【インタビュー】Hi-STANDARD、難波章浩が語る「ハイスタを3人のものに取り戻す」

2016.12.15 18:30

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■「ANOTHER STARTING LINE」は
■マジな部分を出さなければいけなかった

──このカバーシングルは、前シングル「ANOTHER STARTING LINE」と連動したものとして考えていたんですか?

難波:そうです。実は今回のカバーシングルに収録されている新録2曲は「ANOTHER STARTING LINE」と一緒に録ったんですよ。レコーディングにはライアン・グリーン(ハイスタの全フルアルバムを手がけるエンジニア)がアメリカから来てくれたから、「4曲だけじゃもったいないね。じゃ、カバーも2曲録ろう」という話になって。その6曲のバランスがすごく良かったから僕は、カバーを含めたミニアルバムで出そうって提案したときもあったんですけど、健くんが、新曲とカバーとそれぞれ1枚ずつに分けたほうがいいかもねと。ただ、カバー2曲だけだと足りないから、廃盤になった7インチに収録されたカバーをリマスターして入れたら、みんな喜ぶんじゃないのって。それに、12月に<AIR JAM 2016>開催が決まっていたから、クリスマスソングも収録されているし、いいんじゃないのって。

──なるほど。「Vintage & New, Gift Shits」というタイトルは?

難波:タイトル自体は健くんが付けたんですよ。”Vintage & New”は古い曲と新しい録音だよっていう意味もあるかもしれないけど、昔のハイスタと新しいハイスタという意味も込められているのかなと。“ギフト”っていう言葉を使って“プレゼントするぜ”みたいな。

──それも今のタイミングじゃないとできないもの?

難波:カバーだからできるものなのかもしれないですね。カバーってライトな感じで、やっぱり遊べますから。ここで遊びも見せて、次につなげる。そういうことでいえば、「You Can’t Hurry Love」のミュージックビデオも半端じゃないですよ(笑)。シュールすぎて引く人もいるかもしれないくらい、ちょっとイッちゃってるので(笑)、それも楽しんでほしい。「ANOTHER STARTING LINE」はやっぱりマジな部分を出さなければいけなかったから。


──というのは?

難波:2000年の絶頂で活動が止まるなんて、やっぱりいろいろな思いがあったと思うんですよ、僕たちにも。ファンの人も相当ショックだったと思うんです。それから音やライブを届けられないまま……ウチらもよくわかんない状態になってゴチャゴチャ言ってたし、メンバー間の問題にもなって、心配を掛けたと思うんです。“もうハイスタ、絶対復活なんてないでしょ”みたいな状態にまでなってて。そこで、再び<AIR JAM 2011><AIR JAM 2012>とライブをやったけど、またやらない状態になって、またちょっと始めたぞとか。みんなにとっては、意味のわからない状態が続いていたと思うんです。「ANOTHER STARTING LINE」は、それらすべてを一発でOKにしたかった。この4曲で完全OKみたいな状態に、まず僕らがなりたかったし、みんなにもなってほしかった。

──はい。

難波:ハイスタが止まっている間にも、音源を聴いてくれて新しいファンも増えているんですよね、2000年の状況よりも今の方が広がってますから。そういういう新しいファンにも、「ANOTHER STARTING LINE」でハイスタを初めて聴く人たちにも届けたかった。だから、『MAKING THE ROAD』(1999年リリース)を作るまでの状態とは、また違うもので、「ANOTHER STARTING LINE」はいろいろなものを越えなきゃいけない。そこに対してはすごくマジで。そんなことができるのかっていうプレッシャーはめちゃくちゃあって。結果、それを超える曲を打ち出せたと思うんですよね。

──音源に説得力を込めて。

難波:うん、自分たちがそう思える曲を出す。あえて「ANOTHER STARTING LINE」にはふざけた曲は入れたくなかったし、本気なんです。だから8ビートとか、ドシッとした曲が多くなったのかなと。

──「ANOTHER STARTING LINE」がハイスタ史上初のオリコンチャート1位を獲ったという結果に関しては、どう捉えてますか?

難波:結果だとは思ってないんです。いいスタートが切れたと、ハイスタの可能性はまだまだあるなと。今の時代にリアルに生きるハイスタは、日本の人たちになにかをやれるなって思いました。僕たちは“やるべきことがあるから”って言ってるんですよ。それはリリースしてよかった、売れてよかったじゃない。メンバーそれぞれに胸に秘めるものがあるし、今のハイスタにしかできないことがありますから。本気で届けたかったので、本気で作ればちゃんと届くんだなって。

──楽曲には強いメッセージもありますし。

難波:「ANOTHER STARTING LINE」の2番で、“今、街の灯りもみんなの上に灯っていく”という歌詞があるんですけど。東北や熊本でも震災で大変な状態になったりとか……日本って大変な時期だと思うので、“ああ、よしオレも頑張ろう”って思ってもらえるような。僕たちもやるからさ、みんなもいこうぜ!っていうメッセージになればいいなって思ったんですよね。

──「RAIN FOREVER」には、“失えば失うほど何かを得るのさ”っていう一節があって、これは今のハイスタだからこそ歌える歌詞だなと。

難波:健くんのコーラスの部分ですね。大変なことがあっても諦めないで、一歩ずつ進めば、こうやってゴキゲンなこともできるんだっていうメッセージだと思いますね、健くんなりの。だから、失うってそれだけじゃないのかもしれないよっていう。


──なるほど。では、カバーシングル「Vintage & New, Gift Shits」のレコーディング自体もゴキゲンな雰囲気で?

難波:レコーディングはめっちゃ楽しかったですね。さっきも言ったようにハイスタとして久々にライアン・グリーンと一緒にやりましたからね。こんなに楽しいことが待っていたんだなと。エモかったです、キュンキュンきました(笑)。

──先ほどカバーは“ライトな感じで、遊べる”という発言がありましたが、ハイスタにとってカバーってどういうものですか?

難波:こんなにカバーをやっているバンドも他にいないですよね(笑)。カバーアレンジとかで自分たちのニュアンスを出すのも楽しいんです。カバーって、もともとしっかりしたメロディとか構成とかがあるわけじゃないですか。それに対してアレンジで、今の自分たちはこういう状態なんだよということを表現しやすいんですよ。言ってみれば、ふざけやすいというか。だから、カバーが好きなんです。

──カバーアレンジする上でこだわっている部分とは?

難波:メロディは重要だから、そこだけは絶対崩したくなくて。自分たちのルーツですし、特に’80〜’90年代ポップスは僕のメロディのルーツ。音楽は繋がっていくんだというメッセージにも取ってもらえたら嬉しいなと。最初のハイスタのライブもカバー曲ばかりでしたから。ダムドの「Fish」とかザ・フーの「Pictures of Lily」や「The Kids Are All Right」とか。実は、シュープリームスのカバー「You Can’t Hurry Love」は以前からリハとかで取り組んでいたんです。

──いつ頃ですか?

難波:そうとう前ですよ。1990年代ですね。ライブでやったかな……やったこともあるかもしれない。で、ビーチボーイズはみんな好きだから、今回取り上げようと。ビーチボーイズって意外に謎なバンドで、あんなにビッグネームなのに“メンバーの誰々が”とかあんまり話題にならなかったりするでしょ。つまり、個々のプレイとか以前に、曲自体がいいんでしょうね。

──ビーチボーイズのカバー「I Get Around」のカバーアレンジも秀逸です。

難波:Aメロはゆっくり歌って、サビで速くなることは最初のコンセプトとして決めていたんです。だから、Aメロでいかにフザケられるか。そこでツネちゃんの声が必要だったんですよね(笑)。あの低い声はツネちゃんなんですよ。

──やはりあのコーラスはそうでしたか(笑)。

難波:レコーディングで、みんなズッコケましたね、「さすがツネちゃん!」って。あれはワンテイクOKでした(笑)。これまで、「Glory」とか「Mosh Under The Rainbow」では3声を重ねたことはあるんですけど、ド頭から3人でくるのは初めてかもしれない。あとはね、今回は昔やったカバー曲が入っているのもいいですよね。自分たちでも時間が経つとこうなるんだなって比較できるし。同じパンクロックのアレンジだけど、やっぱり何か違うんですよ。それはこの間に経験したものが出てるんでしょうね。まぁ、歌声も昔はやんちゃですし、面白い。

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