【ライブレポート】『音楽と人』主催イベントで「だから、ありがとうを返します」

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【4月19日(日)@新木場STUDIO COAST──二日目レポ】


▲シュリスペイロフ

二日目となる4月19日、開演時間前のギャラリースペースには前日に続いてアーティストの私物博覧会が。the pillowsの飛行船やバスターくんぬいぐるみをはじめ、a flood of circleの佐々木亮介のノートや衣装、go!go!vanillasの長谷川プリティ敬祐の蝶ネクタイ一式、LAMP IN TERRENの手描きイラストなどが展示され、フェス気分を一層盛り上げてくれる。メインステージの「ARENA STAGE」ではオープニングアクトのシュリスペイロフが場内の熱をじわじわと高ぶらせ、いよいよ<音楽と人LIVE 2015 ローリング・サンダー・レビュー>の二日目が幕を開けた。


▲KNOCK OUT MONKEY

13時ちょうど、「ARENA STAGE」に登場したのはKNOCK OUT MONKEYだ。「RIOT」よりスタートした彼らのステージは、第1音からしてテンションマックスの熱演。激しく弦を叩きつけるベースのスラップソロは心拍数を煽り、続くギターのチョーキングサウンドが会場高く突き抜けて痛快だ。圧巻は、中盤の「How long?」「Greed」といったシングルナンバーの連発。「How long?」でさらりと聴かせるベースのタッピングや、「Greed」のベンチャーズを彷彿とさせるテケテケギターなど、キャッチーなメロディを中心に据えながらも、多彩なアンサンブルと個々の高度な演奏力が散りばめられた楽曲で会場を踊らせつつ、説得力を持って聴かせてくれる。

後半のMCでw-shunは、「音楽と人は深いところまで掘り下げてくれる雑誌です。樋口副編集長の圧力が凄いんです。眼光が鋭いから、なんかオレ悪いことしたみたいになってスミマセンと謝るっていう(笑)。でも、本気でしゃべれる人、本音で語れる雑誌です」と音楽と人のイベントに参加出来ることの喜びと信頼感を語り、全9曲を駆け抜けた。


▲最終少女ひかさ

「TENT STAGE」で、狂気と人懐っこさの狭間を行き来するように刺激的で開放的なパフォーマンスをみせたのが最終少女ひかさ。そのバンド名から女子中心のバンドを連想するかもしれないが、そうではない。ロックスタイルの男性4ピースに女性キーボードを加えた5人組“北海道が生んだ北の最終兵器”から放たれるサウンドはソリッドで鋭い。テントの屋組となるトラスをつたってフロア後方へダイブするボーカル但野のキレたパフォーマンスは悪戯っぽく、ラストナンバーとなったタワレコ限定シングル「いぎありわっしょい」まで、約40分のステージはエネルギッシュそのもの。

「高いチケット代払って、俺たちのライブを観に来たお前のせいだ。それが今の俺のすべて。誰と一緒のステージでできるとか、STUDIO COASTでできるとか、大したことじゃないね。俺がこんなに気合いが入っているのもお前のせいだ。愛してるよ、信じてもらえるかな」と語った但野の言葉に万雷の拍手が贈られた。

「ARENA STAGE」の2番手は、浅井健一、小林祐介(THE NOVEMBERS)、有松益男(BACK DROP BOMB)による3ピースバンド、ROMEO's bloodだ。まだ音源が発表されていないこのプロジェクトは、<ARABAKI ROCK FEST. 14>で始動。以降、<Taboo 15th Anniversary ~殺しの唄~>や<a flood of circle AFOC Tour "Golden Time Rock'n'Roll Show">に出演するなど、ライブを重ねている。

グレッチから柔らかな和音が紡がれると、オープニングナンバーの「新宿」へ。続くインストナンバーの「デリカテッセン」ではトリオならではのスリリングなアンサンブルを聴かせてくれる。「観に来てくれてありがとね」という短いMCのあとは、それまでのギター=浅井健一+ベース=小林祐介といった編成からから、ベース=浅井健一+ギター=小林祐介へパートチェンジ。浅井健一の16ビート混じりの疾走ベースフレーズに小林祐介のヒステリックなギターが絡む「DribbleDaughter」など同編成では3曲がプレイされ、浅井健一ならではのタイム感とグルーヴが前面に押し出されたナンバーに会場が魅了された。


▲LAMP IN TERREN+まり(つしまみれ)(画像2点)

「TENT STAGE」に足を向けるとLAMP IN TERRENの若さ漲るステージが会場を揺らしていた。「L-R」「ランデヴー」「Sleep Heroism」といった定番曲は幾つものライブを経て大きく成長を遂げ、グルーヴィーなリズムもソリッドなギターも真っ直ぐに放たれるようで心地よい。「中学から高校の時までthe pillowsのコピバンをやっていたんで、今日、同じイベントに出ることができて本当に嬉しい」と素直なMCも会場のファンを笑顔にしていく清々しさがある。ラストの「緑閃光」が描く壮大な景色に、このバンドの広がる未来を感じさせた。なお、この時間の「LOUNGE STAGE」では沖ちづるのステージが行われる予定だったが、「急性声帯炎」および「急性気管炎」のため出演がキャンセルとなり、当日に急遽出演が決まったという、つしまみれのまりが弾き語りを披露した。


▲a flood of circle

16時10分、初日に山田将司、菅原卓郎とアコースティックセッションを行なったほか、古市コータローバンドに参加するなど大活躍だった佐々木亮介が、自らのバンドa flood of circleを率いて「ARENA STAGE」に登場した。オープニングはブルージーなインストセッションから。じわじわと昂ぶるステージのボルテージがダイレクトに伝わってくるようだ。ギタリストの脱退を経て新体制となった彼らは、サポートギターに藤井清也(ex.The SALOVERS)を迎えての二回目の舞台となる。

1曲目は「GO」。疾走するグルーヴにのせて佐々木のハスキーな声がエモーショナルに響く。「オーライ! 今日は祭りですよね。ド派手な祭りにしましょうよ」というMCに導かれて「KIDS」「Dancing Zombiez」といったビート感の強いナンバーへ。HISAYOのステップも軽やかに、キレのいいベースフレーズが会場を踊らせた。「(HISAYO)姉さん、TOSHI-LOWさんに会ったとたんに“未亡人みたいだね”って言われてましたね。相変わらずガサツな先輩だと思いました(笑)」と佐々木が楽屋での一幕を暴露して、バックステージのバンド間の距離の近さをうかがわせた。中盤ではアッパーなロックンロールチューン新曲「ベストライド」を披露したほか、「過去の大事な曲を」と「Boy」が演奏されるなど、全8曲は新旧問わずベストな選曲。佐々木にとっては2DAYS出演となるステージを大盛況のうちに締めくくった。

▲go!go!vanillas

▲忘れらんねえよフィルハーモニー交響楽団

空が暗くなりはじめたころ、「TENT STAGE」にはgo!go!vanillasが出演した。『音楽と人』本誌では連載コーナーを持つ彼らのステージはのっけから全力感が半端ない。STUDIO COAST初ステージながら持ち前の元気と演奏力で終始オーディエンスを沸き立たせる。とりわけ後半、「ホラーショー」でのコール&レスポンスは圧巻だった。

また、同時刻からスタートした「LOUNGE STAGE」には、忘れらんねえよフィルハーモニー交響楽団が登場。これは忘れらんねえよの3人に加え、THEラブ人間の谷崎航大とツネ・モリサワによる5人編成によるもの。忘れらんねえよの楽曲がエモーショナルなアコースティックアレンジで演奏され、ヴァイオリンとキーボードを交えたレア度の高いステージが繰り広げられた。


▲BRAHMAN

威風堂々と「ARENA STAGE」に登場したのはBRAHMANだ。オープニングの「The only way」から客席最前列の柵に足を掛け、全身全霊で歌うTOSHI-LOWに、客席もダイブで応戦する。「賽の河原」「露命」「CHERRIES WERE MADE FOR EATING」「BEYOND THE MOUNTAIN」「汀に咲く」「BASIS」「SHADOW PLAY」「A WHITE DEEP MORNING」「鼎の間」「警醒」「ANSWER FOR…」までの12曲は文字通り間髪入れず、スリリングで感情の起伏をそのまま辿るようなキラーチューンが繰り出されて隙間ない。とりわけ、「A WHITE DEEP MORNING」「鼎の間」のミディアムチューンに聴き入るフロアは、それまでの暴発とはまた異なり、大合唱が起きるという感動的な場面でもあった。さらに、「警醒」ではTOSHI-LOWが客席に飛び込み、「ANSWER FOR…」ではTOSHI-LOWを中心としたサークルが発生、サビではそのサークルがカオスとなる烈しさ。ラストナンバー「霹靂」を前に「最近はMCをしていない」というTOSHI-LOWが客席最前列の柵上からこう語った。

「『音楽と人』はずっと危機を乗り越えてきた。親会社が何回変わっても、ギリギリのところで踏ん張ってきた。競合音楽雑誌とかに出てるクソガキみたいなのが表紙じゃなくて、みんなの好きな、ちょっと旬じゃねぇけど渋いミュージシャンを表紙にしたりとか。そういうことをやってくれてる。だからさ、このイベントが一回くらいコケたぐらいで辞めるんじゃねぇ、金光。来年もやれ。半額でやれ。ドリンクにベンジーのカレーつけろ。カレーはドリンクだ(笑)」。これには会場からの大歓声が。そしてTOSHI-LOWはさらに続ける。「2011年3月11日以降、支援物資を東北へ運んだりしているとき、多くの音楽メディアや関係者から「ミュージシャンがそこまでやる必要あるんですか?」って嫌味を言われた。震災からまだ一ヶ月も経っていないころ、支援物資を集めていた俺らの事務所に金光が来てくれて。リリースも何もないのにインタビューして、『音楽と人』に載せてくれた。みんなも音楽雑誌の仕組みは分かってるでしょ。高い広告費を払って、それが雑誌の表紙になる。そうじゃなくて、気持ちだけで動いてくれた。こいつは音楽だけを見てるんじゃない。俺を人として見てくれてると思った。ありがとうと思った。だから、ありがとうを返します」。表現者と媒体の強固な信頼関係がうかがい知れるエピソードだった。口は悪いが、『音楽と人』がなぜミュージシャンから愛され続けているか、TOSHI-LOWが端的に示した。これには暫くのあいだ、場内の拍手が鳴り止むことがなかった。


▲石崎ひゅーい+GOING UNDER GROUND(画像2点)

18時30分からは「LOUNGE STAGE」に石崎ひゅーいが登場。「せんたくき」で幕を開けたステージはかき鳴らされるアコースティックギターの音色と石崎ひゅーいの歌声に引き込まれるように聴き入るフロアの姿が印象的だった。

そして、ほぼ同時刻にスタートした「TENT STAGE」のGOING UNDER GROUNDは入場規制となる賑わい。爽やかに疾走する「スパイス」が超満員のフロアを温め、そのエンディングの音が鳴り止むと、上空を飛ぶヘリコプターの音が聞こえた。「これが「TENT STAGE」の醍醐味でしょ(笑)」と松本素生も苦笑い。「今日は“ロックンロールセンチメンタル部門”で呼ばれてるので、「スパイス」みたいな曲も歌ってみました。次は、15歳の夏の音楽室を思い出しながら歌います」と「LISTEN TO THE STEREO!!」を披露するなど、甘酸っぱく切ないとびきりのグッドメロディを響かせて「TENT STAGE」のトリを堂々と飾った。


▲the pillows(画像2点)

初の<音楽と人LIVE 2015ローリング・サンダー・レビュー>もいよいよグランドフィナーレを迎えようとしている。「ARENA STAGE」のラストを飾るはthe pillowsだ。そしてこのステージは、16年ぶりにベーシストの鹿島達也をサポートに迎えて行なわれる貴重なもの。「White Ash」からスタートしたライブは「Midnight Down」「Hello, Welcome to Bubbletown's Happy Zoo (instant show)」「Blues Drive Monster」など、鹿島達也がサポート在籍していた1994年から1999年当時の楽曲が中心のベストな選曲。MCで山中さわおが「噂と違うな。噂では、この音楽と人のイベント、音楽は溢れているけど人は溢れてないって聞いてたんですけど(笑)。全然居るじゃないか!」と語った通り、ステージ上もフロアも2日間のエンディングに相応しい熱狂が止まらない。

「ONE LIFE」「Funny Bunny」といったエモーショナルなナンバーでは、現在ソウルミュージックをプレイしているという鹿島達也のグルーヴィーなベースフレーズが楽曲にうねりを加えて心地よい。そしてライブ本編は「About A Rock’n’Roll Band」「この世の果てまで」「ハイブリッド レインボウ」といった名曲を連発して本編を終了した。

アンコールに応えて再びステージへ登場した山中さわおは、「舞台袖にTOSHI-LOWがいて、“今日はチケット代が7500円もするんだから、アンコールくらいやっていただかないと”って(笑)。TOSHI-LOWの立ち位置が全然わからない」と笑いを誘い、「No Surrender」を披露してステージを下りた。しかし、アンコールは鳴り止まない。そしてステージに登場したのは、山中さわお、TOSHI-LOW、金光編集長の3名。「来年もこういうカタチでイベントをやりたいと思います。ありがとうございました!」という編集長の宣言で、2日間にわたった<音楽と人LIVE 2015ローリング・サンダー・レビュー>が幕を閉じた。

取材・文◎山本弘子

■<音楽と人 LIVE 2015 ROLLING THUNDER REVUE>
2015.04.19(Sun)@新木場STUDIO COAST SET LIST

●ARENA STAGE SET LIST●
【シュリスペイロフ】O.A(12:30-12:45)
1.下着と日々
2.君と僕
3.空白に向かっていくよ
4.空中庭園
【KNOCK OUT MONKEY】(13:00-13:45)
1.RIOT
2.JET
3.How long?
4.Greed
5.実りある日々
6.Take you
7.Scream & Shout
8.Paint it Out!!!!
9.Flight
【ROMEO's blood】(14:35-15:20)
1.新宿
2.デリカテッセン
3.プリステールのフィードバック
4.COSMIC
5.内気なフランケンシュタイン
6.DribbleDaughter
7.LIFE
8.BAD CHELL
9.GALAXY HEAD MEETING
10.アメリカ
【a flood of circle】(16:10-16:55)
1.GO
2.KIDS
3.Dancing Zombiez
4.ベストライド
5.Sweet Home Battle Field
6.Boy
7.Golden Time
8.シーガル
【BRAHMAN】(17:45-18:30)
1.THE ONLY WAY
2.賽の河原
3.露命
4.CHERRIES WERE MADE FOR EATING
5.BEYOND THE MOUNTAIN
6.汀に咲く
7.BASIS
8.SHADOW PLAY
9.A WHITE DEEP MORNING
10.鼎の問
11.警醒
12.ANSWER FOR…
13.霹靂
【the pillows】(19:20-20:05)
1.White Ash
2.Midnight Down
3.Hello,Welcome to Bubbletown's Happy Zoo (instant show)
4.Blues Drive Monster
5.インスタント ミュージック
6.ONE LIFE
7.Funny Bunny
8.About A Rock'n'Roll Band
9.この世の果てまで
10.ハイブリッド レインボウ
En.No Surrender

●TENT STAGE SET LIST●
【最終少女ひかさ】(13:50-14:30)
1.かつき
2.関係者でてこい
3.ハローアゲイン
4.スシ食いたい
5.まりこ
6.いぎありわっしょい
7.ピカピカ
【LAMP IN TERREN】(15:25-16:05)
1.L-R
2.ランデヴー
3.Sleep Heroism
4.クライベイベ
5.ゴールド・ルーズ
6.ボイド
7.緑閃光
【go!go!vanillas】(17:00-17:40)
1.オリエント
2.アクロスザユニバーシティ
3.エマ
4.バイリンガール
5.トワイライト
6.ホラーショー
7.マジック
8.ライクアマウンテン
【GOING UNDER GROUND】(18:35-19:15)
1.LISTEN TO THE STEREO!!
2.グラフティー
3.もう夢は見ないことにした
4.スパイス
5.LONG WAY TO GO
6.ショートバケーション
7.トワイライト

●LOUNGE STAGE SET LIST●
【忘れらんねえよ フィルハーモニー交響楽団】(17:00-17:30)
1.北極星
2.ばかもののすべて
3.この高鳴りを何と呼ぶ
4.俺たちの日々
5.犬にしてくれ
6.バンドやろうぜ
7.忘れらんねえよ
【石崎ひゅーい】(18:30-19:00)
1.せんたくき
2.新曲(タイトル未定)
3.おっぱい
4.ピーナッツバター
5.夜間飛行

◆ROLLING THUNDER REVUE 特設サイト
◆音楽と人 オフィシャルサイト

◆【4月18日(土)@新木場STUDIO COAST──初日レポへ】
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