【インタビュー】エクソダス、「角が4本あるのもいたし2本のもいたが、どれも悪魔みたいでクレイジーだった(笑)」
エクソダスの新作『ブラッドイン、ブラッドアウト』が10月22日日本発売となる。メタリカのカーク・ハメットがゲスト参加、スレイヤーのサポートを務めているゲイリー・ホルトが合流、絶頂期のボーカリスト、ゼトロが復帰、DVDにはなんと130分を超えるロングドキュメンタリーも日本語字幕付きで収録された話題作だ。
◆エクソダス画像
サンフランシスコ出身のエクソダスは、メタリカ、スレイヤー、メガデス、アンスラックスというアメリカン・スラッシュ・メタルのいわゆるBIG 4の次に来る、あるいは「彼らを含めてBIG 5とするべきだ」と推す声も多いスラッシュ・メタルというジャンルにおける重要バンドのひとつだ。そのエクソダスに、二代目シンガーとして1980年代から1990年代にかけての大躍進に大きく貢献したスティーヴ“ゼトロ”スーザが復帰したというニュースは驚きをもって受け止められた。
ゼトロが復帰した編成でレコーディングを行なった彼らは、オリジナル・アルバムとしては通算10枚目となる最新作『ブラッドイン・ブラッドアウト』を完成させた。プロデュースを担当したのは、1997年発表のライブ・アルバム『ANOTHER LESSON IN VIOLENCE』以来の付き合いであり、これまでメガデス、テスタメント、アーチエネミー、カーカス、マシーンヘッドといったバンド達の作品を手掛けたことでも知られる英国人アンディ・スニープだ。スピードやアグレッションを強調した激烈なスラッシュ・メタルはここにおいても唯一無二のオリジナリティを発揮、ゼトロの声が戻ったことで1980年代のエクソダスを想起させる仕上がりにもなっている。ここ数年は故ジェフ・ハンネマンの代役として、そのジェフ直々の指名でスレイヤーのツアーにも同行していたゲイリー・ホルトが取材に応じてくれた。
――2014年3月に『スラッシュ・ドミネイション』で来日した時とはバンドの状況は大きく変わっています。実のところ、あの時点でロブ・デュークスと別れてスティーヴ“ゼトロ”スーザを戻すという計画はあったのでしょうか?
ゲイリー・ホルト:いや、レコーディング中に色々あったんだよ。どんな関係でも、まずくなり始めることってあるだろ? しばらく前から解決しようと努力していた問題も色々あったが、レコーディング中に(ロブ以外の)俺達4人でやるべきだと考えているやり方が、バンドの全員にとっては上手くいかないことが明らかになったんだよ。そして先に進む時が来たと感じたのさ。そこからは、誰が歌うかという話になり、オーディションすることも考えたし、既に確立しているシンガーを呼ぶことも話し合ったし、ゼトロ、スティーヴ・スーザのことも話した。それで俺達はまずスティーヴと話をして、彼の意向を確認したところ、彼は1000%もう一度やる気だったんだ。だから彼に新しい曲を歌ってもらった。彼がそれまで全く聴いたことがなかった曲をね。それがパーフェクトに聞こえたから、それで決まりだった。そういう経緯でスティーヴがバンドに戻って来ることになった。
――3月には日本で「曲は既に完成している。後は少し手直しするだけだ」と語っていましたが、その時点で曲も歌詞も既に出来上がっていたのでしょうか?
ゲイリー・ホルト:3月の時点で音楽の殆どは完成していた。というのも俺達が日本に行ったのはレコーディングの最中だったからだ。中断して日本に行ったのさ。歌詞も大半はできていたし、レコーディングされていたものも沢山あった。
――「ヴェノムのアルバム・カバーにあるような山羊のいるイーストベイの牧場で録音する。そこにはラクダ、シマウマ、ラマもいる」というお話でしたが、予定どおりその牧場のスタジオで作業したのですね?
ゲイリー・ホルト:ああ、そうだよ(笑)。ドラムスはちゃんとしたスタジオでレコーディングした。トラック数が多くなれば、機材が沢山必要になるから。だけど、その後、トム(ハンティング/Dr)が住んでいる牧場にスタジオを設営して、そこで他の全部をレコーディングした。山羊に囲まれてね(笑)。角が4本あるのもいたし2本のもいたが、どれも悪魔みたいでクレイジーだった(笑)。パーフェクトな環境だ(笑)。俺の家から10分で、フリーウェイはなくて田舎道だけだ。物凄く近くて、物凄くリラックス出来る。パーフェクトだよ
。
――「ヴェノムのカバーのような山羊」というのはとんでもなくメタル、スーパー・メタルですね。日本であなたもそう言っていましたが。
ゲイリー・ホルト:ああ、そのとおり。そこら中にいるよ(笑)。
――「前の2枚は長い曲が多かったが、次のアルバムは直撃するような感じ、短い曲が多い」というお話でしたが、それでも6分以上の曲が6曲もあります。9分、10分という曲がないので「短い曲」というのは間違いではありませんが。意図的に短くしようと思ったのでしょうか?
ゲイリー・ホルト:いや、何もかも実にオーガニックだったよ。エクソダスの場合、総ては凄く自然なプロセスを経るのさ。俺達が腰を落ち着けて曲を書こうとする時は、特に俺の場合は、ただプレイし始めるだけだ。その曲が最終的にどういうものになろうと、それは、その曲が俺にこうなるべきだと告げた結果でね。10分の曲だろうと4分の曲だろうと。このアルバムの曲は短めだが、君の言うとおり、結構な長さのも沢山ある。11分もある曲はないけどね。どんな曲だろうと、その曲がどんな旅に出ようと、俺達はただそれに着いていくだけだ。
――幾つかの曲についてコメントを頂けますか?
ゲイリー・ホルト:いいよ。例えばアルバムのオープニング曲「Black 13」の場合だと、20年来の俺の友人である(ヒップホップのプロデューサーの)ダン・ジ・オートメーターが参加している。俺達は何度も一緒に何かやろうと企ててきたんだが、残念ながら、彼にギターをやって欲しいと思う時には俺は大抵ツアー中でやれなかったり、あるいは彼がツアー中だったりしたんだが、今回はタイミングが完璧に合った。彼はちょうどやれて、俺が「アルバムのイントロをやりたいと今でも思ってくれているか?」と訊いたら、「ああ、やろう!」と言ってくれて、俺達がファイルを送って、彼はキラーでパーフェクトなことをやってくれた。「ブラッドイン、ブラッドアウト」はアルバム・タイトル曲だ。「ブラッドイン、ブラッドアウト」というのはギャングのフレーズでね。ギャング文化では、ギャングに加わる時に血塗れになるまで痛めつけられ、抜ける時にも血塗れになるまで痛めつけられる。それがエクソダスについても俺達が感じていることだ。俺達は最初の日から血を流していたし、今でも血を流している感覚だ。「Salt The Wound」には、メタリカのカーク(ハメット)がギター・ソロを弾いている。彼はこのバンドの創設メンバーだが、最初のデモで弾いただけだった。俺達は、初期の頃は俺の実家のガレージでリハーサルをしていたんだけど、本当に昔が蘇ったようだったよ。凄くノスタルジックだったね。「My Last Nerve」は新作用に最後に完成させた曲だね。入れるのは10曲にしておくべきか、それとも11曲入りにするべきかと俺達が考えていた時期があって、最初、俺はキリよく10曲にしようと言っていたんだが、他の奴らが全員、この曲は凄く良いから入れるべきだと言い続けたんだよ。俺が、これをアルバムに入れたくないと思っていた時、曲はまだ本当には完成していなかったのさ。だけど、完成させたら凄く良かった。だから、ファンには10曲じゃなくて11曲提供することにしたんだよ。歌詞は、ウンザリすることばかりやられて、もう我慢出来ないところまで来た、というものだ。
――ありがとうございます。アンディ・スニープとの作業はいかがでしたか?
ゲイリー・ホルト:アンディは、俺にとって地球上で一番の友達の1人と言える存在だ。彼と一緒に仕事ができるのは、いつだって最高だよ。彼は、1997年以降、俺達が作ったアルバムを全部手掛けている。このバンドのもう1人のメンバーみたいなものだよ。彼以外の誰かと仕事をする必要性は感じないね。
――2014年3月に『スラッシュ・ドミネイション』で来日しましたが、次はいつになりそうでしょうか?
ゲイリー・ホルト:まだ何も決まっていないけど、早いうちに戻らないとな。11月にはスレイヤー、エクソダス、スイサイダル・テンデンシーズというラインナップで北米をツアーする予定だ。俺は2バンドでプレイすることになるし肉体的にもタフだけど、時々オフの日は入るし、ちゃんと休んで自分の身体の調子を整えるようにするだけさ。ちゃんと眠ってね。そうすれば大丈夫だよ。問題なく生き残れるさ(笑)。
取材・文:奥野高久/BURRN!
『ブラッド・イン、ブラッド・アウト』
10月22日発売
通販限定直筆サイン入りブックレット付/Tシャツ+ 130分超長編ドキュメンタリー(字幕付)収録-初回限定盤CD+DVD
【メンバー】
スティーヴ“ゼトロ”スーザ(ボーカル)
ゲイリー・ホルト(ギター)
リー・アルタス(ギター)
ジャック・ギブソン(ベース)
トム・ハンティング(ドラムス)
【ゲスト】
カーク・ハメット(ギター)[メタリカ]
1.ブラック13
2.ブラッド・イン・ブラッド・アウト
3.コラテラル・ダメージ
4.ソルト・ザ・ウーンド(with カーク・ハメット)
5.ボディ・ハーヴェスト
6.BTK
7.ラップド・イン・ジ・アームス・オブ・レイジ
8.マイ・ラスト・ナーヴ
9.ナム
10.オナー・キリングス
11.フード・フォー・ザ・ワームス
日本盤限定ボーナストラック
12.プロテクト・ノット・ディセクト
初回限定盤DVD収録(約134分)
メンバー・インタビューとレコーディング映像を収めた130分超えのメイキング映像にバックステージも捉えたツアードキュメント
◆ワードレコーズ・ダレクト「エクソダス・サイト」