【ライブレポート】HY、大きなハートに包まれる沖縄ワンマン

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ステージの後方には、大きなハートが飾られていた。

◆HY画像

このハートは、沖縄方言で“愛しい人よ”を意味する「Kanayo」の6文字が組み合わされており、各文字はツアーの公演地「K:名古屋」「a:福岡」「n:大阪」「a:仙台」「y:東京」「o:沖縄」でHYシンカー(仲間)たちが記した愛のコメントで埋まっている。

そして、この6文字は最終地の沖縄で初めて合体、たくさんの愛の言葉に溢れたハートが完成したのだった。


2月21日、沖縄市コザにある音楽発信基地「ミュージックタウン音市場」で、<HY Kana-yo Premium TOUR 2015>がファイナルを迎えた。HYが音市場でワンマンライブを行うのは今夜が初めて。このプレミアムな夜をHYと一緒に迎えたいと全国から集結した1,100人で満杯の会場は始まる前からあたたかい空気に満ちていた。

開演30分前、楽屋でメンバーは黙々と衣装や髪を整えていた。新里に「地元のワンマンはどんな気分?」と尋ねると、「いつもは地元だとすごく緊張するんだけど、今日は緊張してないですね。みんなとファイナルを楽しもうという気持ちの方が勝ってるですよ」と笑顔をみせる。全国のツアー先でシンカーから受けとったたくさんの愛を、今夜は会場のみんなと分かち合いたいと願う新里の想いが、彼の爽やかな笑顔に重なった。


会場にはいたるところにハートの形をしたピンクの風船がゆらゆら揺れていた。そこはHYが最新アルバム『LOVER』に込めた愛(ハート)に溢れる空間だった。「今日はふだん恥ずかしくてなかなか言えない愛の言葉をいっぱい言い合っていきましょうね」という新里に応えるように、会場からはメロディにのせて「I Love You…」の言葉が繰り返される。

1曲目は「流れ星」。流れる星に君へ届けたい願いを託すポップなラブソングから始まった。バラードの「結」でしっとり始まった東京公演とは印象が異なるスタートだった。ライブ終了後に聞いてみると、各地2公演ずつなので選曲も2パターン用意したという。2公演とも会場に足を運んだ人たちが新鮮な気持ちで楽しめるように、といううれしい配慮。これもHYの愛だろう。


新鮮といえば、ライブの空間で「パタパタ」のエッジの立ったリズムが想像以上に心地良かった。『LOVER』の取材時に、「最初は少し戸惑ったけど、演奏してて楽しい曲」(宮里)、「メロディはいかにもヒデだね。私はこの曲、スキ!」(仲宗根)と話していた曲だ。「パタパタ」はこれからもライブでフックになる大事な曲に育っていきそうな予感がする。

「沖縄のみなさん、今日のこの日をまちかんてぃーして(待ちかねて)ましたか?」と会場に投げかける新里に、一斉に大きな歓声と指笛がわき起こる。


『LOVER』をイメージした赤と白を基調にしたツアー衣装については、「紅白(歌合戦)を意識してんじゃないの!?という」(許田)とか、「悠平の(パンツの)裾が短いところにみなさんの愛を」(新里)と、笑いをちょいちょいかませながらのMCに会場が和んでいく。

沖縄公演でセットリストに追加された「モノクロ」に続いて歌われた「AM11:00」では、自然と会場から手拍子と歌声が湧いてくる。
<だからお願い 僕のそばにいてくれないか…>

千人を超えるシンカーたちの愛が歌声となって会場を包みこむ。心の中がぽっとあたたかくなった。「散歩に行こう」では、<沖縄(誰か)をそっと包んであげたい>と歌詞を変えて歌ったり、間奏で「散歩も今は泡瀬ぐらいです」と沖縄市の地名を挟んだりと、沖縄公演ならではの趣向も。


続いて「今日一緒に来た大切なパートナーをぎゅっと抱きしめながら聴いてほしい」と言って「木漏れ日かざるこの道を」が歌われる。いつも当たり前のようにそばにいる大切な人も、いつか永遠の別れの時がくる。だから今、もっと優しい言葉や思いやりの心を伝えよう。そんな想いを込めたバラードに会場は波がひくように静かに聴き入る空気になった。

このあたたかい空間にいることの幸せや曲の余韻に浸っていたら、それまでおとなしかった仲宗根が一気に弾ける「イーズーコーナー」が始まった。メンバー4人の“ゆかいな仲間たち”を従えたラジオDJ仲宗根よる『仲宗根泉のあなたのお話いただきます』の公開出張放送の現場に場面は転換。この日来場した人の中から選んだ2通の恋愛相談にイズの毒舌キャラが爆発、会場は爆笑の渦に。と思ったら、続いての曲は『LOVER』からの失恋バラード「Remember You」と、落差の大きなジェットコースターのような急展開に会場はみんな笑顔。前回のツアーで片鱗を見せたメンバーそれぞれのキャラが、今回はさらに磨かれているようだ。


「ウチナー(沖縄県民)魂みせてよ!」と叫ぶ新里をきっかけに、宮里作のロックナンバー「4WD」から後半に突入。一気にラストへ向かう。みんなで手をふりながら歌った「I Love You」。「最高のファイナルにしようね!」の名嘉のかけ声でジャンプしながらの「Have a ice day」。会場が熱気をおびていく。

ここで今年15周年を迎えるHYから重大発表があった。それは…通算11枚目のニューアルバムが7月15日にリリースされること。さらに9月17日からは全国ホールツアーが決定したといううれしいお知らせだった。最後の曲は「結」。新里がピアノを弾きながら歌ったバラードだ。

<愛してる 君の笑う姿が僕には必要だ どんなに悲しくても どんなに辛くても 君が側にいればいいから>


今は遠く離れてしまった大切な君へ。もう取り返しがつかないのかもしれないけれど、この胸の中で消えることのない愛してるという想いを伝えるために、僕はずっと待っているよ、と歌われる切ないラブソングでHYはステージを下りた。

波の音に重なるように、いつしか会場から「ホワートビーチ」の歌が自然発生する。いつもの光景だが、実際のホワイトビーチからそれほど遠くないこの会場で聴くと、なにか一層感慨深いと思うのは僕だけだろうか。

シンカーたちの歌声と歓声を浴びながら再びステージに現れたHYがアンコールで歌ったのは、この「ホワイトビーチ」だった。仲宗根がピアノの弾き語りのバラードアレンジでワンコーラス歌った後で、メンバーの演奏が加わりテンポをあげていく。会場のみんなの突き上げる手が左右に揺れながら、力強い歌声が湧き起こる。


「みんな一人一人のパワーを受けとりました」と新里。そしてシメは、全員でのピース。感動的な瞬間だった。「今回愛をテーマにツアーをまわってきました。今日ここでもらったたくさんの愛、みんなと分け合った愛が(胸に)たまっていると思います。恥ずかしがらないで自分の大切な人とハグして、ぜひその想いを伝えてください。そのそばにHYの音楽があり続けられるように僕らも頑張っていきますので、素敵なLOVE忘れないで頑張っていこうね!」という新里のMCに会場のみんなも大きな声援で応える。

「NIJIKAN TRIP」の後で、「ファイナルだからこそ続けてやってきた曲があります」と言って歌ったのが、この日追加されたデビューアルバム『Departure』からのプレミアムな曲「旅立ち」だった。今日で一旦ツアーは終わるけれど、終わりはまた次の始まりでもある。だから<未来が見えるまで さぁ行こう!>

今年結成15周年を迎えるHYが「旅立ち」を最後に歌ったことに、新たな地平へ向かう意思表明、そして今の彼らのポジティヴな姿勢を感じた。

ライブの時もライブの後も音市場にはシンカーたちが手のひらで作る「ハート♡♡」が、会場の風船とともに揺れていた。そう、ファイナルの沖縄は、たくさんのハート(愛)と笑顔に満ち溢れた夜になった。

撮影:G-KEN
取材・文:伊藤博伸

<HY Kana-yo Premium TOUR 2015 Final@沖縄市ミュージックタウン音市場>

1.流れ星
2.未来.
3.パタパタ
4.あなたを想う風
5.モノクロ
6.AM11:00
7.散歩に行こう
8.木漏れ日かざるこの道を
9.Remember You
10.4WD
11.I Love you.
12.Have a ice day
13.結
E1.ホワイトビーチ
E2.NIJIKAN TRIP
E3.旅立ち
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