【ライブレポート】MONOBRIGHT、瀧谷ラストツアー地元公演で「悔いなく終われるように」
MONOBRIGHTが2015年6月8日、札幌sound lab moleにて<MONOBRIGHT TOUR2015「旅立ちと瀧谷」>の初日公演を開催した。同ツアーは脱退を発表しているドラマー瀧谷翼のラストツアーであり、札幌はMONOBRIGHTの地元である。そのライブの模様をお届けしたい。
◆MONOBRIGHT 画像
2015年6月8日、ちょうど19時。「10分押しでの開演」という連絡が楽屋のメンバーに届けられた頃、“タッキー”こと瀧谷翼(Dr)に、このツアーへの意気込みを聞いた。
「ラスト3本なので、悔いなく終われるように……やるだけです」──瀧谷
そのコメントを聞いていた出口博之(B)は、プロレスラー橋本真也のモノマネで「時は来た!」と呟き、メンバーの笑いを誘う。それに応えるように、桃野陽介(Vo&G)が口を開く。「まぁ、“いつも通り”っていうことですよ(笑)。でもタッキーって、ある意味でパンクですよね。多少のことじゃ変わらない。常に一貫した姿勢を貫いていて、何ごとにも動じない」(桃野)。すぐさま松下省伍(G)は、「いや、“動じない”んじゃなくて、あんまり感じてない(爆笑)」とツッコミを入れる。このように、本番直前の楽屋には感傷的な空気は一切なく、笑いに包まれたリラックスしたムードで開演を待っていた。しかし、そこに確実にあったものは、これまでのどのツアーとも違う、4人にとって大切な、そして特別なツアーだという全員の想いだった。
4月28日、突然発表された、オリジナル・メンバーのひとりである瀧谷のMONOBRIGHT脱退。同時に、現体制でのラスト・ライブとなる<MONOBRIGHT TOUR 2015「旅立ちと瀧谷」>が告知された。そのツアーに臨む4人の気持ちが知りたくて、そして、4人が地元・札幌で行う最後のライブを体感したくて、ツアー初日、会場である札幌sound lab moleへと足を運んだ。
▲桃野陽介(Vo&G)画像4点 |
《あなたと私の数奇な運命は…》
このタイミングで歌われるこの歌詞は、これまで以上に深く心に響いてくる。ところが。
《…それでも泳ぎ出す/この人、大丈夫ですか……》
▲松下省伍(G)画像2点 |
▲出口博之(B)画像2点 |
すぐさま、「札幌で培った旨味を凝縮した曲」(桃野)として、「紅色ver.2」など、札幌時代に生み出した曲を“懐かしのコーナー”と銘打ち、披露していく。その後は、今回のツアーの目玉とも言うべき“瀧谷翼リクエスト・パラダイス”へ。つまり、瀧谷が好きなMONOBRIGHTの楽曲を演奏しようというコーナーだ。
ここでは、瀧谷自身もマイクを手に取り、1曲ごとにコメントしていくのだが、
「「目下の少年」(シングル「WARP」カップリング)は、僕が一番推してきた曲です」──瀧谷
「でも、“少年”をテーマにしたツアーの時でさえ演奏しなかったから、曲を思い出すのに7年かかった(笑)。皆さん、新曲のつもりで聴いてください」──桃野
「「The2」(アルバム『monobright two』収録)は、メロが明るいので、気持ちの高まりを求めて選びました」──瀧谷
「メロが明るい曲は他にもあるし、先に皆さんに言っておきますが、きっと“高まり”とは一致しません」──桃野
など、瀧谷と桃野の絶妙なやり取りで、観客を笑わせながら、瀧谷ならではのセンスで選び抜かれた曲たちが演奏されていく。
「僕らの「旅立ちと少年」っていう曲は、前に進んでいこうとする時に、留まっていてはいけない場所だとか、置いていかないといけない気持ちとかを歌った曲。そういった気持ちとかけて、今回のツアー・タイトルを決めました。タッキーも、僕らも新しいことをやっていくんだ、と。そんな“新しいこと”にピッタリな古い曲(笑)をやってもいいですか!? 瀧谷と一緒にJOYっちゃってもいいか、札幌!」──桃野
桃野のシャウトで、ステージもフロアも一気にテンションを高めると、ライブ後半戦は、「JOY JOYエクスペリエンス」を筆頭に、桃野曰く「ド盛り上がり曲」を連発。桃野、松下、出口、そして瀧谷という4人だからこそ生まれるグルーヴで観客を揺らし、そのビートに会場は酔いしれる。この快感を、絶対に逃すまいと。しかし、楽しい時間はあっという間に過ぎていく。とうとう、最後の曲を迎えた時、桃野は、「本当は……まあいいか、この話は」と、一度は話をやめようとしながらも、最後に語った。
「脱退ってなったらさ、やっぱり険悪な雰囲気になるじゃん。それに、脱退が決まってる状態で、ライブをやるのはどうだろうか?っていう気持ちもあるわけで。でも、そこから4人がライブに向けて一丸となれたのは、オリジナル・メンバーの4人で、皆さんに挨拶がしたいと思ったんです。その気持ちに応えてくれて、ありがとうございます。いつもは、観客の皆さんに曲を届けるためにライブをやっていますけど、今日は、僕ら自身やスタッフも含めて、moleにいる人全員に捧げます」──桃野
こうして「旅立と少年2」を熱演し終えると、本編が終了した。
◆ ◆ ◆
▲瀧谷翼(Dr)画像6点 |
「あれだけ無口なヤツが、自分から“辞めたい”って言い出すんだから、それだけ覚悟を決めてのことだと思ったんです。だから、それから話し合いもしたけど、僕らも覚悟して。僕はメンバーの中で、タッキーとの付き合いが一番古いんですよ。前の前のバンドの時から、僕がやってきたバンドのドラムは、常にタッキーでしたから。
ちょうど去年の終わり頃から、みんな個人活動をやって、そこで吸収したものをMONOBRIGHTに持ち帰ったら、どんな曲が生まれるんだろうっていうことを話していたんです。そろそろ、そういうことをやってもいい時期なんじゃないかって。それで、でーさん(出口)がDJをやったりする中で、タッキーのことがあって。だから、タッキーの脱退を受けて、個人活動を始めたわけじゃないんです。本当の順番は逆。ただね、このタイミングでいろんなことが重なって、これはきっと、そろそろ僕らも変化しなきゃいけないっていう時期なんだろうなと思ったんです。だから今は、すべてを前向きに受け止めています。
ずっと変わらずに、この4人でやっていくことが、本当は僕の理想でした。変わらないバンドとして、(ザ・ローリング・)ストーンズや怒髪天さんが、僕の憧れでしたから。それで僕も、“この4人じゃなきゃダメなんだ”って、ずっと言い続けてきたんですよ。でもひょっとしたら、それで無理に付き合わせてしまったのかなっていう想いも、タッキーに対して持っています。ただ改めて考えたら、僕らにはデッカイ出入り(ヒダカトオル/現・日高央の加入&脱退)もあったわけで(笑)、今は、4人で続けること自体にこだわるよりも、MONOBRIGHTで音楽をやりたいのかどうか、その大前提を大事にしようと思っています。個人活動だって、MONOBRIGHTっていう母体があるからこそできることだし、やろうという気持ちになるわけで。ファンのみなさんには、複雑な想いをさせてしまうかもしれませんけど、僕らは前向きなので、これからのMONOBRIGHTと、これからのタッキーを見守ってもらえると、嬉しいですね」──桃野
一方の瀧谷も、当然ながら考えに考え抜いた末での、第二の人生スタートという決断だったようだ。
「スッキリと決められました。もちろん、そこにいくまでは長かったですけど。ただ、悩みながら一緒に続けていくのも、皆に悪いなと思いましたし……」──瀧谷
そして、3人の反応について質問すると、瀧谷は、「一度言い出したら聞かないっていう(自分の)性格を、みんな分かってくれていたんだと思います(笑)」と、いつものように笑った。
◆ ◆ ◆
▲MONOBRIGHT瀧谷翼(Vo.ver.)画像2点 |
ダブル・アンコールでは、デビュー曲「未完成ライオット」の演奏でライブを締め括ると、瀧谷の“生声”による音頭で一本締めを行い、約110分間におよぶライブの幕を降ろした。涙腺が緩む瞬間は何度もあったが、そこに悲壮感はなく、あくまでも彼ららしい、ムダに熱くて、ものすごくハッピーなライブだった。そのステージを照らしていたライトが消えた瞬間、それは同時に、瀧谷とMONOBRIGHTの旅立ちの瞬間でもあった。
▲MONOBRIGHT機材 画像3点 |
「今日は、よかったんじゃないですかね。僕らとして、お客さんに言わなきゃいけないことはきちんと伝えつつ、しみったれた感じにならない、そんなライブにできたんじゃないでしょうか」──松下
「しっかりと楽しめました。もし初日が、札幌じゃなくて、東京とか大阪だったら、もっと気負っていたかもしれない。札幌から始められて、いい意味で気持ちを緩められたという心地よさがありました。これまで、年々“いいライブをしなきゃ”って、気を張っていた部分があったんです。でも今日は、無理せずにできたっていうのかな。“疲れたら休め!”とかいつも歌ってるくせに、自分がそれを一番できてなかったというか(笑)。ようやく、そういったことが分かったような気がしました」──桃野
「楽しかったです。途中で、すごくグッとくるものもありましたけど……皆さんのおかげで、楽しい時間を過ごすことができました」──瀧谷
地元・札幌でツアー初日を終えたMONOBRIGHTは、続く大阪、そして東京でのライブを最後に、瀧谷は新たな人生を選び、桃野と松下、出口の3人は、MONOBRIGHTを続けて行くことを決めた。一度きりの人生で、覚悟を決めての再スタート。かつて少年だった未完成な4人の旅立ちにエールを送ると共に、バンドにとっての大きな転機をチャンスに変えるべく、新生MONOBRIGHTがこれから奏でる音楽に、心から期待したい。
文・撮影◎布施雄一郎
■<MONOBRIGHT TOUR2015「旅立ちと瀧谷」>
2015年6月8日@札幌sound lab moleセットリスト
M02.あの透明感と少年
M03.トライアングリー
M04.紅色ver.2
M05.20th Century Lover’s Orchestra
M06.WARP
M07.アナタMAGIC
M08.目下の少年
M09.The2
M10.いとをかし
M11.雨にうたえば
M12.JOY JOYエクスペリエンス
M13.英雄ノヴァ
M14.踊る脳
M15.空中YOU WAY
M16.COME TOGETHER
M17.旅立と少年2
encore
E01.ハイスクールキュンキュン(Vo.瀧谷Version)
E02.未完成ライオット
◆MONOBRIGHT オフィシャルサイト
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