【インタビュー】EGO-WRAPPIN’、アナログ2タイトルに新鮮なサマーアンセム「間違いなくととのいます」

2025.07.04 18:00

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■いや、路地裏を見てください
■路地裏に嘆きがあるから

──サウナで「AQUA ROBE」を流したら、猛烈にととのうでしょうね。音響設備がものすごいサウナってあるんですかね。ハイエンドオーディオメーカーのスピーカーが付いていたりとか?

中納:あるのは大体テレビですよね。

森:僕が行ってるサウナは、有線みたいなのがかかってます。音がこもってて、それはそれでいいんです。脱衣場というか、フロントみたいなところにターンテーブルがある銭湯が墨田区にありますよ。黄金湯っていうんですけど。風呂から上がったらピチカート・ファイヴとかがかかってる。

中納:へぇー。BGMって大事ですよね。ご飯屋さんとか、BGMが好みじゃないと帰りたなるところがあるから(笑)。私らは音楽を作ってるから、なおさら“帰りたい”ってなったり、逆に“ここ、すごくええなあ!”ってなったり。ラーメン屋さんで、スーパーマーケットでかかってるみたいなインストがかかってて、めっちゃ良かったことがありました。邪魔しないそういう音楽って、すごくいいなあって。サウナは、自分と関係ない音楽がちょうどいいです。AMラジオもそうですね。

森:無音のサウナってありますけどね。

中納:無音もいい。

──自宅のお風呂でEGO-WRAPPIN’を聴いているファンもいると思います。

森:お風呂で流せるスピーカーがありますからね。

中納:レコードで音楽を聴くとすると、身体がびしょびしょのまま裏返しに行かなきゃいけないから嫌ですけどね(笑)。

──ははは。今回の12インチ、表と裏はA面とB面ではなくて、MOON SIDEとSUN SIDEなんですね。

中納:はい。森くんがそうしたいと言って。

森:野音でのライブって、まだ陽が昇ってる時間帯と、陽が落ちた後の時間帯があるじゃないですか。陽が昇ってる時はからっとしてるけど、陽が落ちた後は第2部のムードを作れるので、そういうイメージです。あと、AとBってAがリード曲みたいな感じになるから、どっちの曲もリードみたいな感じも出したくてMOON SIDEとSUN SIDEにしました。

中納:“どっちもA面や”みたいなことですね。

──SUN SIDEの「Treasures High」は、MOON SIDEの「AQUA ROBE」とはまた別の気持ち良さがあります。軽やかなステップで屋外を歩いているような感じというか。

森:これもカリンバから生まれた曲です。カリンバは、音や響きが好きなんです。和音にした時の響きも気持ちよくて。

▲森雅樹(G) <EGO-WRAPPIN’ live tour “HALL LOTTA LOVE ~ホールに溢れる愛を~”>

──民族楽器は、お好きなんですか?

森:好きですね。カリンバは、簡単に音が出るから子供でも楽しめるじゃないですか。僕にとっても遊び道具の延長っていう感じなんですけど、魅惑的な楽器です。

中納:ええ音やもんなあ。私は最近シュルティボックスというインドの楽器を買いました。ふいごみたいに空気の穴で音階を作るんですけど、めちゃくちゃ気持ちよくて。なんやろ…人間のつくりと似てるというか。響きがすごくマッチして、めっちゃ気持ちいいんですよ。空間のエネルギーみたいなのとしっかり調和してくれる波動を出す楽器ちゃうかなと思って。非常に気持ちいいので、最近のライブで使ったりもしています。

──森さんにとってのカリンバがまさにそうだと思いますが、新しく触れる楽器は創作のひらめきに繋がることも多々あるんでしょうね。先ほど、「新鮮な楽器に触れると新しいものを生みたくなる」とおっしゃってましたし。

森:カリンバは、打楽器的なところもあって、それも面白いんですよ。やっぱり、新鮮さがありますね。

中納:そうですね、新鮮な楽器に誘発されます。ちょっと脳みそのチャンネルを変えるだけで違う見方ができるというか。でも、本来、ピアノとかも、どう弾いてもいいはずなんですよね。

──西洋音楽の12音階も、ミュージシャン同士の共通言語的なものとして存在するだけですよね。そこから離れることも自由なはずで。

中納:例えばドとレの間にだって、いっぱい音階がありますから。

──各国の民族楽器に触れると、西洋音楽とはまた別の形で音楽と向き合いやすいのかもしれません。特定の枠に縛られないEGO-WRAPPIN’の創作の背景は、そういう楽器を楽しむところにもあるのかもしれないですね。

森:音楽は自由ですから。自由な中でも、自由のようで自由ではなかったりする感じもあって、難しいんですけどね。

──「Treasures High」は、歌詞も自由さをとても感じます。“滑るスロープのLove 靴底のチューインガム”って、ものすごく気持ちいい音の響きじゃないですか。なんか意味がわかったようでわからないのも心地好いです。

中納:そうですね(笑)。楽しい感じが出たらいいのかなと思って。森くん、「このフレーズ好きや」って言ってたよね? 私は歌詞を変えようと思って、メロディの感じを一瞬変えたんですけど。

森:ラップで言うたらフロウとか、トラックに対してのリズムの入れ方と言葉のチョイスが気持ちよくて、好きやったんです。このリズムで“チューイングガム”って入るキュートさもいい。

──チューイングガムを踏んずけちゃって、歩くとネバネバする感じがリズミカルに思い出されるのが楽しかったりもして。

中納:音が気持ちよくて、出てきた言葉でしょうね。こういうのは一文字違うだけでも聞こえ方が変わってくるんです。言葉って不思議やなあって思います。“靴底のチューインガム”って書きつつも、最近ガムを踏むことはないですけど。

──煙草の吸殻やゴミだらけだった昭和の頃と較べると、令和の町はきれいになりました。

森:いや、路地裏を見てください。路地裏に嘆きがあるから。そういうものは、だいぶ裏に回ってますよ。