【人間椅子連載】ナザレス通信Vol.79「KISS」

KISSのライブに行ってきました。2019年のファイナルツアーには行けなかったので奇跡のライブです。前回は正真正銘の最後と言われていましたが、KISSのことだから、きっとまた来てくれるに違いないというファンならではの勘が当たって大感激です。東京ドームでのライブはメタリカ以来でしょうか？すごい人の数なのは当然ですが、若くない人の割合がものすごく高いです。ロックTシャツを着た白髪とシワの大群です。もはや自分より先輩なのか後輩なのか全く判別できませんでしたが、同朋意識が芽生えて嬉しくなってしまいました。「自分ほどKISSが好きなファンはいない！」と自負している数万人のお祭りです。水道橋駅で「これから地獄に行ってくる」と電話していたお姉さんの言葉も印象的でした。


「You wanted the best,You got the best,The hottest band in the world,KISS！！」いよいよライブの始まりです。定番「Detroit Rock City」からのスタート、あまりに感激して涙が止まりませんでした。そこから続く「Shout It Out Loud」ではこれで見納めかもしれないという思いがこみ上げてきて更に大泣きしてしまいました。このまま泣きながらライブが進むのかと思いきや、そうでもない曲がその後続いて、以外にも冷静に観ることができました。歳も歳なので派手な動きはしませんが、そう見えないところがさすがです。正しくプロです。見習わなくてはいけません。火吹き、血吐き、空中移動などみんなが待ち望んでいる演出を全て詰め込んだ、宝箱をひっくり返したような豪華なライブでした。多分、前回と同じセットリストですが、「Makin' Love」が意表をついていて嬉しかったし、「I Was Made For Lovin' You」では一番をレコードと同じオクターブ下で、二番をライブバージョンのオクターブ上で歌ってくれて嬉しかったし、アンコールで演ると思っていなかった「Do You Love Me」も嬉しかったし、「Rock And Roll All Nite」ではステージが見えなくなるくらいの紙吹雪が舞って嬉しかったしで、感動の二時間はあっという間に終わってしまいました。


中学生の自分をハードロックの世界に導いてくれたKISS、あんなにのめり込むとは思いませんでした。KISSのステッカーを貼った筆箱、KISSの切り抜きを挟んだ下敷き、KISS全員の顔を彫って作った木製の小物入れ、全てがKISSに染まっていたあの頃。今思えば出会った時期が絶妙なタイミングでした。人生で一番多感な年頃にラジオから流れて来た「I Was Made For Lovin' You」との出会いが運命を決めました。そのB面「Hard Times」が凄く気に入って買ったアルバム「DYNASTY」でカルチャーショックを受け、次に何のアルバムを買えばいいのか分からなくてジャケ買いした「DRESSERD TO KILL」のストレートなロックンロールに痺れ、次の「DESTROYER」一曲目の「Detroit Rock City」に完全にノックアウトされるという、絵に描いたようなモデルコースを辿りました。一般的なリアルタイムのKISSファンより遅い出会いなのですが、それがまた良かったようです。この多感な時期に一気に黄金期のアルバムを遡ることができたからです。音楽に限らず、中学時代に好きになったものは一生を支配すると思いませんか？この貴重な三年間をKISSの全アルバムをコンプリートする事に費やすことができた自分は幸せ者です。

自分のKISS好きが隣の中学まで伝わったのか、突然やって来た面識のない和嶋くんに「ALIVE II」を貸してくれと頼まれます。ちょっと不思議な感じがしましたが、KISS好きが弘前に他にもいたことが嬉しくて快く貸したことを、ついこのあいだのように思い出します。この後一緒にバンドを組んで一生ハードロックの道を共にするとは夢にも思っていなかった頃のお話です。


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