【インタビュー】T-SQUARE、41枚目にして現在進行形のバンドらしい“夏”のアルバム『PARADISE』
デビューから1年も休まず、積み上げたオリジナル・アルバムの数はなんと41枚。王道と変化の絶妙なバランスを取りながら進化し続けるT-SQUAREだが、今度の新作は格別だ。“夏”“リゾート”というテーマのもと、“変わらぬスクエアらしさ”をキープしつつ、常に新たな挑戦を盛り込んだ野心作。『PARADISE』に込めた思いを、安藤正容、伊東たけし、河野啓三、坂東慧に聞く。
◆T-SQUARE~画像~
■今回のアルバムは坂東のソロも強烈だし晋吾のソロもすごい
──今の4人が揃ってから、だいたい10年くらいですか。
安藤正容(以下、安藤):まる11年かな。河野くんは正式メンバーになる前、2000年ぐらいからサポートしてもらってるから、もっと長いですけど。
──歴代の中でも、かなり長いほうですよね。同じメンバーで続けている期間は。
安藤:一番長いんじゃないですか? たぶん。
──ずばり、長く一緒に続ける秘訣というと。
安藤:そんなものはないです(笑)。まあ、みんながスクエアの音楽が持っている、ポップで明るくて、ジャズ的要素もあって、自分の気持ちが表現出来るという、こういう音楽を愛しているという部分が一番大きいんじゃないかな。それが共通項としてあるから、やっていられるんじゃないですか。……違う?
伊東たけし(以下、伊東):いや、いいんじゃないですか(笑)。
──今回のアルバムも、T-SQUAREらしさがしっかりある上に、新しい試みもいくつかあって。すごく新鮮に聴かせてもらいました。どんなイメージで、作り始めたんですか。
安藤:何か、お題があったんだよね。
伊東:そう。“リゾート”というのが。
安藤:そういう感じでやりましょうという提案がチーフ・プロデューサーからあったので。でも、そのお題があったぐらいで、あとは本当に自由に、今みんなが“これがカッコいい”と思うものを作り上げていったという感じですね。
──T-SQUAREとリゾート。ぴったりだと思います。
安藤:昔から“スクエアって夏だよね”って、言われていましたからね。夏になると、ジャズフェスにいっぱい出たりしていましたから。最近は全然出ていなかったですけど、去年から新しいマネージャーになって、彼の提案で、地方のジャズ・フェスにも出るようになって。冬よりは夏がいいよね?
伊東:そうだね。スクエアは基本的に、暗い方向とか、おどろおどろしい世界とかには行かないんで(笑)。バラードを聴いても、“よし、明日からまた頑張ろう”みたいな気持ちになるようなものだし、速い曲にも、爽やかな疾走感や透明感があるし。そのへんがスクエア流というか、時代とともにサウンドは変われど、ブレないでずっとあるものだと思います。
──今回は、全9曲のうち5曲を坂東さんが書いていて、大活躍ですけども。作曲は、まずは“リゾート的な”というお題をもらってから……。
坂東慧(以下、坂東):そうですね。実は今回、僕がT-SQUAREに参加して、オリジナルアルバムは10枚目なんですよ。特別な節目なので、気合を入れて、曲もたくさん書いて出しました。昔からスクエアのファンで、リゾート感とか、カラフルな感じがとても好きだったので、そのイメージを浮べながら曲を書きました。
──1曲目、坂東さんの「Mystic Island」、めちゃめちゃカッコいいです。ファンキーで、メロディアスで、踊れる曲。
坂東:ちょっと昔の、ジョージ・デューク的な感じを入れつつ、フュージョンっぽい決めも入れつつ。でもちょっと新しめな、普通ではないような決めも入れて。
安藤:この曲、ものすごく難しいんですよ。これはどういうことなんだろうな?って、譜面を見ても全然わかんない。変拍子でね。
伊東:よくあんな四拍三連の、決めのあるところで、ソロをやるよな。
安藤:今回のアルバムは、坂東のソロも強烈だし、晋吾(田中晋吾、ベース)のソロもすごいカッコいい。みんなすごかったですよ。おじいちゃんはもう、ついていけません。
──何を言ってるんですか(笑)。
坂東:でも「Mystic Island」の安藤さんのソロ、ぶっとびましたよ。
伊東:あれはぶっとんでるよ! おかげでこっちも、ソロをやり直したんだから。
安藤:何をやったか覚えてないんだけど(笑)。でも対抗しないとダメじゃないですか。何か印象に残ることしないとマズイよなって。この人たちは楽勝なんですよ、何をやるにも。
坂東:そんなことないです。
安藤:こっちは必死でやってるのに、“あ~楽しい~”って感じ。最近の若いミュージシャンは……坂東は幾つだっけ?
坂東:今年で32です。
安藤:もう若手とは言えないかもしれないですけど、でも本当に最近は、若い日本人ミュージシャンの技術的レベルがものすごく上がっていて。僕らが二十歳ぐらいの頃とは全然違うなというのをものすごく感じますね。
伊東:それはやっぱり、情報が全然違うから。僕らの頃は洋楽にあこがれるしかなかったけど今は“これはどこの国から来たものだから”という感覚ではやってない気がする。世界中のどこにある音楽でも、興味があればいくらでも聴ける時代ですよね。時代背景が、我々の頃とは違うなと思います。
安藤:世界との垣根があんまりないというか、逆に日本人のほうがうまいんじゃね?というぐらい、特にドラマーはいろんな人が出てきているし。
伊東:坂東なんか、世界でも5本の指に入ると思うよ。技術的なレベルだけでとらえたら、とんでもない人はいっぱいるけど、そこに音楽性がないと意味がないんで。坂東は本当に面白くて良い曲を書くし、世界レベルだと思う。錦織圭と同じぐらい。
坂東:いえいえ……全然です。
伊東:(安藤に向かって)俺、最近思うんだけどさ。
安藤:なんでこっち向いてしゃべるの(笑)。
伊東:リズムというのが、一番時代を投影してるような気がするのよ。もちろんメロディとか和声とか、その時によっていろいろあると思うし、テンション感も変わって来てるけど、リズムが一番その時代をうまく映し出してる感じがする。自分がこのバンドのメンバーでいながら、こんなこと言うのは変だけど、「Mystic Island」のビート感はすごいよ。“これが今なんだ”ということをすごく感じたね。それはアルバム全体がそうなんだけど、特にこの1曲目でノックアウトされる感じがあったから。じゃあ何がそうなのか?と思ったら、やっぱりリズムじゃないかと。
──はい。なるほど。
伊東:ざっくり言うと、たとえばディキシーランドがあって、スウィング・ジャズがあって、ビバップがあって……って、ジャズの世界では出てきたでしょ。明らかにそこで、何かが変わってるわけじゃない? その中で自分がどうやったらみんなが喜んでくれるのか?と思うと、リズムに対しての考え方が、ミュージシャンの中で違ってきたんだと思うんですよ。どっちが先か?というのは、いろいろあるだろうけど、そこに触発されてこっちも変化していくことで、何かをつかんだ時に“あ、これいいな”と思えるようになる。自分の30年前のフィーリングのままでやってたら、どこか乗っていけないというか、これは違うなと思いながらただやっていくことになりかねない。音楽はやっぱりメンバーに触発されて自分の何かが変わっていくことがあるんだけど、特にそのへんが、今回はすごく感じましたね。
安藤:……よくわからなかった。
全員:(笑)。
安藤:リズムが時代を反映してるということ?
伊東:そう。そこに「今だ」と思えるものがあって、フューチャーを感じるというか。……まあいいや。安藤のほうを向いてしゃべったのが間違いだった(笑)。
──安藤さん天然すぎます(笑)。でも、リズムが時代を反映するというのは実感としてすごくわかりますね。
伊東:ドラムとベースは音楽の要だから。たぶんどんな音楽でも、そこがドン! とあるかどうかで、すべてが決まってしまうぐらいのものだと思うので。そこが変化していくことが、とても時代を映し出してると思います。
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