングが自身の音楽的純度を高め、結果、バランスを図らずとも全曲がどこまでも突き抜けて果てしない。加えて、それらが互いのコントラストを高め合うという効力を発揮しているようだ。
◆「1 size FITS ALL」ミュージックビデオ 動画
サウンドも最高傑作の名に相応しい。昨年夏、約4年ぶりのリリースとなった「アンテナラスト」、続く「ヒトリセカイ×ヒトリズム」「太陽の月」といったシングル3作のメインチューンはどれも叙情性の高いメロディと歌詞、アレンジが秀逸だった。そして完成したアルバムは、ミクスチャーロックやメロディックパンク、ラウドロック、ジャズやサンバ、スカパラ参加によるスカ、ミディアムチューンなど多彩なアレンジはもとより、サウンドメイクにも新たな試みがそこかしこに見受けられる。彼ら本来が持つ楽しさもメッセージ性の高さも全てが詰め込まれたアルバム『Fin』について、3人にじっくり訊いた10000字ロングインタビューをお届けしたい。
◆ ◆ ◆
■“これが最後”と思ったらやっぱり
■楽しくもあり、伝えたいこともあり
──フルアルバムとしては5年ぶりで。待った甲斐があったというとても充実したアルバムであり、バンド結成20年という時間の重みも感じ、また新鮮なロックの楽しさを感じるアルバムです。最初は『Fin』というタイトルが発表となった時は、(フランス語では)Finには“終わり”の意味もあるので、びっくりしたんですけど。
TAKUMA:はい、やめないです(笑)。
──どういう意味合いで、『Fin』というタイトルにしたんですか。
TAKUMA:もともとは、魚のヒレですね。字面としてはもちろん自分も、フィナーレ、エンドっぽいなというのはあったんですけど。そこに関しては、“これが最後になってもいいぐらいの作品を作ろう”という気持ちというのが、今回はとても強かったので。最後にするつもりではないんですけど、そういう気持ちになって本気で作るというメンタルの部分。そういう気持ちで取り組んでもいたので、素直に“最後”という意味合いも含めつつという感じですね。でも主には、ヒレ、フィンの意味です。フィンを足につけて泳いだ時に、ものすごいスピードで泳げたりするけど、あれも結局自分の力を使って一生懸命漕がないとあまり意味がないもので。いくらデカくていいフィンをつけても、自分で漕がないと進まない。音楽っていうのは、そういう力をくれるなと思ったんです。勇気をくれるけれど、それを受けて自分から動かないと、先に結びついていかないというか。人が掛けてくれる声や言葉とはまた違うような力を音楽はくれるので。音楽そのものに対して感じていることを、そのままタイトルにした感じですね。
──シングル「太陽の月」インタビュー時にも「もし人生最後の作品になるなら」と考えて制作したことを話していただきましたが、これが最後になっても、という気持ちというのは、いつぐらいからあったのですか。
TAKUMA:結構前からですね。なんとなくそういう心構えをシングル制作時くらいから持ちはじめていて。本格的にアルバムを作りましょうという期間をとって作ったのは、<京都大作戦 2017>が終わってからかな。そこからまず作曲のネタ作りを詰めてやって、8月ぐらいにメンバーとスタジオに入ってという、2段階があったんです。そこではもう、役作りするような気持ちで、“ほんまにこれが最後なんや”、“これで音楽やバンドもできひんのや”という気持ちでやるようにして。それがポーズになったら意味がないなと思ったので、ほんまに自分を洗脳するくらいの気持ちでやってましたね。そうしたらきっと、シリアスすぎたり暗い作品にならん気がしたんですよ。
──逆にそうですよね。
TAKUMA:これが最後と思ったらやっぱり、楽しくもあり、伝えたいこともありというか。自分たちが音楽に感じてきたこと、ライブをやっている上で“こういうのがいいよね”って思っているもの、そういう音源ができるとどこかで確信していたので。そのメンタル作りみたいなものにも、とくに迷いなく取り組んでました。
▲TAKUMA (Vo&G)/<京都大作戦2017>2017.7.7-9@京都府立山城総合運動公園 太陽が丘特設野外ステージ |
TAKUMA:そうですね。わりと音楽を楽しんでガッとやろうよっていうような、楽曲になったんじゃないですかね。そういう作り方をしていましたね。
──ライブで盛り上がるのが見える曲だなと思います。
TAKUMA:最終的にそうなっていきましたね。最初はアルバムのなかでも、ひょっとしたらラウドでハードな方面の表情を担当してくれるのかなくらいに思ってましたけど。結構、生まれてきたのは後のほうやったかな。歌が何ものってない時点で、この曲はラップが多なるなと思っていて。全体的にもっとラップを少なく、展開もシンプルにすることもできたと思うんですけど、そこは音源重視というか。この「1 size FITS ALL」という曲がしっくりくる形だけを考えてやったかな。こうしたらライブでこうなるから、こうしておいたほうがいいかなっていうのは、あまり考えないでやっていたと思います。
──“ザ・ミクスチャーロック”という、その旨味を凝縮した曲だなと思います。これぞ10-FEETな曲でもありますね。またアルバムのタイトル曲となる「Fin」は、どういう段階でできたんですか。
TAKUMA:これはシングル「アンテナラスト」を作っている時くらいから着手していた曲で。ひょっとしたら「アンテナラスト」の代わりにシングルになっていたかもしれない曲でしたね。大方完成して、あとはひと味加えるだけやなという状態で、レコーディングの最後の方まで置いてあって。ほぼこの形でした。
──ピアノなども入った状態で?
TAKUMA:そうですね。作った時は、個人的にこの曲の顔つきみたいなものがあまりはっきりしていなかったんです。でもメンバーの評価はすごく高くて、これシングルやってもいいやん?くらいの感じで。最初僕は、カラーはあるんやけどその色の濃さがないなと思っていて。でもその他の曲ができていくうちに、この曲自体は何も形が変わってないんやけど、他の曲とのコントラストですごく表情が見えたというか。他の曲ができた時点で、急に個性があるように聴こえたんですね。なおかつ、シングル3枚のどの曲の要素もあるというか、血を引いているなと思ったから。だからアルバムのタイトルを曲タイトルにしてもいいんじゃないかなという。
NAOKI:「Fin」にはジャンルがどうこうというより、楽曲としての力を感じたというか。パッと聴いた印象の強さ。そういうところで、たくさんの人の耳に残りやすいんじゃないかというのがありましたね。
──ドラムも2ビートが入っていたりと速い曲ではありますが、しっかりと聴かせる曲でもありますね。
KOUICHI:NAOKIも言いましたけど、最初に聴いた時にいいなと思ったから、ほんまにこの曲をシングルのリード曲にしてもおかしくないくらいのパワーを持ってる曲やと思いますね。
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