ビリー・ジョエル、「ロックの扉を開いた」ソ連での歴史的パフォーマンス
5月9日はビリー・ジョエルの65歳の誕生日だ。2014年は名盤『ピアノ・マン』40周年、初来日35周年にあたるアニバーサリー・イヤーとして、「ビリー・ジョエル祭」ともいうべきキャンペーンが実施される。
◆ビリー・ジョエル画像
まずは5月21日に超強力な作品4タイトルが一挙リリースされる。中でも注目すべきは、1987年に行われたビリー・ジョエルのソ連公演を完全版・最新リマスターでパッケージ化した『マター・オブ・トラスト:ブリッジ・トゥ・ロシア』の発売だ。本商品のデラックス盤(Blu-spec CD2仕様CD2枚組 + Blu-ray Disc 3枚組)のみに収録されているドキュメンタリー映像は、変革を余儀なくされていた当時のソ連の現実を映し出す「時代の鏡」のような作品となっている。「音楽の力が政治的緊張を持つ大国の橋渡し(ブリッジ)となったライブ」の全貌を見事に描き出した作品だ。
東西冷戦時代に、「東側」ソ連で初めてツアーを行なったアメリカのアーティストがビリー・ジョエルである。アメリカ国内での反発、機材や物理的な問題など様々な困難がある中、費用の一部を負担してまでツアーを敢行したロック・スターの姿と、文化も言語も全く異なる人々との情熱と交流が描かれている。
ドキュメンタリーの中で、ビリー・ジョエルはその決意をこう語った。「アメリカのロックスターがソ連に行くんだ。長年ロックを禁止していた国にね。雪解けへの大きな一歩さ。音楽に国境はない。だから行くんだ」
ビリー・ジョエルがコンサートを行うまでのソ連の音楽状況については、現地のロック歌手スタス・ナミンがこう語っている。「当時のソ連はロックのコンサートだけじゃなくレコードを作ることも禁止されていた。当局の許可が必要だったんだ。従わないと刑務所に送られ、とてもつらく悲惨な人生を送ることになるんだ」
ライブの冒頭では、前列にいる人たちが耳をふさいで顔をしかめていたが、じきにその反応が熱狂へと変わっていく。ビリーは観客とつながろうと、マイクを持ってステージを降り、会場の後ろまで駆け抜け、ステージの前に観客を集めるなど、あらゆることを試みていた。そして、遂には観客席にダイブしてクラウドサーフィンまで行なっている。ソ連の人々はそんなものを今まで見たことがなかった。ビリーにとっても初めてのことで、こう振り返っている。
「あんなことしたのは初めてさ。観客の愛情がステージまで伝わってきてあまりの熱狂に自然と飛び込んだ。世界で初めてモッシュしたのは僕じゃないかな(笑)」
ビリーは観客を信頼し彼らもビリーを信頼した。「信頼」が大切だという最終的なメッセージにつながり、最高のライブとなった。文化の違い、言葉の違いはあれど、結局は「信頼の問題(Matter Of Trust)」であることをビリーは肌で感じていく。また、1987年はチェルノブイリ原発事故(1986年)の直後でもあったが、ビリーは娘アレクサがふたつの国をつなぐ明るい未来を象徴する存在だと考え、家族とともにツアーを回っていた。
「娘を一緒に連れて行くことで、信頼してるってことをソ連の人々に示したかった。アレクサは明るい未来を象徴していた。ソ連とアメリカの関係の中で大きく成長しようとしている種のようなものだった」──ビリー・ジョエル
また、ビリーがレニングラードのサーカスで出会ったピエロの青年「ビクター」との交流も、ドキュメンタリーの中で象徴的に描かれている。ビリーの大ファンであったビクターは、モスクワとレニングラードの公演に毎日来て、最前列で全身全霊を込めて感情を表現した。ビリーもバンドもその姿を見て驚き、心を動かされる。楽屋に招待されたビクターはビリーに「あなたの公演は米ソの架け橋になると思う。両国の溝を埋めるようなね」と語りかけ、それに対してビリーは「もう一度曲を書くよ。こんなに楽しいショーは今まで無かった。音楽の力がどんなものかを思い出させてくれた」と返した。のちにビリーはソ連の人々とのつながりや絆に想いを馳せ、そしてかけがえのない友人ビクターへの想いをこめて、「レニングラード」という曲を書き上げる。
さらに、当時ステージにも上がってビリーの通訳をしていたオレグ・スミルノフ氏が今回奇跡的に見つかり、新たにインタビューを受け、「誰もが『自由』というエネルギーを音楽だけじゃなくビリーの全てから感じた。それは初めての経験で禁じられた感覚、何かが変わろうとしてると誰もが感じたよ」と語っている。人の良さそうな彼が今も変わらず、元気に当時を振り返って語る姿は大変微笑ましい。
今、1987年のツアーを振り返ってビリーはこう語っている。
「変化を求める空気が充満し、爆発寸前だった。旧体制が一掃される絶好の時期にあそこにいたのさ。変化は予測できたと誰かが言うならそれはウソだ。ソ連崩壊なんて予想外さ。ロックンロールは自由の象徴だ。人々を解放し、信じる力を与えてくれる。音楽という不変の言語でね。彼らはロックンロールに心を開いてくれた」
彼の曲に政治的なものは無かったが、彼がもたらした自由は政治的行動となった。コンサートにいた観客だけでなくソ連全ての人が影響され、ロックが正式にソ連を席巻したのである。ドキュメンタリーの中で、ソ連の人々は、ビリーについて「ソ連でビリー・ジョエルと言えば"ロックの扉"を開いた人物なんだ」と語った。
音楽の歴史、ロックの歴史的にも重要な役割を果たした伝説のコンサート。音源は最新リマスターで甦り、2CDは世界において日本盤だけが高品質なBlu-spec CD2仕様となっている。
なお、ビリー・ジョエルの楽曲が初のドラマ主題歌に使用されることも決定した。5月25日スタートとなるNHK BSプレミアムドラマ『プラトニック』(毎週日曜午後10時。野島伸司作、中山美穂X堂本剛)で「オネスティ」「ストレンジャー」が使用される。また6月21日からはニューヨーク生誕350周年うを記念して、『NY LIVE! -ニューヨーク・アニバーサリーライブ-』と銘打ち映画『ライブ・アット・シェイ・スタジアム ‐ザ・コンサート‐』が全国各地で上映される。
『マター・オブ・トラスト:ブリッジ・トゥ・ロシア <デラックス・エディション>』
5月21日発売
冷戦時代に東西大国をロックの風で繋いだ、歴史的な‘87年のソ連(当時)公演を、完全版・最新リマスターでパッケージ化。
Blu-Spec CD2の2枚組+Blu-Rayディスクのハイスペック3枚組で、当時を完全“真空”パック ¥8,000+税
ベスト・アルバム『Piano Man:ザ・ヴェリー・ベスト・オブ・ビリー・ジョエル』
5月21日発売
代表曲・ヒット曲を完全網羅した全19曲|高品質Blu-SpecCD2仕様:豪華スリーブケース仕様:特別価格¥2,000+税
究極のベスト日本人が好きな曲ほとんど入ってる現状一番最高なベストを低価格化、新装リリース
『We Love Piano Man ~トリビュート・トゥ・ビリー・ジョエル』
5月21日発売
ビリーを愛する国内アーティスト全10組のパフォーマンスで構成されるビリー・ザ・ベスト! \2,500+税
『ムーヴィン・アウト:グリーsingsビリー・ジョエル』
5月21日発売
米人気ドラマSEASON5のビリー・トリビュート盤。日本盤には、シーズン1~4までに登場したビリー楽曲4曲を、ボーナストラックとして追加収録。特別価格¥1,700+税
◆『ピアノ・マン』40周年記念特設サイト
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