【ライブ+機材レポート】Rest of Childhood、ツアー<TORQUE>完遂「届くまで諦めないから」
元RIZEのu:zoをベーシストに迎え、HALに名義を変えたOLDCODEXのYORKE.と元Hysteric BlueのTakuyaが、2021年11月1日に本格的活動をスタートさせた3ピースバンドがRest of Childhoodだ。<Tour 2021 “TORQUE”>と銘打ったツアーは、この三人でまわる初の横名阪公演となるもの。その中盤となった12月24日のクリスマスイブの神奈川・新横浜New Side Beach!!!、笑顔が溢れたこの日の模様を開演前の様子を含めてお伝えしよう。
◆Rest of Childhood 画像
現地でのリハーサルは16時過ぎに終了、そのステージ上で3人に話を聞くことができた。まず、リハーサルを観ていて気になったのはTakuyaのドラムセットがステージ中央後方ではなく、上手前方にセッティングされていたこと。その理由について聞いてみると、HALをステージの中央に、その両翼をu:zoとTakuyaが固めるスタイルにしたかったという。トリオバンドの場合、通常はステージの上手と下手にギターとベースが立ち、中央後方にドラムが位置することがほとんどだが、Rest of Childhoodは3人が横一列に並び、ボーカルを中心とした全員がフロントマンのバンドであることを視覚的に提示するという意味も含まれているようだ。また、ドラマーとしては、客席とドラムセットの距離を近づけることができるため、お客さん目線で叩くことができる。さらにはリズム隊のu:zoとアイコンタクトがとりやすく、歌っているHALの口元が見えるほか、アンプ裏で動くスタッフの動線も確保することができる。Takuya曰く「めっちゃやりやすい」という説明に思わず納得だ。
もうひとつ気になったのはステージ上にセットされていたギターにある。詳細は機材紹介ページでもお届けするが、Rest of Childhood始動時にHALが購入したというレスポール・ゴールドトップではなく、ステージ上にはジャズマスターがメインとしてセットされていたのだ。話を聞いてみると「シングルコイルのジャズマスターはジャジャ馬のようなところがあるけれど、いい音が鳴る。それに色もいいでしょ」と新たなオモチャを手に入れて嬉しそう。持ち主はu:zoで、曰く「このカラーはレギュラーモデルにはないので、楽器店が発注したオーダーカラーだろう」とのこと。そしてもう一方のゴールドトップは楽屋で新たなシールが貼られようとしているところだった。シールだらけのボディにはライブのたびに新たなシールが貼られるようで、お気に入りは6弦側のピッキング位置に貼られている不思議の国のアリス。「そばにいてくれるみたいでいいんだよね」と言っていたのがHALらしい。
u:zoのアンプの前にセットされていたのは2本のジャズベースとアップライトベース。RIZE時代はワーウィックやスティングレイなどのアクティヴピックアップベースを使用し、アギュラのハイゲインアンプでパワフルなサウンドメイクをしていた印象も強いが、近年はジャズベースがいちばんのお気に入り。柔らかい音も硬い音もピッキング次第で出せる柔軟性が、現在のu:zoのスタイルにマッチしているとのこと。サウンドメイクへのこだわりは足元のエフェクター類からも一目瞭然で、「エフェクターのノリがいい」こともジャズベースを選んでいる理由のひとつでもある。なお、2本セットされていたジャズベースだが、u:zo自身はこれ以外にもジャズベースやプレシジョンベースを所有しているとのこと。そして、今回のライブではアップライトベースも披露。また、アンプはメサブギーのサブウェイD-800だが、サウンドメイクの要はプロヴィデンスのプリアンプDBS-1にあるとのことだ。
本番1時間半前のステージ上で楽しそうに機材について語ってくれた3人だが、開演30分前の楽屋も妙な緊迫感は全くなく、和気藹々としたムード。前回のBARKSインタビューでHALは「家族のようなバンドを組みたかった」と話していたが、気心が知れたファミリー感が、その空気から伝わってきた。そして、開演時間の18時を少しまわった頃、Rest of Childhoodにとって4回目のクリスマスライブとなる<Tour 2021 “TORQUE”>横浜公演が幕を開けた。
電飾がキラキラ光るステージに登場したのはメンバー……ではなく小さなかわいい2人の女のコ。たどたどしい口調で「HALくん、寝ちゃったから起こしてくるね。みんなで鈴鳴らしてみて。メリークリスマス!」という声に客席もほっこり。それぞれの椅子に用意されていた鈴を観客がいっせいに鳴らし、Rest of Childhoodを呼び込む。
オープニングは1st EPのタイトルチューン「Eventide」だ。息の合ったアンサンブルが心地良い。HALがジャズマスターをかき鳴らしながらシャウト気味に歌う「蛇口」は音が勢いよく溢れ出してくるよう。Takuyaとu:zoのリズムセクションは押し引きがあってタフ。サウンドの厚みと奥行きは本格始動から間もないにも関わらず相性抜群だ。ここでレスポールに持ち替えたHALが目覚めの挨拶を。
「おはようございます。夢の中でみなさんの鈴の音が聞こえてきました。パッと目が覚めたら“あ、始まるのか”って。僕たちRest of Childhoodは、この流行り病の中、止まらずに走ってきたけど、それが良かったなと。この2年ぐらいでいろいろなことが変わって。フロアに椅子があったりね。今日は新曲もやりますけど、それぞれのパーソナルなスペースがあるおかげで、伝えたいメッセージが届きやすいはず。そういう時間が今夜も作れると思う。みんなせっかく来たんだから、2021年のクリスマスイブ、忘れられない夜にして帰ろうぜ!」──HAL
今年夏に配信されたデジタルシングル「Lamp」は生で聴くとさらに格別。口ずさみたくなるようなキャッチーなメロディ、“小さなランプを 君にあげるから ひとり歩く夜明けの道を 優しく照らす為”と歌う歌詞が疾走感のあるサウンドと溶け合い、心を照らす。間奏ではu:zoとHALが背中合わせでプレイ。HALはエンディングで「わかるだろ? オマエはひとりじゃない!」と叫んだ。「Blank」から「Be the Man」と立て続けに曲が放たれ、痛快なパンクチューンに演奏するメンバーからも笑顔がこぼれる。
MCではHALが何かを思い出したように「あっ!」と声を上げ、客席がザワザワ。u:zoが「わかんないわかんない。初めて聴いた人もいるかもしれないから」とフォロー。するとHALは「言わなきゃよかったー」と後悔しているようだ。Takuyaが何が起こったかわからない観客のためにこう説明した。「「Lamp」という曲では、マイクスタンドに掛けたランプに明かりを灯すという演出があるんだけど、それを忘れてしまった。ということを自らバラしちゃったね。……これ、ギャグを説明するみたいで、あまりいいMCではないんだけど。説明おじさんです」とHALの「あっ!」の理由を種明かし。u:zoは“説明おじさん”がツボにハマって大ウケ。そしてHALのマーシャルアンプの上に置かれていたランプを改めてマイクスタンドに掛けて点灯させるHALだった。
「こんな3人でお届けしていますけど、先日、BARKSっていう媒体で“鉄壁トリオ”と書かれちゃって」とHALが話し始めると、笑いをこらえるのが大変な脱線トークに再び突入。“俺たちの放課後は終わらない”を掲げるRest of Childhoodだけあって3人の掛け合いトークも自由である。
その空気をガラッと変えたのがスリーピースならではの間合いを活かした「Today」だった。スティングで知られるトリオバンドPOLICEに通じる淡々としたビートがクールだ。そこから新曲「通り雨の歌」へ。HALの歌、メロディラインには日本人の琴線に触れる魅力がある。その資質を際立たせるTakuyaの緩急が絶妙なドラミング、ハイフレットのメロディアスなベースラインで曲に彩りを与えるu:zo。3人が奏でる音楽の可能性が新曲から溢れ出る。
「1年ぶりの新横浜New Side Beach!!!。ここで毎年クリスマスを迎えているんですよね。今年4年目かな。いつもクリスマス付近の金曜日に演らせていただいているんですけど、なんと今年はイブのほうから寄ってきた。前のベースがやめちゃった去年は、サポートベーシストを3人呼んで出てもらったんですけど。改めて、u:zoがメンバーになったぜ!」──HAL
「当時、予想だにしなかった未来がね。続けているといいことあるね」とTakuya。正式加入する前からu:zoと一緒に曲を作り、リハーサルをしていたことを自称“説明おじさん”として付け加えた。「今、“雨”の歌をやりましたけど、雨が降った後は“虹”が出るぜ!」とHALが叫び、間髪入れずにドラムのカウントから駆け抜けていくようなナンバー「虹」を演奏。「さあ、みんな跳ぶぞ!」とライブ定番曲「Purple Star」では「前からゆっくり座ろうか。みんな、この1年、よく頑張ったな。今夜はクリスマスイブ。2021年、わりと悪くなかったなっていう時間にして今日は帰ろうぜ!」というHALの合図にあわせて客席がジャンプ。声が出せない制限がある中、ライブハウスという特別な空間で少しでも発散してほしいという想いが伝わってきた。
アドリブで、ほんのちょっとだけ洋楽クリスマスソングの数々を弾き語るサプライズもありつつ、次はRest of Childhoodからのクリスマスプレゼントへ。
「世界は名曲で溢れているんですけど、こんなクリスマスに1曲、作っちゃったので今夜やろうと思います」──HAL
HALがイスに座ってアコギを弾き、客席が鳴らす鈴の音の中、ロマンティックで切なくて心が温かくなる新曲「Winter Song」を届けた。セッションタイムを挟んで後半では最新デジタルシングル「Windmill」が投下されるとライヴの勢いが加速。エネルギッシュなボーカルと演奏とともに場内の空気も上昇。未音源曲「milk」も輝きを放っていた。
「その内、ステージに上げてギター弾かせるから“弾けるよ”っていう人は練習してきて」とHALが客席に呼びかけ、Takuyaが「ギター背負ってきたらね」と加えると、u:zoも「マイギターね」と笑顔。このバンドなら本当にあり得そうなファンを巻き込んだセッションも今後飛び出しそうな予感。途中で「このライブ、配信されてるんだっけ?」と、オフレコトークはマイクから離れて客席にのみしゃべりかける場面もあったりと本当に自由。ゆるいトークの一方で、「届くまで諦めないから」と熱くメッセージしていたのが印象的だった。
青い空へ飛び立っていくような爽快感のある「Jetlag」が放たれ、本編ラストはハンドクラップの中、開放感たっぷりの「春が来る」で締められた。そして、客席からの声の代わりに鈴の音が響き渡ったアンコール。
「次の曲は座って聴いてもらおうかな。人生は短い映画みたいだと思うんですけど、名古屋でこの曲を初めて演奏して、ちゃんと完成してからいろいろなことが繋がった日で、自分の中でストーリーが出来ちゃったなって。夢と現実がリンクした。そんな夢を見た」──HAL
そんな意味深な言葉を発し、スケール感のある新曲「Theater 16」が披露された。声を枯らして歌うHALとエモーショナルな演奏。これも今のRest of Childhoodだからこそ生まれたヒリヒリする曲かもしれない。
「夢と現実が重なったりする経験って、生きているとみんなあると思うんだけど、なるべく、それはハッピーなものであって続いていくといいなと思っているわけ。どんなことが起きても生きていれば強い。Rest of Childhoodのテーマは子供の頃に置いてきちゃったものだから、まだまだ2022年、取り返しに行きたいなって」──HAL
2022年2月20日に下北沢のライブハウス、ろくでもない夜でHALの弾き語りソロライブが開催されることも発表され、HALから「みんなが座っている椅子の裏の幾つかに、完成したばかりのピックをテープを貼って。イタズラで仕込んでおいたので、見つけた人は持って帰ってほしい」というアナウンス。これもRest of Childhoodらしい遊び心だ。
学校のように「起立!」と会場に号令をかけ、最後の曲はRest of Childhood流儀のロックンロール「アフタースクール」。「また会おう。俺たちの放課後は終わらないぜ!」と盛り上げ、エンディングで弾いたフレーズは学校のチャイムだった。キメるはずが失敗して、何度か弾き直していたのもハッピークリスマスのハプニングだ。約2時間半、全18曲のクリスマスライブが充実感たっぷりに終了した。
なお、ツアーファイナルとなった大阪公演では<Rest of Childhood Spring Tour 2022 "Back On Track">と銘打って3月から新たなツアーが開催されることが発表となった。まだまだRest of Childhoodの放課後は終わらない。いや、家に帰りたくない放課後は始まったばかりだ。
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