【インタビュー後編】エクソダス、スラッシュ・メタルの未来は?

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スラッシュ・メタルの祭典<THRASH DOMINATION>参戦のために、2015年3月に日本に上陸したエクソダス。1986~1992年と2002~2004年にバンドで歌ってきたスティーヴ“ゼトロ”スーザが復帰、会心のニュー・アルバム『ブラッド・イン・ブラッド・アウト』を発表。またギタリストのゲイリー・ホルトが並行してスレイヤーに参加するなど、彼らはファンの注目を集め続けた。

◆エクソダス・インタビュー前編

インタビュー後編では、そんなバンドの現状について2人に訊いてみた。彼らはまた、スラッシュ・メタルの重鎮として、このジャンルの現状、そして向かうべき未来について語ってくれた。

──ゼトロは10年ぶりにエクソダスに復帰して、バンドはどのように変化していましたか?

ゼトロ:特に何も変わっていなかったよ。曲作りもレコーディングも、ツアー生活も、21歳の頃から知っているエクソダスのままだった。10年間バンドを留守にしていたとは思えなかったよ。

──ゼトロにしても初代ヴォーカリストのポール・バーロフにしても、戻ってきたメンバーに寛容なのがエクソダスの特徴ですね?

ゲイリー:場合によるよ(苦笑)。ただ、俺たちは決して悪意に満ちた人間ではないし、一度バンドを去ったからといって、二度と顔も見ないということではない。スティーヴは長年の仲間だし素晴らしいヴォーカリストだから、また一緒にやれて嬉しいよ。

──ところで1997年、ライヴ・アルバム『アナザー・レッスン・イン・ヴァイオレンス』を収録したのと同時期、ポール・バーロフが在籍していた時期のライヴ映像を撮影していたと聞きましたが、それが世に出る可能性はありますか?

ゲイリー:あの時、ライヴを撮影したんだけど、レコード会社と揉めて、編集せずにそのままになっているんだ。たぶんマスターは俺の家の物置にあるけど、残念ながら公式リリースされる可能性は低いだろうな。


──ゲイリーはスレイヤーのニュー・アルバムではどんな役割を果たしているのですか?

ゲイリー:スタジオに入って、1日で9曲分のギター・ソロをぶちかまして、それで終わりだ。どうしてもその日のうちにやらなければならないわけじゃなかったけど、とにかく火が付いた状態だったんだ。あまりに弾きまくったんで、翌日は手首と指が動かなかった。でもそんな切迫感がプラスに働いているよ。

──病院には行きましたか?

ゲイリー:いや、ちょっと左手の指の調子が悪かっただけだし、2日したら調子が戻ったから、行く必要はなかった。今では普通にギターを弾けるし、問題はないよ。

──ゲイリーはこれからもスレイヤーに留まることになるのでしょうか?それとも“助っ人”としての参加で、いずれ正式な後任ギタリストを迎えるつもりなのでしょうか?

ゲイリー:もう4年間もスレイヤーでやっているから、もう“助っ人”ではないと考えているよ。アルバムのソングライティングには関わっていないけど、バンドの一員だと考えている。2つのバンドで同時にやっていくのはけっこうハードだよ。オフがまったくないし、スレイヤーとエクソダスのダブル・ヘッドライナー・ツアーだったりすると、毎晩2バンドでプレイしなければならないからな。

ゼトロ:ゲイリーは凄腕のギタリストで、生前のジェフ・ハンネマンとも交流があったから、スレイヤーにとってもそれ以上のメンバーを見つけるのは難しいんじゃないかな。2つのメタル・バンドでやっていくのは無茶苦茶ハードだと思うよ。


──『ジ・アトロシティ・エキジビション…エキジビットA』(2007)、『エキジビットB:ザ・ヒューマン・コンディション』(2010)に続く第3弾『エキジビットC』を作る予定はありますか?

ゲイリー:あまり考えていない。“スラッシュ・メタル版ピンク・フロイド”みたいな長い曲のコンセプト・アルバムは、やってみて面白かったけど、やりたいことは一段落した感じだな。『ブラッド・イン・ブラッド・アウト』では、よりダイレクトに内臓をえぐる短い曲のアルバムを作りたかったんだ。ただ、今回も“短い曲を書いてラジオでオンエアしてもらおう”なんて考えもしなかった。エクソダスの曲はどうせラジオじゃ流れないからな。

──<THRASH DOMINATION>はかなり若い観客層も動員していますが、出演するバンドはベテラン中心ですよね?若手バンドがスラッシュ界の主軸になることは難しいでしょうか?

ゲイリー:俺たちは自分たちなりの活動をやるだけだし、他のバンドのことは正直知ったことではないけど、<THRASH DOMINATION>についていえば、確かにベテラン勢が多いね。去年もエクソダスとヴォイヴォド、サンクチュアリだったし、若手バンドを起用してもいいかも知れない。ミュニシパル・ウェイストとか…

ゼトロ:ハヴォックとかね。

ゲイリー:ハヴォックはまだその域に達してないんじゃないかな。でも彼らみたいなバンドがスラッシュ・メタルの名盤を生み出して、<THRASH DOMINATION>に参戦するようになったら面白いね。俺たちもさらに凄いライヴを日本のファンに見せなければならなくなる。

──スラッシュ・メタルの未来はどうなるでしょうか?


ゲイリー:ジャンルとしてのスラッシュ・メタルがどうなるかは、見当も付かないな。ただ、俺はエクソダスとスレイヤーという2バンドでステージに立ってきて、世界中のキッズが凄まじく盛り上がるのを見てきた。だからしばらくはスラッシュ・メタルが死ぬことはないだろう。エクソダスの、そして俺の将来については、やれなくなるまでやるだけだ。俺には手に職もないし、ギターを弾くしか出来ない。だから誰も聴いてくれなくなるまで続けるよ。俺の頭がおかしくなって、ギターを弾けなくなる方が先かも知れないけどな。

ゼトロ:俺は21年間、大工組合に所属していて、ドアにショックアブソーバーを取り付ける技能ならあるけど、それよりバンドでやっている方が楽しい。これからもスラッシュ・メタルの炎が燃え続けるように、俺たちは突っ走っていくつもりだ。

Photo by MIKIO ARIGA
取材・文:山崎智之



『ブラッド・イン、ブラッド・アウト』

【メンバー】
スティーヴ“ゼトロ”スーザ(ヴォーカル)
ゲイリー・ホルト(ギター)
リー・アルタス(ギター)
ジャック・ギブソン(ベース)
トム・ハンティング(ドラムス)
【ゲスト】
カーク・ハメット(ギター)[メタリカ]
通販限定直筆サイン入りブックレット付/CD+DVD 7,000円+税
初回限定盤CD+DVD 3,500円+税
通常盤CD 2,500円+税
1.ブラック13
2.ブラッド・イン・ブラッド・アウト
3.コラテラル・ダメージ
4.ソルト・ザ・ウーンド(with カーク・ハメット)
5.ボディ・ハーヴェスト
6.BTK
7.ラップド・イン・ジ・アームス・オブ・レイジ
8.マイ・ラスト・ナーヴ
9.ナム
10.オナー・キリングス
11.フード・フォー・ザ・ワームス
日本盤限定ボーナストラック
12.プロテクト・ノット・ディセクト
初回限定盤DVD(約134分)
メンバー・インタビュー&レコーディング映像を収録した130分を超えるメイキング映像にバックステージも捉えたツアードキュメント

◆エクソダス『ブラッド・イン・ブラッド・アウト』オフィシャルサイト
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