【ライヴレポート】geek sleep sheep、ストレイテナーと対バン「幸せな3分間でした」

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geek sleep sheepが6月7日、東名阪ツアー<tour geeks 2015>のファイナル公演を赤坂BLITZにて開催した。

◆geek sleep sheep 画像

同ツアーは各会場ごとにゲストアーティストを迎え、対バン形式で行われるもの。愛知・名古屋ELLにヒトリエ、大阪・梅田クラブクアトロにPeople In The Box、そしてここ東京・赤坂BLITZにはストレイテナーが招かれた。なお、対バン形式のツアーというgeek sleep sheep初の試みに加え、3公演にはそれぞれカバー楽曲をセットリストに組み込むという企画を実施。大阪公演ではPeople In The Boxの山口大吾とyukihiroによるツインドラム共演が実現するなどサプライズも満載なツアーだが、その最終日は、やはり多くの化学反応が生まれる結果となった。

▲ストレイテナー

開演時間の18時に場内が暗転。ギターのフィードバック音が鳴り響くと、「The World Record」からストレイテナーのステージがスタートした。22インチのバスドラムから発せられるナカヤマシンペイの4つ打ちビートは重くタイトだ。いわゆるダンサブルな4つ打ちとは異なる攻撃力の高いビートが、のっけから会場を煽りまくる。ひなっちの躍動するスラップや大山純の16ビートを基調としたシーケンスフレーズなどアンサンブルも高度。インターでホリエアツシが「一緒に声を上げませんか!?」と語りかけると、場内に「oh~ohoh~!」のシンガロングが轟いた。さすがは巨大フェスのメインステージを幾度となく務めてきたバンドだけに、パフォーマンスや演奏力に隙がない。わずか1曲で赤坂BLITZを灼熱地帯に変えてしまった。

▲ストレイテナー/ホリエアツシ(Vo&G, Key)

「<tour geeks 2015>にお誘いいただきました。俺たち、ストレイテナーといいます。よろしくお願いします」。ホリエによる一発目のMCに続いて演奏されたナンバーは「羊の群れは丘を登る」。おそらく“羊”という単語がgeek sleep sheepというバンド名に入っているからこその選曲だろうか。イントロのギターリフが鳴らされただけでフロア全体が沸く。さらには読売テレビ「キューン!」テーマ曲「シンデレラソング」が披露されるなど会場の熱気は上昇気流を描くように高まるばかり。

▲ストレイテナー w/ momo kazuhiro(geek sleep sheep)

「geek sleep sheepから、momo kazuhiro!」

中盤にはホリエがmomoをステージに招き入れるというサプライズも。赤いムスタングを抱えて登場したmomoは、シンペイが繰り出したリズムに合わせるようにセッションを。シンペイが16ビートを刻むと、そのサウンドがやがて彼らの代表曲のひとつ「KILLER TUNE」のイントロリフへ変化した。同曲の2番ではmomoがメインヴォーカルを務めたほか、大山純のギターソロにオブリをかぶせるなど、5人編成の「KILLER TUNE」が鮮やかで烈しく、新鮮さをともなって届けられた。曲の演奏が終わると颯爽とステージを去ったmomoの姿も潔い。

▲ストレイテナー/大山純(G)

前述したように<tour geeks 2015>は、3公演それぞれカバー楽曲をセットリストに組み込むという企画を実施している。この夜のカバーテーマは“90’s UK”だ。90年代英国ロックバンドからの影響も公言しているストレイテナーだけに、どんなカバーを披露してくれるか、その選曲に注目が集まるところ。ステージ中央にセットされたキーボードスタンドにホリエが移動して披露されたナンバーはSPIRITUALIZEDの「Electricity」だった。フロアタムの重いリズムと8ビートの刻みがどこまでも疾走するアレンジはサイケな原曲とは異なるもの。BPMも上げてスピード感に溢れた完全ロックアレンジが客席をアッパーにさせた。

▲ストレイテナー/日向秀和(B)

「SPIRITUALIZEDの「Electricity」という曲でした。<tour geeks 2015>のコンセプトで「何かカバーをやれ」という先輩からの命により、今日この曲を、すごい久しぶりです。momoさんはさっきロックスターのように出てきて、去って行きましたけどね」──ホリエアツシ

「東洋のジョニー・デップでしょ。もう10年くらい前からオレら、そう呼び続けてるもんね。イヤモニをしてるんですけど、ここからmomoさんの声が聞こえてくる「KILLER TUNE」が幸せな3分間でした。あと私的には、ドラムの大先輩のyukihiroさんが楽屋の扉の向こう側にいらっしゃるというだけでもう。事前に御挨拶はさせていただいたんですけど、通常、対バンだと出番直前に“先に行ってきます”って挨拶してからステージに向かうんですね。yukihiroさんの楽屋に行ったんですが、扉の中からパッドを叩く音だけが聞こえてきて。どうしてもノックができなかったんです。結局は挨拶が出来なかったので、終演後に“超よかったです!”という感想を取っかかりに、yukihiroさんとおしゃべりできればいいなと思ってます!」──ナカヤマシンペイ

▲ストレイテナー/ナカヤマシンペイ(Dr)

と、先輩へのリスペクトに笑いを交えながら語る2人へ場内から拍手喝采が。さらには「345ちゃんの透明感のある歌声も楽しみ。今日はお楽しみが盛りだくさんです!」と煽るホリエのMCに客席が大きく反応した。「ストレイテナーのバラードソングを聴いてください」との紹介で披露された「シンクロ」はひなっちが奏でる和音とホリエの歌から静かに始まるナンバー。それまでの興奮を高める楽曲とはまた違った優しい肌触りが心地よい。

▲ストレイテナー

後半はホリエがアコースティックギターを手にした「彩雲」、最新シングルにして6/8拍子を巧みに織り交ぜた「The Place Has No Name」、彼ら本来の持つグッドメロディはもとより、ワウを使ったソロがエモすぎる「冬の太陽」と人気曲を連発。「“BLOW! THE MELODIC STORM”。良かったら一緒に歌ってください」とラストナンバーの「Melodic Storm」でサウンドの嵐を巻き起こし、約1時間全11曲のステージに幕を閉じた。対バン形式の限られた時間の中で、デリケートな感情の揺れまでもしっかりと音に感じさせてくれるアーティストは少ない。ストレイテナーは、その数少ないバンドのひとつだ。

舞台転換時にはyukihiroとシンペイのドラムセットが横並びになるレアな瞬間もあって、おそらく会場のドラムマニアたちがニヤリとしたに違いない。また、機材がセットされたgeek sleep sheepのステージ上は3人の機材間の距離が非常に近い。これはおそらくどんな広いステージであろうと変わらぬ距離なのではないだろうか。会場の大小は関係ない。いつも同じスタンスで、ただ最高のサウンドを鳴らすだけ。そんな彼らの意気込みが伝わるようなセッティングだ。

▲geek sleep sheep

geek sleep sheepの登場SEはThe Velvet Undergroundの「Candy Says」。アルバム『candy』をリリースしたばかりの彼ららしい粋な選曲に、またニヤリとさせられる。yukihiroはドラムセットに座るなり、スティックを回しながらmomoと345とアイコンタクトをとった。ハイハットを左右の手で交互に4つ叩くとオープニングナンバー「feedback」のスタートだ。そのイントロで「we are geek sleep sheep!」と叫んだmomoにフロアが大歓声で応えた。

▲geek sleep sheep/momo kazuhiro(Vo&G)

以前のBARKSインタビューでmomoは、「前作よりも意識的に方向性を絞ったようなところもあるんです。個人的にはギターをもっとガンガン弾きますって(笑)。そんなにハードすぎず、ノイジーなギターだけど美しい」と2ndアルバム『candy』について語ってくれた。オープニングからの2曲はまさにそれ。momoのスリリングなギターリフを核にしたオルタナサウンドがうねりを上げると、345の16ビートを意識したタイトなベース音が乗り、yukihiroのドラムが重みと疾走感に満ちてどこまでも高揚していく「feedback」。続く「planet ghost」では、深いリヴァーブの掛かったシューゲイザーなギターサウンドが無重力を描くように漂う。ステージからは5つの照明が天井へ向けて放たれ、それを反射したミラーボールの光が場内を駆け巡る演出も楽曲の持つ浮遊感を演出するのに一役買っていたようだ。

▲geek sleep sheep/345(Vo&B)

そして注目は「lost song」にあった。yukihiro作詞作曲による同曲はシンセの味付けが施された音源が印象的だが、ライヴの場ではNO SYNTHESIZER。完全3ピースによる生バンドアレンジで届けられた。他人にお任せ的な邪念のない必要最小限のトリオアンサンブルは演奏に高いテンションを加え、楽曲本来の哀愁をより際立たせるニューウェーヴサウンドが儚く美しい。シーケンサーや打ち込みでは太刀打ちできないほどシンプルで強靱なリズムはライヴならではのものだ。

▲geek sleep sheep/yukihiro(Dr)

「<tour geeks 2015>へようこそ! 『candy』っていう2ndアルバムをリリースしまして、東名阪ツアーを廻ってきました。甘くて、クセになる、いいアルバム。ライヴ向きの曲をたくさん作りましたから。今日はその中から聴いてもらえたら」──momo kazuhiro

その言葉通り、この日のセットリストはほぼアルバム『candy』収録曲から。静寂と狂気の狭間でピンと張り詰めた「Candy, I love you」、廃退的な美しさを持つ「Addicted」など音数の少ない楽曲にこそ現在のgeek sleep sheepのタフさが色濃く映し出されるような気がして、そのエンディングパートで3人が向かい合って演奏する姿に1音1音の凄味と重さが感じられた。そしてステージはお待ちかねのカバーコーナーへ。

▲geek sleep sheep

「<tour geeks 2015>の初日名古屋はヒトリエさんに出てもらって、一緒に何かやろうと思ったんだけど「緊張する」ということで(笑)、打ち上げで最高に盛り上がりました。大阪はPeople In The Boxの山口大吾が乱入してくれて、一緒にカバーをやりましたね。今回のツアーは各地にカバーテーマというものを設けまして、名古屋が“ポストロック”、大阪が“80’s UK”。そして今日が“90’s UK”。“90’s UK”といえばこの人、という方をお迎えしましょう。ストレイテナーのホリエアツシ!」──momo kazuhiro

「僕の青春時代が90年代で。もっぱら90年代のUKロックに影響を受けて、こんな風になっちゃいました(笑)。2000年代はUSを聴いていたんですけど、90年代の終わりくらいの暗~いUKロックが染みついているので。今日セッションさせていただく曲は、geek sleep sheepとしてカバーしたことのあるリストに入っていた曲です」──ホリエアツシ

そのリストの中からホリエが選んだというナンバーは、momo曰く「geek sleep sheepが初めて3人でスタジオに入って演奏した曲でもあるんですよ。yukihiroさんがチョイスした曲」とのこと。さらにホリエは、「そのバンドが僕の青春なんですよ。東京に出てきて初めて観たライヴが、Mansunで」と続け、偶然とも必然とも言える楽曲セレクトの意図を明かした。そして演奏された「Wide Open Space」はメインヴォーカルをホリエが担当。momoがリードギターとコーラス、345がベースとコーラスを務めるなど4人編成のgeek sleep sheepという贅沢なアンサンブルを響かせた。

▲geek sleep sheep/momo kazuhiro(Vo&G)

ホリエがステージを降りた後もカバーは続き、Curveの「Horror Head」を披露。Curveと言えばacid androidの1stミニアルバムにヴォーカリストのトニ・ハリディが参加するなどyukihiroとは親交のあるアーティストだ。轟音の壁が厚いシューゲイザーサウンドの中、345の透明な歌声が爽やかに響き渡った。ちなみにこの日のmomoは『candy』リリース前のインストアイベントで初御披露目をしたマッチングヘッドの赤いジャガーを1曲を除く全曲で使用。オルタナやシューゲイザーの代名詞的なギターだけに、現在のgeek sleep sheepサウンドを象徴するようにも感じられて味わい深い。

▲geek sleep sheep/345(Vo&B)

ライヴ恒例“ジャパネット345”のグッズ紹介コーナーを挟んで、後半は「不思議な不思議なサーカス団の歌を唄います」というmomoのMCから「Strange Circus」へ。イントロやインターに7/8拍子を配した疾走ナンバーは、しかしmomoと345のユニゾンによるメロディラインがポップなロックソング。フロアタムのビートやタム回し、サビの後半で数小節だけ飛び出す4つ打ちなど、起伏が激しいyukihiroのリズムも楽曲をカラフルに演出する。とりわけそのエンディングでのドラムプレイは感情がレッドゾーンに突入したかのように打ち鳴らされて激しい。さらには「kaleidoscope」「kakurenbo」と怒涛のチューンを連発。「ライヴ向きの曲をたくさん作りましたから」というmomoのMC通り、ある意味バンドとオーディエンスとのテンションの高く、そしてピースフルな一体感がそこにあった。

▲geek sleep sheep/yukihiro(Dr)

アンコールに応えて再びステージに登場するなり、3人それぞれがノイズを奏でた。「MOTORCYCLE」というmomoの叫びからスタートした同曲は、キレ味の鋭さとずっしりとした重さを兼ね備えたビートが凄まじい。いきなり野球に例えて恐縮だが、そんな球種を持つピッチャーがいれば誰も打ち返すことなど不可能な無敵のサウンドが目の前で繰り広げられる。もともとはLOVE AND ROCKETSのカバー曲ではあるものの、もはやgeek sleep sheepオリジナルと言いたくなるほどの完成度の高いサウンドにフロアが身を委ねる光景が印象的なものとなった。

▲geek sleep sheep

そしてツアーを締めくくるナンバーは「hitsuji」。ラストナンバーとしてお馴染みとなった同曲は、会場の熱気をクールダウンさせるように優しく響く。万感の思いをこめたラストソングにフロアの合唱も混ざり合い、会場全体をひとつにするバンドとオーディエンスの理想的な関係がそこに築かれた。すべての演奏を終え、ステージからの去り際に左手を挙げて歓声に応えたyukihiro。その姿にツアーの充実度がうかがい知れて、全1時間半全13曲のgeek sleep sheepのステージ、そして東名阪ツアー<tour geeks 2015>が大盛況のうちに幕を閉じた。

▲geek sleep sheep

バンドは8月22日、CULUB CITTA'にて<confusion bedroom vol.4 with candy>と題したライヴを開催する。同ライヴは、2014年10月にLIQUIDROOM EBISUで行われた<confusion bedroom vol.3>以来、約11ケ月ぶりのワンマン。ライヴタイトルにもあるように、ニューアルバム『candy』の世界観をフルスケールで体感できる場となりそうだ。

取材・文◎梶原靖夫(BARKS)
撮影◎河本悠貴(geek sleep sheep)/石川浩章(ストレイテナー)

■東名阪ツアー<tour geeks 2015>
2015年6月7日@赤坂BLITZセットリスト

【ストレイテナー】
01.The World Record
02.Super Magical Illusion
03.羊の群れは丘を登る
04.シンデレラソング
05.KILLER TUNE(w/ momo kazuhiro)
06.Electricity(Spiritualizedカバー)
07.シンクロ
08.彩雲
09.The Place Has No Name
10.冬の太陽
11.Melodic Storm

【geek sleep sheep】
01.feedback
02.planet ghost
03.lost song
04.Candy, I love you
05.Addicted
06.Wide Open Space(w/ホリエアツシ Mansunカバー)
07.Horror Head(Curveカバー)
08.night cruising
09.Strange Circus
10.kaleidoscope
11.Kakurenbo
encore
en1.MOTORCYCLE
en2.hitsuji



■<confusion bedroom vol.4 with candy>

2015年8月22日(土)神奈川・川崎 CLUB CITTA'
開場17:00 / 開演 18:00
チケット料金:¥4,300(税込)※入場時ドリンク代500円必要
※高校生以下は学生証提示で当日会場で500円のキャッシュバックを受けることができる学割サービスを実施
(問)DISK GARAGE  (TEL) 050-5533-0888 (平日12:00~19:00)

■2ndアルバム『candy』

2015.5.20 on sale
【初回限定盤(CD+DVD)】VIZL-815 ¥3,800(+tax)
【通常盤(CD)】VICL-64341 ¥2,800(+tax)
1. kaleidoscope (Words & Music : kazuhiro momo)
2. feedback (Words & Music : kazuhiro momo)
3. planet ghost (Words & Music : kazuhiro momo)
4. night cruising (Words : kazuhiro momo, yukihiro/Music : kazuhiro momo)
5. rain song (Words : geek sleep sheep/Music : kazuhiro momo)
6. floating in your shine (Words : 345/Music : kazuhiro momo)
7. lost song (Words & Music : yukihiro)
8. happy end (Words & Music : kazuhiro momo)
9. Addicted (Words & Music : kazuhiro momo)
10. Candy,I love you (Words : kazuhiro momo, yukihiro/Music : kazuhiro momo)
11. kakurenbo (Words : kazuhiro momo/Music : yukihiro)
12. color of dream (Words : 345/Music : kazuhiro momo)
-BONUS TRACK-
MOTORCYCLE(初回限定盤のみ収録・LOVE AND ROCKETSのカヴァー)
<初回限定盤DVD>
1. kaleidoscope(Music Video)
2. feedback(Music Video)
3. hitsuji(LIVE at LIQUIDROOM)
4. Weekend Parade(LIVE at LIQUIDROOM)

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◆ネットラジオ『geek sleep sheepの真夜中にお腹が空いたら』
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