【ライブレポート】OLDCODEX、過去を更新する3回目の武道館。「その挙げた手にいいものしか掴むんじゃねーぞ!」
OLDCODEXにとって通算3度目の日本武道館。シングルコレクション『Fixed Engine』を携えて昨年2016年の9月からスタートしたツアー<OLDCODEX Tour 2016-2017 “FIXED ENGINE”>が1月14、15日でファイナルを迎えた。
◆OLDCODEX ライブ写真
歯車をモチーフにしたセットは今回のツアーを目撃してきたオーディエンスを驚かせ、武道館のために新たに用意された巨大なセットはサイケデリック且つポップ。後半のMCでYORKE.が2回目の武道館<OLDCODEX“Veni Vidi”in BUDOKAN 2016>で使ったロゴと同じ色を使ってペイントしたと明かしていたが、いつもと同じように幕はなく、開演前からオープンにされているセットのある会場に入った瞬間、OLDCODEXの“遊び場”に足を踏み入れた気持ちになる。
初日の14日。ワクワクしている空気が充満している場内が暗転するとOLDCODEX FIXED ENGINEという文字がレーザーで描かれて宙に踊り、大歓声。スモークがたかれたステージにOLDCODEXのリミックスメドレーが流れ、ステージの左右に設置された4つのモニター画面が起動し、歯車が照明に照らされ鮮やかに浮かびあがった。
ライヴはOLDCODEXのメンバーがTa_2とYORKE.の2人になって、初のナンバーであり、INORAN(LUNA SEA)が作曲、プロデュースを手掛けた「HEAVEN」で幕を開けた。のっけから2人ともスロープを駆け抜け、柵に足をかけて煽り、エンジン全開だ。続けて力強いHiコールの中、投下されたのは痛快で疾走感たっぷりの「flag on the hill」。ハンドクラップで盛り上がり、YORKE.が黒地に白のOLDCODEXという文字で埋め尽くされたキャンバスを赤くペイントしていく。
そのスピードをさらに加速させるようなキレのあるパワフルなビートのナンバー「Lead Me Not」も起爆剤となり、「Feed A」では場内がヘドバンの海。客席をまっすぐ見据えながら歌い、シャウトするTa_2はつねにファイティングポーズのボクサーのような佇まいだ。時にセンターで煽ってラップし、歌うYORKE.は神業のような絶妙のタイミングでキャンバスにマジックを起こす。
「帰ってきたぞ! 東京!」とTa_2が叫び、国内、そしてアジア圏を廻り、さまざまな経験をしたことに感謝の言葉を述べた。「今日はちょうど俺たちもライヴ始めなんだよ! 新年一発目のOCDだぞ! スッカラカンになっていい顔して今日は帰ろうぜ!」
グルーヴ感たっぷりの「Cold hands」が鳴らされ、「The Misfit Go」へと。OLDCODEXのヒストリーを彩ってきたナンバーは原曲の魅力、メロディを損なうことなく、よりヘヴィによりドラマティックにパワーアップしているゆえに最新シングル「Scribble, and Beyond」に収録されている翳りとエッジのあるバラード「Calling」が挟みこまれても全く違和感がない。「Harsh Wind」の風と光を駆使した演出も場内を沸かせ、「Dried Up Youthful Fame」ではシンガロング。最後のフレーズをTa_2がマエストロのごとく、ためてじらせたため、みんなも声を伸ばしすぎて息が限界。こんな悪戯心のアドリブで楽しませるのもいかにもOLDCODEXらしい。
「この曲であんなに長い最後の歌を聞いたのは初めてだよ。さすが」とTa_2がオーディエンスを褒め称え、会場を見渡して、「初めて見にきたヤツ、どれぐらい居るの?」と問いかけた。挙がる手の数を見て初参戦の人たちに向けてファンも拍手を送る。
「よく来たな。これが俺たちOLDCODEXだよ。よろしくな。初めて来たヤツに拍手しちゃうぐらいコイツら良いヤツなんだよ。そんなヤツらに囲まれて毎回、嬉しいと思ってるんだ。でも、それを後押ししてくれているのはバンドのメンバーだったり、いちばん近くにいて背中押してくれてるのは意外と相棒のコイツ(YORKE.)だったりするんだ」──Ta_2
そんなさりげないのに気持ちこもりまくりの言葉が見ている人たちの胸を熱くさせるのもOLDCODEXのライヴ。YORKE.がいるからこそ、できることがあると告げた中盤戦は視覚と聴覚を総動員しても間に合わないほどのめくるめく展開。「Milestone」ではYORKE.が下手と上手のキャンバスに白い布をかけ、墨で書いたアルファベットが謎かけで、その布が吊り上げられ、上から落ちてきた文字と合わさると“OLDCODEX”になるというサプライズに場内が沸いた。そして重なる声が美しい「bund」がゴスペルのように響きわたり、進化を遂げた浮遊感たっぷりのエレクトロな「〔Blue〕」も素晴らしく、感動の拍手が歓声に変わった「Aching Horns」へと。旧曲と近年の曲をシャッフルしているようなセットリストが1本の線で繋がっていく心地よさ。このセクションではさらに深みとアート色を増した彼らの世界に揺さぶられた。
MCではラウドで獰猛なOLDCODEXと水彩画のようにセンシティブなOLDCODEXの世界をみごとに表現するバンドのサポートメンバー、Ryo(Dr)、泰造(B.)、Shinji(G.)が紹介され、YORKE.は新年の挨拶。本ツアー中に山口の会場でステージから落ち、骨折したことやセットの話に珍しく触れ、“絶対終わらない”と思っていたペイントが多くのスタッフのサポートを得て完成したこと、そして2人になったOLDCODEXに最初に手を差し伸べてくれたINORANに感謝を捧げて「HEAVEN」からライヴを始めたかったことについて語った。
「俺たちともっと遊びますか!?」とTa_2が煽った後半戦は激ラウドな「Deal with」からスタートし、攻撃の手をゆるめない「The Experience」になだれこむ展開。最新型のOLDCODEXがたて続けに放たれ、デジロックを取り入れ、高揚感とヘヴィネスが同居したダンスチューンとなった「Scribble, and Beyond」では跳ねて騒ぐオーディエンスに武道館が揺れるほど。Ta_2が「手を挙げろ! 東京! 今年もオマエら、いろいろあると思うけど、その挙げた手にいいものしか掴むんじゃねーぞ!」と叫んだ。そして「Anthem」が放たれた時、OLDCODEXの歴史に想いを馳せた。背負ったものは決して軽くはなかったろうが、プレッシャーをはねのけ、ブレず、日和らず、3回目の武道館ワンマンに凛として立つ2人の姿はひたすら、まぶしかった。
「俺は昔スーパーオタクで、いろんなものが好きだったせいで、頭でっかちだったわけ。運動もしなかったし、とにかく、あまり誰とも関わってこなかった。でも、後々、後悔したんだよ。あの時、遊んでおきゃよかった、あの時もうちょっと遊んでおけばよかったなって。でも、俺みたいなヤツらが扉開けてここまで遊びに来てる時だってあると思うんだ。だから、1回ぐらい調子に乗ったっていいじゃないか。1回ぐらい大声出したっていいじゃないか。テメーの中、空っぽにして何が悪いんだよ。だから、明日に一歩踏み出せるんだ! だから、俺たちはこうやって一歩ずつ歩いていくんだ」──Ta_2
大歓声と拍手が起こり、「WALK」が鳴らされ、ライヴのキラーチューンが次々に披露された終盤戦ではシンガロングで半端ない一体感。Ta_2、YORKE.もバンドのメンバーと絡み、武道館はデカいライブハウスと化した。「カタルリズム」ではセンターで向かい合う2人のスクリームも迫力満点。いつのまにか左右のキャンバスには“FIXED”“ENGINE”という文字が描かれ本編ラストは「Rage on」。
どんどん大きくなっていく“OCD”コールの中、アンコールの「kick out」(希望者がステージに上がり彼らと共演する定番曲)では事前に募集をかけていた中から選ばれた2人がステージに呼びこまれ、緊張で震えている2人の女子にTa_2が武道館に立った感想を尋ねると「恐れ多いです」、「足がすくみます」という答えが返ってきて、場内から「かわいい!」という声が──。Ta_2が「2人はここに立ってるけど、オマエらにもずーっとスポットライト当たってるんだよ」と言うとYORKE.が照明のスタッフに客電をつけるように呼びかけ、至福の光景が目の前に広がった。
「すげえ贅沢な時間だね。でも、3年連続でこんなふうに立てると思ってなかったな。人間って欲深いから、もっともっといろんなところに行ってみてーな、立ってみてーなって思っちゃうんです。もっといろんなところでいろんなことができるように頑張りますのでよろしくお願いします。次の曲はどうしてもYORKE.がやりたいって言ってた曲」とTa_2が振るとYORKE.は一瞬ポカーンとした表情。相棒に「オマエ、年々、ボンヤリしてない?」と突っ込まれつつ、気をとり直し、会場に父親が見にきていることを報告して「みんなにもそういう人がいると思う。愛してる人とか、家族とか。うまくいかねーなっていうヤツもいると思うけど、時が必ず解決すると思うし、OLDCODEXってぐっちゃぐちゃに盛り上がるけど、ちょっと前向きになってくれたらいいなという想いで俺もTa_2もやってきたから、これからもそんな想いを届けたいと思ってます」とダブルヴォーカルで聴かせる「reel」に突入した。
YORKE.の怪我で延期になっていた振替公演を福岡と山口で開催すること、しばらくの間、アルバム制作のために地下に潜ることが明かされ、締めの曲は2人で決意を固めた曲だという「eyes in chase」。“FIXED”“ENGINE”と描かれたキャンバスはステージのセンターで1つに合わさり、最後にTa_2がその中央へマスキングシートを掲げる。そこへYORKE.がペイントを施し、2人の手でシートを剥がして完成した“OLDCODEX”の文字に会場からは感極まった歓声が湧き起こった。
鳴り止まない拍手の中、深々と頭を下げた2人。YORKE.は嬉しそうにセットや客席の写真を撮り、Ta_2は生声で「ありがとう! また会おうぜ!」と叫んだ。3回目の武道館ワンマンでまたもや過去を更新するステージを見せてくれたOLDCODEX。この異色かつ最強のコンビの可能性は天井知らずなのかもしれない。
取材・文◎Hiroko Yamamoto
Photo / Norikazu Tatsukawa
Photo / MASA
◆OLDCODEX オフィシャルサイト
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