「こうやって並べてみて、やっぱり自分たちはいろんな世代の人に聴いてもらいたいグループなんだなって、すごく思いましたね」

――メンバーの選曲による初のベスト盤ということで、まずはひと言ずつ、完成した手応えを聞かせてください。

水野良樹：シングルだけのベスト・アルバムではないので、コアな人にも喜んでもらえるし、名前は知ってたけどあんまり真剣に聴いてこなかったみたいな、ライトなお客さんにも楽しんでもらえるという、うまくバランスを取れたなというのが第一印象としてありますね。

――選曲は全員で？

水野：とりあえず今まで世に出た曲を全部ラインナップして、そこから3人それぞれに選んで来て、突き合わせて。そしたら意外とみんな、同じような曲を選んできてて、8割ぐらい被ってました。どれを外すかに悩んだぐらいで、“え～、その曲入れるの？”っていうのはなかったです。

吉岡聖恵：出来上がって、メンバーがまず口にしてたのが“いっぱい作ってきたね～”っていうことで、そのとおりだなって思いました。それとこうやって並べてみて、やっぱり自分たちはいろんな世代の人に聴いてもらいたいグループなんだなって、すごく思いましたね。そんなに最初は意識したわけではなかったんですけど、アップテンポも入ってるし、元々路上ライヴでやっていたようなバラードも入ってるし、入れたい曲をすごくバランスよく選曲できて、ここからいきものがかりをもう一度知ってもらいたいなと思いました。

山下穂尊：ベストという触れ込みですけど、自分たちなりの選曲の基準を考えると、オリジナル・アルバムと同じような曲順や選曲だと思います。毎回オリジナル・アルバムを作る時にも思うことなんですけど、とにかく幅広い世代の人に聴いてもらいたいということと、まだ聴いたことのない人に振り向いてほしいということと、そういう感覚で選ぶんですよね。それが体現できたなと思います。

――個人的に激押しした曲って、それぞれにあります？

山下：個人的に押したのは「残り風」です。カップリング曲だったんですけど(※シングル「帰りたくなったよ」)、すごく好きな曲だったんで。俺、これ入れたいって言ってたよね？

水野：言ってた言ってた。

吉岡：私は、そうだな～、入れたいなと思ったのは「月とあたしと冷蔵庫」で、これはデビューする前のインディーズ盤を作っている時に“聖恵ちゃんも曲書いてみれば”ってディレクターさんに言われて、たぶんこれ、共作でも最初の頃の曲だよね？

山下：そう。初めて一緒に作ってみようって言って作った曲。

吉岡：ライヴでは3人で歌うし、すごく気に入ってるんで、ぜひ入れたかったです。

水野：僕は「雪やまぬ夜二人」をすごく推してましたね。穂尊の曲の中で一番好きな曲なので。「流星ミラクル」っていうデビュー当時のシングルのカップリングで、もっと多くの人に聴いてもらいたかったなっていう思いがあって。でもこの曲は、みんな“入れたい”って言ってたよね？

山下：そうだね。

水野：ぜひもう一回やりたくて、松任谷(正隆)さんにリアレンジをお願いして。“やっとできた”という感じです。

――今回、リアレンジ＆再レコーディングはもう1曲あります。

山下：「夏・コイ」ですね。これは1stアルバムに入ってた曲で、当時のワンマン・ライヴでもやってたし、自分たちでも思い入れの強い曲なので。アレンジを本間昭光さんに頼んで、レゲエっぽい雰囲気とか、みんなのワクワク感とかがうまく出せたと思います。この間武道館でライヴをやったんですけど、サビ前に入ってる“フォー！”っていうみんなの掛け声は、武道館で録ったんですよ。そういうちょっとした遊び心があるアレンジになりました。

――あと、初CD化になった曲が2曲ありますね。山下くんの作った「今走り出せば」は？

山下：これは代ゼミのCMソングで使われていたんですけど、フルで聴いてもらうのも初めてです。CMのお話をいただいた時に、僕と良樹は浪人してるし、リーダー（水野）はまさに代ゼミに通っていたので、大学受験に対する思いはいろいろあったんですけど、“浪人感よりは現役感を”という話があったので…(笑)。

水野：ネガティヴな感じにならないように(笑)。

山下：そこは意識して、当時通ってた予備校の雰囲気とか、高校時代のことを思い出しながら書きました。

――もう1曲、初出しになるのが「スピリッツ」。これはリーダーの曲です。

水野：これは野球中継のテーマ・ソングだったんですけど、僕、野球が大好きなんで、その思いをすべてぶつけた曲になってます(笑)。曲としては、いきものがかりって、歌謡曲っぽいメロディの展開に、ディストーション･ギターとかロック・テイストとか、歌謡ロック的なものをけっこうやるグループだと思うんですけど、「ブルーバード」や「残り風」と同じような路線の中で、また新しい曲ができたと思います。

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