最強MC集団帰還! 複数の頭でうごめいた「勘」が合わさってできた3年ぶりの新作
東京ヒップホップ・シーンが誇る最強MC集団、 ニトロ・マイクロフォン・アンダーグラウンド(以下ニトロ)。 '99年リリースの1stアルバム『NITRO MICROPHONE UNDERGROUND』以降、 更にパワーアップしたビグザム、ダボ、デリ、ゴアテックス、マッカチン、スイケン、スウォード、XBSの 8人が再び集結し、待望のニュー・アルバム『STRAIGHT FROM THE UNDERGROUND』を 引っ提げて帰ってきた。 |
複数の頭でうごめいた「勘」が合わさって、一つのカラーを作り出している |
まず、この作品のキモになるのは、プロデューサー勢だろう。まずはニトロ作品ではお馴染みのDJワタライ、DJハヂメ、Mr.イタガキといったメンツが勢揃いしているが、ニトロからプロデューサーを指名してトラックをオファーしたものもあれば、依頼はしていなくても自然に集まってきたトラックもあったりと、ニトロとプロデューサー勢は阿吽(あうん)の呼吸でのやり取りが裏で展開されていたという。ニトロにはそもそもコンセプトというものが存在しないというのは常々言われていることであるけど、今回のアルバムは頭で考えられたものでなく、まさにニトロとプロデューサー達の「勘」によって一つのカラーが作られている。 今回のアルバムの大きな特徴の一つは、まさに今のメインストリームに通じるサウンドが存分に盛り込まれている点だろう。この'04年という時代を切り取った現在進行形のヒップホップ・サウンドは、今の彼らにはしっくりと合っている。かといって、一つの流行の音を追っているのではなく、世界レベルとも言える今の東京のサウンドがここに展開されている。 例えば、50曲分のトラックから選ばれたというDJトシキの「たてめえん」は、彼にとってニトロ初プロデュース作とは思えないほどのちょっとした爆弾チューン。“バウンス・ビート”という言葉では片付かない、ニトロのメンバーも初体験だという「たてめえん」のトラックの破壊力の凄さは、ライヴで体感したいサウンドだ。 東京のサウンドといえば、ムロの参加も今回のアルバムの大きなトピックだろう。ご存じの人も多いと思うが、ニトロのメンバーとムロのとの繋がりは実に深いものがあるにも関わらず、実は今回の「10%無理」が意外にもムロにとって、ニトロでの初プロデュース作となる。ムロらしいファンクネス溢れるトラックに、イントロからもムロ自身のラップが炸裂し、アルバムの一つの良いアクセントになっている。 ムロと同じく、プロデューサー兼ラップで参加しているのがカシ・ダ・ハンサムだ。カシ・ダ・ハンサムは既にEP『Uprising』収録の「Coming soon」で競演済みだが、今回の「ナイバビFive」は実に彼らしい哀愁溢れるソウルフルなトラックによって、ニトロの多面性を出すことに成功している。 フューチャーリング・ラッパーとして忘れていけないのは、トコナ-Xが参加した、その名も「毒々」という曲だろう。このトコナ-Xの参加も、やはり自然発生的なもののようだったそうだが、トコナ-Xのハイテンションなフックと共に、実に攻撃的な曲に仕上がっている。こういった攻撃性もまた、ニトロの持つ魅力の一面といえよう。 他にもメンバー自らがプロデュースを手掛けた曲として、「Thrill Flight」、「Soap(オーストラリア)」はマッカチンらしいユーモアが溢れ、デリとヤッコによるプロデュース・チーム、アクエリアスは実にニトロらしいテーマが綴られた「悪戯伝話」で、外部プロデューサーとはまたひと味違ったアプローチを見せている。 そんな中でアルバム・タイトル曲「Straight From The Undergroud」は文字通り、アルバムの顔と呼べる一曲で、この曲は何といってもメンバー8人全員が揃っているというのが嬉しい。ニトロは各メンバーが自分のやりたい曲を選ぶという方式をとっているので、実は8人全員が一曲で揃うというのはかなりレア。つまり、「Straight From The Underground」には8人全員が「やりたい!」と手を挙げるだけの魅力がDJヴィブラムの手掛けたトラックの中にあったというわけだ。LAで撮影されたプロモーション・ビデオも既にも流れている「Straight From The Underground」は、既にストリートの噂になっていることだろう。 これらの実にバラエティ豊な収録曲の数々が融合し、どのような化学反応を起こしているのか……それは実際に聴いて体験してほしい。 最後にファンへ一言。「待たせたな!」(ダボ) 取材・文●大前 至
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