【インタビュー】T-SQUARE、41枚目にして現在進行形のバンドらしい“夏”のアルバム『PARADISE』

■自分が子供の頃に体験した夏を思い起こさせてくれる
■そこが今回のアルバムはうまくできたなと思います

──河野さん、ずっと静かにうなずいてらっしゃいますけど(笑)。アルバムの手応えは、どんな感じですか。

河野啓三（以下、河野）：すごくいいアルバムができたと思います。やっぱり、スクエアというバンドの長い歴史の中で、スクエアはこういう曲じゃなきゃいけないという固定概念とか、見えないプレッシャーみたいなものが出てくるところがあるんですよ。お客さんもそれを期待している部分があるんですけど、いい形ですべての曲が、素直に新しい方向に向いていると思います。坂東さんが今までになかったアプローチで作曲をして、そういう部分をT-SQUAREに提供してくれたことが、このアルバムを斬新にさせている一番の要素だと思うんですけど、そういう新鮮さが、聴いてくださる方に感覚としてうまく伝わってくれるといいなと思ってます。これみよがしに斬新なことをやっているわけじゃなくて、非常にさりげなくやっているので。隠し味的なところに、面白いものがいっぱいあるんですね。それが伝わってくれるとうれしいなと思います。


──河野さんの曲についても聞いていいですか。今回は2曲ありますが。

河野：夏の曲を作るのは、難しかったです。歌詞のある曲なら、歌詞で表現していくことが可能なんですけど、器楽曲で夏を表現するのは非常に難しいんですよね。作ってる人が夏だと思っても、聴いている人が夏じゃないと思ったら、それまでですから。そこにすごく苦労しましたけど、4曲目の「Through The Thanderhead」に関しては、そういうことはさておき、とにかく元気な曲を作りました。スクエアの一つの定番とは少し違う方向で、よりポップでキャッチーなものを作りたいと思ったので。この曲は、5人のソロが均等に入って来るということをテーマにしていて、そこそこ複雑なギミックを備えた曲ではあるんですけど、自分の中ではとても気に入っています。


──伊東さん、あらためて、この41枚目のオリジナルアルバムは、T-SQUAREにとってどういうものになったと思いますか。

伊東：夏ということでも、1日の流れに置き換えても、うまくできてると思いますね。これから夏が始まるぞ、というのが「Mystic Island」で、最後の曲が「夏の終わり」で、タイトルもぴったりだし。そういうことも含めて、聴いている人がどういう状況で聴いたとしても、気持ちを豊かにしてあげられるだろうし、これを聴いていろんな夏を思い浮かべることもできるだろうし。そういう中でも、夏というと、子供の頃の夏の記憶がまず出てきません？　夏休みの思い出が。

──そうですね。確かに。

伊東：そういうものも、ここにはあるんですよ。日本の夏の原風景みたいな、自分が子供の頃に体験した夏を思い起こさせてくれるような、そこが今回のアルバムはうまくできたなと思います。あとはさっきから話に出てる坂東の曲が、どれも相当にヤバイところに行ってると(笑)。パッと聴きはさわやかで、ヒップな感じで、気持ち良く聴こえるんだけど、実はすごいアイディアやテクニックが詰まってるというね。本当にうまくできてるアルバムだなと思いますよ。バンドが進化し続けているということを、手応えとしてすごく感じるし、それが随所に実を結んでる。今のスクエアのあり方が、ものすごい密度をもって伝わるような、そういうものになってると思います。


──それにしても、毎年出し続けて41枚ですか。こうなったらもう止められないですね(笑)。

安藤：同一バンドが毎年オリジナルアルバムを出すのって、ギネス記録にならないかな。だって外国のバンドも、そんなに毎年は出さないでしょ？

伊東：ベンチャーズも出してないと思う(笑)。何年やったかということで言えば、ローリング・ストーンズとか、いっぱいいると思うけど。オリジナルアルバムを毎年出し続けているというのは、ギネス、行くんじゃないですか？

安藤：もう毎年出すのが決まりごとになっていて、嫌だな～と思いつつ、無理くりやってるわけですよ。

伊東：……ちょっと、羽交い絞めにしていいですか(笑)。

安藤：いや、でも、その無理くりやることって、やっぱり大事だと思うんです。継続は力なりで。しかも、一人で毎年出すのは大変ですけど、僕らはバンドメンバーが書くので。誰かが書けない時は誰かが頑張るとか、それがバンドの良さだなと思いますね。ずっとそれをやってきたのは、自分で自分を褒めたいなと思います。

──いつか本当にギネスブックに載るかもしれないので。楽しみにしてます。

安藤：いやあ、もう還暦ですからね。定年退職ですよ(笑)。

伊東：そういう年だよね。

安藤：でも（渡辺）貞夫さんが80だっけ？　本当にお手本にすべき人がいますから。

伊東：日野（皓正）さんも、70超えましたからね。まだまだですよ。


──そして、ツアーが7月10日から。前半がライブハウスで、後半がホールという、二本立てになってます。

安藤：ライブハウスツアーは2014年から始めたんですけど、狭いところにぎゅうぎゅうにお客さんがいて、久しぶりに会うからめちゃ盛り上がったんです。それがすごくうれしくて、すごく楽しくて、今年もまたそれができるのが楽しみです。もちろんホールもいいんですけど、狭いところだと熱い感じがすごく伝わってくるから、うれしくなっちゃう。

伊東：エネルギーの伝わり方が違うよね。ライブハウスはね。やってる側の一挙手一投足が目に入るわけだから。人力で頑張ってるのがよくわかる(笑)。

──坂東さんは、ツアーについてどんなイメージがありますか。

坂東：スクエアのライブって、アルバムの再現を生で聴けるというイメージが僕の中にはあるんですけど、でもそれはもういいかなと。ライブなんだから、崩せるところは崩して、新たなライブならではのものを作ったほうがいいのかなって、最近は思ってます。曲つなぎを新たに作ったり、完成度の高い一つのパッケージとしてライブで見せたほうが、よりお客さんも楽しいのかな？と。CDと同じ音はCDで聴いていただければいいと思うので、ライブならではの要素を多めに組み込みたいですね。

──河野さんは？

河野：いや～、今の坂東さんの言葉を聞いて、ヤバイなと思ってたんですけど(笑)。これは大変そうだなと。でも、できるだけたくさんの人に、現在進行形のスクエアを見てほしいですね。バンドがすごく生き生きしてるのを体感してほしいです。

取材・文●宮本英夫




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