【インタビュー】バロック「2人体制でバロックとして活動すると決めたからこそ、もうみんなの前で隠し事はしたくない」

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■解散するという選択は俺のなかにはなかった
■怜は「辞める」って言ったの


──お互い、バロックにかける温度感が違ってたんですかね。

圭:いまとなってはそうとしか思えない。

怜:でも、バロックとして飛び立つときの約束は「みんな一緒に」ってことで、それは嘘偽りのない言葉だと思ったから4人で一緒に飛び立ったんだよ。もう1度バロックをやる。そこに対してはすごく慎重にいったから。何度も何度も確認して。それでバロック始めたのに……。まさかね、万ちゃんに関してはバンドとは関係ないことでいなくなるなんて思ってもいなかった。

圭:これがね、バロックやりだしてみたらやりたいバンドと違うから辞めるだったらよかったんだよ。なぜなら、音楽やり続けてれば、また一緒にやれるかもしれないから。でも、音楽を捨てていなくなったら、もうできないじゃん。それで、さらにここで俺らまで投げ出してしまったらバロックってバンドをやる人がいなくなる訳じゃん? だから、晃君がいなくなった後、今後続けるべきかどうかを考えたとき、もう1回解散するという選択は俺のなかにはなかった。それを、怜に電話して話して。「俺は2人でも続けられると思うんだけど、どう思う?」って話をして。そしたら、そのとき怜は「辞める」って言ったの。

──えぇ?っ…!!

怜:うん。言ったね。それは、俺が一番4人でバロックとして飛び立ったんだってところにこだわってたからだと思う。だから、メンバーがいなくなったってのがすごく嫌だったんだ。こんな短い期間に。まず万ちゃんいなくなった後、俺らは「キズナ」というシングルを作った。いままで「キズナ」は番外編って位置づけだっていってきたけど。万ちゃんがいなくなって3人になったときに感じた痛みとか意識はそのとき3人で共有してたと思うんだ。だからこそ、そういうものをまずこの3人で作らなきゃいけないと思って、悔しい思いしながら、気持ち込めてあの「キズナ」を作って。あそこで残った3人の絆を改めて確認し合った。だから、強い気持ちでNHKホールのステージには立てたんだ。その後に晃君はいなくなった訳だから。俺からしたら「なんだよ!」って。意味分かんなくて。自分の心が割れるぐらい爆発的な出来事だった……。「キズナ」を苦労して作ったばかりなのにって。まず、いないって現実が理解できなかった。なんなんだよって怒りがあまりも大きすぎて。圭との喧嘩があった後も俺、電話で話してるし。そこで確かに「俺、正直無理かもしれない」ともいわれた。「じゃあそれを話そうよ。圭からも連絡くると思うし。俺も話したいし。アルバム制作前に1度会って話そう」っていって電話を切ったんだけど。新年明けてからは連絡がとれなくなって。探しても居なくて。それで、圭から電話きたときはもう辞めようと思ってた。

圭:そこで1回白紙になったんですよ。バロックの未来は。でも、まだアルバムのレコーディングが終わってなくて。

怜:晃君の曲とかアレンジもまだ終わってない状態で。メロディ、歌詞、ギターもちょっとずつしかなかったんじゃないかな。

圭:だから、その時点では「とりあえずアルバムを完成させてから今後のことは考えよう」って感じになった。それが2013年の1~2月頃。最初は晃君が戻ってくるという思いがあったのでいなくなったのが分からないような形で晃君のギターパートを俺が晃君っぽく弾いて入れたり。本当に時間がないなかやって。作品に関しては悔いが残るレコーディングだった。

──しかも、ライブも決まってたんだよね?

怜:うん。3月の赤坂ブリッツと4月のvistlipとのイベントも決まってたんだよ。

圭:<TOUR バロック現象 第5現象>と<TOUR バロック現象 第0現象>の赤坂ブリッツ2DAYSとvistlipとのイベントは3人体制のときにすでにチケット発売していて。NHKホールで4人のバロックにピリオドを打って、赤坂ブリッツの2日間で新しくスタートしようってテーマだったんだけど。そこでスタートする前に2人になっちゃって。ファンは3人体制でやるアルバムの曲を見たいと思ってチケット買ってくれてるのに2人でどうやるのか。やりきるのに必死だったよ。こういうチャゲアススタイルがいいのかどうか。

──チャゲアススタイル?(一同笑)

圭:うん。それがいいのかどうかも自分たちは分かんなかったんだけど。でも、あれはあれでありだといってくれる人たちがいたんですね。それで、8月にもう1回、3本だけこのスタイルでやってみようってことで東名阪ツアーをきって。そのときに今後どうなるかは分かんないけど、このスタイルでアルバム1枚は作ろうっていう約束はしたかな?

怜:うん。したね。

──2人体制で。

怜:そう。俺は4月にツアーやって2人体制も面白いなってのはそこで感じてた。だけど、俺のなかで一番モヤモヤしてた問題は、今日話したような真実をいわずにずっとやらなきゃいけなかったこと。それは本当に健康的じゃない。だからこそ、俺はすごい感情的になってて。「そんなのいっちゃえばいいじゃん」ってずっといってた。そこを隠しながらっていうのがすごくひっかかってた。嫌だったし、気持ち悪かった。

圭:俺らからいろいろ話すことはストップされてたし、事務所も葛藤してたんだと思う。

怜:事務所側から発信したくても、申請されててできないこともあったからね。事務所も苦しんでた。だから、俺は早いとこ決着つけて欲しかった。冷たいかもしれないけど、そこに関しては俺は冷静だった。辞めるんなら辞める。それだけいってくれればクリアになることだからさ。

圭:うん。もう2人が帰ってくることはないと思うからね。たとえ、戻って来られてもああいう居なくなり方をされてね。

怜:そうだよ。

圭:俺らも遊びでやってる訳じゃないしさ。そんな人たちに自分らの人生を預けられない。そういう意味でいうと、ファンの人たちの望みを砕くようで申し訳ないけど、彼らは事実上脱退と等しい。もう帰って来ない。けれども彼らは社会人、事務所に所属してる人間としてまだ片付いていない問題がいろいろあるからさ。脱退とはいえないんです。もちろん、バンド上の人間関係、メンバーとしても友達としてもまったくも何も片付いてませんけどね。直接話をしてないから。

怜:ホントそう。だから、ファンの子たちがもう帰ってこないんだっていうことに対して不満を感じるなら、それが消えるぐらい俺らが素敵なもの見せればいいんだよ。

圭:そうだね。バロックのライブに4人の姿を求められても、もう違うんだよ。20年も同じメンバーでやってるバンドなんて当たり前のように見えて“奇跡“なんだからさ。ウチもこの先の確証はない。それは。俺たち自身が一番よく身に沁みて知ってる。だから、みんなが見たいと思ったタイミングで俺らのライブは見てもらわないと、もう2度と見られないかもしれないから(笑)。どこのバンドもそういうものだと思うんだけど。

怜:俺は2013年、それを一番考えた。バンドはそういうものだってことを。俺は元々「そうじゃない。バンドは同じメンバーで続けるものだ」と強く思ってたタイプだったからさ。

■「バロックって何?」って聞かれても、俺自身よく分かんない
■一番バロックがカッコいいのってそういうところだったんじゃないかな


──だからこそ、2人になったときに「辞める」という選択が頭に浮かんだと。でも、そういうバンドに対しての考え方が変わった?

怜:そう。もっと冷静に考えるようになった。

圭:お互い、そこをすごく認識したからこそ「2人でバロックずっと続けます」「この先アルバム何枚も出します」とは約束できない。

怜:こういう夢だけじゃないところ。こうして俺らが葛藤しているところも発信していけばいいと思うんだ。そこをひたすら隠し続けて笑顔でバンドやるのは俺は絶対健康的じゃないと思うし。ライブでも一番いらないところだと思う。

──だから、今回のツアーはキラキラ笑顔で楽しんでるだけの怜さじゃない表情も見られた訳ですね。

怜:そう。4人のバロックとか3人のバロックとか……「バロックである自分」に俺はこれまでこだわり続けてきたけど、いまはそこがいい意味で吹っ切れてステージに立ってる。

──2人になって、いろいろ意識の変化があったんですね。

圭:ただ、唯一変わらないのは、自分のなかでもファンのなかでも「バロックはカッコいいんだ」って誇ってて欲しいんですよ。バロックは自分が10代のときにやりだしたバンドで、この世で一番カッコいいバンドだと思ってるから。この世で一番カッコいいバンドにならなきゃいけない、この世で一番カッコいいギタリストにならなきゃいけないって思い込んでるの。復活するときにもう1度そこは心に誓ったし。だから、今回バンドのロゴマークを新しくしたでしょ?

──初めてですよね。大文字表記にしたのは。

圭:これまでもカタカナ、小文字いろいろありありましたけど。これは、バンドが進化してるんだと思うんです。バンドって、自分たちを越えちゃうものだと思ってて。まずバロックを最初に作ったのは晃君と万ちゃんだし。解散してる間は俺らが知らないところ、ファンのなかでバロックが成長してたからこそ赤レンガのライブの成功があって、俺らは復活した。そういうこと自体バロックはメンバーとかを越えた存在なんだと思う。だから、本気じゃない人は必要ないってバロックがいってるのかもしれないね。いまの状況は。復活後4人で活動したのは1年もないぐらいだけど。最初はセルフオマージュ的なことをやろうって。

怜:決めてたんだよね。

圭:“バロック現象"で活動してる間は自分たちがやってきたことを辿って。ルックス面もサウンド面もセルフオマージュをやって、もう1回歴史を繰り返させて、そこから新しいものを作ろうっていう考えだったのね。それは4人で話して決めたことだったんだけど。実際は続かなかった。それも、バロックというバンドが嫌がった結果なのかもしれないよね。

──そうですね。オマージュをやることに対してバンドが拒否反応を起こした結果、いろんなトラブルが起きたのかもしれない。

圭:バロックって最初から変なバンドでしょ? 2001年に結成して、3年ぐらいしか活動してないのに同じような音楽やってた時期がないの。だから、復活後にやったセルフオマージュも俺らの思い込みでしかなかったし。

怜:そうなんだよね。

圭:「バロックって何?」って聞かれても、俺自身よく分かんないんです。ただ、やりたいことをやってるだけで。

怜:どんどんどんどん変わるにつれて俺は「これがバロックなんだ」って時期ごとに思い込もうとしてた。

圭:「あなくろフィルム」作ったときも、『sug life.』作ったときもそうだけど“らしさ"って俺らのなかでは考えてなかった。そこはいまも変わってなくて。ただ、らしさはなくても“進化"はしていく。

──そうやって進化すること、変わり続けることこそがこのバンドが背負った運命なのかもしれないですね。変わり続けることで進化を止めない。それがこのバンドのらしさなのでは?

圭:だから、同じようなことやってるとバンドが拒否するんだよ。きっと。ただし、これはファンにもよく考えて欲しいんだけど、一番バロックがカッコいいのってそういうところだったんじゃないかなってこと。

──そんなバロックの最新型を確認できるのが現在開催中の全国ツアー<SYMMETREA>。

圭:さらに進化したチャゲアススタイルで。

──確認しますが、B'zではないですね?

圭:B'zは稲葉さんが真ん中にいるじゃないですか。

──立ち位置のこといってたんですね。

圭:そう。俺がいってるのはね。センターを空けた2人の立ち位置ってこと。サポートのベーシストが固定じゃないから、ボーカルをセンターにすると変なんだ。

怜:いろいろ試していって。しっくりきたのが、いまのチャゲアススタイル(笑)。

──いまのスタイルになって、ロック感が倍増したように思えるんですが。

怜:編成がシンプルになったからこそ、リアルに熱量を感じる事が増えてからじゃない?

圭:そういうダイレクト感がいいんじゃないかな。音楽のジャンルとしてではなく、伝え方としてダイレクト感は求めてる気がする。

──今回はサポートメンバーとしてベースに人時さんが加わって、さらにロックな色合いが濃くなってました。

怜:そうだね。ただ、ツアー初日のメンバー紹介は失敗した。普通だったらつけないのに、「人時」っていったあと“さん"って小さい声でいっちゃったときは、まだ俺越えてないなと思った(笑)。ツアー帰ってくるころには“さん"がなくなってると思うけど。

圭:音の説得力でいったらBAROQUE史上ダントツで今が一番だと思うけどね。

──一番ロックですよ。

怜:そこを磨いていきたいです。俺はバロックとはっていうこだわりがいい意味でなくなった分、いまは歌を純粋に磨いて磨いてってだけだから。

圭:今回のツアーはすごいダイレクト感あるツアーだからそこを磨いて、魂と自分のスキルを一致させたい。曲作りもそう。次やる曲はすごく大事だと思ってるから、いろいろ葛藤があって。次にやるものはもっと自分たちがスキルアップしないとできない気がする。バロックのオマージュとか関係なくなるからこそ、過去のバロックにないものになるかもしれない。

──それこそ、バンドが望んでる進化なんじゃないですか?

圭:その扉を開けるのかどうかの葛藤がまだ自分のなかにある。だから、そこも含めて、怜の歌も俺のギターもそうだけど、さらに魂とスキルが直結できるようになったらいいんじゃないかな。このツアーで。

──では、このツアー後の今年のバロックについて考えていることがあったら教えて下さい。

圭:アルバム作りたい。それに尽きる。

取材・文●東條祥恵

バロック 2014全国ツアー<SYMMETRIA>
2月14日(金) 仙台HooK OPEN 18:30 / START 19:00
2月16日(日) 新潟GOLDEN PIGS BLACK STAGE OPEN 16:30 / START 17:00
2月18日(火) 金沢AZ OPEN 18:30 / START 19:00
2月20日(木) 広島ナミキジャンクション OPEN 18:30 / START 19:00
2月22日(土) OSAKA MUSE OPEN 17:30 / START 18:00
2月24日(月) 名古屋M.I.D OPEN 18:30 / START 19:00
2月28日(金) 新宿BLAZE OPEN 18:30 / START 19:00
[チケット料金] スタンディング \4,800(ドリンク別)
チケット発売中


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