【インタビュー】摩天楼オペラ、荘厳なクワイアが織り込まれ、ドラマティックな流れに感涙必至のスペクタクル叙事詩『喝采と激情のグロリア』
■「永遠のブルー」「Midnight Fanfare」「喝采と激情のグロリア」と続く
■終盤の3曲は、僕的に激押しの流れです(Anzi)
――なるほど。そこから「Freesia」「CAMEL」とシングルのカップリングを挟み、7曲目の「Merry Drinker」はハードロックなAnziさん曲。
悠:マスタリングを経て、既発曲も生まれ変わりましたね。シングルのときが100%だとすると120%になった気がして、特に「CAMEL」はガッチリと一つになって向かってくる感を肌で感じました。
苑:低音が締まったよね。
Anzi:その「CAMEL」から「Merry Drinker」のスネアの連打が始まるまでの間も、僕にとっては二度目のニヤリゾーンです(笑)。「Merry Drinker」は今、自分がやりたいと思うものを純粋に形にした曲で、こういうギター・リフものは苑も彩雨も持って来ないだろうなと。もともと僕はメロディック・メタルと呼ばれるものより、アメリカン・ハードロックが好きなんですよ。スキッド・ロウとかエアロスミスみたいな味重視のヴォーカリストだったり、80年代のビート感の曲ばっかりを未だに聴いている。
苑:そういう曲調だったんで、歌詞も明るく享楽的な雰囲気で仕上げました。「Merry Drinker」って、笑い上戸っていう意味らしいんですよ。飲んでいて楽しくなっちゃう人。Anziからも歌詞に沿った荒々しいライブ感を出してほしいとオーダーされたので、僕の中のハードロックな部分を強く出して歌いました。
Anzi:歌詞を見たとき、これは完全に苑本人のことを歌ってるな! と思ったんですよ。世通しカラオケで歌い続けて、ムチャなハイトーンの曲とかを入れ出してリサイタルが始まる朝4時、5時くらいの感じ。そういうときの苑の声って、いい感じでしゃがれてるんですね。そのニュアンスが欲しかったんです。
――そんな裏話が(笑)。ド頭から聴き手を引っ張るドラムの大きなグルーヴも心地よかったです。
悠:“外タレになったつもりでやってみよう”シリーズの第3弾くらいですね(笑)。最近、小技を入れるドラマーが上手いとされる風潮がありますが、別に俺はソッチじゃないですし。だったら大きく聴かせてやろう! と、空港で撮ってるようなPVを思い浮かべて叩きました。
Anzi:完全に滑走路だったよね!
彩雨:アスファルトからちょっと雑草が生えてる飛行場みたいな(笑)。そういう広い感じのする曲だったから、壮大なシンセを入れてもイケる気がしたんですよ。同じアメリカンなハードロックでも「CAMEL」は無理だなと思ったのに、コレは大丈夫だなと。
苑:人によって違うもんだね。俺は、酔っぱらってフラフラしてる夜道が見えてたのに(笑)。
彩雨:ま、曲頭に缶ビールを開ける音を入れようかって案もあったしね。その次の「SWORD」はRPGのゲーム音楽がイメージらしいです。作曲者の燿さんが、ずっと前から言ってたんですよ。“「ロマンシング サガ」みたいな曲を作りたい”って。
悠:「ロマンシング サガ」の音楽を担当してる伊藤賢治さんが彼、すごく好きだからね。
Anzi:俺もプレイはしないけどサントラは持ってる。
苑:ゲーム音楽っていうのを燿から聞いていたせいか、曲を聴いていると戦いの場面しか思い浮かばなくて! いわゆる剣でシャキン! みたいなアレですね。それでタイトルも「SWORD」なんですが、それを直接的に歌詞に書いたらダサくなってしまうんで、自分の意志を心の剣に例えてふるいました。
――勇猛果敢なリリックが、激しいツーバスで迫るドラマティックなメタル・チューンにピッタリですよ。イントロの女性ソロ・ヴォーカルも神秘的で世界が広がりました。
彩雨:女性一人っていうのも、僕的にはゲーム音楽っぽい要素を感じるところなんです。ただ、ソプラノで出せる音域の限界だとか、コード進行に対するメロディの振り幅の具合とか、いろいろ問題があって実は苦戦しました。
悠:でも、個人的にはゲーム音楽にツーバスって、やっぱりハマんない気が……。
彩雨:いや、思うに、昔のゲーム音楽って同時に8つまでしか音が出せなかったから、盛り上がって音数が増えるがゆえにドラムを抜かざるえないことが多かったんだよ。スーファミまではそうだった。
悠:なるほど。俺は昔のゲームしかやってないってことね(笑)。ま、結果的に次の「Innovational Symphonia」と併せて、ツーバスがメインの“派手ドラム・ゾーン”になったかなと。
――だからこそ、続く「永遠のブルー」でグッと落ちるのが映えるんですよね。まず、イントロの物悲しいピアノで初っ端から惹き込まれる。
彩雨:苑の原曲を聴いたときに、あまり音を詰め込むタイプの曲じゃないなと感じたんです。なので頭はピアノだけ、バンドインしてしまえばストリングスだけというシンプルな攻め方にしました。
苑:いつもアルバムには1曲バラードを入れていて、たいてい今までは壮大なバラードだったんです。ただ、そういう曲が果たしていた役割を、今回はリード曲の「喝采と激情のグロリア」が担っているなと思ったんで、いつもと違う渋めの大人なバラードを作ってみました。で、イントロのピアノから雨のイメージを持っていたら、悠も同じように感じてくれていたみたいで。
悠:そう。歌詞がつく前から“この曲、ずっと雨が降ってるな”って思ってて、レコーディングでも雨が降ってる日の室内にいる気持ちで叩いたんです。だから盛り上がり所で“荒ぶる雨”っていう歌詞が付いたのはすごく嬉しかったし、あと、個人的に気に入っているのが最後の合唱が入って来るところ! 好きだったバンドでやっていたようなアレンジを、今度は自分たちができるようになったんだなぁ……と、ハッとしましたね。
――厳かな気持ちになりますよね。マクロな視点で命の摂理を探った歌詞も深い。
苑:作詞の時点で、先にラスト12曲目の「喝采と激情のグロリア」が出来上がっていたんですよ。それを踏まえた頭で書いていたから、僕自身の“人生”を歌った「喝采~」に対し、この曲では僕が生まれる前から続いてきたもの、そして僕が死んだあとも続いていく“地球”の視点で書きたかったんです。
Anzi:そういう意味でも「喝采~」と並んでアルバムの根幹を歌った重要な楽曲であり、おまけに曲終わりがピアノになったので、インストゥルメンタルの「Midnight Fanfare」に繋げることにしたんです。というのも、このアルバムで最も聴かせたい曲である「喝采と激情のグロリア」に向けて、テンションを持ち上げるための前奏曲として作っていた「Midnight~」もピアノ始まりだったから、これは繋いだら超美しいんじゃないか!と。だから「永遠のブルー」「Midnight Fanfare」「喝采と激情のグロリア」と続く終盤の3曲は、僕的に激押しの流れですね。
彩雨:「Midnight~」はAnziから“ファンファーレっぽい感じ”というオーダーを投げられて、となればブラスしかないなと。
苑:そうして明るく、派手な世界の中にも哀愁感があったりして。なんだか最後の決戦に向かう前の心境にも重なる曲なんですよ。
悠:僕もライヴになったら、たぶんウキウキのニコニコで叩いてると思う。特に最後のブラスが好きすぎて、山際から朝日が昇ってくる絵が明確に見えるんですよ! もう、あそこだけリピートしてもいいくらい(笑)。
Anzi:あれ切り取ってメールの受信音にしたいよね。きっとゴキゲンな受信音になる(笑)。
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