【ライブレポート】タグチハナ、音のうねりで包み込んだ 夜は可能性を確信へと変えた@渋谷CLUB QUATTROワンマン
2016年3月29日。渋谷CLUB QUATTROにて、<TOUR2016 タグチハナ ワンマンライブ-The sound of swells->が開催された。
◆タグチハナ~画像~
2015年12月9日にリリースされたシングル「The sound of swells」のリリースツアーファイナルとなる公演。2015年はタグチハナにとって、高校卒業の日に初の全国流通盤『Orb』のリリース、新宿JAMでの初ワンマンライブ、“SAKAE SP-RING”“見放題”“MINAMI WHEEL”など各地の名だたる サーキットイベントに出演、赤坂BLITSで開催されたTBSテレビ「オトナの!」主催のフェス「オトナの!フェスNEXT」でのオープニングアクト出演。そして、今作「The sound of swells」のリリースなど初め て尽くしの激動の一年だった。
その集大成 とも言える今回のQUATTROワンマンライブは、その期待値の高さから多くのオーディエンスが駆けつけた。タグチハナTwitterアカウントでは、一月前より多くの友人アーティストからの応援動画をカウントダウン動画としてup。その参加メンバーも多彩で、現在19歳で活動3年弱のアーティストとは思えないほどの面子が集まったのは彼女の音楽性の高さの評価、パーソナルの人懐っこさが相まった結果だろう。
会場には、今までの衣 装や撮りためた写真、装飾などが飾られライブハウスがタグチハナ一色に染まっていた。階段を上がり、ライブフロアのドアを開けると、大きな柱や壁にも花の装飾。そして、満員のオーディエンス。ざわつきが絶えない中で、照明が落ち、BGMが消えると大きな歓声が起こった。
一人ステージに現 れたタグチハナ。マイクの前で「さいわい」をアカペラで歌いだす。彼女の声だけ が響き渡る会場。そして、ギターを持ち「指先」と続く。歌い終わりでノイジーなSEが流れ、バンドメンバーが登場した。今回の『The sound of swells』レコーディングメンバーでもあるGt.君島大空、Ba.小林侑矢、Dr.よっちに加え、Gt.高野京介の4人。盤石のメンバーがステージに陣取ると「asleep」「魚に成る前に」「on the hill」と立て続けに披露する。 しっかりとグルーヴするベースとドラム。二人のギターの音の壁とそこから突き抜けてくる彼女の声。音に浸るというのはこういう事なのだと感じる。
“遂にって感じですね。最後まで楽しんでいってください”と挨拶した後は、「気流2013」「いずれ錆びついた地面の下で」「BLUE LIGHT」 と続く。「気 流2013」のようなストレートなロックチューンも、「いずれ錆びついた地面の下で」のようにフォークの匂いを感じる 曲も、「BLUE LIGHT」のような爽やかなPOPソングも、ジャンル感など関係なく、バンドサウンドも含めて全 てタ グチハナという音楽なのだ。シングルリリース後に書いた「やさしいままがいい」はメロディックなラブソングで、彼女の声が切なく優しく届く。
代表曲とも言える「ビア」「平和がきこえる」をこの中盤で持ってきても全く選曲の幅が狭まらない懐の深さには脱帽するばかりだ。「花のワルツ/1969」で軽やかな空気に変えると、MCではフロアの装飾や展示の事を紹介する。この二年の中で作られ た衣 装や写真は、全て彼女が衣装の福島悠希とカメラマン山崎聖史と共に築いたものだ。
“一曲カヴァーを聞いてください”と始まった「SAYONARA BABY BLUE」はGt高野がメンバーでもあり笹口騒音ハーモニカを中心とした“うみ の て”の楽曲。Gtソロで暴れ狂う高野を見つめるタグチの眼がなんとも印象的だ。アコースティックギターとボーカルで始まった「そのとき」は「優しい声が夜を 夜を包んだのです」と歌っているが、正にこの時、この瞬間、優しい声がこの夜を包んでいた。それはこの会場に来れなかった人にも届くかのような歌声で、このライブを彼女が観て欲しかった全ての人に歌っているのが感じられる。今回のライブ用にアレンジされた「繋いでいたいだけ」は、ドラム、ベース、ギター、高野のピアノとそれぞれが刻むリズムの中で泳ぐ歌があまりにも自由に響く。ドイツ出身のネーナが1983年に発表した「ロックバルーンは99」の日本語カヴァーを披露。勿論彼女は生まれていない時代の曲。80年代ど真ん中ともいえ るバンドサウンドが何故こんなにも堂にいって似合うのだろう?
“今日は『The sound of swells』のツアーファイナルとなります。高校二年からライブハウスで活動してて、その中で出会った人たちが集まってくれています。ありがとうございます!”と歌い出した「The sound of swells」。海のうねりの音という意味のタイトルのこの曲は、そのドラマチックなメロディーが、青と白の照明に 彩ら れて繊細に、壮大に広がっていく。
タンバリンを片手に「こころが自由だから」、アコースティックギターを抱いて「ロング・グッドバ イ」とはち切れんばかりの喜びに溢れた笑顔で歌うと、そのアッパーな曲にオーディエンスの身体を揺れる。そのまま本編ラストの曲 「カムパネルラの星」へ。音の壁を背に突き抜ける歌声はどこまでも飛んでいきそうなほどで、壮大な世界観が会場を飲み込ん だ。無 言で深くお辞儀をし、ステージを降りたタグチハナへ、歓声とアンコールが起こる。
一人ステージに戻ったタグチハナは、メンバーを紹介しつつ一人一人呼び込む。そして、この日初披 露となった新曲「ミタケアオシン」で今の想いを全て吐き出し、この夜を締めくくった。
タグチハナは、常々「今が一番最高でないといけない」と口にしている。その言葉の通り作品上で も、ライブでも彼女自身の“最高”を更新してきた。そして、この夜、タグチハナのライブは最高の形で幕を閉じた。これからまだまだ大きくなっていく事を確信させるライブだった。そんな彼女はまだ19歳。これだけの完 成度 を見せた上で見せつけた末恐ろしいほどの可能性を、これからも存分に感じていただきたい。
TEXT:柴正明
PHOTO:Yoshiyuki Uchibori