【ライブレポート】圭(BAROQUE)、アルバム『utopia.』を立体的芸術作品へ昇華

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圭(BAROQUE)が2021年12月30日に東京・渋谷PLEASURE PLEASUREにてワンマンライブ<in ancient.-the complete utopia.->を開催。そのなかで1月26日にニューアルバム『utopia.』をリリースすること、さらに4月17日の満月を迎える夜、東京・渋谷ストリームホールにてワンマンライブを開催することを発表した。

◆ライブ画像

BAROQUE活休後はギターを中心としたインストスタイルと、本人がセンターに立ってヴォーカルを担当する歌ものスタイル。その2つのパフォーマンスを追求しながらソロ活動を展開している圭。この日のライブは、インストスタイルで作った発売前のニューアルバム『utopia.』を完全再現するという内容の公演だった。

自分1人だけで作り上げたアルバムのサウンドを、有機的なバンドを使っていかに現実世界に召喚していくのか。ライブは頭からラストまで『utopia.』の曲順通りに進行していった。楽曲のアクティングと共に、ステージ後方にはこの日のために『utopia.』のアートワークを担当した美術家・真砂雅喜氏が楽曲ごとに制作した映像が映し出され、その映像とともに観客たちは着席して『utopia.』の全貌を体感。サウンドテクスチャーは、明らかにこれまでの圭を感じさせるもの。だが、なにかが違う。ライブの見せ方も1曲ごとに音、映像が作り出す立体芸術のような作品を、美術館でモダンアートのインスタレーションを眺めるように鑑賞していく。そんな感覚を引き起こすライブだった。


ステージ後方、少し空いた幕の間からアルバムのジャケットが映し出される。サポートメンバーの結生(G/メリー)、高松浩史(B/THE NOVEMBERS)、山口大吾(Dr/People In The Box)、hico(Key&Mani)に続いて、圭が現れる。1曲目の「spirit in heaven.」が始まると後方の幕は全開。波打つ海とともにスクリーンいっぱいに空が広がる。「みなさん、ようこそ『utopia.』の世界へ。遠いところまで旅するんで、楽しんで」という圭の短い挨拶を挟んでから、ライブは最後までノンストップでアルバム曲を披露していく。

広大な夜空をバックに「longing star.」が始まると躍動するリズムに合せて、Bメロから流星群がスクリーン一面に広がって出現。ライブ初披露曲となる「helix.」が始まると、誰もまだ足を踏み入れたことがないような大地に太古のビートが鳴り響き、会場の空気を震わす。圭を中心に放射線状に広がる針葉樹。その神秘的な森のなかを抜け出すと、空一面に青空が広がり、雲が流れ出す4曲目の「mobius.」へ。ベースが浮遊感ある柔らかなメロディーを奏で、その上に圭が優しい音色でアルペジオを重ねていくと、マインドはいつの間にか心地よくチルアウト。これらを、観客を1人ぼっちな気分にさせて鑑賞させていく今回のステージング。どうやら『utopia.』はこれまでのようにどこかで見たことがあるような懐かしい風景や忘れられない感情を思い出すものとも、音とともに自己の深い意識と対話したり、圭の覚醒した脳内、精神世界とコンタクトするようなものともまったく違う次元にある音楽作品のようだ。


圭という作り手から湧き出る感情を音で言語化することを極力排除したら、そこにはなにが残るのか。その元素、bigininngをサウンドデザインしたような世界が『utopia.』にはある。ここでいうutopiaとは生き物や人間が存在する前の誰も見たことがない宇宙の、地球の始まりなのか。ミュージックビデオを作り慣れた音楽の専門家ではなく、美術家である真砂氏が作リ出す映像は基本モノクロームで、余計な心象や情報をいっさい語ることなく、余白を残した美学を追求していく。余計なものを排除したなかで唯一残った空、雲、海、森林、岩など自然界にあるものだけを抽出したミニマリズアートを『utopia.』の楽曲に調和させることで、音楽を立体的芸術作品へと昇華させていったところは今回のライブの大きな見どころにもなっていた。

ライブはすでに中盤。時間が停止したかのような静寂空間が広がるなか、「sanctuary.」が始まると、真っ暗になったスクリーンに白い月が浮かび上がる。反射した光が降り注ぐ「cell structure.」でベースを中心に徐々にバンドが躍動しはじめ、映像の光とピアノがきらめきを増していったところで、スクリーンの映像は宇宙空間から地上へと落下し、真っ白い靄に包まれた森林に切り替わる。その真ん中に縦長に切り取られた海が映し出され、演奏が始まると、神秘的なシンセと圭のエフェクティブなギターとともに映像は海中へとダイブ。自然界初の超常現象がいま目の前で起こっているような錯覚に陥る未知なる音の世界を、彼らはアンビエントとシューゲイザーに即興性が混ざり合ったこのメンバーならではの研ぎ澄まされた演奏で、現代アートを描くようにサウンドを構築してみせた。


神秘的なキーボードとともに、うごめきだした圭のギターがクラブシーンに繋がるビートをとらえ、展開していった「the sin.」でバンドは一気に熱量を放出。ステージは真っ赤な照明に包まれ、白いスモークが何度も吹き出すなか、圭は激しくギターを弾き倒してスパーク。そのあと、柔らかで耽美的なピアノに誘われ始まった「eve.」では、圭のギターソロのエネルギーを受けて映像のなかではなにもなかった場所に、薔薇が次々と開花。

「in the light.」が始まると、映像にはこれまで感じなかった温もりを感じさせるような木漏れ日が差し込み、生命の息吹、その誕生を祝福するような明るいタッチのメロディーがギターから次々と生まれ出ていく。照明に照らされ、どんどん明るくなるステージ。そこに「embrace.」が流れだすと、ピアノとギターが奏でるメロディーが音符となって優雅に歌い踊り出し、極上のファンタジックワールドが場内に誕生。そうして、ラストに「utopia.」を演奏すると、映像は再びオープニングの海へと戻って、ライブは終了した。

アルバム『utopia.』を立体的芸術作品として鑑賞した本編で、圭ならではの“エッジーなアンビエント”ライブをとことん堪能した後、「cry symphony.」で幕開けしたアンコールは圭がハンドマイクを持って歌う歌ものライブを展開。歌、楽曲を通して美メロメーカーの圭の魅力がたっぷり感じられるカラフルなメロディーが場内に解き放たれていくと、スタンディングで体を揺らすオーディエンスの表情もとたんに緩んでいく。


歌とともに、ここでは本編では封印ぎみだった圭の饒舌なトークも解禁。そのなかで、2022年は『utopia.』を1月26日にリリースすることをまずサプライズで伝えたあと、その後は「今日もインストの『utopia.』と歌ありをやったけど。その2つの俺を“融合”させるためにちょっとお休みしようかな」と考えていることをファンに告げた。しかし「じゃあ次はいつ会えるの?」とファンを不安にさせないために「2021年は4月12日、新月の日に<輪廻の新月>というライブをやって、そこで初めて歌ったんだけど。2022年は4月17日が満月。その日渋谷ストリームホールがとれたからライブやります」といい、予期せぬライブ告知でファンを大いに驚かせた。

さらに、2022年は自身の誕生日も満月であることを自慢げに話し「2022年のニックネームは“Mr.フルムーン”だから」といって場内を和ませた。そうして、BAROQUEが休止して以降「みんなに支えられて、頑張りたいなと思えた1年だった」と2021年の自分を振り返ったあと「2022年は休みの間に何かをつかんで帰ってきて。みんなを支えて、引っ張っていきたいと思います」とファンに向かって高らかに宣言。そうして、最後にいまやソロのライブのクロージングソングの定番となった「ring clef.」をピアノとギターを演奏しながら歌って、2021年の活動を締めくくった。

文◎東條祥恵
ライブ写真◎上溝恭香(TAMARUYA)


『utopia.』

2022年1月26日 Release

収録曲 // COMPLETE 12 TUNES
scene1____spirit in heaven.
scene2____longing star.
scene3____helix.
scene4____mobius.
scene5____sanctuary.
scene6____cell structure.
scene7____monolith.
scene8____the sin.
scene9____eve.
scene10____in the light.
scene11____embrace.
scene12____utopia.

All Music & Produced : 圭
Guitar & All Instruments : 圭
Recording & Mixing, Mastering Engineer : 圭

■通常盤
PGSK-038 (CD) ¥3,500
Manufactured & Distributed by sun-krad Co., Ltd.

■会場・通販 限定盤
【数量限定】 PGSK-037(CD) ¥6,500
※特殊パッケージ LPサイズジャケット仕様

詳細:http://pigmy.jp/news/1133/

<圭ファン旅行 旅SYNERGY伊東編>

2022年2月4日(金)~2月5日(土)

詳細・お申し込みはこちらから
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◆圭 オフィシャルTwitter
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