【インタビュー】クリエイター「死ぬまでステージに立つ」
ドイツのスラッシュ・メタルの重鎮、クリエイターの通算14枚目のオリジナル・アルバム『GODS OF VIOLENCE』が素晴らしい仕上がりだ。アグレッシヴでブルータルな音像の中で欧州出身バンドらしい叙情的なメロディが冴え渡るという方向性そのものは、ここ数作のものをダイレクトに継承しているが、サウンドの重厚感や衝撃力/メロディの深み/楽曲のバラエティ等々といった点において、14枚目という段階に来てもなお更なる進化を示し出している。
――前のアルバム『PHANTOM ANTICHRIST』にともなう活動は順調だったようですね。
ミレ・ペトロッツァ:ああ、凄く楽しいツアーだった。その間に日本へも二度行った。それからオーストラリアへも行ったし、アメリカへも三度行ったし、ヨーロッパ諸国を二度ツアーした。初めてプレイした場所もたくさんあった。フィリピンやタイは初めてだった。『PHANTOM ANTICHRIST』への反応はどこへ行っても凄く良くて、世界中のみんなが凄く気に入ってくれているのを実感出来たし、俺達自身もあのアルバムには物凄く満足していたし、その思いはずっと変わっていない。
――新作『GODS OF VIOLENCE』はメロディの面でまた新しい部分、新鮮さが感じられます。序曲「Apocalypticon」や「World War Now」にはケルト音楽の要素がありますし、「Hail To The Hordes」には曲のメロディやリズムやグルーヴもまさにケルティックで、THIN LIZZYやゲイリー・ムーアのスタイルを思わせます。
ミレ・ペトロッツァ:ああ、まさに。
――こういう要素がこれほどまでに明確に顕われたのは今回が初めてかもしれません。以前も少し聴けた要素ではありますが。
ミレ・ペトロッツァ:特に「Hail To The Hordes」はそうだね。デモを初めてイエンス・ボグレン(プロデューサー)に披露した時、彼に「この曲はスコティッシュに聞こえる」と言われて、俺は「そうか?気がつかなかったな」という感じだった。というのも、俺は曲を書く時は、それがスコティッシュだとかケルティックだとか、そういうことは一切考えていないからさ。それで、この「Hail To The Hordes」だけど、この曲のギター・ハーモニーをみんなでスタジオで聴いていた時、イエンス・ボグレンが「これにはバグパイプが合うかもしれない」と言った。それを俺は「本気か?バグパイプなんてやり過ぎじゃないか?」と答えた。そうしたら彼は「いや、上手くいくと思う。曲の最後のセクションに入れてみないか?」と言ってきた。そして実際、次に会った時点でそこにバグパイプの音を入れてくれて、曲を新たな次元へと持っていってくれた。それで友人であるIN EXTREMOのボリス・パイファーに連絡を取って、アルバムで(バグパイプを)プレイしてもらったんだけど、それによって作品がよりケルティックな感じになった。だから、今言われたとおりこの曲はまさにケルティックだし、その意見には100%同感だ。ただ、ここでひとつ理解して欲しいのは、曲を書いている時は「この曲はこういうサウンドに仕上げたい」などといったことは一切念頭にないことだ。できたものその結果が、俺のその時々に作りたかったものであり、何かマスタープランやフォーミュラといったものがあるわけではない。作っている時に念頭にあるのは「特別なアルバムを作ろう」という思いだけだ。言うまでもなくシン・リジーからは多大な影響を受けている。最近は聴いてはいないが、俺は彼らの大ファンであり、彼らを聴きながら育った。今でも彼らのことが大好きだから、シン・リジーが俺のDNAの一部になっているのは間違いない。でも、さっきも言ったように、リリースした途端に「シン・リジーを彷彿とさせる」みたいなことを言われても、俺達は作っている最中はシン・リジーのことは一切頭の中になったわけで…。でも、そう言われるのは光栄なことだから、凄い褒め言葉だと捉えているよ(笑)。
――あなたとサミ・ウリ・シルニヨのギターのコンビネーションはますます冴え渡っています。ヘヴィ・メタルでツイン・ギターやハーモニーという要素を考える時、どうしてもアイアン・メイデンという存在が出てきますが、1980年代の初期、作曲面で彼らからインスピレーションを得ていたと思いますが、いかがでしょうか?
ミレ・ペトロッツァ:言うまでもなくアイアン・メイデンもまた俺達が聴いて育ち、昔も今も多大な影響を受けてきたバンドのひとつだ。曲作りに取り組んでいる時はハーモニーをクールにしたいとか、曲をもっとビッグにドラマティックにしよう、そのためにはこれにトライしようとか、そういうことをやりながらひとつの曲を仕上げていく。そんな中で無意識のうちに、トラディショナルなメロディの面で昔聴いていたアイアン・メイデンのようなバンドからの影響を受けていると思う。
――歌詞の面で、アルバムを通じて何か共通するテーマのようなものはありますか?
ミレ・ペトロッツァ:答えはイエスとノーだ。最初のインスピレーションになったのは、ギリシャの戦争と破壊の神であるアレスであり、それを自分なりに解釈し形にした曲が「Gods Of Violence」だ。このアルバムで最初に書いた曲だ。ギリシャ神話の中には、すべての人間の知覚にまつわる神が存在するんだが、俺はこの曲の中で、アレスを通じて近代と古代とを比較しようと考えた。でも、全体を通してのストーリーは特にない。敢えて言うならば「人生を楽しもう。耳に入ってくるニュースやネガティヴなことに左右されるな」ということだ。俺はポジティヴなメンタル・アティテュードを強く信じている人間だからさ。
――シンガーとしてのあなたは今なお進化を遂げているように思います。初期のアルバムでは怒りや憎しみをひたすら放出するような感じでしたが、今では様々な感情を表現しています。
ミレ・ペトロッツァ:そういうことに関しては、ここで俺が自分で何かを言うのではなく、みんなに評価してもらいたいところだが(笑)、でも自分で感じるのは、まさに、近年色々な声を出せるようになったということだ。それは以前よりも自信を強く持てるようになったことが大きいと思う。例えば「Death Becomes My Light」の最初のパートでは、話しているような感じさえあるソフトな歌い方をしているし、「Side By Side」のミドル・パートではエネルギーがダウンしていって、ボーカルも誰かに話しているような、囁き声に近いようなものにしたかった。そういうことをスタジオでやろうと試み、実際できたことで、より自信も持てるようになってきた。それは若い頃、『PLEASURE TO KILL』(1986年)をレコーディングした17~18歳の頃の俺にはできなかったことだ。あの頃の俺は、そういった歌い方をする準備はできていなかった。あの頃と違って、今は自分の声の力を、自分の声で何ができるか、自分の声でどこまでできるか、そういうことがわかっている。楽器としての自分の声の可能性やコミュニケーション手段としての自分のこの声について、そういうことはすべて年月の流れの中で学び習得していくものだ。
――5年振りの新作『GODS OF VIOLENCE』から5年経つとあなたは53歳です。5年はあっという間に過ぎると思いますが、現時点でバンドの最終到着点を見据えることはありますか?
ミレ・ペトロッツァ:バンドの最終到着点は、俺がステージで死んだ瞬間だ。ハハハ(笑)!身体が強くありさえすれば、そして強い心、クリアな心、それさえ持ち続けられれば永遠にやっていける。いや、我々はみんな死を免れない運命にあるから永遠というのは無理だが、俺達はまだまだ、少なくとも20年はやっていけるだろう。
――あなたの友人であるソドムのトム・エンジェルリッパーは「モーターヘッドのレミーのように最期の最期までステージに立ちたくはない。何かに困難を感じたら、そこできっぱり辞める」と語っていました。あなたはどちらの選択肢を採ると思いますか?
ミレ・ペトロッツァ:俺はずっと身体を鍛えているし、健康的なライフスタイルを送っているので、最期までステージに上がっていたいと思っている。そして何と言うか、そう、俺達がみんななぜこんなにもレミーが好きかと言うと、彼が70歳でもああやってステージに立っていたからだよ。
――そうかもしれません。あなたも最期の最期までステージに立ちたいわけですね。
ミレ・ペトロッツァ:ああもちろん!できるだけ長くね。
取材・文:奥野高久/BURRN!
Photo by Robert Eikelpoth, Robert Eikelpoth
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14.フラッグ・オブ・ヘイト / トーメンター
【メンバー】
ミレ・ペトロッツァ(ヴォーカル/ギター)
サミ・ウリ・シルニヨ(ギター)
クリスチャン・ギースラー(ベース)
ヴェンター(ドラムス)
◆クリエイター『ゴッズ・オブ・ヴァイオレンス』オフィシャルページ