ザ・ローリング・ストーンズ、超秘蔵ライブ映像が連続登場

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これはもう大変なことになった!数年に一度出るか出ないかと言ってもいいほどの、ストーンズの大変貴重なライブ映像が2週間を挟んで連続リリースされることが決定した。ローリング・ストーンズの新しいビジュアル・アーカイブ“From The Vault”シリーズのことだ。早くも第2弾が登場、それも1975年北米ツアーのハイライトだったロサンゼルス・フォーラム公演の未発表完全映像である。

◆『From The Vault - L.A.Forum Live In 1975』画像

実はその1975年LA公演の映像のリリースが決まったと聞き、いつの映像になるのか推測を試みたりしていたが、日本に届いたばかりの映像を見始めたら、もうそんな細かいことはどうでもよくなってしまった。目の前のモニターでは、驚くほど鮮やかな映像の中で1975年のミック・ジャガーが飛び跳ね、キース・リチャーズはゼマイティス製の5弦ギターをどデカい音でかきならしている。初めてストーンズのツアーに参加したロン・ウッドはくわえタバコで、ミックともじゃれ合いながら実に楽しそうに動き回っている。音はボブ・クリアマウンテンによる最新ステレオ&5.1chサラウンド・ミックス…これ以上に一体何を望めというのか。

あの名ライブ盤『ラヴ・ユー・ライブ』を生み、ラフな存在感を最も発揮していたストーンズの'70年代半ばのライブの全編映像を、いつか完璧な状態で見られる日が来ないものか…そんな夢をストーンズ・ファンなら誰もが抱いたことがあると思うが、ついにそれが実現する日が来てしまった。いや、これはストーンズ・ファンにとってだけの事件ではない。これを見て、多くのロック・ファンが、若きミックやキースらの'70年代ならではの激しく毒々しいパフォーマンスに心奪われるはずだ。

先日の1981年ハンプトン公演の時のニュース・タイトルは「奇跡のリリース」だったが、こう畳みかけられると今度はこう呼ばなきゃいけなくなる、「ミック・ジャガー本気のリリース」だ。

1975年のLA公演は7月9日から13日まで5日間連続でLA近郊イングルウッドにあるザ・フォーラム(LAフォーラム)で行なわれた。音源配信のみだが、その最終日7月13日の録音が『Stones Archive』から『L.A.Friday '75』というタイトルで、公式ブートレグとして2012年4月にリリースされている一方、映像は長らく未発表だった。今回のリリースではDVDにCDとLPが付属するが、この配信された音源が待望の初製品化される。

今回リリースされる映像は、ストーンズ側の資料によれば、同じLA公演の4日目、7月12日のもの。古いマニアックなファンなら、どこかで見たことのあるシーンも含まれていて地下世界のデータ・ベースとの整合性も若干気になるところだろうが、全編にわたって4~5台のカメラで捉えていた思われる映像のカット割りなどの編集が違っていて全く別モノと考えるべきものに仕上がっている。当然ながら、映像の鮮明度、発色の良さの違いは地下発のものとはレベルの違う臨場感を生んでおり、キースが吐き出すタバコの煙が、モニターの手前の自分にまで漂って来そうなぐらいのリアルな「空気感」を生み出している。ステージの蓮の葉の部分が、メンバーの動きに合わせて、演奏中も細かく上下してたなんてこと、少なくともぼくはこれまで全然認識してなかった。そうしたリアル感を音の良さがさらにグッと押し上げてくれるのは言うまでもない。『ラヴ・ユー・ライブ』では半分ほどの長さに短く編集されていた「フィンガープリント・ファイル」でのアグレッシヴなパーカッションの響きにこれほど腰を動かされる日が来るとも思ってなかった。

オープニング・シーンのカッコ良さも特筆すべきものだ。アーロン・コープランド作の「庶民のファンファーレ」をイントロのBGMにしたそれは'75~'76年のツアーから制作(一部'77年のスペシャル・スモール・ギグからも収録)された傑作ライブ・アルバム『ラヴ・ユー・ライブ』(1977年リリース)にも収録されていて、聴くだけでも十分興奮を呼び起こすものだったが、映像で見た場合の興奮度は段違いなのだ。

「庶民のファンファーレ」が長く鳴り響く中、蓮の葉を模した巨大な開閉式のステージがゆっくりと開いていき、中にいたメンバーが顔を出すと同時にキースが「ホンキー・トンク・ウィメン」のオープニング・リフを弾き始めるという具合なのだ。このストーンズのライブ史上最もスケールが大きくドラマチックなオープニング・シーンが、ついに正規の映像作品として登場する。しかも、楽屋からステージに向かうメンバーの姿や、プロモーターのビル・グレアムを捉えたシーンも交えて、より緊張感が高まるような形に編集されている。このシーンだけでも多くのロック・ファンに、'70年代のストーンズの圧倒的な存在感を改めて伝える“事件”になり得るのではないかと個人的には思っているほど大好きなシーンだ。

1975年のこの北米ツアーは、'70年代前半のストーンズに多大な貢献をしたギタリスト、ミック・テイラーが前年暮れに脱退を表明し、当時まだフェイセズのロン・ウッドをゲストに迎えて敢行されたものだった。それ以前のツアーでは当たり前のものとなりつつあったホーン・セクションは外して雰囲気をがらりと変える一方(LAの後半3日間だけは一部ゲストとしての参加もあり、その様子も今回の映像には捉えられている)、キーボード奏者のイアン・スチュアート、ビリー・プレストンの参加に加えて、スティーヴィ・ワンダーのバンドとドラマーも務めていたオリー・E・ブラウンをパーカッション奏者として新たに迎えてリズム面を強化。ニュー・ソウル/ファンクからフィリー・ソウルを経てディスコへと向かいつつあった当時のブラック・ミュージックの動向に呼応したような、ファンキーかつ重厚感漂うパフォーマンスを繰り広げたとのだった。これもライブ・アルバム『ラヴ・ユー・ライブ』にもしっかりと刻まれている。

しかし、ストーンズがこの1975年のツアーから1ステージあたりの演奏時間をそれまでよりグッと伸ばし、舞台装置や演出面でも先に触れたオープニングのギミックや、ステージ中央からミック・ジャガーがせり上がって来るような仕掛けを使ったり、「スター・スター」の演奏中には歌詞の内容に合わせて迫り出して来る男根を模したバルーン(先からは紙吹雪が噴出!)をミックが自分の股に挟んでおどけたり…といった、いろんな意味でビジュアル・インパクトの強いシーンがふんだんに盛り込まれたこのツアー時のパフォーマンスの全体像は、今回のリリースで初めてちゃんとした形で世界に向けて公開されることになる。もちろん、ビリー・プレストンが歌い、ストーンズのメンバーがサポートに回る2曲ももちろん含まれ、そのうち1曲の円中には、ターザンよろしくミックがロープにつかまって引き上げられ観客席の上空を「飛ぶ」シーンも見られる。長年のファンはミック、キース、ロン・ウッドの3人がフロントで一緒にハモる「ワイルド・ホース」のシーンを見て存分に泣くべし。そして“悪魔”のようなロックのリズムに今も魂を奪われ続ける不良たちは、裸になったミックが雄叫びと共に先導する終盤のグルーヴのウネりに、ただただ圧倒されるべし!

発売は11月上旬。「ハンプトン1981」の2週後に日本先行発売される。収録時間は159分。各形態でリリースされる予定で現在調整中だ。DVDにセットされるCDやLPには、上で触れた“Rolling Stones Archive”から公式ブートレグがリリース済の7月13日の音源が収録される。もちろん初CD&LP化となる。

発売元のワードレコーズではストーンズファンの期待に応えるべく内容の濃い日本先行盤を作るために現在急ピッチで作業が進んでいる。詳細は決まり次第近日中に発表される。

文:寺田正典
編集:BARKS編集部


『From The Vault - L.A.Forum Live In 1975』
収録予定曲
1.Introduction
2.Honky Tonk Women
3.All Down The Line
4.If You Can't Rock Me / Get Off Of My Cloud
5.Star Star
6.Gimme Shelter
7.Ain't Too Proud To Beg
8.You Gotta Move
9.You Can't Always Get What You Want
10.Happy
11.Tumbling Dice
12.It's Only Rock‘n' Roll
13.Band Intros
14.Doo Doo Doo Doo Doo(Heartbreaker)
15.Fingerprint File
16.Angie
17.Wild Horses
18.That's Life
19.Outta Space
20.Brown Sugar
21.Midnight Rambler
22.Rip This Joint
23.Street Fighting Man
24.Jumpin' Jack Flash
25.Sympathy For The Devil
*18、19はビリー・プレストンが歌うナンバー

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