【インタビュー】SUGIZO×藤原いくろう対談 『SYMPHONIC LUNA SEA -REBOOT-』から解かれる普遍的メロディ
◆いちファンとして「RA-SE-N」や、今のツアーで演奏している楽曲は絶対に入れたかった
――SUGIZOさんのソロワークの流れがあって、LUNA SEAの作品を手がけるようになったわけですね。そこから『SYMPHONIC LUNA SEA -REBOOT-』のオーケストラアレンジに至ると。
SUGIZO:今回はレコード会社から提案があったうえで、LUNA SEAは公認をしているだけですけどね。だったら「藤原さんが素晴らしいですよ」っていう話をさせていただいたんです。
藤原:それで僕に横田さんからオファーがきて、「LUNA SEAのことでしたらぜひ」という流れでしたね。
――最新アルバム『A WILL』からも3曲、収録されていますが、選曲の基準というのは?
SUGIZO:そこも横田さんが今回の中心人物。選曲も曲順も基本お任せして。
藤原:キーマンですね。
――アルバム『STYLE』に収録されている「RA-SE-N」をセレクトしているのも意外だったんですよね。
横田:私が喋っていいのか恐縮ですが(笑)。ただ、LUNA SEAのいちファンとしてライヴもずっと観てきていることもあって「RA-SE-N」や、今のツアーで演奏している楽曲は絶対に入れたいなと思っていたんです。LUNA SEAファンのいろんな世代の人に聴いていただきたいなというのもあったので、ヒット曲「I for You」などのシングル曲だけではなく、バランスよく過去のアルバムの曲も入れさせていただきました。シングル「ROSIER」に衝撃を覚えて以来のファンなので。
SUGIZO:その時中学生ぐらいですか?
横田:小学生ですね(笑)。
SUGIZO:(笑)彼はクラシックプレーヤーでもあるんですよ。
――企画した横田さんもクラシックがルーツなんですね。
SUGIZO:レコード会社のクラシック部門のディレクターがシンパシーを覚えてくれたのも逆におもしろくて意気投合しましたね。9月に発売した『SPIRITUAL CLASSIC SUGIZO SELECTION』も彼が提案してくれたんですよ。そこから始まって、「『SYMPHONIC LUNA SEA』やりたいんですけど」って言われて「ぜひぜひ。もう好きにやっちゃってください」って。メンバーにも「こういう話があるけどいいよね?」って確認したら「どうぞどうぞ」って。そんな感じですよ。
――選曲をどう思いましたか?
SUGIZO:どれもオーケストラにすごくぴったりな曲ばっかりで。中でもやっぱり「RA-SE-N」はおもしろかったですね。実はオーケストラにすごく合う。
藤原:ですよね。
――「RA-SE-N」はすごくドラマティックになっていて驚きました。
藤原:加えた部分もありますけど、実は基本的にはバンドの中で鳴っている要素を紐解いてオーケストラに置き換えてるんです。
SUGIZO:そうそう。今回、藤原さんはLUNA SEAの元のアレンジをできるだけ活かしながらオーケストラに変換してくれているんですよ。
藤原:裏のギターのバッキングのフレーズを拾ったりだとか。
――分解して構築していくような作業ということですよね。
藤原:全曲、かなり分解しました。
◆僕らは全員が歌っている。みんながメロディを奏でている
――LUNA SEAの曲は、もともとオーケストラアレンジに合うんですか?
藤原:合うというより、僕的にはLUNA SEAを聴くといつもオーケストラが聴こえてきますね。東京ドームのコンサートにご招待していただいた時もそう思ったし、CDで聴いてもライヴで聴いてもそう思います。
――他のロックバンドとは違うんでしょうか?
藤原:違いますね。ざっくり言っちゃうと、音楽をコードで縦に切ってないんですよ。それぞれのメンバー5人が横に全部流れていって、ひとつの音を完成させてるので。
SUGIZO:それを昔から僕らがインタビューで話していた言い方に置き換えますと、僕らは全員が歌ってるんです。みんながメロディを奏でている。それをクラシック的に言うとそういうことなんですよ。全員のメロディが絡み合っていて、要はみんなが歌っている。
藤原:クラシック的に言うとポリフォニーって言うんですけど、多旋律音楽なんですよね。
SUGIZO:デビュー当時からそういう意識でした。オーケストレーションしてるイメージだって。クラシック畑の方にちゃんとそれが伝わってるのが嬉しかったですね。昔から聴いたことがないタイプの音楽だったって言われてましたけど、僕の中では、「オーケストラをロックバンドでやったらこうなる」っていうことを試したかったんです。それと同時にYMOなどのテクノ感覚をバンドサウンドにしたかった。オーケストレーションでいうとインディーズ時代のアルバムからまさにそうですね。そのアプローチはもう20年以上前から続けてることなんですよね。
――それがやっぱりLUNA SEAの特殊なところでもあるんですかね。
藤原:そうですね。
SUGIZO:逆に言うと昔はシンプルなロックバンドが退屈だったんです。今はカッコいいと思いますけど、当時はとにかく誰もやってないことをやりたいっていうのがまずあった。だから、本能的に作ったというよりは誰もやってないアプローチを探して行き着いたのかもしれないし、コロンブスの卵だったと思うんですけどね。当時のツインギターのアレンジワークに顕著に表れているんですけど、みんながメロディを奏でている。
――では、「RA-SE-N」以外の曲についてもエピソードを聴かせてください。
藤原:1曲目の「乱」に関しては『A WILL』のレコーディングの時に弦のアレンジをさせていただいているので、オーケストラに置き換えていくにあたって、そのままやってもつまらないと思ったんです。「乱」に関して言うと、僕の中では壮大な映画のようなイメージがあったんですよ。例えて言うなら中世の戦いのような。
SUGIZO:サントラっぽいですよね。
――確かに映画音楽。
藤原:全編に渡って映像のイメージは湧いていたんですが、特に「乱」はいちばん意識してアレンジしましたね。さっきSUGIZOさんが話していた裏のメロをかなり意識してオーケストレーションしています。
SUGIZO:おもしろかったのが、ヴォーカルがいちばん盛り上がるCメロが、このバージョンだとオーボエを使ったいちばん静かでキレイなところに当たるんですよ。
藤原:かなりいじらせてもらいましたね。ギターソロのところもあえてフーガのような、「乱」のテーマを使ったり。いちばん新しいシングルでみんなの耳にも新しい曲だからこそ逆に変えてやろうっていうのはありましたね(笑)。
――「gravity」は美しいですね。
藤原:技術的には「乱」とは逆で隙間を意識したオーケストレーションをしています。特にAメロの弦はチェロ、ビオラ、バイオリンが全部、ひとつの楽器としてバッキングしているので、アンサンブルとしては高度で難しいことをやっているんですが、とてもうまくハマりましたね。
SUGIZO:これ、すごく好きですね。オーケストラにすごく合う。
――「gravity」はもともと繊細に絡み合うバンドアンサンブルも聴きどころの曲ですからね。
SUGIZO:この曲こそ、うっすら入っている裏メロがフィーチャリングされてる。それがいいんですよね。
――「absorb」は7分半以上にわたる幻想的なアレンジに仕上がっています。
藤原:これはエスニックな音を使っていて。
SUGIZO:オリエンタルなね。
藤原:いわゆるドレミファソラシドではなくて、旋法、セリーっていうんですけど、それを使ってのオーケストレーションですね。
SUGIZO:民族的なスケールのね。ポルタメントがいいですよね。
藤原:間奏でバイオリンのソロが入ってるんですけど、いずれはSUGIZOさんに弾いてもらいたくて。
SUGIZO:(笑)。
藤原:僕からSUGIZOさんへのメッセージです(笑)。
SUGIZO:プレッシャーですね(笑)。
――じゃあライヴでいずれ、ぜひ。
藤原:SUGIZOさんのソロ演奏でいつか聴きたいという思いでソロを書きました(笑)。
SUGIZO:善処します…。
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