【インタビュー・前編】安倍なつみ、「『レ・ミゼ』が、あまりにすごすぎて」
2014年、ソロ活動10周年を迎えた安倍なつみが、10月22日にアルバム『光へ -classical & crossover-』をリリースする。本作で安倍は、ミュージカルやライト・クラシックの名曲に挑戦している。
モーニング娘。卒業後、数々のミュージカルに参加。その中で体得した歌唱法と表現力で聴かせる、“なっち”とも違う“安倍なつみ”としての歌声。そこで今回、彼女がクラシカル&クロスオーバーの世界を知ったきっかけから、アルバム『光へ -classical & crossover-』収録曲ひとつひとつに込めた想いまで話を伺った。
◆ ◆ ◆
■ イントロダクション(という名の雑談)
── ブログとか拝見しましたけど、けっこうインタビューされてますよね。すごい数ですよね。
安倍:確かに今回は、すごいですね。もう、どんだけ喋ってるだろうって。
── そう、だからそれを見てて、今日は“なっちと世間話をしよう”でいいんじゃないかなって。
安倍:いや、それでもアルバムの話をしましょう!(笑)。
── ダメですか(笑)。
安倍:(笑)
── BARKSが安倍さんにインタビューって、実は大昔に1回やらせてもらってて。
安倍:大昔?
── ℃-uteの矢島舞美さんとデュエットした時に。
安倍:思い出した! 「16歳の恋なんて」ですね(笑)。
── そうそう。別件で近くにいらしてた時に、動画でインタビューさせてもらったんですよ。しかも、その時にした質問が、「なっちは天使なんですよね?」ってひと言だけ(笑)。
安倍:(笑)。なんて答えてました?
── 「見える人には見えるみたい」と。
安倍:おぉ! なかなかな返しですね。
── そう。で、そのインタビューをもとに、「やっぱりなっちは天使だった」っていう記事を書いたっていう。それ以来です。
■ “モーニング娘。のなっち”から
── で、さっそく入っていくんですけど、それこそ、なっちのバースデーライブとかに、ちゃんと毎年足を運んでるファン以外の人たちって、それこそ、“なんでなっちがクラシカル&クロスオーバーの?”って思うんじゃないかって。
安倍:なるほど。それは思うかもしれませんね。
── イメージとしては、これが本人的にはどうかわかんないですけど、やっぱり“元・モーニング娘。のなっち”っていうイメージの人が、いまだにけっこういると思うんで。
安倍:そうだと思います。
── そんな安倍さんが、このクラシカル&クロスオーバーの世界を知るきっかけになったものとか、要は卒業後、なんでこの世界に行ったのかっていうところから教えてほしいなと。
安倍:正直な話、クラシカル&クロスオーバーの世界をよく知っていたわけではなく、もっと言えば、何をクラシカル&クロスオーバーと呼ぶのかもわかっていたわけでもないんです。モーニング娘。を卒業してから、自分の音楽活動と並行してミュージカルや舞台の経験をさせていただたんですけど、あの世界では、作品によって求められることも歌唱法も全然違うんですよ。
── でしょうね。
安倍:ポップスの歌い方ってありますよね。それとは違い、“お芝居があって、その役柄の感情に添って歌う”ということを何度もやってきて。ただそれだけでもなく、やっぱりまた自分の(ポップスの)音楽に戻ってきてライブをやり、また舞台をやる、その繰り返しだったんです、この10年を振り返ってみても。
── ええ。
安倍:そのサイクルの中で、10代20代の自分では学べなかったことをいっぱい教えてもらいました。そして、その経験の中で得てきたものを今回アルバムにするきっかけとなったのが、去年の本田美奈子.さんのメモリアルコンサートでのことだったんです。ミュージカル・ナンバーである『エリザベート』と『レ・ミゼラブル』の曲を2曲歌って。それを音楽プロデューサーの方が見てくださっていて、それがきっかけなんです。「ぜひ安倍さんと新しいことをやりたいです」ということでしたので。
── はい。先に公開された動画でもおっしゃられてましたね。
安倍:もしこの時に、“完全にクラシックの世界観を安倍さんでカバーして欲しい”というオファーだったら、また違ったと思うんですけど。でも、“今の安倍さんの表現で、安倍さんにしかできないことでアルバムを”というお話だったので、私ももちろんクラシカルな歌唱法を本格的に学んできたわけではないけれども、そういうミュージカル経験の中で得てきたもの、やっぱり舞台だからこそできる表現、歌い方というのは自分なりに習得していたので。それをやらせていただけるんだったら嬉しいなと思って。
── なるほど。
安倍:今、音楽の世界も年々厳しくなっていく中で、形として残すCDを出せるということの大変さは、私も経験してきました。もちろん、逆にそれまでの、良い時代も経験してきて(笑)。でも、今やっぱりソロになって、そういうことはどこか諦めなきゃいけないのかなって。配信だったりとか、今ちょっとそのスタイルが変わってきてるし。
── そうですね。
安倍:でもモーニング卒業して10年で、なんか新しいことをやりたいな、とは思ってたタイミングだったんです。また次のステージに行きたいな、とか、やっぱり音楽はずっとやっていきたいっていうものが、ずっと自分の中にあったので。それが何かな? と思いながら、いろいろ探り探りずっとやってきて、そんなタイミングで今回、このお話をいただいたんです。だから、自分にとっても夢のような、こんなことってあるのかなって驚きで、感動で(笑)。しかも、日本コロムビアさんの音楽チームとやらせていただくのも初めてだったので、方向性や、どういうテーマを持って今回アルバムを作るのか、とか。さらに私自身も今回、どんなことにチャレンジしてみたいか、とか、好きな音楽はどういうものなのかとか、お互いにすりあわせをして、意見を出し合ってだから、選曲もみんなでやりました。「こういう音楽をやってみたら?」とか「こういうのを歌ってみたら?」って。私も、出てきた曲がうわっと大量にある中で、選曲会のような……まあそんな堅苦しいものではないんですけど(笑)、そういうことして、歌ってみて、今回のアレンジャーの青山政憲さんに弾いてもらってキーを決めていって。そうそう、カラオケボックスに行ったこともありましたね、皆さんで(笑)。
── カラオケボックス?
安倍:そこでキーを決めていって。
── あー! なるほど。
安倍:そうそうそう(笑)。譜面があって弾いてもらうこともあったけど、その場でいきなり「半音上げて」とか調整をしようとするとキーのチェンジ、移調が意外に大変なんです。で、「あ、カラオケボックスが手っ取り早い」となって(笑)。
── へぇ~!
安倍:今回はオケ録りも参加させてもらいました、しかも全曲。どういうふうにこのアルバムはできていくんだろうという興味がとてもあって。だって曲によってはもう「ここは自分の現場なの?」って思うくらい、フルに近い編成のオーケストラが目の前にいるんですよ。もう壮大すぎて「これ、ほんと!?」って(笑)。「すごい!」って思わず言ってしまいました。
── いや、でもそうでしょう。
安倍:さらに、曲によっては、オケと一緒に、私も歌うこともありました。特にミュージカル・ナンバーでは、オケの皆さんと一緒に呼吸を合わせながら録ったことが多かったです。実際の舞台の場合は、舞台の下にオーケストラピットがあって、指揮者が舞台の芝居を見ながら呼吸を合わせて指揮棒を振ってくれるんですけど、録音ではそうはいかない場合が多い。だからこそ、今回の録音では、きちんとそういうオケ録りにしたくて、一緒に歌いながら、一緒の呼吸で……ということを実践しました。それが録音から伝わったら嬉しい(笑)。
── ある意味、一発録りみたいなもんですよね。
安倍:ほんとにそうです。緊張感もありましたよ。ある録音では、自己申告で「私、もうちょっとここやりたいです。」というハープの女性がいたりとか(笑)ばらばらの作業ではなく、私の歌も楽器もひとつになって、やり直しのときはみんなでやり直しをして、そういう中で「せーの!」で録った感じです。
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