【インタビュー】Angelo、EP『FACTOR』完成「斬り込んでいくのは自分の役割」
■音楽をやって歌詞を書くということ自体は文系なんでしょうけど
■そこに理系的な思考回路を混ぜたのはおそらく僕だけだと思います
──それから、「Experiment」の歌詞についてですが。これは切り口が斬新だなと感じました。
キリト:やっぱりね。長年、曲を作って歌詞を作ってということを繰り返して来ていますから、既に自分なりの作風やスタイルというものは確実にあるんですよ。とはいえ、やっていないことをやらないと、という気持ちもあったんです。それがここで実現出来ました。恐れずに、自分なりの新しい手法を発掘していった結果です。
──それこそ、この歌詞は理系的思考回路が基盤にあるものですよね。
キリト:理系ですから、僕は。音楽をやって歌詞を書くということ自体は文系なんでしょうけど。でも実際、そこに理系的な思考回路を混ぜだしたのは日本でもおそらく僕が最初だろうし、僕だけだと思いますよ。
──確か、キリトさんは学校へはあまり真面目には通っていないタイプの方でしたよね。一体、どこで諸々の勉強をされたのです?
キリト:そんなのはだって、読もうと思えば本もあるし、今ならインターネットもあるわけですから。知ろうとしない人はいくら情報が溢れていてもちんぷんかんぷんでしょうけど、知ろうと思えばいくらでも知識は仕入れられますよ。
──素晴らしい。大人になってからでも、勉強は出来るのですね。
キリト:僕は、自分がそのつど知りたいことを吸収していっただけです。歌詞を書く上で必要なものを、活用するために仕入れてきただけというかね。目的もないのに理系の勉強をしました、大学に行きました、というのよりはよっぽど意味があると思いますよ。
──目的が無いからこそ大学に行く、という人も世の中には多いですけれども。
キリト:ムダでしょ、それって。バンドをやる為に音楽の専門学校行きましたとかね。あんなのもムダの極地。
Karyu:あの……俺、行ってました。半年でヤメましたけど(苦笑)。
キリト:あはは(笑)。今まで、何回も僕のところにそういう学校から特別講師の依頼が来ましたよ。やってもいいけどね。でも、まず一言目に言うのは「ここにいる時点で、君たちはプロになれないよ!」っていうことですから(笑)。目的の無い勉強ほど、ムダなものはないですよ。必要に応じて、即戦力として使うために知識を引っ張ってくるというやり方こそが、一番効果的な勉強の仕方なんじゃないですかね。
──今、物凄く大事なことをおっしゃいましたね。
キリト:まぁね。学問としては難しいし、まだまだ奥も深いけど、ちょっとした物理学とか相対性理論。そういうものに対してだったら、僕はそこらへんにいる学生よりきっと詳しいと思いますよ。量子力学とかもね。そのあたりは、今回の『FACTOR』と『RESULT』でも、関係性としてかなりなぞらえているところが多いです。文系的なストーリーを絡めつつで。
──Karyuくんは、キリトさんのこの詞世界についてどう思われます?
Karyu:いやもう、なんかすげぇな!って思います。バンドマンなのに、こんなことまでいろいろ知ってるのか?!って。ひたすら尊敬です。
キリト:あれだな。今度からバンド名、Angeloじゃなくてキリトwithバカでもいいかもしれない(笑)。
Karyu:いや、それはダメです。Angeloがいいです(笑)。
──この『FACTOR』には「URGE」という楽曲も入っていますが、これはまた随分とメッセージ性の強い内容になっているようですね。
キリト:自分の身は自分で守らなきゃいけない、ということを伝えたかったんですよ。聴いている人の、背中を強く押せるような曲にしたかったんです。
──なるほど。聴き手に対する、ある種の啓蒙の意味があったのですね。
キリト:新たな場所に踏み込んでいくというのは、誰にとってもそう容易なことではないはずなんですよ。だけど、いちいちそこで遭遇する困難を他人のせいにしたり、何かあるたびに他人に依存したりしていても、そんなのは何の意味もありませんから。本当の意味で目の前にあるものを乗り越えて突破していきたいなら、自分の内にある渇きの気持ちだったり、絶望の気持ち、あるいは怒り。そういう熱量のある感情でしか、あなた自身を守ることも、あなた自身を進ませることも出来ないんだよ、という厳しいようで優しいことを歌っているんです。
──そのために必要な力が、すなわちURGE=衝動であるということですね。なお、これは余談になりますが。キリトさん自身は、過去を振り返って何かに依存したくなってしまうよう場面は、ありませんでした?
キリト:僕はないです。全く、そういう人間ではないので。
──即答にして断言ですね。
キリト:僕はね、ダメなんですよ。そんな風に他者を信用できないし、依存出来ない。己の力だけを信じて、43歳まで生きてきたんです。
──それって、フルワードで記事化してもよろしいでしょうか。
キリト:あー。いや、己だけではなかったです。仲間もいました(やや棒読み)。
Karyu:凄く偽善っぽい(笑)。
キリト:あはは。いやもちろん、全くの独りっきりでなんて生きては来られなかったですよ。今もそうだし。仲間やまもるべき人たちが常に周りにいる中で、生きてきたのは事実です。でも、自分の宇宙の中で考えていることは、自分で解決しなければどうしうようもないというのもまた事実でね。そこは仲間や周りの人に委ねられないし、どうしても預け切れないんです。
──キリトさんらしいですね。
キリト:自分がまずは先陣を切って風穴を空け、そこから皆と一緒に戦っていきたい、というのが僕のスタンスですから。まず先に斬り込んでいくのは自分の役割だと思って来たし、これからもそこは変わらないでしょうね。
──それを、損な役回りだと感じたことはないのですか?
キリト:昔は多少ありました。だけど、今はもう全然。
──そこまで思えるように強くなるには、どうしたら良いのでしょう?
キリト:恋をすることじゃないですか。
──適当なことを言わないでくださいね。絶対に違うはずです。
キリト:うん、嘘です(笑)。強さとか言うよりは、役割分担として諦めとか悟りを開くしかないでしょうね。自分しかいないんだって。ブルース・ウィリスが演じた映画『ダイハード』のジョン・マクレーン的な感じ。
──意外な言葉が出て来ました。
キリト:『ダイハード4』かな。ブルース・ウィリスが、ハッカーの少年に言うセリフがあるんですよ。もう周りがてんやわんやになっているとき、車中でね。少年が「あなたは、何故そんなに毎回とんでもない活躍をしているんだ」と訊くんですよ。そうすると、それに対してブルース・ウィリスは「いや、他に出来るヤツがいるなら喜んで譲るんだけどね」と。そのセリフを聞いた時、妙に共感した自分がいたんですよ。目の前で起こったことに対して、対処できるのが自分しかいないのであればやるしかない。要は、そういうシンプルな話なんです。
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