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LuckyFes
I’ve特集 I’veサウンド徹底検証 第二回
2007.08.06 00:00
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I’veサウンド徹底検証 -第2回-
I’veサウンドを特徴づけている重要な要素のひとつに、音色がある。では、ぱっと聴いただけでI’veらしさを感じさせる、軽快で明るいイメージのあのサウンドの中身はいったいどうなっているのだろうか。今回はI’veサウンドではどんな楽器がどんな音色で、どんな使われ方をしているか、そしてその結果、全体としてどんなサウンドに聴こえているのかを探ってみる。
I’veの楽曲には、さまざまな楽器を使った幅広い曲がある。しかし代表曲を数多く聴いていくと、I’veらしさを特徴づける傾向が見つかる。最大の特徴は、スタイルから来るものだ。I’veサウンドの基になっているのはトランスで、基本的に打ち込みで作られている。楽曲を構成する楽器の多くはシンセサイザーになるから、そこで雰囲気がある程度決まってくるわけだ。「I’veサウンドの特徴=トランスの特徴」とも言えるのだが、その中での楽器の使い方や音色の選び方には、I’veならではのこだわりがあるようだ。 歌の伴奏の中心になっているのは、パッド系と呼ばれるシンセだ。一定の音量が持続するパッド系のサウンドでコードを演奏することで、メロディが安定して支えられているのだ。パッド系の音色の中でも、とくによく使われるのはふわっとしたやわらかい音色。アタックがそれほど目立たず広がるような音色を、比較的低い音域で使っている。これによって、全体を分厚く包み込むような雰囲気が生まれている。メインの伴奏は主に1種類のパッド系シンセだが、サビに来たときにやや鋭い音色のストリングスを高い音域で使って盛り上げたり、アクセントとしてきらきらした音色のピアノを使う、といった方法で変化もつけている。 ベースについても、前回検証したとおり広がりがある温かい音色が多用されている。またギターも歪んだ音が中心で、アタックがつぶれ気味なので不必要にリズムを強調してしまうことがないし、全体の音圧も上がって聴こえる。ベース、ギターも伴奏のメインのシンセと一体となって、全体を包み込んでいるような音色になっているのだ。ドラムについては、歯切れがよくて明るく、パワフル、いわゆるパーカッシブな音色が多い。分厚く包み込むような伴奏に対して、リズムが埋もれずきちんと抜けてくるためにはこの音色が必要なのだろう。 ただ、曲をリードする楽器、もっとも目立つ音色は、曲によって変えられている。たとえばKOTOKOの「ハヤテのごとく!」では歪んだギターが全体のサイバーな雰囲気を作っているし、「Chercher」では弾力のあるシンセベースがリズムをリードしていくことで曲が進んでいき、「覚えてていいよ」では歪んだギターが全体を包み、きらきらしたピアノがアクセントをつけている。もちろんアレンジとも密接に関係することだが、こうした楽器の使い分けによって、バリエーション豊かな楽曲を生み出しているのだろう。
こうした音色を重ねた全体像は、いったいどんなサウンドになっているのだろうか。今回はそれを周波数分布の側面から調べてみた。周波数とは簡単に言えば音の高さのこと。そして周波数分布はどんな音域がどれくらい強く含まれているかを示すものだ。つまりこれを調べれば全体の音の構成がわかるのだ。 周波数分布はもちろん曲によって少しずつ違うし、曲の中でも刻々と変化するものだ。しかしI’veの楽曲の周波数分布をグラフで見てみると、その多くが似たような形になっている。まずグラフを見てわかるのは、全体にフラットな形になっていること。これは高域から低域まで、どの音域の音もまんべんなく同じような強さで含まれているということだ。I’ve以外の様々なジャンルの楽曲の場合はこれほどフラットではなく、どこかに大きな山や谷が現れたりするのが普通なので、これは大きな特徴といえる。様々な音域をカバーする音色を巧みに使い、音域を偏らせないようにうまくバランスをとって作られているのだろう。 また、グラフはなだらかに右肩下がりになっている。これは他のジャンルでもよくあるパターンだが、もっとも低い音域に注目すると、100Hz付近に小さいピークがある。これはベースやドラムの低域に迫力を増す効果がある音域だ。これによってパンチのあるサウンドに仕上がっているのだ。 さらに、通常はサビやイントロといった曲中のセクションが変わればこのグラフの形は変化するのだが、I’veサウンドの場合はそれも大きく変化しないことが多い。つまり1曲を通じてサウンドが一定していて、極端に変化しないのだ。この安定感も、I’veサウンドの特徴のひとつといってもいいだろう。
text by 田澤 仁
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