【コラム】ceroのグランドキリンCMコラボに見る、彼ららしさと現在地
先日、キリンのクラフトビール・ブランド「グランドキリン」のリニューアルプロモーションとして、ceroとコラボした新しいタイプのミュージックビデオ「GRAND KIRIN <FIND YOUR STYLE>」がWEBで公開されたことは既報のとおりだ。ceroは新曲「陸(おか)のうえの晩餐」を書き下ろし、2種類のアレンジを提供、さらに映像の後半ではメンバー自らが出演したシークレット・ライブシーンを楽しむことができるという、多面的なコラボレーションをおこなっている。このライブシーンの撮影現場を取材する機会を得たBARKSは、ceroに加えてキリン・デジタルマーケティング部の加藤美侑さんから寄せられたコメントを交えながら、このCMにあるいくつかのトピックを紐解いていきたい。
◆「GRAND KIRIN <FIND YOUR STYLE>」映像
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■新感覚のインタラクティブ・“ビア”・ミュージックビデオ
そもそもこのプロモーション動画の目的は、「グランドキリン」シリーズのリニューアル商品「グランドキリン JPL(ジャパン・ペールラガー)」、「グランドキリン IPA(インディア・ペールエール)」を紹介することにある。よって今回の映像も、JPL編とIPA編の2種類が用意されたわけだが、グランドキリンは「醸造家の遊び心とこだわりが溢れるブランド」であることを自負し、映像でもクラフトビールの自由さと多様性を表現している。シンプルに“CM”という観点から捉えると、商品を安直にPRするという以上に、新たなビアスタイルの提案やビアカルチャーの認知に努めている点が特徴的であり有意義だろう。
約4分間のなかに、クラフトビールをいろいろな角度から疑似体験できる仕掛けが全部で13種類も隠されており、スワイプ機能やジャイロ機能を駆使してスマホ片手に楽しめる仕掛けひとつひとつを発見(FIND)していくという、体験型のこの動画。多種多様なグラスのラインナップや、JPLとIPAそれぞれに合う料理など、体験後にはクラフトビールの豆知識がたっぷりと身につくのだ。── と言ってもこれは、別に企画の太鼓持ちをしようとしているわけではなく、それだけ建設的なPR映像だということを伝えられたらと思う。
ceroは、ちょうど約1年前にあたる2016年3月7日に放送された『SMAP×SMAP』に初出演し、自身の楽曲「Summer Soul」をSMAPとセッションしている。ceroにとって地上波での初演奏でもあり多くの反響を呼んだが、CM出演となるとまたベクトルの違った露出の仕方になる。キリンという大企業のCMに出演すると聞いた瞬間は多少驚いたが、それがクラフトビールをこういった形でPRする企画だと知り、腑に落ちたのも正直なところ。“個性がありながらも飲みやすく、日常で楽しめる”クラフトビールというグランドキリンの商品イメージは、ceroのアーティストとしてのキャラクターそのもののようではないか。
■ceroがCM出演!
キリンの加藤さんは、コラボの相手にceroを選んだ理由について、「どこか懐かしいけれど、新しく、ceroさんの楽曲の世界観がぴったりであったためです。あとは単純に、仕事終わりや休日にceroさんの曲を聴きながらグランドキリンを気持ちよく飲んでいるシーンが明確にイメージできたので、今回ぜひに!とお願いさせていただきました」と述べている。同氏は、さかなクンと東京スカパラダイスオーケストラとのコラボレーションや、でんぱ組.incメンバー(相沢梨紗、古川未鈴、夢眠ねむ)と出川哲朗による期間限定ユニット“おでんパ組”、さらに直近では高橋一生と浜野謙太の共演などで話題の「氷結」のCMを担当しているヒットメーカーだ。意外なコラボや旬の人の起用が、エンターテイメントの境地にすらあるシリーズであるが、CMを企画する際に大切にしていることは?という問いに対しては、「話題の起点の多角化を図ること。音楽(アーティスト)ファン、トレンド敏感層、おもしろネタファン……など話題の起点を複数持ち、それぞれの層が興味を持ち情報拡散したくなる話題を提供することを大切にしています」と答えた。
確かに、これまで企業タイアップの経験などもなく、ましてやどんな広告塔にもならないまま、音楽そのもので認知度を上げてきたceroを起用したことは、ceroファン、ひいては音楽好きに広く深くリーチする絶好の機会になったのではないだろうか。手がけているCMにはミュージシャンの登場が多く見受けられるが、商品のプロモーションにおける“音楽”の役割についても意見を尋ねたところ、「もともとビールやチューハイといった商品自体に興味がなくても、興味を持っていただくきかっけになると思っています。ceroさんは好きだけど、「グランドキリン」を知らない人、これまで興味がなかった人にも手に取っていただくきっかけになると思っています」と述べている。
完成した映像は、ceroの楽曲とグランドキリンのシズルが溶けあい、視聴するうちに自然と美味しそうなビールの印象が心に残る。特に後半は、ライブやフェス会場ではビールが欠かせないビール好きにとって、喉がゴクリと鳴ってしまうかもしれない。このコラボが、単に知名度や意外性をてらうマーケティングの産物ではなく、「心地よい音楽」と「クラフトビール」が元々持つ相性の良さを物語っていると言えるだろう。
一方、ceroにとっても今回のオファーは好機となったようだ。2016年12月にリリースされたceroの最新シングル「街の報せ」は、NYで録音した素材を使用したり、初めて仕事をするエンジニアと制作するなどceroとして“新しい試み”を果たした作品であった。よって今回の取り組みも、そうした試みの一環として実施されたのだろうかという考えも浮かんだ。そんな疑問に対して、今回の依頼を受けた感想を交えながらこう高城晶平はコメントしている。
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「とにかく現編成のceroが面白くて、多くの人に観てもらいたいので、今回の依頼も知ってもらう良いチャンスだと思ってやらせていただきました。今のceroならば、どんなメディアであれ面白いことが提示できるのではないかな…という直感があったので、トライできてよかったです」
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──この“直観”という言葉は、筆者には“自信”という言葉にも置き換えられるような気にさせ、それがceroの現在地なのではないかと思う。
◆コラム(2)「ceroならではのCM曲」
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