【レポート】台湾のグラミー賞<第35回 GMA金曲獎>、いきものがかりやSIRUPも参加した中華圏最大級の音楽アワードに数々のドラマ

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台湾の音楽賞<Golden Melody Awards 金曲獎>が6月29日、台北市内にある台北アリーナで開催された。

◆<第35回 GMA金曲獎> 動画 / 画像

2024年に35回目を迎えた<ゴールデン メロディ アワード 金曲獎>は中華圏最大の音楽アワードだ。今年の応募総数は24071作品。その中から27部門148件がノミネートされ、各受賞者および作品の発表受賞式が行われた。審査委員長を務めた陳子鴻は、「どのノミネート作品も本当にみんな優秀で、スタイルもそれぞれ違っていて、選考過程はとても大変でした。今では、いわゆるメジャーシーンと呼ばれるものはない」と総評を述べた。


▲陳子鴻審査員長 ©金曲GMA(台視)


▲▲左からwhoosh、SIRUP、鶴The Crane ©金曲GMA(台視)

少し時間を遡ると、この受賞式の前にはノミネートアーティストやゲストなどがレッドカーペットに登場。赤い絨毯の上を歩くアーティストの華やかな衣装も毎年注目を集めている。今年は、その中に日本人アーティストはじめとする国外アーティストの姿もあった。日本のいきものがかりをはじめ、日台韓のコラボレーションにて生まれた作品『UMAMI』で最優秀シングル制作人賞にノミネートされた日本のSIRUP、台湾の鶴The Crane、韓国のwhooshの3人がレッドカーペットを華やかに彩った。

これまで<金曲獎>では、インストや楽器、映像など言語がない作品以外で日本人がノミネートされる機会が、言葉の壁もあって少なかった。しかし今年はこうして、国を跨いで生み出された音楽が<金曲獎>にノミネートされたのはとても喜ばしいこと。レッドカーペットの後、SIRUPはインタビューでこう答えてくれた。

「台湾の音楽カルチャーをリスペクトしているので、嬉しいです! 日本人がインディペンデントアーティストとして、ここに参加出来ることを本当に光栄に思います」──SIRUP

これをきっかけとして、日本と台湾をはじめとするアーティスト間の交流やコラボレーションが、今後ますます増えていくことを願いたい。


そして、もう一組の日本人アーティストが、いきものがかり。台湾では“生物股長”と呼ばれていたのも印象的だ。この漢字表記をシンプルに訳せばそのまま“生き物係”というところ。彼らは今回、<金曲獎>にパフォーマンスゲストとして招待され、「ブルーバード」「SAKURA」の2曲を披露した。ちなみに昨年、パフォーマンスゲストとして歌唱したのはKing Gnuだったことからも、<金曲獎>の規模の大きさがうかがい知れるはず。

「彼らの日本国外での初公演が今夜、<金曲獎>のために行われます。それでは日本からの生物股長を歓迎しましょう」というMCの呼びかけとともにメンバーがステージに登場。「こんばんわ。いきものがかりです。お会いできて嬉しいです。一緒に楽しみましょう」と吉岡聖恵が中国語で挨拶すると「ブルーバード」が披露された。


▲いきものがかりは演奏後にタピオカミルクティーを飲んで「美味しい!」とコメント ©金曲GMA(台視)

「ブルーバード」はTVアニメ『NARUTO-ナルト疾風伝』のオープニングテーマとして台湾でも人気楽曲のひとつ。楽曲が始まると同時に客席が総立ち状態となり、台北アリーナが一瞬にして、いきものがかりのライブ会場に。国外での初歌唱となったいきものがかりは、驚いた様子を見せながらも、2曲の演奏終了後、スタンディングオベーションで温かく迎えてくれたことに感謝の言葉を伝えた。

さて、今回特に印象に残った受賞者と言えば、人生で一度だけしか受け取ることが出来ない“最優秀新人賞”を受賞した台湾原住民ブヌン族の20歳のアーティストMakav 真愛の作品「Treasure」だ。Makav 真愛は去年、上野公園で行われた台湾カルチャーフェスティバル<TAIWAN PLUS 2023>のために来日し、“Kivi+曾妮+真愛”として出演してしていたことも記憶に新しい。「新人賞は未来に向けて、これをきっかけに多くの人に知ってもらい、更なる発展に繋がることを期待している」とは審査員長の言葉であり、Z世代の台湾原住民ポップアーティストが今後ますます可能性を広げていくはずだ。受賞後に行われたライブ演奏も、とてもフレッシュな印象を残した。



▲Makav真愛 ©金曲GMA(台視)

最後に紹介するのは、7年ぶりにリリースされたアルバム『瓦合』で、“最優秀バンド賞” “最優秀華語アルバム賞” “年度アルバム賞”の3部門を受賞するなど最多受賞の草東沒有派對 (No Party For Cao Dong)だ。今年の<FUJI ROCK FESTIVAL '24>最終日のGREEN STAGEのトップバッターとして出演した実力派、台湾ではチケットを入手するのが最も難しいと言われている台湾発ロックバンドだ。

残念ながら今回は、スケジュールの関係で会場に本人達の姿はなかったものの、替わりにステージに立ったNo Party For Cao Dongスタッフがスピーチをした。



▲3部門受賞した草東沒有派對 (No Party For Cao Dong)スタッフの挨拶 ©金曲GMA(台視)

「草東はステージ上の4人だけではありません。この6つの言葉“草東沒有派對”に関わる全ての人です。アルバム『瓦合』は、この時期の私たちの本当の姿です。私たちはシンプルな創作の道に戻ろうと努力しています。未来はわからないけれど、私たちはさらに努力し続けます。多くの作品の中から私たちの音楽が皆さんに受け入れられて光栄です。心から感謝します、私たちは草東沒有派對です」──草東沒有派對 (No Party For Cao Dong)スタッフ

泣いて笑って歌った4時間超の祭典<第35回 GMA金曲獎>には、2024年も様々なドラマがあった。<第35回 GMA金曲獎>の模様はオフィシャルYouTubeチャンネルに字幕付、手話通訳付、パフォーマンスなど様々なスタイルの動画が公開されており、いつでも台湾音楽に触れることが可能だ。

取材・文◎竹内将子



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