[クロスビート編集部員リレー・コラム] 荒野編「アレックス・チルトン」
内外メディアによるアレックス・チルトンの訃報に触れ、彼の多面性を改めて思い知った。ボックス・トップスで活躍した白人R&Bシンガー。ビッグ・スターを率いたパワー・ポップの元祖。どちらも本当だけど、心の痛みを生々しく刻んだビッグ・スターの「サード(シスター・ラヴァーズ)」(1974年制作)が、ジェフ・バックリィやエリオット・スミスら90年代のシンガー・ソングライターに与えた影響も見逃せない。
チルトン自身が「クレイジーな作品」と認める酒浸り密室ローファイ作「Like Flies On Sherbet」(ソロ1作目)は、ホット・チップのアレクシス・テイラーも愛聴。テイラーはドミノ・レコーズでチルトンのアルバムを作ろうと動いたこともあったそうだ。
プロデューサーとしても数多くの作品を手掛けた。クランプスのデビュー作「Songs The Lord Taught Us」は、ロックンロールが内包する闇を現出させた傑作。これと同じくチルトンの地元メンフィスで録られたゴーリーズの2作目「I Know You Fine, But How You Doin'」も名盤の誉れ高い。R&B臭濃厚なガレージ・パンクは、後続のホワイト・ストライプスらを大いに刺激した。
ティーンエイジ・ファンクラブを始めとするビッグ・スター・フォロワー達を「趣味の幅が広くない、好みが限定されている」と一喝したチルトン。パンク、カントリー、ジャズまで呑み込んだ彼のソロ作群は、大半が廃盤のままだ。
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