【ライブレポート】ACIDMANの“思想”に包まれた夜
楽しい気分になったり、元気が出たり、背中をおしてもらったりなど、音楽を聴くことで様々な感情がわく。世の中にはいろいろな音楽があると思うが、ACIDMANから生まれるそれをなんと表そうかと考えたら「一緒に生きてくれる音楽」という言葉が思い浮かんだ。
◆ACIDMAN ライブ画像
これは感覚的なもので、何がそう思わせるのかをはっきりと追求したことは無かったが、1月21日東京・Zepp Tokyoで行なわれた<「ACIDMAN 20th Anniversary Fans’ Best Selection Album “Your Song”」 リリース記念プレミアムワンマンライブ>で、その理由がわかった。
2017年唯一のワンマンライブという、まさにプレミアムな一夜は、ファンの投票によって選曲されたベストアルバム『Your Song』の収録曲すべて(instrumental除く)を演奏。大木伸夫(Vo&G)が「今日バラード多いですから。ほんとに覚悟してください」と言ったとおり、アンコールを含めた全23曲のセットリストはほとんどがバラードナンバーだった。
特に印象的だったのは、大木がアコースティックギターに持ち替えた「季節の灯」。演奏に入る前、大木は「音楽ってジャンルじゃないなって気づいた」という言葉を皮切りに、ゆっくりと語り始めた。
実はデビューした当時はアコースティックギターを持つことや、シンプルなバラードを演奏することはあまり考えていなかったそうだが、「季節の灯」の制作をきっかけに、その方向にどんどんと引き込まれていったという。そして、音楽を通して“思想”を伝えたいと悟ったそうだ。
以下に、大木の言葉を掲載したい。
◆ ◆ ◆
この世界は、この宇宙は、圧倒的に広くて。俺達はあっという間に死んでしまう。とっても儚い生き物でとっても悲しい生き物なんだけど、それを感じられるっていうのは奇跡なんじゃないのかなって思えるような、そんな思想が大好きなんですね。悲しいんだけれど、それをどうしても伝えたい。
だから、明日も生きてるんだよ、永遠があるんだよ、なんてことは全く言えない。みんな死ぬんだよと。楽しい日々もいつか終わるんだよと。逆に苦しい日々もいつか終わるんだ。大事にしてるもんも、全て無くなっちゃうんだって。悲しいことなんだけれど、これが現実であり、それとともに生きると日々がとても美しくなる。それを自分で実感しております。
この世界を変えてやるって思ったけど、自分が変わるんだなってことにふと気づきました。いま、おかげさまで人生が一分一秒が本当に愛おしいくらい大好きで大好きです。
◆ ◆ ◆
「一緒に生きてくれる音楽」と感じた理由がすべて、このMCに集約されていた。人生が短いということはきっと誰でも気づいていて、でもなんとなく見ないふりをしてしまう人が多いのではないだろうか。“もしかしたら明日死んでしまうかもしれない”なんて思いながら生きている人は少ないはずだ。
正面から向き合うことに少し躊躇してしまうテーマだけれど、「いつの日か私も君も終わってゆくから/残された日のすべて心を添えておこう」こう歌われる「季節の灯」を聴いていたら、“大丈夫だよ”と言ってもらえたような気がした。失うことや終わりがくることを恐れず、いまを大切に生きていけばいいんだよと。
アンコールを終え終演のアナウンスが流れたとき、すでに3時間が経過していた。どっぷり深く沈み込むように、ACIDMANの音楽=思想に包まれた夜だった。
取材・文◎高橋ひとみ(BARKS)
撮影◎藤井拓
■セットリスト
2.風、冴ゆる
3.FREE STAR
4.リピート
5.式日
6.migration 1064
7.静かなる嘘と調和
8.酸化空
9.stay on land
10.イコール
11.赤橙
12.アルケミスト
13.季節の灯
14.最期の景色
15.and world
16.ある証明
17.培養スマッシュパーティー
18.OVER
19.世界が終わる夜
20.ALMA
EN1.愛を両手に
EN2.最後の星
EN3.Your Song
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