【インタビュー】UQiYO、2ndアルバム発表「自分たちの音楽が総合芸術の領域に」
■僕らはパーソナル・ミュージックを作りたいんです
■みなさんにとっての個人的な体験として音楽を楽しんでもらえれば
──「Summer Sun」は、夏の空気感がありつつも、酷暑というよりは、一瞬、ふっと涼しい風が流れるような印象を受けました。
Yuqi:ああ、いいですね、その感じ。この曲は、Googleが小笠原諸島のビーチや観光名所のストリートビューを公開した際に、そのメイキング映像用に作った曲なんです。だから、小笠原諸島のちょっとジリジリと、ダルい感じの暑さなんです。カラッとした夏ではなくて、ちょっと湿った夏なんですよ。
──最後の転調も、リゾート的な爽快さと言うよりも、何か日本特有の、何か夏休みの終わりを感じさせるような余韻が残りますよね。
Yuqi:ちょっと泥臭い感じ、ですよね(笑)。
──そして「THYLUV」は、最初は歌もピアノも左からだけ聴こえて、途中から右からアコギが入って来てと、各パートの定位が左右ではっきり分かれていて、とても面白いミックスだと思いました。このアイデアは、どのように生まれたのですか?
Phantao:カップルが2人でイヤホンを片耳ずつ聴いた時に、お互いが全然違う音楽を聴くというようなイメージで作った2曲を、ひとつにまとめたものなんですよ。
Yuqi:そのアイデアも、あるプロジェクトが発端で。2年前のバレンタイン・デーに向けてスペシャル・サイトを作って、まず直前の年末に、女の子の「Girl」という曲をアップしたんです。これが、最初に左側から聴こえてくる曲なんです。次に、男の子の曲を元日にアップしたんですよ。これが、右側から聴こえる「Boy」。この2曲を、毎週金曜日に交互にアップデートしていったんです。そして、7回目の金曜日がちょうど2月14日で、そのバレンタイン・デーに、2曲が合わさって1曲になるっていうプロジェクトだったんです。
──とても面白いアイデアですね。
Yuqi:女の子が、だんだん成長して、思春期を迎えて、そして大人になっていくというような感じで曲をアップデートしていって。ただ、いかにも最後にひとつにまとまりそうな2曲だと面白くないので、リズムもまったく変えて、テンポも2/3くらいのところにハマるような2曲を作ったんです。それを組み合わせた状態で、アルバムに収録しました。この曲が、このアルバムで一番、実験的だったかもしれないですね。
──それぞれの楽曲のバックグラウンド、プロジェクトの内容がすごく興味深くて、そういったお話しを聞くと、曲のもっと深い部分を楽しめるようになりますね。
Yuqi:今度、Webサイトを一新して、こういった1つ1つのプロジェクトが、読み物として見られるようにしたいなと思っています。そうすることで、より深く「この曲、こういう経緯で生まれたんだな」と感じてもらえるページにしたいと思っていて、今、準備中なんです。
──それともうひとつ、いい意味で、BGMにならない作品ですね。耳が引っ張られる音楽で、聴き流すことができない、音楽に向い合いたくなる作品だと感じました。そういった点で、何か意識した部分はありますか?
Yuqi:おそらく1stアルバム(『UQiYO』)の方が、よりBGMとして、気持ちよく聴けたかもしれません。前作は、自宅にこもって、宅録でグーッと入り込んで作ったので、当時の自分の、人生のハプニングがすべて入っていて、完結された精神世界を作り上げた感じだったんです。その点、今回のアルバムは、もちろん自分自身のパーソナルな要素は入っているんですが、もっと外向きで、みんなに聴いてもらいたいという気持ちがすごく強いんです。それで、音質もこだわったりもして。
──音質へのこだわりとは?
Yuqi:マスタリング段階で、中域を少し突く(強調する)ことで、意識的にボーカルをちょっと前に出したんですよ。元々は、1stアルバムと同じような質感で仕上げていたんです。少し中域が引っ込み気味のところにボーカルがいて、気持ちよく楽器の中に混ざっている状態。でも今回は、そこからほんの少しだけ、ボーカルの頭を出してみたんです。やっぱり、日本のリスナーは、ボーカルが好きですし、ボーカルが聴こえるとBGMになりにくくなりますから。制作者としては、この感じがいいのか悪いのか、若干の迷いもあったんですが、今のタイミングで、このアルバムを出すなら、このボーカルの聴かせ方でいいんだと、今は思っています。
──まだまだ話は尽きませんが、とことん細部にまでこだわった『Twilight』、どのようにリスナーに楽しんでもらいたいですか?
Phantao:どの曲も、それぞれがすごく面白いバックグラウンドを持っているので、CDを聴いて楽しんでもらうだけでなく、曲の背景を知ってもらえると、より楽しめると思います。あとミュージックビデオも、とんでもなくいい物が出来たので、映像の世界も併せて楽しんでもらいたいですね。映像に関してだけでも、小一時間話せるくらいの、いろんなことを盛り込んでありますから(笑)。
Yuqi:今回のアルバムは、音楽だけでも十分に説得力を帯びているとは思っていますが、さらに自分たちが、総合芸術の領域に入っていけたように感じています。そこをどれだけ感じて、楽しんでもらえるか。そこがとても大事な要素なのかなと思っています。そのうえで、皆さんにとってのパーソナルな体験になってもらえれば嬉しいです。ひとつ思っていることがあって。ポップ・ミュージックって、「大衆音楽」と言われますけど、今は、「公衆音楽」になっている気がするんです。「公衆」なものに、みんなはお金を払いませんよね。だからも、「曲を作ったから、聴いてくれよ。お金払ってくれよ。なんで、お金払ってくれないんだよ」と言っても、仕方ないと思うんですよ。だってみんな、公衆トイレで、「金払え」って言われても、困るじゃないですか(笑)。
──なるほど。その感覚に、音楽も近づいているというわけですね。
Yuqi:そう思うんです。だから僕らは、パーソナル・ミュージックを作りたいんです。みなさんにとっての個人的な体験として、音楽を楽しんでもらえれば。音楽を、それぞれの日常だったりに当てはめたり、映像も含めて、作品に触れた時に感じたものを、経験にしてもらいたい。そのために、僕らも努力をして、みなさんに楽しんでもらいたくて、そういう方向性というか、アーティストの在り方がひとつのヒントになってくれたら、もっと面白い人たちが、いっぱい出てきそうに思うし、本当にそうなったら、僕らも嬉しいですね……なんて言うと、ちょっと偉そうかな(笑)?
取材・文◎布施雄一郎
■2nd ALBUM『TWiLiGHT』
FO-1001 / 2,315円(+税)
01. Dawn of Life
02. Twilight
03. Blessing
04. June
05. Summer Sun
06. THYLUV
07. Saihate
08. Snow White
09. Arakawa
10. Drums of Atacama
11. Dirtball
12. Dessert Flower
13. Ordinary Scene
14. Into the Cove
15. Under Skies of Heaven
[先着購入者特典]
タワーレコード:ダウンロードコード付コースター(スペシャルライブ音源)
HMV:ダウンロードコード付缶バッジ(収録曲アコースティックver音源)
ヴィレッジヴァンガード:ダウンロードコード付ポストカード(「TWiLiGHT」MVメイキング映像)
※一部取扱いのない店舗もございます。また特典には数に限りがございますので、詳しくは各店舗へお問い合わせ下さい。
■『TWiLiGHT』インストアイベント
3月26日(木) 20:00 @タワーレコード渋谷1階
5月05日(火・祝) 17:00 @HMV札幌ステラプレイス
■<全国ツアー 2015 Tour TWiLiGHT ~夕陽と雨と虹とキラキラと~>
4月26日(日) 三重 四日市MONACA
4月29日(水) 福岡 TAGSTA
5月06日(水) 札幌 provo
5月16日(土) 山梨 酒蔵櫂
5月17日(日) 静岡 cafe sofari
5月18日(月) 京都 さらさ花遊小路
5月19日(火) 大阪 梅田シャングリラ
5月29日(金) 宮城 co-ba kesennuma
5月30日(土) 仙台 arrondissement
5月31日(日) 群馬 桐生Club Block
6月13日(土) 東京 SHIBUYA O-nest
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