ディジー・ミズ・リジー、相思相愛が生んだ至福のライヴ
すべてのファンが待ち望んでいた復活劇を経て、この4月にリリースされた20年ぶりのオリジナル・アルバム『フォワード・イン・リヴァース』が好評を博しているディジー・ミズ・リジー。去る5月11日、絶好のタイミングでの開幕となった同作を引っさげてのジャパン・ツアーも、大阪、名古屋と快調に好演を重ね、同14日、バンドは川崎・CLUB CITTAでの二夜公演初日を迎えた。
◆ディジー・ミズ・リジー 画像
ぎっしりと人で埋め尽くされた場内が定刻通りに暗転すると、まず聴こえてきたのは『フォワード・イン・リヴァース』に収められていたインストゥルメンタル曲の「フレイ」。同楽曲をイントロダクションに据えながら、ステージ上の配置に着いたメンバーたちがまず披露したのは、やはり同作の幕開けを飾っていた、これまたインストゥルメンタルの「フライング・ファラオ」だった。聴こえてくるのは、ティム・クリステンセン(vo,g)、マーティン・ニールセン(b)、ソレン・フリス(ds)というトライアングルから発せられる音だけなのだが、3人編成とは思えないほどに音圧も充分だし、しかも爆音で圧倒しようとするわけではなく、完璧なアンサンブルですべてをクリアに聴かせながら広がりのあるサウンドを聴かせてくれる。しかも気付いてみれば、そこからの冒頭4曲は最新アルバムの曲順通りのパーフェクトな流れ。同作を聴き込んできたファンはすぐさまその世界に引きずり込まれていたことだろう。
ライヴはあくまで最新アルバムからの楽曲を軸に据えながらも、『ディジー・ミズ・リジー』(1994年)、『ローテテイター』(1996年)という過去2作からの人気曲も随所に配しながら進んでいく。ステージの背景には最新作のアートワークが描かれたバックドロップが吊られ、照明効果によりあの少女の表情に変化が生じるという場面は見受けられたものの、いわゆる大掛かりな演出は一切皆無だし、フロントマンのティムもさほど観衆を煽ったり多くを語ったりするわけではない。しかし、音楽だけで充分なのだ。受け手側にとって思い入れ深い曲たちが、細部にまで神経の行き届いた誠実な演奏と歌唱をもって次々と披露され、しかも “生のグルーヴと緊張感”というスパイスを加えながら音源以上に強力な説得力を伴いながら酔わせてくれるのだから、それが心地好くないはずがない。
そう、フロアを埋め尽くしたオーディエンスをひとつに束ねていたのは、純粋な音楽の力、楽曲の力だったといえる。同時に観衆の反応は、彼らがアルバムをよく聴き込んでいることがうかがえるものでもあった。そうしたバンドと聴き手との相思相愛が、この夜のライヴをさらに素晴らしいものにしていたように思う。バンド側もそうした空気に高揚をおぼえたのか、アンコール時には当初のセットリストには組み込まれていなかった『ローテイター』収録の「ソーン・イン・マイ・プライド」を披露。緩急に富んだライヴは90分を超えるものとなったが、その時間経過は本当にあっという間のように感じられたし、もっともっと聴き続けていたいと思わせてくれるものだった。少々気の早い話ではあるが、これは確実に、2016年度のベスト・ライヴ候補のひとつに数えられるのではないだろうか。
そして4都市5公演を巡る今回のジャパン・ツアーも、本日(5月15日)の川崎・CLUB CITTAでの第二夜、そして5月17日、札幌・cube gardenでの公演を残すのみとなった。もちろん今回の復活劇は一時的なものではないし、彼らはきっとまた日本への帰還を果たしてくれるに違いない。が、まずはやはり“今”のこのバンドの空気に触れてみて欲しいところだし、彼らの音楽に心酔する人たちはもちろんのこと、彼らに興味を持ち始めたばかりの人たちにも、この機会を逸して欲しくない。満足以上の何かが、きっとそこで得られるはずである。
取材・文◎増田勇一
撮影 畔柳ユキ
■<DIZZY MIZZ LIZZY -Japan Tour 2016->
2016.05.14@CLUB CITTA KAWASAKI SET LIST
02.Phlying Pharaoh
03.Forward In Reverse
04.Terrified In Paradise
05.Brainless
06.Barbedwired Baby’s Dream
07.Love Is A Loser’s Game
08.Love At Second Sight
09.Made To Believe
10.Rotator
11.11:07pm
12.Find My Way
13.67 Seas In Your Eyes
14.Glory
15.Say It To Me Anyway
16.Waterline
Encore
17.Mindgasm
18.Thorn In My Pride
19.Silverflame
20.I Would If I Could But I Can’t
◆<DIZZY MIZZ LIZZY -Japan Tour 2016-> オフィシャルサイト
◆ディジー・ミズ・リジー・オフィシャルサイト(海外)