【インタビュー・後編】安倍なつみ、「人生何が起こるか(笑)。自分でも驚いてる」

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■ 「オン・マイ・オウン 〜ミュージカル「レ・ミゼラブル」より」

安倍この曲は、歌うというよりも、お芝居でしたね。ほんとに目の前にいろんな情景が広がって。イントロが始まると、もう一気に『レ・ミゼ』の世界というか(笑)自分が思い描く場所に飛んでいけるんですよ。寝静まった街、誰もいなくて、街灯がぽつぽつとついていて、石畳の、フランス革命のあの時代に。イントロが始まったら、自分がそこにすーっと舞い降りる感じがして。「オン・マイ・オウン」=ひとりぼっちで育ってきて、貧しくて。だけど想っている人がいて、でも想いは届かなくて、みたいな。そうそう(なっち、体の前で祈るように指を絡めながら想像中)。

── わかります、わかります。

安倍:歌の主人公はボーイッシュな娘で、ふたりは男女でありながら“男同士”みたいな関係でこれまできたんだけど。でもその時に初めて、女の子として、自分の本音が出てきて。この人が、大好きだっていう。そんな、相手を好きだっていう気持ちを初めてエポニーヌが歌う曲なんですよ。この旋律といい、もう、1曲にどれだけドラマがあるのよ、みたいな(笑)。感情がさまざまに揺れ動くんですね。想像の世界では幸せいっぱいな気持ちになったりするんだけど、ふと現実に戻るとまるで違って、さびしくて独りぼっち、というようにすごく揺れ動くんです。とにかく好きな曲です、これは。

── ほんとにこの1曲でミュージカルやってるみたいな曲だから、それこそ、これをステージで会心の出来だったらすっごい気持ちいいんだろうなって(笑)。

安倍:そうですね(笑)。


レコーディングでも、まさにステージに立ってるような気持ちで歌いましたね。とにかく好きな曲なので、思い入れもひとしおでした。

── まあね、ほんとに好きな曲って、自分の描く理想型ってのもありますしね。

安倍:この曲は『レ・ミゼ』の中でもナンバーワンに好きな曲です、実は(笑)。ほかにも好きな曲はいっぱいあるんですけど、この曲はもうドラマがあるので、いつか歌いたいなって思っていました。なので嬉しかったですね。

── <安倍なつみ Summer Live 2014〜Smile…︎♥>で、小樽でも歌ってるんですよね?

安倍:そうです。その日の朝に急遽歌うことを決めたので、スタッフに大変な想いをさせてしまったんですけど(笑)。ツアーは『Smile…♥』のアルバムを引っさげて回っていたんですが、その日はひさびさの北海道でのライブということで、MCで何を話すか、前日から考えていたんです。朝、札幌から会場に向かっているときに思ったんです。そういえば私、ソロになってから舞台の仕事で北海道に行ったことが無いなって。しかもその日はうちの両親や親友やその家族などが大勢来てくれることになっていたんです。考えてみれば舞台に立つ私を観てもらえる機会ってなかなか無いんだな、しかも次はいつこっちに来れるのかなと思って。でもこのときはまだ、今回のアルバムのことをステージでは話しては行けない時期だったんです。

── ええ。

安倍:実は去年のクリスマスのライブで、「オン・マイ・オウン」だけは歌っていたんですね。その時のバンマスとたまたま一緒だったから(笑)、これはできるかも、と思って「ちょっとやりたいんですけど、今日」と伝えたら、「えぇっ!?」っていうことになって(笑)。結局披露させてもらうことになったんです。「北海道では舞台やミュージカルの私を披露することは無かったけど、ソロになって以降、実はそういう経験をいっぱいさせてもらっていて、その上で今の自分があるんです」ってMCで話してから、その中でも私が大好きなナンバーを1曲歌います、といってこの「オン・マイ・オウン」を歌いました。もう、うちの両親も感動してました。

── 何て言ってました?

安倍:「すごい! あれ何の歌?」って(笑)。「ミュージカルの曲だよ。」って言ったら「いや、すごかったわ〜。」と。そこで初めて今回の「光へ」のアルバムを出すことを伝えました。今もびっくりしていますよ。

── まあ、でもそうでしょうね。

安倍:「これ誰?」って言うくらい(笑)。ほんとにびっくりしています。

── ……で、そんななっちは、お母さんに「わがままな娘でごめんね」って言うんでしょ?

安倍:そうそう(笑)。その後に「Mother」って叫びますけど(笑)。


■ 「この祈り〜ザ・プレイヤー〜with 望月哲也」

安倍:「プレイヤー」は、オペラ歌手の望月哲也さんと一緒に歌いました。もちろん声量もすごいし、「パワフルで、体が全部楽器のよう……」なんて思いながら(笑)。いままで私が舞台やミュージカルでやっていた歌とは違い、とにかく壮大なナンバーなので、これ、どこまでいっちゃうんだろう? みたいな(笑)あえて、ソプラノの高いほうのキーを選んで歌ってみたんですけど、それが難しくて。しかも、相手の音を聴いていると、そっちにつられてしまったりして。主メロが男性なので特に。

── あぁ、なるほど。

安倍:すごい高いキーで歌っていたかと思うと、今度はすごい低音を歌うことになったり。


■ 「夢はひそかに」

安倍: この曲は子供に歌い聴かせるような感じで歌いましたね。この曲は柔らかさや温かさだったり、そういう柔らかいイメージがあったので、それを感じさせるように歌いたいと思っていました。まるでシンデレラのような気分で夢見心地で(笑)実際「夢」という歌詞がいっぱいでてくるんです、この曲。

── そう、私もこの曲を聴いたメモには、“幼い感じがする”って書いてて。それも幼いというか“やさしさ”なんだろうなって、今、聞いて思いました。

安倍:そうですね。

── だから『エリザベート』ではすごい大人なっていうか強さ、ここではやさしさ、幼さみたいな。っていうのが聴けるので、このアルバムって安倍なつみの表現力をぞんぶんに堪能できる1枚なのではないでしょうかっていうね。
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