【インタビュー】10-FEET、アルバム『Fin』完成「自分で漕がないと進まない」
■バランスをとることを念頭に作るのも
■ちょっとおかしいかなと思って
──それだけ歌とリズムとにピタッときていたんですね。20年やって、こういう曲が出てくるっていいなと思いました。いい意味で肩の力が抜けているというか、全力で遊びができるというか。ちゃんと自由度高く作っているなというのが、このへんの曲でよく分かります。一方でシリアスな曲もあるから、それぞれの曲が引き立つ内容ですね。「夢の泥舟」などもすごくいい歌だなと思うんです。
TAKUMA:ありがとうございます。
──この「夢の泥舟」や「ヒトリセカイ」、最後の曲「何度も咲きました」など、“何度も”という言葉が出てきます。TAKUMAさんがよくライブで、何があっても何度でも立ち上がるんだみたいなMCをすると思うんですけど、そうやってライブで響いた言葉が今回のアルバムでピタッと全部入った感じがして。より刺さる思いがありました。何度でも立ち上がる、再生できるんだっていうような想いというのは、ずっと強くあった感じですか。
TAKUMA:そうですね、やるしかないですもんね、って思うことばかりですね。
──そういうことでは、無意識にこうした曲が増えたということでもあるんでしょうか?
TAKUMA:逆に今回は、あまり意識してバランスとろうとしてないんです。それは、音楽も歌詞も、テーマとかも、あまり気にしないようにして作ったので。だから、同じようなワードが結構出てくるし。同じようなことを歌っているのも多い。最初の方に、バラエティに富んだ作品にならなくてもいいっていうのを自分のなかで決めていたので。
──バラエティに富んだ作品にならなくてもいい?
TAKUMA:バラエティに富んだ作品は、自分の作品でも他にいっぱいあるから。今回、“全部同じような曲ですね、でも全部いいんですよね”っていう作品みたいになったほうが面白いなと最初に思っていたんです。似たような曲って、あまりいい評価をもらえないことが多いかもしれないですけど、たまに似たような曲ばかり入っているのに、めっちゃ売れてる海外アーティストのアルバムとかあるので。バランスをとることを念頭に置いて作るのもちょっとおかしいかなと思って。いろんなジャンルがバランスよく入っているのを作ろうっていう打ち合わせみたいのはなし。最初はメロコアっぽい曲ばかりがダーっとあってそればっかりやってましたからね。なんか知らんけど、今回それでいいと思ったんです。
▲KOUICHI (Dr&Cho)/<京都大作戦2017>2017.7.7-9@京都府立山城総合運動公園 太陽が丘特設野外ステージ |
TAKUMA:気分、ですね。メロコアっぽいような曲って、コードとかテンポ感がわりと狭い部類やと思っていて。やれることややり方が、限定されてくると思うんですよ。それゆえに、そういう曲で名曲を作るのってめっちゃむずいし、メロコアばっかりやって音源作ってたら、ほんまに似た曲ばかり完成していって。最終的にはその純度まで薄まっていって、よくわからんくなっていくな、というのを自分で作っていても感じて。だから、そういう曲がどんどん少なくなっていったところはあるんですけど。
──なるほど。
TAKUMA:でも常に、そういう要素はちょっとは絶対あって。それくらいやったら、純度を保ったまま表現できるんですよね。1作品の中で少しやったら。あとは、ああいうのって自分のなかでそういうブームがきてる時は、さっきおっしゃったような“気分”の時でないと、出てこおへんというか。
──はい。
TAKUMA:例えば、コード進行とか、ドラムパターンとかがまったく一緒やったら、あとは演奏する人と歌う人のテンションぐらいでしか違いが出ないと思うので。気分ですよね。暗かったら暗い、悲しいとマイナー調になったり、楽しかったらハッピーでメジャーコードになるし。そういう気分とか気まぐれっていうのは、あまりいい聞こえ方をする言葉ではないけど、“そういう気分やってん”という時にやることっていうのは、わりときれいな本音でやっていることが多い。そういう時の音楽は、内容が優れてなくても、いい作品になったりするんちゃうかなとなんとなく思っていたから。全部似たような曲ばかりじゃないですか?とか、今回の音源98%捨て曲ですね、でも後の2%が忘れられないとか、もうそういうことをあまり恐れない気持ちで作るのが、まず自然なんちゃうかなと思って。10-FEETの初期ってそういうものだったと思うし。
──でも、活動を重ねるとだんだんとそういうことをするのって、難しくなりますよね。
TAKUMA:うん、なっていきますね。でも幸い、メロコアばかりをやってきたわけでもなく、いろんなジャンルをやってきてたから。そういうジャンルをひとつひとつ探求していくのに時間がかかったし。今ふと、自分らが基本にするくらい好きやったそういうメロコアみたいなジャンルに手を出すと、すごく楽しかったんですよね。ここまでたくさん曲を作って活動してきて、ほぼ、似たような3コードで構成されていく楽曲を新たに作って、あ、カッコええやんって思えるものって、わりと信用できるなと思ったんです。というか楽しくて。それをやってる瞬間というのは。
──アルバムのなかでも、「fast edge emotion」や「way out way out」などメロディックな曲は、いいフックになっていますしね。
TAKUMA:そのへんの速い曲は、たまに、うちの親なんかもそうですけど、おっちゃんおばちゃんが、2ビートが多いアルバムとか聴いたら、「全部一緒に聴こえるわ」とかよう言うんですね。
──そうですね(笑)。
TAKUMA:うちの1stアルバムとかもよう言われましたけど。要は、シンプルがゆえにあまり個性が出ないとか、印象が深くならない、というジャンルの音楽で、そういうラインをクリアしてる曲ってなかなかできへんなと思っていたんですけど、それがわりと超えた感じになったので、「way out way out」も「fast edge emotion」も。
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