「2016楽器フェア」レポ第2弾 電子楽器編 最新アナログシンセからユニークな新楽器、ボイスチェンジ技術まで
11月4日、5日、6日に東京ビッグサイトで開催された日本最大の楽器総合イベント「2016楽器フェア」。レポート第2弾では、「コンピュータ・デジタル」エリアを中心にお届けする。
「コンピュータ・デジタル」エリアはシンセサイザーや電子ドラムをはじめとした電子楽器、マイクやレコーダーなどの録音機器、ソフトウェアやインターフェイスなどのコンピュータ関連機器のメーカー、ブランドがブースを構える。その一角には「SYNTH FEST 16」のエリアがあり、冨田勲が使用した機材を展示する「TOMITA Memorial Museum」が設けられている。
▲コルグが4音ポリのminilogueに続いて12月下旬に発売するモノフォニック・アナログ・シンセmonologue。アルミニウム・シルバーに加え、ゴールド、ダーク・ブルー、ブラック、レッド、の計5色をラインナップ。Aphex Twinがプリセットプログラムを手がけていることでも話題のモデルだ。鍵盤付きアナログ・シンセながら電池駆動可。シンク端子でvolcaなどとの同期もカンタンに行える。
▲コルグブースは最新モデルのvolca kickはじめコンパクトなグルーヴ・マシンvolcaシリーズも勢揃い(左)。ホワイトボディで新たに低音用ウーハーを含む2+1スピーカーシステムを搭載したアナログ・モデリング・シンセmicroKORG Sはマイク付きでボコーダーも手軽に試せる(右)。
▲国内発表が待たれるARTURIAのセミモジュラーシンセMATRIXBRUTE、アナログ・ドラム・マシンDRUMBLUTEもいち早く展示(左)。フルサイズのARP ODYSSEY、ライトウェイト88鍵のKRONOS(右上)、Nutubeを搭載したパフォーマンスキーボードVOX Continental(右下)も参考出品。
数多くのシンセを揃えたヤマハ。新たなフラッグシップシンセサイザーMONTAGEはツマミ一つでダイナミックな音色変化を楽しめる(左)。コンパクトなボディに歴代ヤマハシンセ、ステージピアノを凝縮、スピーカー内蔵で電池駆動も可能refaceも勢揃い(右)。新色でリニューアルしたMXもスタンバイ。
▲ヤマハのブースはオーディオインターフェイスURシリーズをずらり。コンデンサーマイク、ヘッドホン、DAWソフトCubase AIをパッケージし、すぐに録音・音楽制作が始められるUR22mkII Recording Packが新たに仲間入り(左)。Steinbergからは譜面作成ソフトDoricoが登場(右)。写真なども貼り付けられるDTP機能やCubaseゆずりの音源、ピアノロールなども備える。
▲新たにドラムイスがセットになって購入しやすくなったDTX400シリーズはじめ電子ドラムDTXも多数ラインナップ(左)。スケールに合わせ誰でもメロディックな演奏ができるスチール・トング・ドラムBeat Rootはパッシブ・ピックアップ搭載のエレクトリック・タイプもラインナップ(右)。手やマレットで多彩な演奏が楽しめる。
▲ローランドの創業者、梯郁太郎氏により設立されたATVは、アコースティック感覚で演奏できる非常にユニークな電子パーカッション「aFrame」をデモ。竹の集成材のフレームに、表面がざらざらしたポリカーボネイトの打面を持った打楽器で、フレームはフジゲンとのコラボによるもの。叩くだけでなく、擦ればブラシのような音も出せるし、押し込むことで音色やエフェクトを変化させることもできる。PCM音源方式とは異なり、打面を叩いた音をピエゾピックアップで収音、圧力センサーと組み合わせてDSPで処理することでさまざまな表現が可能だ。実際にプレイを見せてくれたのはパーカッション奏者の梯郁夫さん(左)。裏面にはパッチやエフェクトを操作するボタンとLCDパネルが搭載される(右)。発売は来年1月予定。
▲ZOOMブースで人気を集めたのは、EDMを中心としたサウンドを内蔵したパフォーマンス楽器、ARQ Aero RhythmTrak AR-96(左)。本体はドラムパッドとして使える着脱型のリング型のMIDIコントローラーと、音源内蔵のベースステーションで構成。両者はBluetoothでワイヤレス接続される。ドラムマシンのほかシーケンサー、シンセサイザー、ルーパー機能、3軸加速度センサーも搭載。コントローラーはMac/iOS機器のMIDIコントローラーとしても使用可能。ギター関連ではベストセラーモデルの後継機G3Xnが登場(左)。5アンプ+5キャビネットモデル、70エフェクトを搭載。エクスプレッション・ペダルなしのG3nもラインナップ。
▲ローランドブースで試奏者が絶えなかったのが、同社初のデジタル管楽器エアロフォンAE-10(左2点)。管弦楽器、民族楽器からシンセまで多彩な音色を内蔵。運指はサックスに準拠、リコーダー感覚で気軽に演奏できる。電池駆動可能、スピーカーやヘッドホン端子もあるので、いつでもどこでも楽しめるのもポイント。ブース内ステージで演奏していたのは中村有里さん。電子ドラムV-Drumsは新フラッグシップTD-50KV with KD-A22を藤原祐介さんがデモ。KD-A22はアコースティック・バス・ドラムに取り付けるコンバーター。より生ドラムらしい演奏感が得られるとともに静粛性も備える。
▲ローランドはクラブを思わせる照明でブースを演出。名機を最新技術で再現したTB-03/TR-09/VP-03が、スピーカー内蔵、電池駆動可能なRoland Boutiqueシリーズから登場(左)。AIRAシリーズにはアナログ・モデリング・シンセSYSTEM-8が加わった。Plug-OutによりJUPITER-8、JUNO-106のサウンドをプリインストール。本体のサウンドと3種類のPlug-Outシンセ・エンジンのサウンド、計4種のサウンドをコントロールすることができる。
▲ローランド初のDJコントローラーDJ-808は、Serato DJ専用コントローラーに4チャンネル多機能デジタルミキサーを内蔵。TR-808/TR-909のサウンドをオーディオファイルに同期して演奏できるのがローランドならでは(左)。ニコニコ生放送にぴったりなオーディオインターフェイスUA-4FXIIも新登場。内蔵エフェクトで声のキャラクターを変えたり、アンプ・シミュレーターで迫力のギターサウンドを楽しむこともできる。
▲ドラプロが開発中の「ReMINE」(リマイン)はワイヤレス接続のMIDIコントローラー。LED付きのボタンやノブ、フェーダーなどのパーツを自由に配置。専用iPadアプリで設定、各種音楽系アプリで使用できる(左)。A.O.MはDAW用エフェクトプラグインを紹介。プロ向けのマスタリングリミッター、イコライザーやパンナー、ステレオ音像操作エフェクトに加え、EDMにぴったりなグリッチ系エフェクトコレクションWave Shredderもラインナップ。これはかなり強烈。全種類のエフェクトを1年間使用できるサブスクリプションのライセンスも用意する。
▲鍵盤エリアの河合楽器製作所は、オンキヨーとのコラボレーションによるコンセプトモデルCS-X1を展示(左)。カワイフルコンサートピアノSK-EXをサンプリングしたピアノ音を、オンキヨーの再生回路やアンプで再現する。背面の響板スピーカーとサラウンドスピーカーで、ホールのステージ上で右側に観客がいるかのような音響で演奏できるのがポイント。鍵盤左の液晶パネルでスマホライクに操作できるデジタルオーディオプレーヤーも内蔵する。これらの技術は今後の製品に生かされるとのこと。スキャンした楽譜を認識してデータを作成できるWindowsソフトスコアメーカーの最新版も出展(右)。写真では画面下にスキャンした画像、上に認識結果を表示。かなり忠実に再現できているという印象。新設計の画面デザインで使いやすさも格段にアップ。発売は11月24日。
■国内外のシンセサイザー・DAWが集まるSYNTH FEST 16
「SYNTH FEST 16(シンセフェスタ16)」は、シンセサイザー、デジタル・オーディオを扱う13社と一般社団法人 音楽電子事業協会(AMEI) が出展。周辺にはヤマハ、コルグ、ローランドが並び、この3社のブースの一部も含めて、SYNTH FEST 16一帯は巨大なシンセゾーンとなっている。冨田勲氏が実際に使用したシンセサイザー、録音機器を展示、トミタスタジオを再現する「TOMITA Memorial Museum」も目玉の一つ。出展各社によるデモステージ、AMEIによるセミナールームも併設。展示ではアナログ・シンセの多さが目立った。
▲TOMITA Memorial Museumには、Moog Modular III、SYSTEM-100M、Prophet-5、JUPITER-8、CS80といったシンセやレコーダー、エフェクターなどがずらり並ぶ。
▲トミタサウンドの秘密や機材を分析・解説するイベントも連日開催、毎回多くの来場者を集めた(左)。機材の裏側に回ることも可能。CS80には冨田氏の直筆サインと、改造により加えられた端子を確認することができる。
▲SYNTH FEST 16のステージはライブやトーク、デモンストレーションなどさまざまなイベントを1時間毎に開催。写真左は福田裕彦、生方則孝による伝説のユニット「生福」復活のトークステージ。テーブル上に見えるのは、生方氏考案のテルミン+アナログシンセのハイブリッド楽器「Theresyn(テレシン)」。写真右は浅倉大介&守尾崇によるヤマハシンセサイザーMONTAGEのデモ&ライブステージ。
▲メディア・インテグレーションは、発売されたばかりのPositive GridのギターアンプBIAS Headをデモ。単体でも使用可能、BIAS Ampソフトウェアを使用することでアンプ・デザイン、トーン・マッチングが可能となる。ソフトウェアではSpectrasonicsのキーボード音源Key Scapeが登場。展示は鍵盤を内蔵した白いデスクZaor KLAViDESKで行われている。
▲大阪のシンセブランドREONのブースにあったのは、2本のジョイスティックで入力されたオーディオ信号をコントロール&シーケンスできるdriftbox J(左)。ほかにもDriftboxシリーズのアナログシンセがずらり。ピンクのキュートなモデルも。
▲エレクトロンの注目製品はAnalog Heat(左)。8種類のステレオ・アナログ・ディストーション回路、ステレオ・アナログ・フィルタリング&EQを装備。歪みはもちろんサウンドに埃っぽいざらつきや生き生きした輝きを与えられる。オーディオインターフェイスとしても動作、さらにDAWのプラグインとして使用することも可能。エレキギター用にPCレスで使えるフットスイッチを備えたAnalog Driveもラインナップ(右)。8種類のアナログディストーションが使用できる。
▲アナログシンセを大量に投入した福産起業。写真左はSequencial Circuits Prophet-5の設計思想を受け継いたSEQUENTIAL Prophet-6とそのモジュール版。ステップ・シーケンサー、アルペジエイターを装備。6ボイス・ポリで2台つなげると12ポリで使用できる。写真右はMake Noiseのコンパクトなセミモジュラー・シンセ0-Coast(ノー・コースト)。これ1台でモジュラーシンセの音作りが楽しめる。パッチングでの音作りもOK、CV/Gateでほかのアナログ・シンセとの接続も可能。MIDIにも対応する。このほかDave Smith InstrumentsのOB-6やデジタル・メロトロンも人気。
▲ディリゲントは、シンセやターンテーブルなどの機材を守る耐衝撃カバーDECKSAVERをアピール(左)。「いきおいつけて踏んでみて!」とあるとおり、踏みつけても大丈夫。これを付けて運搬用ハードケースに入れればつまみが取れる心配もないし、家庭なら鍵盤の上にものを積んでもOK。DJコントローラー/ミキサー、グルーヴボックスなどさまざまな製品に対応したモデルをラインナップ。Studiologicの黄色いシンセSledge(右中)には、新たにブラックバージョンのSledge Black Edtion(右上)がラインナップ。色の変更だけでなく音色追加も行われている。このほか、ape labsのポータブル照明も参考出展(右下)。マルチカラーLED搭載、乾電池で長時間動作。リモコンで複数台を一括コントロールでき、音にも反応する。これはかなり楽しい。
▲インターネットのブースではABILITY 2.0、Singer Song Writer Lite 9のデモを中心に展開。SYNTH FESTのステージではABILITY 2.0 Proのスペシャルセミナーを実施。小川悦司(ギター)、篠田元一(シンセ)、米澤美玖(サックス)の演奏のレコーディングを交えつつ機能を紹介。
▲フックアップはユーロラックモジュールを収納できるWaldorfのMIDIコントローラーkb37(左上段)やNektarの多機能MIDIコントローラーPanorama P4(左下段)、Impact LX49+(右手前)を展示。待望のWindows 10環境でのThunderbolt接続対応がなされたUniversal AudioのUAD/Apolloシリーズも用意(右奥)。
▲iOS対応機器を多数出展したIK MULTIMEDIA。ヘッドホン端子を搭載し、イヤホンジャックがなくなったiPhone 7にも対応したギターインターフェイスの最新モデルiRig HD 2や、Bluetooth接続のワイヤレスフットスイッチiRig Blueboard、パーソナルスタジオモニターiLoudなどをラインナップ。Mac/Windows用の話題のフィジカルモデリング・ベース音源MODO BASSも紹介。
▲Bluetooth接続のワイヤレスMIDIインターフェイスmi.1で話題を集めたキッコサウンドは、ユーロラックをワイヤレスでコントロールできる開発中の新モデルmi.1eを紹介。iPadからのBluetooth MIDI信号をCV/Gateに変換するユーロモジュールだ。4系統のCV/Gate信号のほか、LFOとしても使用可能。各端子のランプはマルチカラーLEDなので好きな色に光らせられる。専用のiPadアプリでデモンストレーションが行われている(右)。
▲ドットレッドオーディオデザインズは浜松を拠点とする電子楽器および業務用オーディオ機器メーカー。電源付きのユーロラック用ケースWORKFRAME 84、同機を2台搭載したデスクトップタイプのTWAINなどを展示。アルミ製レールの上下にナット用の穴を各3つ用意、モジュールの追加・入れ替えが楽に行える。また、電源はレスポンスに優れ、低発熱、低ノイズなのが特徴。Alyseum、AQA ElektriXなどのユーロラックモジュールでデモが行われている(右)。
▲ヤマハミュージックジャパンはNord専用ブースをSYNTH FEST内に用意。シンセサイザーのNord Lead、ステージピアノNord Electro、オルガンのNord C2Dなどシリーズ製品がずらり。写真右はモデリング・パーカッション・シンセサイザーNord Drum 3P。シールドケーブル、スティックも赤で統一されていた。
▲エムアイセブンジャパンは2016年度グッドデザイン賞でグッドデザイン金賞を受賞したROLIのSeaboard RISEを展示(左)。柔らかいキーボード部に5つのセンサーを組み込むことでさまざまな表現が可能。Bluetoothによるワイヤレス接続、乾電池駆動もポイントだ。Softubeからはバーチャル・モジュラー・システム・プラグインModularを紹介。Eurorackモジュラー・メーカーDoepferとの連携の元で開発された、本物のアナログ・モジュラー・サウンドと柔軟性、拡張性を備えたソフトウェアだ。Seaboard RISE専用のモジュールが新たに追加され、さまざまなコントロールが可能となっている。
▲女子に人気が出そうなのがこちらの小型鍵盤オルゴール(左)。スリックは計測器メーカーながら、MIDIインターフェイス内蔵のオルゴール「CANADEON」シリーズを開発、楽器フェアなどに出展してきた。今回出展された小型鍵盤オルゴールはシリーズ初の一般向け製品として開発が進んでいるモデル。ヤマハとの共同開発によるもので、鍵盤はrefaceと同じものが使われている。このほか新モデルでは永久磁石の電磁誘導により非接触で櫛歯を動かして音を鳴らすCANADEON MAGも展示。MIDI対応の電子楽器ではあるものの、音の出口はアナログ。周囲が騒がしいイベント会場だと下の木の部分に耳を近づけてやっと聞こえるくらいの音量。あくまでもオルゴールなのだ。
▲SYNTH FEST 16のAMEIセミナーブースで行われた、クリムゾンテクノロジーの「リアチェンvoice」の技術発表。「リアチェンvoice」は、テーマパークのキャラクターショーの現場などで活躍するリアルタイム音声変換システムだ。ターゲットとなるキャラクターの声をあらかじめ登録し、現場のアクターの声をキャラクターの声にリアルタイムに変換することが可能。現場のアクターが別の人に変わっても、同じキャラクターの声を会場に届けることができるのがポイント。男性が女性の声を出せる(またはその逆)のはもちろん、話者が変わっても同じ人の声になるのが従来のボイスチェンジャーとは異なるところ。音の遅れも気にならないレベルだった。非常におもしろいのだが、なりすまし犯罪に利用される可能性もあるため、現時点では一般への発売はないとのこと。写真右はウェブカメラの前の人の動き(体の傾きや瞬き)を検出して画面のキャラクターが同じように動き(FaceRig使用)、それにあわせてリアチェンvoiceの音を聴かせるというデモ。
▲リアチェンvoiceのシステム概要。現場アクターの声はあらかじめ学習が必要。いつもと違う人がぶっつけでキャラクターの声が出せるわけではない。プロ版では、オリジナルのキャラクターの声を収録するが、あらかじめ用意されたキャラクターの声を使う標準版も用意される。
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