【ライブレポート】EGO-WRAPPIN’、<Dance, Dance, Dance>東京公演に幸福感の絶頂「ラスト野音、ありがとう!」

2025.08.04 18:00

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EGO-WRAPPIN’が、7月12日に東京・日比谷公園大音楽堂、8月2日に大阪・大阪城音楽堂にて、夏の恒例野外ワンマンライヴ<Dance, Dance, Dance>を開催した。7月12日の東京公演は、建て替えが迫っている日比谷野音での最後のステージ。EGO-WRAPPIN’と観客がこの会場に対して抱いている愛情はとても深い。たくさんの思い出を刻んできた場所に感謝し、過ごす時間を大切に噛み締めながら全曲を輝かせたライブだった。その模様をレポートする。

開演を告げるSEとして、Sly & The Family Stone「Dance to The Music」が鳴り響く中、日差しを浴びながらステージに現れた中納良恵(Vo)、森雅樹(G)、サポートメンバーの伊藤大地(Dr)、真船勝博(B)、TUCKER(Key)、icchie(Tp)、武嶋聡(Sax, Fl)。彼らを出迎える手拍子は、ワクワクする気持ちを早くも示していた。

「こんなにラスト野音に来てくれてますわ。よくぞチケット取って来てくれました!」──森雅樹

「天気も味方してくれました。この景色は今年が最後。何かをここに残していきましょうか。楽しんでいきたいと思います!」──中納良恵

二人が観客に呼びかけた後、インスト曲「Egyptian Reggae」がスタートした。中納の鍵盤ハーモニカ、森のバンジョーがバンド演奏に加わり、温かなサウンドが会場内だけでなく、日比谷公園全体や付近の官庁街にまで広がっていくようだ。音が伸び伸びと響き渡る日比谷野音ならではの感触を早速噛み締めることができた。続いて「PARANOIA」がスタートすると観客の手拍子が合流。スウィングするジャジーなサウンドがダンス衝動を刺激してくれる。「クイックマダム」と「レモン」も届けられた頃、どこからか聞こえてきた蝉の声。公演タイトル<Dance, Dance, Dance 2025>を体現する生命力に溢れた空間が作り上げられていた。

「ミドルテンポで踊れたら大人ですよ」──森雅樹

「EGO-WRAPPIN’は2008年に初めてワンマンライブを日比谷野音でやらせていただきまして、<Dance, Dance, Dance>は12年目。ここの会場をとるの大変やねん(笑)」──中納良恵

最初の小休止で二人が心底嬉しそうに会場内を見渡した後に届けられたのは「love scene」と「裸足の果実」。夕暮れ時の光を浴びながら輝いたホーンは、屋外で音を出せることを喜んでいるように、いつにも増して活き活きと感じられた。この2曲の演奏の直後、「ラスト野音、ありがとう! 物にも心がありますから。車にガソリンを満タンに入れたら、よう走るでしょ?」と言っていた中納。日比谷野音や楽器への愛しさを後押しする言葉だった。

キーボードの伴奏で中納が歌声を響かせるや否や、観客の間から上がった歓声。他の楽器も合流しながらグルーヴィーに躍動した「a love song」は、客席内で掲げられたたくさんの掌を穏やかに揺らがせた。「サニーサイドメロディー」をロックステディにアレンジした新曲「Sunny Side Steady」が、初夏の日比谷野音に抜群に似つかわしく、観客の大合唱に彩られた風景は平和そのもの。BARKSインタビューで語られた通りの気持ちいいひと時となった。

続いて、中納の歌と森のギターを基調としたコンパクトな編成で披露されたのが「満ち汐のロマンス」。ホームパーティーのようなリラックスしたムードの中、温かなサウンドが人々を包んでいた。「予定ではここで日が暗くなってる(笑)。……まだ全然明るい」と中納が言っていたので、この辺りで日没を迎えているつもりだったらしいが、空はまだ少し明るく、淡い水色を浮かべている。太陽が楽しい時間を引き延ばそうとしてくれているのかもしれない……というような妄想もしたくなるくらい、心が無邪気に和らぐサウンドが続いた。

観客を情熱的に踊らせた新曲「Treasures High」を経て、ようやく迎えた日没。ステージを彩る電飾ロゴ“EGO-WRAPPIN’” “Dance, Dance, Dance”がカラフルな光を放ち、「Summer Madness」へと突入すると夜風が吹いてきた。白いスモークが漂う中で披露された新曲「AQUA ROBE」は、リバーブを利かせたサイケデリックな音色が恍惚をひたすら誘う。サウナを彷彿とさせる歌詞の描写に耳を傾けると、大都会の屋外で“ととのう”という非日常の体験をしているかのような感覚にもなってくる。そして曲間を挟むことなく壮大な展開を遂げたのが、「マンホールシンドローム」と「Calling me」。歌声、メロディ、音像、ビートに身を任せたあのひと時は、夢見心地のトランス状態へと巻き込んでくれた。

「“車にガソリンを満タンに入れたら、よう走るでしょ?”って言うたけど、普通のこと言うてたなあ(笑)。車を洗車したらなんか機嫌よくなりません?」と、先ほどの自身のMCにツッコミを入れつつ、「物を大事にせなあかん。うちら共鳴体ですから」と語り、バンド、観客、日比谷野音が一体となって音を響かせることを喜んだ中納。彼女が銅鑼を打ち鳴らしたのを合図に、ライブは終盤へと雪崩れ込んでいった。

「Mother Ship」と「サイコアナルシス」の連発を浴びてダンス衝動を爆発させ始めた観客を、さらに熱くさせたのが「くちばしにチェリー」だ。手拍子だけでは昂る気持ちが収まらなくなったのだろう人々が飛び跳ねながら歓声を上げ、大きなエネルギーが会場を震わせた。

そして大合唱、ダンスのステップ、歓声が、融け合いながら夜空へと打ち上げられた「GO ACTION」で締めくくられた本編。EGO-WRAPPIN’と観客が手作りした音色の数々が、たくさんの思い出を刻んできた日比谷野音への贈り物となっていることを感じた。

アンコールを求める手拍子と歓声に応えてステージに戻ってきた中納、森、バンドメンバーたち。「色彩のブルース」の妖艶なメロディが観客をうっとりとさせた後、日比谷野音、味園ユニバース、神奈川県民ホールなど、魅力的な会場が次々と建て替えの時期を迎えていることへの想いを中納が語った。

「新しい建物がどんどん建っていきますが、50年後とかに“これは令和心をくすぐる”とかいう時代が来るんですかね? 来たらいいなあと思います。遊び心が持てるような平和な未来を我々が作っていかなあかんなあと思います。新しい景色が明日からまた始まりますけど、違う風景の中で一緒に響き合えたら嬉しいなあと思います」──中納良恵

寂しさを滲ませつつも前向きな意志を示す言葉が清々しかった。そしてラストを飾ったのは「WHOLE WORLD HAPPY」。中納がピアノを弾きながら歌い始めた後に、他の楽器の音色も重なり合ってアンサンブルの輝度を高めていった。ラグタイム、ラテン、ジャズなどが仲良く盃を交わすかのような展開が眩しい。歌いながら扇を振った中納、飛び跳ねながら笑顔を浮かべた観客が、幸福感の絶頂を更新し続けていた。

演奏が幕切れた後、ステージを包んだ雷鳴のような歓声と拍手。<Dance, Dance, Dance>を新しく生まれ変わったこの会場で楽しめるのは数年後になるのかもしれないが、思い出をさらに重ねていける未来を明るく見つめられたエンディングの風景だった。

取材・文◎田中大
撮影◎仁礼 博

 

■<EGO-WRAPPIN’ “Dance, Dance, Dance”>2025年7月12日(土)@東京・日比谷公園大音楽堂
01 Egyptian Reggae
02 PARANOIA
03 クイック・マダム
04 レモン
05 love scene
06 裸足の果実
07 a love song
08 Sunny Side Steady
09 満ち汐のロマンス
10 Treasures High
11 Summer Madness
12 AQUA ROBE
13 マンホールシンドローム
14 Calling me
15 Mother Ship
16 サイコアナルシス
17 くちばしにチェリー
18 GO ACTION
encore
en1 色彩のブルース
en2 WHOLE WORLD HAPPY

 

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