【ライヴレポート】HEATH (X JAPAN)を偲ぶ<everliving everloving>にPATAやSUGIZO、MORRIEなど13名が集結
2023年10月に急逝したX JAPANのheath (B)と親交が深く、heathが敬愛するミュージシャンがheathのソロ曲を演奏するライヴ<heath solo works heath THE LIVE everliving everloving>が10月27日、東京・高田馬場club phaseで開催された。HEATHの遺志を継ぐべく、PATA、SUGIZOなど名だたるメンバー集結した同公演のオフィシャルレポートをお届けしたい。
◆<heath THE LIVE everliving everloving> 画像
1992年5月にX JAPANに加入し、華やかなロックオーラと堅実なプレイを併せ持った稀有なベーシストとして高い評価を得たHEATH。1995年から始動したソロワークでは作詞作曲、アレンジを自ら手掛け、さらにボーカルも披露するなど、音楽家としてのポテンシャルの高さを遺憾なく発揮してみせた。
充実した活動で多くのリスナーを魅了してきただけに、2023年10月に伝えられたHEATHの訃報はミュージックシーンに大きな衝撃をもたらした。彼は自身が闘病していることを公にしていなかったため(X JAPANのメンバーにも知らせていなかった)、その一報はまさに青天の霹靂といえるものだったからだ。HEATHの早過ぎる旅立ちに無数のリスナーが深い悲しみに包まれ、彼を悼む声は国内はもとより世界各国から数多く寄せられた。
▲HEATH
HEATHの逝去から約1年を経て、2024年10月27日に<heath solo works heath THE LIVE everliving everloving>と銘打たれたライブが高田馬場club phaseで開催された。同公演はHEATHが遺した楽曲を彼と親交が深く、彼が敬愛するミュージシャン達が演奏するというもの。参加メンバーが豪華だ。
PATA (G / X JAPAN, Ra:IN)、SUGIZO (G / LUNA SEA, X JAPAN, THE LAST ROCKSTARS等)、MORRIE (Vo / DEAD END, Creature Creature)をはじめとして、Ken Ayugai (Vo / TOBYAS)やTAIJI FUJIMOTO (G / ex. D.T.R)、Jun (B / Valentine D.C.)、kazuno (B / ex. Moi dix Mois)、tezya (Vo / tezya&the sightz)、JO:YA (Vo / ex. DopeHEADz)、Shame (Vo / DopeHEADz, Ravecraft)、TAIZO (G)、Taji (Dr / ex. AUTO-MOD)、TACOS NAOMI (Key)といった錚々たるメンバーが集結。チケットは瞬く間にソールドアウトとなり、ライヴ当日の高田馬場club phaseは開演前から熱気に包まれていた。
▲tezya(Vo), TAIZO(G)
▲tezya(Vo)
▲TAIZO(G)
▲kazuno(B)
場内にオープニングSEとして「departure to space」が流れ、客席から熱い歓声と拍手が湧き起こる中、先陣を切ってステージに立ったのはtezya(Vo)、TAIZO(G)、kazuno(B)、Taji(Dr)、TACOS NAOMI(Key)という面々だ。
TAIZOが奏でるソリッドなリフとファットにウネるkazunoのベースの組み合わせが心地いい「blueberry murder」を皮切りに、キャッチーな「失われたtreasure∞land」や力強さと翳りを併せ持った「Nervous Break Down」などが演奏された。tezyaの熱いボーカルと楽器陣が鳴り響かせるパワフルなサウンドに場内のテンションは一気に高まり、ライブは上々の滑り出しとなった。
▲Ken Ayugai(Vo)
▲TAIJI FUJIMOTO(G)
▲Jun(B)
続いて、Ken Ayugai(Vo)とTAIJI FUJIMOTO(G)、Jun(B)にメンバーチェンジした編成で、メロディアスなサビを配した「GIVE」、パンクが香る「sold」、翳りを帯びた「COME TO DADDY」などをプレイ。
華やかにパフォームしながら歌うKen Ayugaiと余裕の表情でテクニカルかつエモーショナルなギターワークを展開するTAIJI FUJIMOTO。クールな表情と重厚なベースサウンドのマッチングが印象的なJunとスクエアなドラミングが光るTaji。そして、多彩なプレイと音色を用いたキーボードで楽曲を彩るTACOS NAOMI。今回のライブを通して思ったことだが、各セッションでそれぞれが魅力的なケミストリーを生み出していることが印象的だった。ハイレベルなプレイヤー達が気持ちをひとつにしてセッションライブとは思えない強固なバンド感を生み出したのは、さすがといえる。
と同時に、HEATHのペンによる楽曲の上質さを、あらためて痛感せずにいられなかった。ソリッドなサウンドとキャッチーなメロディーの融合を軸としながら効果的なフックやオン/オフを効かせたアレンジなどで楽曲に起伏をつける手腕は、実に見事。今回のライブではHEATHのセンスの良さやアイディアの豊富さを、随所で感じることができた。
▲MORRIE(Vo)
▲MORRIE(Vo)
▲MORRIE(Vo), TAIJI FUJIMOTO(G), Jun(B)
ライブ中盤ではMORRIE(Vo)がステージに姿を現して、どこかデヴィッド・ボウイに通じる味わいの「Faith」、耽美感を湛えた「Daydream」が届けられた。MORRIEの存在感の大きさに目を奪われたし、“軽やかな憂愁”とも形容できるセンシティブなエモーションを完璧に表現する歌唱はさすがの一言に尽きる。
もうひとつ、MORRIEとHEATHは一緒にバンドを組む予定がありつつHEATHの罹患により実現できなかったという経緯を受けて、このセクションでJunはHEATHが生前に愛用していたベースとシールドを使用。HEATHとMORRIEが果たすことができなかった共演を、こういう形で実現させたJunには大きな拍手を贈りたい。
▲SUGIZO(G)
HEATHのベースに限らず、今回の公演ではHEATHがプライベートスタジオで愛用していたボーカルマイクが使われたことをはじめとして、TAIZOがHEATHのギターを使用、PATA(G)とShame(Vo)はHEATHのネックレスを着用、SUGIZO(G)はHEATHが<コーチェラ2018>で使用したブーツを、tezyaはHEATHのジャケットを着用。
さらに、TAIJI FUJIMOTOとkazunoはHEATHのストラップを使用(kazunoはHEATHの衣裳も着用)、TajiはHEATHのエクステを使用、JunはHEATHのレザーパンツとベルトでドレスアップ、TACOS NAOMIはキーボードの上にHEATHの写真とHEATHが愛用していたチョーカーを置くなどして、HEATHへの想いを現していたことも注目といえる。そうすることで、出演者はHEATHと一緒に音を鳴らしている感覚を味わいながら演奏できたに違いない。
▲JO:YA(Vo), TAIJI FUJIMOTO(G), Jun(B)
▲JO:YA(Vo), Jun(B)
「4番手、JO:YAです! さぁ、いこうか!」という明るい声と共にステージに立ったJO:YA(Vo)はクールな歌中と爽やかなサビのコントラストを活かした「UNDER THE SUN」、キャッチーな「Traitor」、抒情的な哀愁を湛えた「Alone」などを披露。
それぞれの楽曲に合わせて表情を変えるボーカルは聴き応えがあったし、JO:YAセクションを締め括る「lynch」で上裸になってフィジカルなステージングを炸裂させたのも実によかった。現在のJO:YAは音楽活動は行っていないようだが、ブランクを感じさせないパフォーマンスでオーディエンスを大いに沸かせただけに、ぜひ活動を再開してほしいと思う。
▲Shame(Vo)
▲Shame(Vo), tezya(Vo), Jun(B)
その後は、熱い声援を浴びながらシザーハンズを思わせるいで立ちのShame(Vo)が姿を現して、「Crack yourself」が演奏された。グラムロックが香るShameのボーカルと楽器陣が奏でるファンキーなサウンドの取り合わせは独自の魅力に溢れている。「Faith」や「Crack yourself」を聴いて、HEATHはこういう指向性も持っていたんだなという感慨に捉われた。
そんなことを思う中、ギタリストがTAIJI FUJIMOTOからSUGIZOへとバトンタッチされ、tezyaも加わった編成でアッパーな「迷宮のラヴァーズ」をプレイ。ShameとtezyaによるツインボーカルやSUGIZOが奏でるホットなギターソロ、躍動感に満ちたサウンドなどにオーディエンスのボルテージはさらに高まる。
▲SUGIZO(G), TAIZO(G)
▲tezya(Vo), SUGIZO(G)
続けて、抒情的に歌い上げるShameのボーカルやSUGIZOとTAIZOによるエモーショナルなツインリードなどを配したスローチューンの「clockwork life」や、「声、出していこうぜ!」というShameのアジテーションと共に届けられた「eagle sniper」などが演奏された。
このセッションも観どころは多かったが、中でも眩いオーラを発しながらフリーキーなギターソロを弾きまくるSUGIZOの姿は圧倒的だった。いつものSUGIZOとはまた一味異なり、荒々しさを押し出した彼の姿に触れられたことや高校の同級生だったSUGIZOとtezyaが長い時を経て一緒に演奏する情景を見ることができたのも今回のライブの大きなプレゼントだったといえる。
▲PATA(G), Shame(Vo), JO:YA(Vo)
▲PATA(G), Shame(Vo), JO:YA(Vo)
▲Shame(Vo), JO:YA(Vo), Jun(B)
ライブ終盤では、胸に沁み込むShameのボーカルをフィーチュアした「Desert rain」でオーディエンスを惹き込んだ後、ステージにPATAが登場。客席から大歓声と熱い拍手が湧き起こり、ラストソングとして力強く疾走する「the live」が演奏された。
リラックスした笑顔を浮かべてギターを弾くPATAの姿は貫録に満ちているし、身近な距離に彼がいるということによる高揚感は凄いものがある。加えて、PATAとJO:YA、ShameというDope HEADzの歴代メンバー3名が並び立っているということも気持ちを引き上げる。
ShameとJO:YAが発するパワフルな歌声やPATAならではのホットかつテイスティーなギターソロ、Junとkazunoのツインベースが生み出す怒涛の重低音などが折り重なった良質な轟音とメンバー全員が織りなすフィジカルなパフォーマンスにオーディエンスは熱いリアクションを見せ、高田馬場CLUB PHASEはエネルギーが渦巻く空間へと化した。
▲PATA(B)
<heath solo works heath THE LIVE everliving everloving>は、非常に魅力的な公演だった。最も印象的だったのはHEATHを悼む場ではなく、純粋に彼が生み出した素晴らしい音楽をみんなで分かち合うライブになっていたことだ。出演者がHEATHへの想いや彼との思い出などを語ることは一切なく、それぞれが音楽を通して全てを現したことに感銘を受けたし、その結果、爽やかかつエモーショナルな公演になっているのが実に良かった。
また、それぞれの楽曲と演者の組み合わせが絶妙だったこともポイントといえる。HEATHの世界観とミュージシャンそれぞれの個性が良い形で融合されていて聴き応えがあったし、表情豊かな構成で観飽きることがなかった。そして、こういうライブが実現できたのは、HEATHが幅広い音楽性を備えていたからこそということは言うまでもない。
内容の良さが光っていたし、HEATHと共にあることを感じ取れたこともあり、<heath solo works heath THE LIVE everliving everloving>が再び開催されることを願う。なお、今回の楽曲は全て10月23日にユニバーサルミュージックから発売された『all of heath』に収録されている。
取材・文◎村上孝之
写真◎Heath project
■<heath solo works heath THE LIVE everliving everloving>2024年10月27日(日)@東京・高田馬場club phaseセットリスト
01. Blueberry Murder
tezya, TAIZO, kazuno, Taji, NAOMI
02. 失われたtreasure∞land
tezya, TAIZO, kazuno, Taji, NAOMI
03. Nervous break down
tezya, TAIZO, kazuno, Taji,NAOMI
04. give
Ken Ayugai, TAIJI FUJIMOTO, Jun, Taji, NAOMI
05. solid
Ken Ayugai, JO:YA, TAIJI FUJIMOTO, Jun, Taji, NAOMI
06. come to daddy
Ken Ayugai, TAIJI FUJIMOTO, Jun, Taji,NAOMI
07. faith
MORRIE, TAIJI FUJIMOTO, Jun, Taji, NAOMI
08. day dream
MORRIE, TAIJI FUJIMOTO, Jun, Taji, NAOMI
09. under the sun
JO:YA, TAIJI FUJIMOTO, Jun, Taji, NAOMI
10. traitor
JO:YA, TAIJI FUJIMOTO, Jun, Taji, NAOMI
11. Alone
JO:YA, TAIJI FUJIMOTO, Jun, Taji, NAOMI
12. Lynch
JO:YA, TAIJI FUJIMOTO, Jun, Taji, NAOMI
13. Crack yourself
Shame, TAIJI FUJIMOTO, Jun, Taji, NAOMI
14. 迷宮のラヴァーズ
tezya, Shame, SUGIZO, Jun, Taji, NAOMI
15. clockworklife
Shame, SUGIZO, TAIZO, kazuno, Taji, NAOMI
16. Eagle sniper
Shame, SUGIZO, kazuno, Taji, NAOMI
17. Desert rain
Shame, TAIZO, Jun, Taji, NAOMI
18. The live
Shame, JO:YA, PATA, TAIZO, Jun, kazuno, Taji, NAOMI
■BOXセット『all of heath』
UPCY-90257 ¥16,500(税込) / ¥15,000(税抜)
【生産限定(4CD+1Blu-ray、豪華カラー60pブックレット)】
※三方背ケース3折デジパック
購入URL:https://store.universal-music.co.jp/product/upcy90257
▼DISC-1 <heath>
01. 失われたtreasure∞land
02. Nervous Break Down
03. Daydream
04. Live for the moment
05. clockwork life
▼DISC-2 <Singles DISC>
01. 迷宮のラヴァーズ
02. Daydream #002
03. Traitor
04. Daydream #003
05. Crack yourself
06. Faith
07. Lousy (Daydream #006)
08. NEW SKIN
09. GIVE
10. COME TO DADDY
11. SOLID
12. THE LIVE
13. UNDER THE SUN
14. solid (instrumental.)
15. crossing the deadline (instrumental.)
16. solid (outer mix)
17. New Skin_Ver07_03se
▼DISC-3 <GANG AGE CUBIST+Remix>
01. Daydream #006(LP Version)
02. Solution
03. Believe
04. Rock and Roll
05. Mind
06. Crack yourself(Album Version)
07. Traitor(Overdose Emsemble Mix)
08. Boy
09. Pessimist(Demo Track)
10. Crack yourself(Yukihiro Fukutomi Remix)
11. Faith(Nightmare Complex Mix)
▼DISC-4 <Desert Rain>
01. departure to space
02. breath
03. lynch
04. blueberry murder
05. eagle sniper
06. deuce
07. love me
08. remain sky
09. flash of space
10. the live
11. desert rain
12. under the sun
▼Blu-ray DISC <heath all of films: 1995.2.22-1997.12.31>
1. 失われたtreasure∞land
(1-1.CM1, 1-2.MUSIC VIDEO, 1-3.CM2)
2. 迷宮のラヴァーズ
(2-1.Making, 2-2.CM1, 2-3.MUSIC VIDEO, 2-4.CM2)
3. Traitor
(3-1.Making, 3-2.CM1, 3-3.MUSIC VIDEO, 3-4.CM2)
4. Daydream #005
(4-1.MUSIC VIDEO)
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