【ライブレポート】T-SQUARE、ダブル・アンコールにも応えた熱狂のプレリリースツアー最終日
通算42作目のオリジナル・アルバム『Treasure Hunter』のリリースを控えたT-SQUAREから、新曲を待ちわびるファンへのひとあし早いプレゼント。4月22日、東京・汐留ブルームードで行われた<Pre-Releaseツアー>のファイナルは、初披露の新曲を中心に、ライブ定番の代表曲も加え、ダブル・アンコールにも応える熱狂ぶり。“冒険”がテーマになったニューアルバムにふさわしい、フレッシュな冒険心あふれるライブの模様を、レポートでお届けしよう。
◆T-SQUARE~画像~
<Pre-Releaseツアー>とは一体何か? それはニューアルバムのリリース前に新曲をたっぷりと楽しんでもらおうという、T-SQUAREからの新たな提案。しかも初日は川崎セルビアンナイト、2日目は西川口ハーツ、そして3日目は汐留ブルームードと、“こんな近くでT-SQUAREが見られていいんですか?”という小会場ばかり。ツアー最終日となるここ汐留ブルームードは、テーブルと椅子席でドリンクとフードも楽しめる大人のライブスペース。もちろんフルハウスだ。
オープニング曲は、ニューアルバム『Treasure Hunter』の2曲目に収められている坂東慧・作曲の「Chops!!」。ゆったりとしたミドルテンポ、高速で刻まれるドラムのビート、EWIとギターがユニゾンする伸びやかなメロディ。精密なアンサンブルとキャッチーなメロディの共存は、正しくT-SQUAREの最新型だ。
「前半は新しいアルバムの曲を、後半は……その日の感じでやります。新曲ばかりですけど、ポカーンとしないで、しっかりついてきてください」
伊東たけしのユーモアたっぷりの挨拶をはさみ、新曲を立て続けに5曲。EWIをアルト・サックスに持ち替えた「Metro7」は河野啓三の作曲で、アップテンポのファンキーな曲調に合わせ、ベースの田中晋吾が強烈なスラップを響かせ、安藤正容のソロも実に滑らか。続く「Treasure Hunter」はシーケンスを使った分厚いサウンド、ストイックなキックの四つ打ちの上で、EWIとギターが情熱的なメロディを交互に吹き(弾き)まくる。T-SQUARE王道のさわやかサマーチューンに、現代的なダンスミュージックのエッセンスを取り込んだ、心躍る1曲だ。「Night Light」は安藤正容の作曲で、イントロからエモーションたっぷりの泣きのギターが炸裂する、メロウなスロー・チューン。河野の繊細なピアノ・ソロ、伊東の雄々しいサックス・ソロとの対比もお見事。
「Double Rainbow」は前曲のメロウなムードを受け継ぎつつ、ラテン風味のシンコペーションをきかせた坂東のドラミングがアクセントになり、心地よいグルーヴが楽しめる曲。田中のクールなベースソロに大きな拍手が湧いた。一転して「7-6-5」は坂東のカウントで始まるアップテンポで、T-SQUAREの持つファンク/ロック的なビートの強さを前面に押し出す。安藤の、体をよじっての渾身のギターソロを、伊東がニンマリ笑いながら見守っている。安藤も笑顔。観客も笑顔。いい雰囲気だ。
MCタイムは、安藤→河野→坂東→田中の順番でひとことずつ。安藤が「今日初めて聴いて、CDを買いたいと思っていただければ……思っていただけなかったらどうしよう」とおどけると、坂東が「今回のテーマは“冒険”です。音楽的に冒険してます」と胸を張る。最後に伊東が「今日は思いのほか、ノッてくれてうれしい。“やったー!”と思う。ありがとうございます」と、感謝の言葉で締めくくる。前半の新曲コーナーはここで終わり。ここから、後半のスタートだ。
2005年のアルバム『Passion Flower』からの「Barefoot Beauty」は、元気ハツラツのポップ・チューン。河野の弾くキーボードの爽快な音色が、涼風のごとく耳元を吹き抜ける。一転して「Behind Lavender」(2010年『時間旅行』より)は、よく弾むラグタイム風のピアノをイントロに配し、バンド全体が粘っこいグルーヴを聴かせる長尺ファンク・チューン。田中が長いソロをばっちり決めて大拍手を浴びると、安藤も負けじとアームを駆使した熱烈なソロを披露。フックではギター、サックス、キーボードがユニゾンのフレーズを繰り出して大いに盛り上げ、長い曲をまったく長く感じさせない。そして「本編最後に去年のアルバム『Paradise』からの曲を」という伊東の言葉と共に、強力にキャッチーなメロディを持つファンク/ロック・チューン「Mystic Island」と、さらにアッパーでファンキーな「Through The Thunderhead」を立て続けに。終わり近く、坂東が繰り出した千手観音のごとき猛烈なプレーには唖然呆然。前半6曲、後半4曲、新曲も代表曲も入り乱れ、大満足の80分だ。
もちろんここでは終わらない。アンコール1曲目は、ニューアルバム『Treasure Hunter』から坂東作曲の珠玉のバラード「Last Scene」。ピアノとサックスのみの静かな前半から、バンドが加わってエモーショナルに盛り上がる後半へ、構成は完璧だ。続く「Rondo」は2007年のアルバム『33』からで、ライブではおなじみの代表曲。イントロで観客は総立ち、全員揃っての指さしポーズもばっちり。T-SQUAREのファンの一体感は、いつ見ても抜群だ。
ここで終わり? いや、まだ終わらない。鳴りやまないアンコールの拍手に呼び戻されたメンバーを代表して、伊東がマイクを持つ。わずか3か所のみだったが、ツアーが楽しかったこと。新曲をリリース前に披露するツアーを、またやってみたいこと。そして、「(ダブル・アンコールは)台本にないので……」と笑いながら、「この場のふさわしい曲をやりましょう。みんな、想像してみよう(笑)」という無茶振りに答え、坂東が叩きだしたリズムは……そう、もちろん「Truth」。何百、何千回と聴いても思わず興奮するあのリズムとメロディに、観客はまたしても総立ち。コブシを上げ、体を動かし、笑顔で心地よい音の波に乗る、なんて幸せな空間だろう。
終わってみれば全13曲で100分を超える、大満足のライブ。「またツアーで会いましょう」と言ってステージを去るメンバーに、あたたかい拍手が鳴りやまない。通算42枚目のオリジナル・ニューアルバム『Treasure Hunter』は、4月27日リリース。アルバムを携えてのツアーは、7月に決まった。飽くなき“冒険”がその心にある限り、T-SQUAREは歩みを止めることはないだろう。過去を乗り越えて最高の瞬間を更新し続ける、T-SQUAREの最新作『Treasure Hunter』。ぜひ手に取って聴いてみてほしい。
取材・文●宮本英夫
T-SQUARE「Treasure Hunter」プリリリースツアー2016
セットリスト
1. Chops!! (Treasure Hunter)
2. Metro7 (Treasure Hunter)
3. Treasure Hunter (Treasure Hunter)
4. Night Light (Treasure Hunter)
5. Double Rainbow (Treasure Hunter)
6. 7-6-5 (Treasure Hunter)
7. Barefoot Beauty (Passion Flower)
8. Behind Lavender (時間旅行)
9. Mystic Island (Paradise)
10. Through The Thunderhead (Paradise)
En1. Last Scene (Treasure Hunter)
En2. Rondo (33)
『Treasure Hunter』
CD/SuperAudioCD HYBRID+DVD
OLCH-10003~4
[収録内容]
【DISC1】
1. Treasure Hunter
2. Chops!!
3. Metro 7
4. Night Light
5. 7-6-5
6. Pearl of the Adriatic
7. Double Rainbow
8. Scissors Paper Rock
9. Last Scene
【DISC2】DVD
特典映像 (DVD)T-SQUARE LOOK BACK second half of 2015
1.Prologue
2.T-SQUARE Live at「VOYAGE to Jarasum」/ Jarasum International Jazz Festival より
3.THE SQUARE YEAR END LIVE 2015 12 26 AT KOBE CHICKEN GEORGE より「Truth 」
4.THE SQUARE YEAR END LIVE 2015 12 27 AT KOBE CHICKEN GEORGE より「 Travelers」
ライブ・イベント情報
7月2日 (土)中野サンプラザ
7月9日 (土)なんばHatch
7月18日 (月)Zepp Nagoya
7月24日 (日)電気ビルみらいホール
公演延期のお知らせ!
下記3公演については、熊本・大分地震の現況を考慮し今秋に延期します。
◆7月29日(金) 大分 BRICK BLOCK
◆7月30日(土) 鹿児島 CAPARVO HALL
◆7月31日(日) 熊本B.9 V1
問合せ:RGプランニング 096-320-8777(平日10時~18時)
中止ではなく延期です。お手元にチケットを既にお持ちの方はそのままお持ちください。
只今日程調整中ですので、日程が確定し次第、オフィシャルサイト、 Facebookファンページでお知らせします。
被災された皆さまには、心よりお見舞い申し上げます。
また、一日も早い復興がなされることをお祈り致しております。
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